CS開幕前に五十嵐カノアをはじめ有名選手がスーパーバンクスに集結。【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第34回となる今回は素晴らしい波が続いたゴールドコーストに五十嵐カノアをはじめCT選手が登場、CTオーストラリアレッグ、バーレーでボードライダーズ対抗イベント開催など。

取材、文、写真:菅野大典

 

 

4月のゴールドコースト。

気温が一気に下がり、朝晩は肌寒く感じる日も多く、空気も澄んで秋の雰囲気が感じられます。月の後半は天気が崩れる日もありましたが、4月を通しては晴天の日が多く気持ちの良い気候が続きました。

 

空気が澄んでサーファーズパラダイスのビル群がクッキリと。
太陽が出ている時間も短くなり、夕焼けも毎日きれいに見れました。

 

4月はイースターホリデーやアンザックデーといった祝日も多く、スクールホリデーと重なる月ですが、今回の休みの期間はゴールドコーストから外に出る人が多かったようで、夏の時期のビーチの忙しさとは違いゆっくりとした時間が流れているように感じました。

 

 

波の小さな日のビーチではキッズサーファーが友達同士でサーフィンをしている姿も。貸切の海でコーチングを受けていたのかな?

 

 

ゴールドコーストの波の状況は初旬はいい波が続き、ポイントからオープンビーチまで地形の良い場所も多く、どこもかしこもサーフィンの楽しめる状況にありました。

 

 

昨年まったく地形の良くなかったD-BAHも最近は良いコンディションに。うねりに反応しやすく質の高い波がブレイクしています。
スナッパーロックスにも砂がつき最高の地形に。
ニューキャッスルで行われたQS5000の後にゴールドコーストに滞在していた新井洋人。気持ちの良いロングウォールをクルージングしていました。
同じくQSの後からゴールドコーストに滞在しているオニー・アンワー。一時帰国はせずに5月に開催されるスナッパーロックスでのCSに向けて着々と準備を進めています。
何本もディープバレルを決めるジョッシュ・カー。このポイントでのローカルのうまさは本当にすごいです。

 

イースターホリデー(8日〜11日)に入る頃には、この時期には珍しくゴールドコーストに波の入らない状況になりましたが、少し南に移動すればうねりを拾う波の良い場所がたくさん。ゴールドコーストにいる日本人メンバーを連れてセッションしてきました。

 

現在ワーキングホリデーでゴールドコーストに滞在中の西修司。今年は試合には参加せずオーストラリアでみっちりと自分磨きを行っているそうです。

西修司

 

一昨年にはアジアランキング6位という成績を収めCSに出場した実力の修司。形の良いサイズのある波で素晴らしいライディングを何本も繰り返していました。

 

オーストラリアで毎年恒例のCTイベントが2戦開催された

 

イースターホリデーといえば、毎年この時期にビクトリア州のベルズビーチで行われているWSL CTイベントのリップカールプロ。

 

 

今年で第60回を迎えるこのイベントは、オーストラリアのプロサーフィン大会の中でも最も長い歴史を持つイベントで、今大会では長きにわたってツアー選手として活躍したオーウェン・ライトが引退試合としてワイルドカードとして出場したり、そのオーウェン・ライトを下したイーサン・ユーイングが自身2度目のCT優勝、女子ではオーウェンの妹であるタイラー・ライトが優勝するなど、たくさんのドラマがありました。(https://surfmedia.jp/2023/04/11/rip-curl-pro-bells-beach-2023-7/

 

優勝したタイラー・ライトとイーサン・ユーイング。1983年にイーサンの亡き母であるヘレン・ランバートがこのイベントで優勝してから40周年の記念日に優勝というドラマもあった。PHOTO:WSL / RYDER

 

なかなかスウェルが入らずに良いコンディションで大会を進行できることができなかったが、男子はファイナル2人、女子はセミファイナルからの4人がオージーサーファーという、イベントを通してオーストラリア勢の活躍が目立つ大会となりました。

 

