大盛り上がりで幕を閉じた「2024 Hyundai Australian Boardriders Battle」 新たな歴史に残るイベントをリポート。

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第45回となる今回は、QS絡みで渡濠した日本人サーファーたちの様子や、大盛り上がりで幕を閉じた”2024 Hyundai Australian Boardriders Battle” 新たな歴史に残るイベントをリポート。

取材、文、写真:菅野大典

 

3月のゴールドコースト。

相変わらずはっきりとしない天気が続いていますが、晴れた日でも涼しくなってきて過ごしやすい日々が続いています。

 

日中の気温は20度〜25度といったところ。日も短くなり秋のような雰囲気が広がっています。

 

3月初めの週はアベレージなサイズの波がブレイク。3週間ほど続いたグッドコンディションからゆっくりな状況が数日続きました。

 

ゴールドコーストの波の状況は先月から続いていた波がひと休み。と、思っていたのも束の間、2週目からは再び大きなうねりが入りだし、またしてもサイズのあるコンディションに。

 

東の沖合から大きなうねりが届き、クイーンズランド州南部からニューサウスウェールズ州北部のポイントはエクセレントコンディションに。日を追うごとにサイズもみるみるうちに上がりだし、キラやカランビンのポイントにはジェットスキーが何台も現れました。うねりが少しばらつき、完璧なキラのコンディションではないにしろ、クリーンな形の良い波に乗れればまんまるのチューブに。ジェットスキーで何度も沖に繰り返し向かうマイキー・ライト。インサイドからパドルで戻るのはほぼ不可能なコンディションですが、オージーのプロサーファー達はこのコンディションでは当たり前のようにジェットスキーを使っています。先が閉じてそうな難しい波でもガンガン突っ込むマイキー。潰されてもジェットスキーが拾ってくれるので躊躇せずにチャージ。初旬にクラウドブレイクで人生で一番とも言える波をメイクしたソリー・ベイリー。オーストラリアに戻って来てすぐにこのスウェル。オージーサーファーはスウェルがある所にフットワーク軽く現れます。特大のスピッツアウトを決めるローカルサーファーのジョッシュ・グレノン。何本も極上の波をメイクしていたローカルサーファーのライアン・グレイ。本当にここのローカルサーファーはみんなチューブがうまい。

 

昨年から夏の時期はいい波になるものの、そこまでサイズのあるチューブコンディションになることはなかったのですが、今回は久しぶりに大きなスウェルが到来。

ケリー・スレーターもポルトガルでのCTの試合を欠場しながらも、ゴールドコーストに突如現れたり、ローカル・サーファーであるシェルドン・シムカスは同時期にニューキャッスルで行われているQS5000の試合があるにもかかわらず、ギリギリまで滞在し、このスウェルを堪能したりと、いかにこのキラの波が価値のあるものかが分かります。

映像ではよく目にする波ですが、実際には1年に1回あるかないかの波。今回はパーフェクトな長い波のキラとは言えませんが、ローカルサーファーを中心に待望のセッションが送られていました。

 

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3月のオーストラリアはイベントもハイシーズン。

 

バイロンベイでは2024年の”Adaptive Surfing Professionals World Championship tour”の1戦目となる”Blackmores Australian Pro Adaptive Surfing Championships”が開催。

 

 

 

この大会はアダプティブサーファーによる国際大会で、2022年世界戦ツアーとして行われており、オーストラリアでは初となる開催。日本人選手を含め、世界中から多くの選手がバイロンベイに集まっていました。

 

サンシャインコーストのヌーサでは毎年恒例となるNOOSA FESTIVAL OF SURFINGが10日間にわたって開催。日本の吉川広夏が、昨年に続きロガーウィメンズのクラスで優勝し、見事2連覇を達成。

 

優勝した吉川広夏。https://www.instagram.com/hirokayoshikawa88/

 

D-BAHでも毎年恒例となっているボードライダーズのチームイベント”キラチームチャレンジ”が開催。

 

今年で40回目となるキラチームチャレンジ。会場となったD-BAHには多くのチームのテントが立てられ、雨が降る中でも賑わっていました。

 

そして何と言ってもみんなが注目していたイベントといえばWSL QSオーストラリアレッグ。

 

連日サーフメディアの記事(https://surfmedia.jp/2024/03/16/burton-automotive-pro-newcastle-racecourse-womens-pro-5/)でもお伝えした通り、チャレンジャーシリーズの出場権をかけて、アボカビーチでQS3000、ニューキャッスルでQS5000の試合が、アジアリージョンとオーストラリア/オセアニアリージョンの共同開催によって行われました。
 

 

アボカビーチで行われたQS3000の優勝のジャービス・アール PHOTO:WSL / Bella Murphy革新的な演技が目立ったデーン・ヘンリー PHOTO : WSL / DARREN ANDERSON圧倒的なサーフィンを披露したジョエル・ヴォーンが昨年に引き続きニューキャッスルのQS5000で優勝。38年の歴史を持つSURFESTのイベントで初の2連覇を達成した。最後の最後にCS出場権をメイクした伊東李安琉。5戦の結果で見事ランキング3位まで浮上しCS出場権を獲得した都筑有夢路。

