野中美波 SURFMEDIAインタビュー The Road to Triumph: 勝利への道を築くための方程式。

文・写真:山本貞彦

日本の女子サーフィンの実力は、まだ世界とは離されているものの、アジアの中ではトップを走る。オリンピアンの都筑有夢路や先日、パリ五輪の日本代表に内定した松田詩野。さらに海外での評価が高い脇田紗良、前田マヒナをはじめ、タレントは多い。

そのトップ陣に加え、次世代では今年CS(チャレンジャーシリーズ)に参戦している都築虹帆、松岡亜音。さらに、松永莉奈、中塩佳那、池田美来、佐藤李、川瀬心那、松野杏莉など着実に力をつけたジュニアが増えている。

野中美波 CSスナッパーロックス   nojiland
野中美波  CSハレイワチャレンジャー photo:GORDINO

この中で、とりわけ、WSL(ワールドサーフリーグ)で安定した結果を出している一人の選手がいる。それが野中美波 だ。CSがWSLに導入された、2021年は29位。2022年は21位と少しずつ順位を上げ、前年度もアジアQS(クォリファイシリーズ)ランキングで2位となり、3年連続のアジア代表のCS選手となった。

野中が凄いのは、結果を残しているだけではない。CSを転戦しながら、QSも回っていること。実際に日程がかぶることはないものの、移動日含めるとタイトなスケジュールは否めない。時間だけでなく、肉体的にも、精神的にもハードな日々となり、休む暇も無い。

今までジュニア時代からサーフィンスキルは、飛び抜けていて「サーフィン大好き!」と笑顔で語る愛らしいキャラ。そんな野中が自らを厳しい環境に身を置き、世界をまわり、勝てるサーファーになりつつある。

今回は遠征の合間に、その野中に時間を作ってもらうことができた。なぜ、ここまでコンスタントに試合で、結果を残すことができるようになったのか。また、何を求めて戦うのか、改めて話を聞いた。

 

大親友の都筑有夢路と

 

2016年の15歳でJPSA(日本プロサーフィン連盟)のプロ公認を得て、翌年はJPSAのプロツアーをフル参戦。伊豆大会で初優勝し、2017年度のランキング4は位につけるデビューを飾った。翌年の2018年には、JPSAのグランドチャンピオンを17歳で獲得。

 

野中美波

 

この年は国内ツアーの合間に、海外にも挑戦。モロッコやオーストラリアのQSに参戦。南アフリカはQS1000ながら、外国人選手を相手にWSL初優勝を飾る。2019年から本格的に海外に軸足を移し、QSをフル参戦。再び、南アフリカ大会で優勝し、12大会をまわり、初の世界ランキングは 54位という結果だった。

 

ジュニア時代から海外でのポテンシャルは高く、WSLジュニアでは15歳で日本代表となり、WJC(ワールドジュニアチャンピオンシップ)2016年大会は13位。2018年大会は5位という成績。ISA(国際サーフィン連盟)ジュニアでは2018年 U-18で3位の銅メダル。翌年、2019年には銀メダルを獲得と2年連続の表彰台に上がった。これまでを振り返り、本人はこう語る。

 

2019年南アフリカのWSLイベントでは、QSとジュニアのダブル優勝の快挙を成し遂げた。WSL / Thurtell

 

野中:サーフィンが大好きだったし、もう毎週、埼玉から通って一生懸命に練習する毎日でした。NSA(日本サーフィン連盟)とかも出たりして、次はプロを取りたいみたいな気持だったかな。でも、その時は海外に行くというのは、あまり考えていなくて。

 

小学校5年生の終わりぐらいに、サーフィンのために家族で千葉一宮に引っ越してからは、毎日、サーフィン。そのおかげで、茨城でプロになることができて。次の年は優勝(伊豆大会)することもできました。

 

野中美波 WSL / Poullenot

 

2018年にはJPSAでグランドチャンピオンを獲ることができたから、次はQSに出たいという気持ちに変わりました。当時は紗良(脇田)とか、有夢路(都筑)はもうQS回っていたし。

ISAとかで海外の選手と戦ったから、そういう気持ちになったかもしれません。それで、次の年からQSを回り始めたって感じです。

初の海外フル参戦は、試合に出て、また違う国に行って、また試合に出ての繰り返しで。勝ちたいという気持ちは、もちろんありましたけど。この時は海外の選手全員が自分より歳上だったので、挑む気持ちだけで精一杯でした。

 

 

この次の年の2020年。1月に開催された中国のQS5000で3位入賞と絶好のスタートを切るも、4月からコロナ禍となり、大会は全てキャンセル。長い休止期間を経験する。ツアー再開は2021年。CS初挑戦は4大会に出場し、ランキングは29位。翌年の2022年のCSでは、アメリカとブラジルで9位とマンオンマンまで勝ち上がることができて、総合21位でシーズンを終えた。

 

 

CSサクアレマ 野中美波 WSL / Daniel Smorigo

 

この同年、2020-21年度のQSでは台湾2位、クルイ3位、ニアス5位、フィリピン3位と常に上位をキープ。大きい波も攻略し、コンスタントに成績を残せるようになった。今までと何が大きく変わったのか。その変化を聞いた。

