夏のゴールドコーストのサイクロンスウェル、日本から来豪するサーファーたち。オーストラリアSURFNEWS

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第32回となる今回は、夏のゴールドコーストのサイクロンスウェル、日本から来豪するサーファーたち、ボードライダーズ・バトル、そしてWSLオーストラリアQSレッグなど。

取材、文、写真:菅野大典

 

海水温は26℃〜27℃といったところで、海水浴が本当に気持ちいいです

 

2月のゴールドコースト。

 

 とにかく暑い日が連日続いています。スクールホリデーも終わり先月から比べるとビーチにいる人は減りましたが、それでも週末になれば多くの人が海遊びを楽しんでいます。

 

 西オーストラリアでは先月から熱波に見舞われ、40℃を越す日が何日か連続で続いたりしており、森林火災の被害も多発しています。3年前に起こった大規模な森林火災では約97,000平方キロメートル(ポルトガルの国土より広い面積)といった土地が被害を受けただけに、森林火災には懸念が広がっています。

 

 ゴールドコーストの波の状況は、コンスタントに波があり楽しめるコンディションが続いています。いつも放課後になるとスナッパーロックスには日本人留学生の姿が見られます。

 

 

身体もラインどりも大きくなってきた丸山晴凪。
高橋花音

 

あいかわらず綺麗なスタイルのサーフィンをする高橋花音。日に日に成長しどんどん上手くなっています。

 

高橋姉妹

 

 いつも2人で学校終わりに夕方暗くなるまで練習に励んでいる高橋姉妹。移住してから初となるゴールドコーストの夏を存分に味わっています。

 

 8日にはオーストラリアの北東の海上でトロピカル・サイクロン「ガブリエル」が発生。

 

 進路的に最高なコンディションを届けてくれると思いましたが、期待していた週末となる10、11日はそこまでサイズが上がらず。それでも質の高いうねりが入ってきました。

 

 

 

地形の整っているグリーンマウントにはサーファーが集中。
一本でも波をとれれば最高の波。ただしここで波をとるのは難しい。
形の良いまん丸のバレルがいくつも出現していました。

 キラの丘にはブレント・ドリントンとシェイパーのハモの姿が。ゴールドコーストのサーファーにとってサイクロン発生というのはとても楽しみなスウェルイベント。何人もの人が波チェックをしに入れ替わり立ち替わり姿を表していました。

 

 遅れてうねりが入ってきたものの12日は風が朝から北風にシフトしフェイスがボコボコのいまいちのコンディション。

 

 

早朝のバーレーヘッズ。サイズはあるもののエピックなコンディションにはなりませんでした。

 

 

 再び風が南風に戻ったのは13日の昼の時間帯。サイズも残り、特に夕方のロータイドに向かう時間帯はスナッパーロックスからノースキラのビーチ至る所でサイズのある上質なチューブがブレイクしていました。

 

砂がシフトしノースキラの沖では高速チューブが出現。1本乗ってしまうと強烈な流れとサイズのある波でゲットが困難に。それでも価値のある1本にチャージするサーファーがたくさんいました。

 

 短い時間帯でしたがこれぞ夏のゴールドコーストのサイクロンスウェルといった波を堪能することができました。

 (しかし、このトロピカルサイクロンガブリエラの進路はニュージーランドへ向かい、大規模洪水や地滑りといった甚大な被害をもたらしてしまいました。)

 2月は日本から来豪するサーファーもたくさん見られました。

 

宮崎で行われるQS3000の試合前に約2週間トレーニングしにきていた大原洋人。
キレのあるサーフィンでレベルの高いゴールドコーストでもやはり目立つ存在。ワールドクラスのサーフィンを披露していました。
大原洋人

 コロナウイルス発生以前は毎年欠かさず来ていた北川成美さん。『やっとオーストラリアツアーを再開できた』と久しぶりのゴールドコーストを堪能していました。昔と比べて混雑し、少し住みにくくなったかなっと、長年通い続けているだけにローカルと同じような感覚をしていました。

 

北川成美さんとサイズのある波にチャージし何本も板を折っていた辻岡堅太郎。『本当にもう板なくなってしまいます』と言いながら、また板を変えて海に入っていきました(笑)
年末から約2ヶ月間ステイしていた岡野漣。人が混んでいる時間帯も少ない時間帯も、スナッパーロックスの環境をめいいっぱい使いトレーニングに励んでいました。
スナッパーロックスの岩から飛び込む姿も。今後が本当に楽しみな若手サーファーです。岡野漣