 

このイベントの結果によりCS出場者が確定。

オーストラリア/オセアニアCS出場者。

 

アジアCS出場者
男子はランキング上位5名に加えてケトゥ・アグス、女子はランキング上位3名に加えて都築虹帆がワイルドカードを獲得しました。

 

 

最終戦がQS5000というハイグレードなため、最後まで誰がランキング上位に食い込むかわからない状況になり、とても白熱した試合が繰り広げられていました。

ニューキャッスルで行われていたQS後には、ゴールドコーストを訪れる選手も多く、先月と同様にたくさんの日本人サーファーを海で見かけました。

 

今年初めてQSにフル参戦した中塩佳那。2つのQS3000のイベントで優勝したものの、グレードの高いQS5000で結果が残せずにCS出場権を獲得できず。何度も優勝しているイメージがありますが、QSでの優勝は今年が初めて。ゴールドコーストにはほんの数日しかいなかったが、現地で板をピックアップしシェイパーと共に海に入ったりと来シーズンに向けて準備をしていました。混雑している中でも何本もいい波を取り、バックサイドで波を切り刻んでいた須田喬士郎。先日のビッグスウェルでスナッパーロックスの地形は変わったものの、まだまだクオリティの高い波がブレイクしています。会うたびにどんどん上手くなっている小濃来波。今年は台湾やインドで行われたハイグレードのQSで3位入賞するなど結果もついてきていて、ますます今後が楽しみな選手の1人です。QSには参加せず、帰りのチケットを持たずに3月中ゴールドコーストにステイしていた平原颯馬。大きな身体全体を使ったバックサイドの演技は、スナッパーロックスの波にフィットしていて、個人的にCSの試合で見てみたい選手の1人です。アジアリージョン3位という結果を残しCS出場権を獲得した大音凛太も数日間のステイ。来月のCSに向けて波を確かめるようにリラックスしながらサーフィンしている印象でした。QSニューキャッスルで最後の最後にCS出場権をメイクした伊東李安流とクイックシルバーオーストラリアのチームマネージャーのステイス・ガルブレイス。日本には帰らずそのままゴールドコーストにステイしてCSに出場する李安流。スタイルのあるサーフィンへの評価はとても高く、オージーからも注目を浴びています。ステイスに招待され、来波、颯馬と共にクイックシルバーのオフィス見学。メーカーを通じて現地で情報を得たりサポートしてもらう事は嬉しい事。ただ波が良いだけでなく、業界自体も大きな規模を持つゴールドコーストは、選手にとても刺激の高い場所と感じます。

 

出場権を獲得した選手達は約1ヶ月後の4月27日からスナッパーロックスで開催される”BONSOY GOLD COAST PRO”に挑みます。今年の日本人選手がどこまで活躍できるか楽しみです。

 

オーストラリア最大のサーフィン・フェスティバル「2024 Hyundai Australian Boardriders Battle」がバーレーで開催。

”2024 Hyundai Australian Boardriders Battle”(ABB)が、3月9、10日にバーレーヘッズで開催。昨年までニューキャッスルで行われていたABBが、今年はゴールドコーストに舞台を移し開催されました。

 

 

 

今年で第11回目を迎えるこの大会は、オーストラリア中にある各州の予選を勝ち抜いたボードライダーズとワイルドカードチームを含む42チームで行われる、オーストラリア最大のサーフィン・フェスティバルとも言えるイベント。

各チーム5人(オープン2人、18歳以下1人、女子1人、35歳以上1人)のメンバーによるリレー方式の70分ヒートで行われました。

 

 

バーレーヘッズの丘全体を使ってのこのイベントはとにかく規模が大きい。

出店やバーが海の目の前に並び巨大スクリーンが3台も設置され、選手の準備スペース等を含むと、CTイベントの規模を遥かに超える壮大なスケールのものに。

 

 

リレー方式なので演技した後は全力で500mのランニングトラックを走り、丘の頂上で次の選手とタッチして交代。

 

ヤリンガップボードライダーズクラブの代表として出場していたレジェンドサファーのタジ・バローもこの真剣な表情。

波は6ftの強烈なカレントを伴うジャンクコンディション。ゲッティングアウトする場所も岩からなので一苦労。時間制限があるので選手たちも失敗は許されない。パワーサーファーとしてLE-BAボードライダーズを牽引するマイキー・マクドナー。

イベントとしバーレーヘッズの広い丘全体を使っているので、いい意味で一般人も巻き込みながら、過去に類をみないほどのたくさんの人が集まっていました。全力で演技し走り戻ってくる選手とコメンテイター。観客も選手が身近で走っているので応援できる。生で現場にいると、バーレーヘッズの丘全域で選手から一般の人までが一体となっているように感じました。

 

 