世界タイトルはもちろんですがオージーサーファーなら誰もがこのベルを鳴らしたい。今回のファイナリストの4名は皆オージーサーファーとなった。PHOTO:WSL / RYDER

 

リップカールプロファイナルデイと同じ日のオーストラリア東海岸のシドニー付近ではこんな波が炸裂。

PHOTO:gd_photo

 

同じ国内でも必ずどこかしらで波がブレイクしている国土のとても広いオーストラリア。特に4月から6月にかけてはどの地域にもコンスタントに波があり、水温も暖かく国内をトリップするにはおすすめの時期。ファンサイズからチャレンジコンディションまで豊富な種類の波がブレイクしています。

 

 

ベルズビーチでのリップカールプロの次は、ウエスタンオーストラリア州マーガレットリバーに舞台が移り、ミッドシーズンカット前の最終戦という事もありとても白熱した試合となりました。

 

イベント期間スタートするなり素晴らしいコンディションで4日間コンテストが行われたマーガレットリバープロ。PHOTO:WSL /MIERS

 

五十嵐カノア、和井田リオが敗者復活ラウンドにまわり、日本のサーフィンファンにとってはハラハラする大会となりましたが、2人共MADE THE CUTをし無事後半戦の出場権を獲得。

 

 

コンディション不良となった4日間のブレイク後にイベントを再開し、ファイナルデイはソリッドなコンディションとなったメインブレイクでガブリエル・メディーナとカリッサ・ムーアが見事優勝に輝いた。(https://surfmedia.jp/2023/04/28/gabriel-medina-and-carissa-moore-win-western-australia-margaret-river-pro/

 

ガブリエル・メディーナ© WSL / Hughes

 

2021年以来の優勝を獲得したメディーナ。どのコンディションでも強いが、やはりタフなコンディションになるとなおさら強い。ランキングも一気に7位まで繰り上げ得意なイベントが続く後半戦に向けて弾みをつける1勝となった。

 

 

最高の地形を保っていたスナッパーロックスが極上のコンディションに

 

4月後半は毎日この光景が続く贅沢な月となりました。

 

中旬を過ぎる頃にはまたしても大きなスウェルが東海岸に到達。

 

最高の地形を保っていたスナッパーロックスは極上のコンディションに。何度も何度も大きなスピッツを噴き出していました。
ピークの一番奥から何度もディープバレルをメイクしていたローカルサーファーのニック・バスチェック。
特大セットも軽々メイクしていたマイキー・ライト。
ローカルサーファーのクイン・ブルース。チューブからマニューバーまで、際どいセクションにも躊躇する事なくライディングしていました。
大きなスウェルイベントは見ていても楽しい。岩の上にはたくさんのギャラリーが詰めかけていました。
笑顔のマイキー・ライト。良い波に乗れて満足げな様子。
暗くなるまでスウェルを楽しんでいたパーコとオッキーも笑顔でビーチを歩いて帰ってきていました。

 

今回のうねりの予報を聞きつけケリー・スレーターは、マーガレットリバープロ開催の前日にも関わらずオーストラリアの反対側に位置するウエスタンオーストラリアからゴールドコーストに飛んできたほど。極上の地形が整っていたスナッパーロックスに最高の波をもたらしました。

 

そして、そのうねりは1つだけでは終わらず次から次へと続き、約2週間にわたって頭オーバーサイズのうねりがヒットし続けました。

 

サイクロンスウェルほどではないがキラでも素晴らしい高速バレルが出現。スナッパーロックスやレインボーベイよりも混雑なくファンサーフが楽しめました。

 

ボードライダーズ対抗イベントがバーレーヘッズで開催

 

巨大な波が押し寄せる会場となったバーレーヘッズ。ノーライドの選手も続出する中、高得点をメイクする選手もたくさん。

 

4月の最終日にはバーレーヘッズでステートオブオリジンというクイーンズランド州とニューサウスウェールズ州のボードライダーズ対抗イベントもバーレーヘッズで開催。

 

オセアナ・ロジャーズ

 

