
現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第48回となる今回は、Billabong Occy’s Grom Comp、Seas The Day women’s surf festivalなどのリポート。女性や子供たちがサーフィンを楽しむ姿にオーストラリアの歴史を感じます。
取材、文、写真:菅野大典
6月のゴールドコースト。
先月とは打って変わり晴天が続いています。
気温も下がり日照時間も短く、静かな日々が続いています。
海にはこんな至近距離に鯨の姿が。波待ちをしていたら目の前に現れたので思わず陸に上がり追いかけて撮影してしまいました。
冬になり街中も静かな様子。
ここ数年でどんどん開発が進んでいますが、基本的には時間の流れがゆっくりなゴールトコーストでは、せかせかとした様子はなくのんびりとした時間を楽しんでいる人が多く見られます。
冬になって波も小さくなったせいか夕方のスケートパークにはたくさんのキッズが集まっていました。ゴールドコースト周辺にはこのようなスケートパークがたくさんあり、人気の場所の一つとなっています。
現在オリンピック予選シリーズを2連勝で注目を浴びている日本人とオーストラリア人のハーフであるアリサ・テルーなど、ゴールドコーストをホームとするサーフスケーターも多く、日本と同様にスケートも人気があります。
ゴールドコーストの波の状況は、うねりがあまり入らずに基本的にサイズの小さな日々が続いていました。
小波のスナッパーロックス。
オープンビーチの地形の良い場所にはたくさんの人が。いかにサーフィン人口が増えているのか実感します。
今月は久しぶりにのんびりとサーフトリップキャンプに行きました。普段は波を求めてうねりの入りやすい南方面へ行くのですが、今回は暖かさを求めてゴールドコーストから北へ約600kmの場所にあるアグネスウォーターという場所に行きました。
このアグネスウォーターという場所はクイーンズランド州で最も北側にあるサーフポイントとして知られております。北東の沖合にはグレートバリアリーフ、南東にはフレーザー島があるため、なかなかうねりが入らない場所ですが、毎年コンテストが行われていたり、サーフレッスンで人気の場所。
サイズが上がれば素晴らしい波がブレイクしそうな地形をしておりましたが、今回は波が無く小さなコンディションでロングボードを楽しんできました。
小さな街ですがサーフショップもあり、自然の綺麗な場所がたくさんある街でとてもいい時間を過ごすことができました。
中旬には冬型の気圧配置になり、巨大なスウェルがオーストラリアの南東部に届きNSW州全体に素晴らしいうねりを運んでくれました。
巨大なバレルをメイクするキャラム・ロブソン。最近はジェットスキーを使いパドルでは難しいコンディションや、エアーのトレーニングなどしている姿をよく目にします。PHOTO:@jeremyperezphotography
小さな湾になっているゴールドコーストは南うねりがはいりづらく小さな日々でファンなコンディション。少しサイズが上がっても、うねりが長続きせずといった感じで、またすぐに小さなコンディションに戻ってしまいました。
唯一サイズを拾うD-BAHは大人数。月の後半はクイーンズランド州がスクールホリデーと重なるため、朝からずっとキッズサーファーで賑わっていました。
キッズがたくさん集まっているので見てみたら、ディーン・モリソンが中心になってトレーニングを開催していました。
地形の良いウォール沿いは大人も子供も混じり合って大混雑。
イライラしている人もいればピースフルな人も。ゴールドコーストを象徴するような雰囲気が広がっています。
ミック・ファニングやジョエル・パーキンソンらと並びローカルレジェンドとして知られるディーン・モリソン。CTでも優勝経験を持っているだけあって流石のライディングを何本もしていました。
グロムコンテストが毎日のように開催。
オーストラリア全土で行われるステートタイトルの試合。クイーンズランド州では、第1戦、2戦とも6月に行われグロムサーファーは大忙しの月となりました。
Seas The Day ウイメンズ・サーフフェスティバル
キングスクリフでは”Seas The Day women’s surf festival”が21、22日に開催。昨年から開催されたこのイベントは、世界最大級の女性サーファーイベントで、NSW州政府がスポンサーとなりサーフィンオーストラリアによって開催されました。
個人戦の真剣勝負ではなくリラックスしたサーフィンのタッグ戦が開催。
現在パームビーチカランビンステート(PBC)に留学中の高橋花音も、同じカランビンアリーボードライダーズ所属の双子の姉、花梨とギジェット・コワルスキと共に参戦。
極小のコンディションながら板を振り上げリップアクションする花音。
ライディングを終えチームメイトとハグする花梨。仲間と楽しく戦えるのがチーム戦の良いところ。
オープンディビジョンで優勝、アンダー18ディビジョンで準優勝という素晴らしい結果の花梨と花音のチームALLEY CATS。会場はファンイベントのようなとてもいい雰囲気になっていました。PHOTO : ANDY/SURFING AUSTRALIA
Billabong Occy’s Grom Comp
今月一番のグロムイベントとなる”Billabong Occy’s Grom Comp”が、6月28日から7月2日にスナッパーロックスで開催。
すでに世界的に有名なグロメッツイベントとして知られているオッキーズグロムコンプ。
19回目となる今年は、新たにアンダー18ディビジョンも追加され、サーフィンオーストラリア・ジュニア・ランキングシステムに反映されるハイグレードイベントとして、オーストラリアのジュニアサーファーにとって最重要のイベントの一つ。
誰もが憧れるスナッパーロックスでの貸切サーフィン。サイズは小さいもののセットは十分なパーフェクトなライトハンドがブレイク。