当初はどのように行うのか?イベントとして成立するのか?などと、初めて行われるフォーマットに対してたくさんの人が疑問と不安を持っていましたが、いざ始まってみれば大盛り上がりのイベントに。

 

壮大な会場設備と荒れ狂う波に立ち向かう選手達、そしてそれらを映し出す数え切れないほどのカメラ中継と、常に飽きさせない演出。

 

サーフィンの試合というものを覆す、今までにない見ている人を退屈させないイベントとなりました。

 

 

ファイナルが行われている時は波のサイズも盛り上がりもピークに。選手だけでなくチームメイトや一般人もランニングトラックのゴールラインに入り乱れていました。

 

メイシー・キャラハン

 

女子には厳しいコンディションとなりゲットをできない選手もいる中、トップランナーとして7ptをメイクしたノースシェリーボードライダーズのメイシー・キャラハン。

 

タリー・ワイリー

イベントを通して大活躍のトーキーボードライダーズのタリー・ワイリー。

 

ヒューイとジョエル

ファイナルの舞台で8.9ptを出したヒューイ・ヴォーンと弟の活躍を讃える兄ジョエル・ヴォーン。

 

 

アイラ・ハパッツ

 

若干16歳の女子ながらファイナルでこの日のハイエストスコアである9.27ptを叩き出したバーレーヘッズボードライダーズのアイラ・ハパッツ。

 

 

ライディング後も全力疾走でゴールラインへ戻るアイラ。会場中から大歓声が湧き上がり、地元のシンデレラガールを祝福していました。

 

自分でも信じられないというような喜びの表情をしていたアイラ。間違いなくこの日の主役となっていました。

 

試合はそのアイラの活躍と共にチームメンバーみんながきっちりと仕事をしたバーレーヘッズボードライダーズが見事に優勝。2位以下全チームのニードスコアをコンビネーションに突き放しての大勝利となりました。

 

 

オーストラリアナショナルチームのヘッドコーチのジェイ・トンプソンとクラブのヘッドコーチである相澤日向が中心となりクラブが一体となっていたバーレーヘッズボードライダーズ。昨年からWSLの試合は出なくなったが、コーチとして活動している日向。クラブからも絶大な信頼を得ており、常に携帯で電話をしながら状況を伝えたり、パネルを使って指示を出していました。最後の選手が海に向かう時には選手達の元に来て状況を見守る日向。優勝が確定する最後の最後まで真剣な表情でモニターのスコアを見つめているのが印象的でした。優勝が決まった時には代表選手5人と共に担がれ優勝を祝福。地元で嬉しいオーストラリアチャンピオンに輝きました。

 

ライディングを重視する従来のサーフィンのイベントとは違うが、会場の設備や演出も含めて新しいレベルのイベントを披露したサーフィンオーストラリア。

賞金も総額100,000ドルを超える大きさであり、何よりもそれぞれのクラブはチームのプライドを賭けて全力で挑んでいるのが感じ取れました。

QS選手にとって重要な試合のアボカビーチとニューキャッスルでのQSの間の期間ながら、飛行機でこの2日間のために移動してきた選手達も多く、どのチームもチームをサポートするメンバーが本当にたくさんいました。

 

 

代表ではなくてもチームメンバーが選手と共に走ったりと、個人種目としてのサーフィンではなく、チーム種目としてのサーフィンが根付いているオーストラリア。チームに所属しているキッズ達は代表になれるように頑張るし、予選を勝ち上がれないチームは選手の育成を頑張る。

 

今大会は一般人をいい意味で巻き込みながら、サーフィンを通じて大きなイベントを街全体で行うというのがすごい発想で、見ている人は、波に乗って細かい技術でどうこうというよりも、荒れ狂う自然に飛び込み、大きな波に乗り、走って帰ってくる姿を見て、『サーファーってすごい、かっこいい』と思える場面が何度もあったと思えるし、子供達も憧れを持つと思いました。

 

もちろん岩からのゲットのリスクや一般人が通っている散歩道を走ったりすることは、一つ間違えたら事故につながる大問題になりそうな感じですが、新しい試みをして、このような場を提供した組織と、それに応える選手も本当にすごいなと思いました。

 

 

自分たちのチームだけでなく他の選手が素晴らしい演技をしたら、みんなが拍手を送っている姿が印象的。

 

オーストラリアのサーフィンは国、組織、選手、そしてサーフィンをしない一般人のサーフィンに対する理解も含めて一体感があるように感じます。それは紛れもなくこのボードライダーズというものが地域に根付いているからなのかなと思いました。

 

大盛り上がりで幕を閉じた”2024 Hyundai Australian Boardriders Battle” 新たな歴史に残るイベントの様に感じました。

 

最後に私事ですが、現在インドネシアのボートトリップにきています。

電波が安定しない場所に滞在するので、今月はオーストラリアニュースを早めに切り上げさせていただき、来月の記事で現在オーストラリアで行われるベルズビーチやマーガレットリバーでのCTイベントと共にボートトリップについても触れさせていただけたらと思います。

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。