8.83ptをメイクしたオセアナ・ロジャーズ。女子でも当たり前のようにビッグコンディションにチャージしチューブをメイク。オージーサーファーはタフなコンディションに本当に強い。

 

 

スーパーバンクスに五十嵐カノア、サクラ、リオなどCT選手も続々登場。

 

 

下旬からスナッパーロックスの地形がワイドに崩れ始め、レインボーベイからグリーンマウントがメイン舞台に。マーガレットリバーでのCTを終えた選手からCSに出場する選手もラインナップに現れ始め、うまいローカルサーファーに加えて、毎日とてつもないセッションが繰り広げられていました。

 

 

レインボーベイのビーチにはカメラの撮影舞台がずらりと並ぶ。
シエラ・カーとサクラ・ジョンソンとお母さんの姿もありました。
遠くからでも鋭いリップアクションがわかるサクラ。CTレベルのサーファーは遠くでも目立ちます。
昨年のこの場所のCSで見た時よりも断然に実力がついたように感じる和井田リオ。1年間CTやCSといったレベルの高い場所で揉まれたおかげか、映像や画像ではわからなかったですが生で見てそう感じました。
形の綺麗な特大スプレーを上げるナット・ヤング。この実力でもCTに残れないのかと思うと改めてCTという場所は特別な人しか、たどり着けない場所だと実感しました。
グリーンマウントの丘には観客がたくさん。
カメラマンとコーチと共にいる五十嵐カノアの姿も毎日見かけました。

 

マーガレットリバーでの試合を終えた次の日から、ゴールドコーストに飛んできたカノア。MADE THE CUTをした事でスナッパーロックスでのCSには参加しないようですが、サーフボードの調達や波のコンディションの良い場所でトレーニングをしにきた様子。

 

スナッパーロックスからグリーンマウントの間で何度も何度もライディングを繰り返し波に乗るカノア。
ライディングを終えて走って戻るカノア

 

ライディングを終えコーチの元まで毎回走って戻っていく姿が印象的でした。『疲れた〜』と言いながらも繰り返し何度も海に向かい、その間でも写真やサインを求められれば笑顔で答えたりと、スーパースターでありながら惜しみない努力をしている姿がまじまじと伝わってきました。

 

間近で全てを見ていたわけではありませんが、とにかく練習量が多く海にいる時間が長い。その中でも時間を少しも無駄にしていなく、長年この場所でカメラを出して、たくさんのサーファーを見ていますが、離れていても分かるほどカノアは、他のサーファーとは違う本気度と妥協しない姿勢が伝わってきました。

 

 

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ライディングを終えてはコーチの元で話し合うカノア。何度も納得するまで言葉のやりとりをして海に向かっていく感じの様子が伺えました。

 

CTで戦いを続けながら自分が進化するためにやれる事、時間を1ミリも無駄にしている様子はなく、質の高い環境作りをしながらその環境下で血の滲む努力をしている。本気で世界王者を目指すサーファーにとってはこれが当たり前なのか、逆に言えばこれをしなければ今のCTという舞台で戦い残ることができないという事なのか。

 

波の宝庫であるオーストラリアのトップ選手でも、少しでも地元に波がない時期にはインドネシアや他の場所に波を求めに行ったり、常にサーフィンの環境の良い場所に身を置いている気がします。

 

波がなくてもできることはあると思うが、波のある場所、質の高い環境下に身を置く方が絶対に良い。本物の1流のアスリートのトレーニング風景を見て感じさせられました。

 

4月のオーストラリアはCTイベントも行われ、東海岸には大きなうねりが長い期間にわたりヒットし、とてもサーフシーンが盛り上がる月となりました。ゴールドコーストにはCS選手も集り出し、5月のビッグイベントであるチャレンジャーシリーズ第1戦 ”BOOST MOBILE GOLD COAST PRO” への準備が着々と進んでいます。

 

 

2023年5月6日~13日
CSイベント第1戦

ブースト・モバイル・ゴールド・コースト・プロ
Presented By GWM

 

来月もまた目が離せないサーフシーンが続く熱い月となりそうです。

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。