 

 日本の冬の時期にこのような環境に身を置けるのは若いサーファーにとって貴重な経験。温かいいい波でトレーニングしながらコーチングを受けたりとゴールドコーストを堪能していました。

 

 日本人以外もローカルのうまいサーファーから普段見ないうまいサーファーも海にはたくさん。キャバリタとバーレーヘッズで行われるWSL QSがあるせいか、夏のゴールドコーストらしい雰囲気になっていました。

 

ニューキャッスル出身のエリー・ラムキン。この後行われたQS1000 GOLD COAST OPENの試合ではセミファイナル進出の3位という結果を収めた。
馬庭彩

 

馬庭彩は、急遽グレードが変わった宮崎のQS3000はスキップし、アボカとニューキャッスルのQSにフォーカス。昨年からスケジュールが慌ただしく変わる中でも各地域でのQSに参戦しながら大学生活との文武両道の道を進んでいます。

 

 

バイロンベイ・ボードライダーズ・クラブが初優勝。

 

 2月はイベントも盛りだくさん。

 4、5日には 第10回目となる『HYUNDAI AUSTRALIAN BOARDRIDERS BATTLE』がニューキャッスルで開催。各州の予選を勝ち上がった24チームのボードライダーズ・クラブが激しいバトルを繰り広げ、見事バイロンベイ・ボードライダーズがオーストラリアのボードライダーズクラブの頂点に立ちました。

 

ヒート終盤まで逆転劇が繰り広げられ、今回も大盛り上がりとなったABBナショナルファイナル。バイロンベイボードライダーズクラブが初となるオーストラリアのチャンピオンに輝いた。PIC:SURFING AUSTRALIA

 

そして中旬からは怒涛のWSLオーストラリアQSレッグがスタート。

 

スケジュール

– 2月12 – 16日, QS5000 Oakberry Tweed Coast Pro – Cabarita Beach, Tweed Coast

– 2月17 – 19日, QS1000 Gold Coast Open – Burleigh Heads, Gold Coast

– 2月21 – 24日, QS3000 Camplify Great Lakes Pro – Boomerang Beach

2月27 – 3月 1日, QS1000 Surfers Rescue 24/7 Port Stephens Pro – Birubi Beach, Port Stephens

– 3月3 – 5日, QS1000 Mad Mex Maroubra Pro – Maroubra, Sydney,

– 3月13 – 18日, QS3000 (ASIA/AUSTRALIA) 
Vissla & Sisstrevolution Central Coast Pro Presented By MadMex – Avoca Beach,

– 3月20 – 26日, QS5000 (ASIA/AUSTRALIA)
Burton Automotive Pro & Speaking in Colour Pro – Newcastle,

 

 2月12日から16日に行われたQS5000 Oakberry Tweed Coast Proでは、サイクロンの影響で会場がキャバリタからキングスクリフに変更。

 

 

 初日は男子のR128からスタート。リージョナル選手以外のインターナショナル選手はシード外となったが、日本からはサザンクロス大学に留学中の井上龍一とワーキングホリデーで滞在中の萩田泰智が出場したが2人とも惜しくも敗退してしまった。

 

萩田泰智

 

 フィニッシュをことごとく失敗し敗退したものの、質の高いサーフィンを披露した萩田泰智。もっと見たかったとコメンテイターからも高い評価を受けていた。本番となるアボカや、ニューキャッスルの試合に期待したい。

 夏の時期のこの場所でのQS5000ともあるせいか、出場するメンバーがとても濃い。しばらくコンテストに出場していなかった元CTサーファーであるジョッシュ・カー、リカルド・クリスティーをはじめ、カイ・ヒング、ビリー・キーン、ブレント・ドリントンといった多くの有名人サーファーが出場しハイレベルな大会となった。

 

ハワイからはレジェンドサーファーのシェーン・ドリアンの息子であるジャクソン・ドリアンも参加。R64まで勝ち上がるもインターフェアを犯し敗退してしまった。
ジャクソン・ドリアン
4年前のバーレーヘッズのQSで優勝した経験もあるニック・スクイアーズ。最近は見かけなかったが素晴らしいサーフィンを披露。息子のマニックスも大きくなり親子で出場していました。