 

 

野中:コロナ禍の時は、すごい練習をしていました。いつも試合続きだと、次試合だからと焦りとかもあって、試合に対しての練習みたいな感じだったんですけど。大会自体が無かったから、自分のサーフィンを見つめ直すとかではないんですけど、試合のことを考えずに練習ができて。自分にはすごい貴重な時間となりました。

 

今でも試合前とか、緊張もするし、ネガティブなことばかり考えたりするんですけど。本当に試合は難しいって、今も思います。でも、どんな状況でも試合になったら、やるしかないですから。

 

とにかく、いろんな所に行って、いろんな波をやってきました。乗れる時は、乗れるし。良い波をつかめたら勝つし。でも、(波が)ぐちゃぐちゃで全然乗れないで、負けちゃう時もあります。

 

本当に経験だと思います。試合をずっとやってきて思うのは、当たり前のように負ける時も、勝つ時もあるということ。それでも、QSの大きい大会で成績を残したりすると、やはり自分のモチベーションも上がるし、自信にもなるんですよね。それがたぶん、CSの結果にも繋がっているのだと思います。

 

QSは次の年に向けて、CSに出る切符をつかむための試合ですから。本当に勝たなきゃいけないというか。やはり、CSには出たいし。このシーズンのQSは緊張はしたんですけど、自分のサーフィンができたというか。これまで経験を積んできたことで、自信が少しついたからの結果だと思います。

 

 

 

今でも試合ではプレッシャーからか、必ず緊張すると言う。その緊張を無くすために、自分に課したことがあると言う。

 

野中:波があって、試合前もどうしよう、どうしようって、ネガティブになってしまう時もあって。本当に昔から緊張して、足とか震えちゃったりするんです。いつも試合始まる前とか、自分のサーフィンをしたいって思っていても、できなかったりとか。でも、すごい自分に自信がある時は、イケるとか、できるときはできるんですけどね。

 

フィリピンのQSの試合はサーフィンも調子良くて。緊張よりも、自分のサーフィンを楽しく見せたいって気持ちでできたんですけど。試合にによって違うんです。その試合で、気持ちが違う原因が何なのか、自分でもわからないんです。

 

だから、まずは基本から。自分の身体を鍛えるために、トレーニングをめっちゃしています。東京に体幹を鍛えに行っていて。体幹だけじゃないですけど、バランスとか。サーフィンはバランス必要だから、足場が悪い上でのトレーニングもやっています。

自分の身体を鍛えるために、トレーニングをめっちゃしています。

 

 

あとはロス・バトソンさんのトレーニングにも行っていて。ここのトレーニングはサーキット系、体力使う系で、持久力をつけることが中心。これはヒートが続くことや、波がハードな時にすごく良いなって。それ以外でも、自主トレをいつもするようにしています。

 

もう一つは、練習でどんな波でも入るんですよ。風が強くても、波が本当に無くても、どんな時でも絶対入るようにしています。悪い波でも上手い人って、サーフィンが映えるじゃないですか。そこが大切だと自分は考えているので。

 

毎年いろんな国に行って、いろんなコンディション、すごく大きい時もあれば、ぐちゃぐちゃだったりとか、いろんな波を経験して。でも、そういう波でもCTのためのCSだから、どんな状況でも大きくても、流れがすごくても、やるんですよね。

 

今のジャッジはどんな波でも攻める演技が求めていますから。一発で、バーンってやって白波から出てきたら、けっこう点が出ます、一発でも。だから、そういう波でも練習しないとダメですから。

 

だから、トレーニングして基礎を作って、どんな日でも海に入ること。自分がこうしてきた積み重ねることで、自信に繋がると思うのでやっています。

 

 

何かヒントが見つかるかもしれないから負けた時こそ、その理由をノートに書く。

 

 

また、試合が終わった後は、結果に関係なく始めたことがあると言う。それは後悔を無くすために必ず行なっている。

 

自分が納得いかない試合とかは、本当に落ち込んちゃうんですけど。悔しいとかは最初は口にするけど、一日、その日だけで、止めるようにしています。結果は何も変わらないし。次の日から気持ち切り替えて、頑張ろうと。

 

それで何がいけなかったかを、ノートに書くようになりました。こういうことは、前はしてなかったですけど。すごい悔しいって思って、何がいけなかったかまでは考えるんけど、(記憶にとどめるほど)深くは考えていませんでした。

 

負けてから、ヒートを見返したくない時とかも、もちろんあるんですけど。いつも気にかけてくれている英義(田中)くんが、負けた時こそ、その理由を書いた方が良いって言われて。やはり、ノートに書くと残るじゃないですか。記憶より書いた方が次に活かせるなと思ったから、書くようにしました。

 

いろいろ考えて、少しでも改善できるように。だからその時の自分の状態も書くんです。身体の状態とか、その時の気持ちとか。「緊張して、足も震えちゃったけど、ここまでできた」とか、細かく書いています。

 

これを読み返して共通するものがあれば、何かヒントが見つかるかもしれないじゃないですか。今では、そのおかげかもしれませんけど、ある程度の作戦を立てれるようになりました。