岸にはコーチと綿密に波を見る選手の姿が。グロムイベントながらもハイグレードともあって重要な1戦となっている。
アンダー16(女子)最後の年となる高橋花梨。ラウンド1では2本の6点台を揃えラウンドアップも、オンショアのチョッピーコンディションとなったラウンド2では良い波を見つけ出せずに敗退。
2年前に同大会に出場しアンダー14(女子)ディビジョンで優勝した経歴を持つ高橋花音。花梨と同様にラウンド1を通過するも、ラウンド2ではわずかにニードスコアが出せずに敗退となった。
アンダー18(女子)のオーストラリア代表チームに選出されISAワールドジュニアで4位という成績を収めているミラ・ブラウン。ラウンド1では9ptライドを出すなど素晴らしい演技を披露。
昨年のアンダー14(女子)優勝のエライザ・リチャードソン。今年からアンダー16(女子)のディビジョンになってもその強さは健在していました。
メキメキと実力をつけているアンダー16(女子)のメイカ・ロック。アグレッシブな攻めるサーフィンはジャッジの評価も良く、グッドスコアを何本も出していました。
イベント4日目からは天候が崩れて雨。それでも子供たちはビーチで元気いっぱい。
アンダー18(男子)のオーストラリア代表チームに選出されISAワールドジュニアでシルバーメダリストのフレッチャー・ケレハー。パワーのない波でもアクションを入れながら途切れないサーフィンを披露。
昨年ベルズビーチで行われたWLTの試合にワイルドカードで出場したロングボードとショートボードの二刀流サーファーのランデン・スメルス。2年前にはアンダー16(男子)で優勝する実力を持っており、今回も優勝候補の1人となっていました。
最終日にはうねりも入りサイズアップ。オッキー&フレンズのエキシビジョンも開催され、ファンセッションが繰り広げられていました。
オッキー、ジョエル・パーキンソン、ディーン・モリソン、ジェイ・フィリップスといったレジェンドに加え、カイアス・キングや息子のジェイ・オクールポも参加。いかにこの場所からプロサーファーが排出されているのかが分かります。
アンダー12(男子)で優勝したバリ在住のイタリアンサーファーロッコ・リギアコ。ライディングの技術のみならず、スコアの伸びなそうな波は早めにプルアウトするなど、しっかりとした試合運びを披露。終了間際に8.33ポイントをスコアし見事逆転勝利。
若干10歳ながら数々のショットを残しており、すでに世界中から注目を浴びているロッコ。今後も目を離せないグロメッツの1人です。
昨年アンダー12(女子)で圧倒的なサーフィンを見せ優勝したレイハニ・ゾイック。アンダー14(女子)になってもそのサーフィンは健在でファイナルでは9.10と8.5のトータル17.60ポイントを叩き出し見事2連覇を達成。
スタブハイにも招待される実力の持ち主である11歳のレイハニ。身体もサーフィンもどんどん大きくなってきており、どこまで成長していくのか非常に楽しみなサーファーです。
ファイナルでは波の選択ミスやライディングのミスが目立ってしまったロカナ・カレン。3連覇がかかっていましたが、残念ながら最後のアンダー14(男子)を優勝で締めくくることはできませんでした。それでも、ファイナル進出するまではエクセレントスコアを何本も出すなど圧倒的な強さを見せ、同世代の中では実力は1つ抜けた存在。
ヒート序盤からエクセレントライドをスコアし、完璧な試合運びをしたルカ・マーティン。同世代のスーパースターのロカナ・カレンを倒し嬉しいアンダー14(男子)オッキーグロムの王者となった。
アンダー16(男子)ファイナルで、9.80ポイントのシングルハイエストスコアを叩き出したベン・クリー。
タレントが豊富なオーストラリアのグロム世代だが、特にたくさんのタレントが揃っている今のアンダー16(男子)での優勝は格別。
今年から組み込まれたアンダー18(女子)では、潮が満ちてきてスローな展開になりながらもじっくりとセットを待ち、8.5ポイントをスコアしたルビー・ベリーが見事優勝。ファイナルでの対戦相手ミラ・ブラウンと試合後に健闘を讃えあっていました。
アンダー18(男子)ではザヤ・ヘッションが見事優勝。ターンをした後の動作が素早くレールの切り返しがとてもスムーズ。この年代になると微妙な差ながら細かい技術の違いでライディングの質が変わってくる。わずか2本のみのライディングだが8.50と7.67ポイントをスコアし勝利した。
とても貴重なハイグレードでの優勝でランキングも一気にジャンプアップ。ナショナルチーム選出に一歩近づいた。
過去に日本人でも都筑有夢路や伊東李安琉といった選手が入賞するなど、以前は国外のサーファーも多く受け入れ、若手の登竜門的なイベントとして開催されていたオッキーズグロムコンプ。
今年からはオーストラリアのジュニアランキングシステムが整備され、出場できる選手は国内のサーファーが中心となってしまい、選手層の厚いディビジョンには国外の選手のみならずポイントの少ない選手すらも出場できなくなってしまうという、格式高いイベントとなってしまいました。
しかし、今のオーストラリア国内のグロメッツサーファーのレベルは非常に高く、とても見応えのあるイベントで、改めてオーストラリアの若手の層の厚さを実感しました。
毎年驚かされる事ですが、この年代の成長の速さは凄まじい。
昨年まではまだ子供のようなサーフィンをしていた選手が、いきなりレールをフルに使ったターンをしてたり、エアをバンバンバンメイクするようになっている選手がたくさんいて、身体が見違えるように大きくなっていたり、技術が格段に上がっていたりと、毎年欠かさずに現場で見ているイベントなので、トップグロムの成長を本当に面白く感じます。
今年も波が小さいながらもとても見応えのある大会となりました。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
INSTAGRAM :https://www.instagram.com/nojiland/