DAY3からはキャバリタに会場を戻しトップシードの登場。

サイズは少しは落ち着いたもののタフなコンディションとなったキャバリタビーチ。
相澤日向

 トップシードで出場の相澤日向。R64では波のこない難しいヒートをうまく勝ち上がったが、つぎのR32でジョッシュ・カー、ダコダ・ウォルターズ、シェルドン・シムカスといった強豪ぞろいのヒートで惜しくも敗退してしまった。

 

同大会のプロジュニアで優勝した娘のシエラの付き添いからか、久しぶりにコンテストに出場したジョッシュカー。
ツインフィンのサーフボードでありながらメリハリのあるライディングを見せR16まで勝ち上がり9位でフィニッシュ。さすが元CTサーファーのレジェンドです。
久しぶりにコンテストに顔を見せたダコダ・ウォルターズ。素晴らしいライディングを何本も披露し高得点を連発した。
同大会のプロジュニア優勝のレノックス・チェル。

同大会のプロジュニア優勝のレノックス・チェルは、素晴らしいバックハンドのサーフィンを披露も強豪ぞろいの相手にR64で姿を消すことになった。調子の良さそうなサーフィンを見せていたが、この後に行われたブーメランでのQS3000の試合前のフリーサーフィンで怪我をしてしまい、今季のオーストラリアレッグから姿を消すこととなってしまいました。

 

ファイナルデイはサイズも落ち着き天候にも恵まれクリーンなコンディションに。

 

ココ・ケアンズ

 

 昨年のアンダー18のナショナルチャンピオンに輝いたココ・ケアンズ。長い手足を使った綺麗なスタイルのサーフィンで見事にファイナルまで進出しQS5000というハイグレードイベントで2位という成績を収めた。

 

サラ・バーム
サラ・バーム

 見事女子の優勝に輝いたのは、ニューキャッスルのローカルである南アフリカ出身のサラ・バーム。徐々に潮が満ちコンディションが悪化する中でも果敢に波を探しチャージしていた。長いコンテストキャリアの中でもQS5000での優勝は一番大きなものとなった。

 

キーフ・バトラー

 昨年もこの場所での同じ大会で3位という成績を収めている相性の良い場所のキーフ・バトラー。ファイナルでは序盤から素晴らしいライディングを披露し、グッドレンジのスコアを何本も叩き出すものの僅かに及ばず2位という結果に。

 

ジョディー・ローラー

 ほぼライトの波でしか高得点が生まれない中で、一瞬割れたレフトの波を見逃さずフルローテーションを決め9.07ptをスコアしたジョディー・ローラー。それが決め手となり見事に優勝を飾った。こういった型破りなサーファーがオーストラリアには多い。

 

2019年にマンリーで行われたQS6000以来の優勝を喜ぶジョディー。嬉しいビッグウィンとなった。

 

 

 選手は休む間もなく翌日17日からはゴールドコーストのバーレーヘッズでQS1000 Gold Coast Openが開催。

 

サイクロンスウェルで行われたTweed Coast Proの試合が嘘のようにサイズダウンし、会場をバーレービーチに変更して行われた。

アイラ・ハパッツ

 若干15歳のバーレーヘッズローカルのアイラ・ハパッツ。小波でも板がグングン進みファイナルでは17.67ptというトータルスコアを出し嬉しいQS初優勝となった。男子の優勝にはレニックス・スミスが輝いた。

 

 その2日後には舞台はNSW州の中部エリアに変わり、ブーメランビーチでQS3000 Camplify Great Lakes Pro が4日間にわたり開催。

 

男子の優勝者のマイキー・マクドナー。女子はニクシー・ライアンが優勝した。PIC : WSL / SHANNON HAYES

 

 2月27日から3月1日にビル日ビーチで行われたQS1000 Port Stephens Proでは男子がソリ・ベイリー、女子はホリー・ウィリアムスが優勝した。と、オセアニア地区の選手は平日、週末関係なしに、連日チャレンジャーシリーズへの出場権をかけた熱い戦いを繰り広げています。

 

 2月、3月はオーストラリア東海岸にとっては1年の中でも1番とも言えるサーフィンのハイシーズン。WSLのイベントだけでなく、ここには書ききれないほどたくさんのイベントがありました。

 

また、コロナウイルスの規制がほぼなくなってから初めての夏のサーフィンシーズンという事で、先月に引き続きたくさんの日本人サーファーも来豪しており、海の中も久しぶりにコロナウイルス以前の雰囲気を感じる月ともなりました。3月もまた熱いサーフシーンが繰り広げられそうなオーストラリア。

 

 暑い熱い夏が続いております。

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。