 

 

ー現在、メインでCSを戦うということは、その先にあるのはCT(チャンピオンツアー)。また、オリンピックというステージもある。この先の目標は何なのかを、最後に聞いた。

 

もちろんCTが自分の最大、一番に目指してるところなんですけど。そこに行くために、クリアしないといけないものが、まだたくさんあって。それはやはりCSで勝つことだと思っています。

 

去年、初めてCSでマンオンマンに2回行ったので、次はクォーター目指して。またクォーターに行けたら、今度はセミファイナル、次はファイナル、そして、優勝と。今は一つ一つ、近い目標を立てて、それをクリアしていくことに集中しています。その先にCTとか、CTのチャンピオンがあると思いますから。

 

この前のCSでは、ノースナラビーンのぐちゃぐちゃで一発で点が出るような波では、しっかりそこで決めてこないと勝てないし。スナッパーみたいな良い波だからこそ、サーフィンのスキルがわかるというか、そういう部分でちゃんとした演技を見せないといけないし。

 

それとメンタルです。自分は自分にプレッシャーかけちゃうから。勝ちたいとか思い込み過ぎて、変に考えこんじゃうことが多いので。だから、どんな波でも対処できるようになれば、心の平静も保てると思うんです。

 

どんな波でも100%の自分のサーフィンができないと絶対にダメ。

 

野中美波 QS御前崎プロ

 

やはり、どんな波でも自分の100%というか、自分のサーフィンができないと絶対にダメだと思っています。だから、今は技術も上げて、ちゃんと実力をつけていくこと必要かなって。

 

自分のサーフィンに集中して、今までやってきた自分のサーフィンを見てもらいたいっていう気持ちでやれたら。めっちゃ、良い試合ができるって思うんですよね。だから、その為にも練習あるのみです。

 

 

今は目の前のWSLを頑張ることに集中しています。

 

オリンピックについては、出たいと思っています。ただ、自分はWSLのCSからCTに行くことが、オリンピックに繋がると考えています。だから、今は目の前のWSLを頑張ることに集中しています。

 

その先、将来は自分のプロとしての見切りも必要だなっとも思っています。あと6、7年とか、やり続けて。それでも勝てなかったりとか、良い結果が残せないことが続いたら、諦めも必要かなって。

 

プロサーファーという職業は自分にとって好きなことを仕事というか、仕事としてできているのは、すごく幸せなことだなって思うんです。今この環境があるのは、両親のおかげ。そして、それを支えてくれてるスポンサーや応援してくれる人たちには、感謝しかありません。

 

だから、今は集中して、やれるところまでやって、結果を出したいと思っています。頑張ります!

 

野中美波、21歳。
自分を負けず嫌いで、ネガティブと評する。

でも、ネガティブということをマイナスに取る必要はないと、自分は思う。
考え過ぎてしまうことや、緊張しいだって言っているのは、逆に自分をよく理解しているからであって、それが攻略への一歩につながることになるからだ。

日本から世界へ。
経験を積むために CSに出ながら、海外のQSもまわる。
個人的なマネージャーはいるものの、その渡航手配等は試合中でも、全て自ら行う。

試合と雑務を一人でこなすのは大変だし、ネガティブになってしまうことも当然ある。
試合に負ければ、なおさらだ。
でも、それは自分が選択して、自分が決めて行ったこと。
結局、自分で決めるということは、それは全ての責任を自分が負うということだ。

野中はその経験を蓄積していくこと、全ての結果を受け入れることが、自分の強さに繋がると考えている。
自分の中で一つ一つ考えて行なったからこそ、それが自分の自信になる。
これが、野中美波の今の強さだ。

イチローも言う。
「覚悟を決めること。
どんな困難な状況でも、立ち向かい続けることで、自信や誇りが生まれる。
だから、自信を獲得するには、難しい状況で向かっていくしかない。」

野中美波の戦いは、これからも続く。
Go!Minami! You can do it!

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野中美波(ノナカ ミナミ):NONAKA MINAMI
@minami_surf

●年齢:21歳
●出身地:埼玉県
●ホームポイント:千葉県 東浪見
●スタンス:レギュラー
●所属: プロ
●スポンサー:ROXY、ムラサキスポーツ、NEW ERA、Honda Cars 埼玉中、波伝説、FCS
●主な戦歴

2022年
WSL CS/ オーストラリアGC 49位、オーストラリア シドニー 25位、南アフリカ33位、アメリカ 9位、ポルトガル 33位、ブラジル 9位、ハワイ 17位:
→ 2022年 WSL CS ランキング 21位

2022-2023年
WSLQS/千葉 一宮 3位、インドネシア クルイ 3位、インドネシア 二アス 5位、
静岡 御前崎 3位、台湾 2位、フィリピン 3位、宮崎 日向 3位
→ 2022-2023年 WSL QS ASIA ランキング 2位

2023-年
WSL CS/ オーストラリアGC 33位、オーストラリア ナラビーン 33位

2023-2024年
WSL QS/ インドネシア クルイ 13位

2023年
JPSA/ 種子島 1位