今回、第5回となる【SURFMEDIAオーストラリアNEWS】。今回もNOJILAND FILMこと菅野大典氏がオーストラリアの最新情報を伝えてくれています。

今回は、国内ツアーのオーストラリアン・オープン第2戦となるGOLD COAST PRO と、オーストラリアに留学中の馬庭彩インタビュー。ぜひ最後までご覧ください。

 

取材、文、写真:菅野大典

 

 

NOVEMBER AUSTRALIA NEWS

11月に入ったオーストラリア。

日本でいう桜的な存在であるジャカランダの花も散って来て、夏の到来を感じさせるような暖かい毎日となっています。

 

毎年この時期に咲くジャカランダ

例年通り波のコンディションはそこまで良くないゴールドコーストのこの時期は、北風が吹きサイズの小さい日も多く続いております。

スウェルマグネットであるD-BAHに人が集中

 

コロナの状況は国内での新規感染者を10~20人程度に抑え込むなどに成功しており、8月に多くの感染者を出していたメルボルンを中心にするビクトリア州では11月に入ってからは0人と、完全に封じ込めに成功しています。

 

これにより今まで厳しいロックダウンや規制を施していたビクトリア州もついに規制緩和が発表され、屋外でのマスク着用義務が引き下げられたり、屋内外でのイベントなどの許容人数なども変更されました。

 

各州でのボーダー規制も徐々に解除され、12月には州を超えての移動が可能になることが発表されました。

 

ただ、コロナの封じ込めに成功しているだけあり、国外からの入国に関しては依然厳しい規制があり、先日、菅首相との会談で日本に訪問していたモリソン首相も自ら14日間の隔離をしていました。 まだまだ居住者以外の人がオーストラリアへ入国するのは先になりそうな感じです。

 

 

 

AUSTRALIAN OPEN OF SURFING 第2戦 GOLD COAST PRO

初日の会場となったスピット。
激しい北風が吹き、目まぐるしくコンディションが変わる展開となった。

 

10月31日、11月1日に渡ってAUSTRALIAN OPEN OF SURFINGの第2戦GOLDCOAST PROが行われました。初日の会場となったスピット。激しい北風が吹き、目まぐるしくコンディションが変わる展開となった。 前回のサンシャインコーストプロに引き続き、今回の試合にも多数の日本人選手が出場。

 

藤本世音

 

昨年のUSオープンで2位となったリアム・オブライアンと共に2位通過を果たした藤本世音。他の選手が波を見つけるのに苦戦している中、得意のバックハンドで攻め立てていた。

 

セインとリアム

 

「毎ヒート波が割れる場所が変わるので難しいコンディションでしたが、いい波を見つけて勝ち上がることができたので良かったです。ファイナルに行くことを目標に頑張ります」と、コメント。

 

干潮になり、風もさらに吹き荒れコンディションはさらに悪化する中、前回行われた第1戦目となるサンシャインコーストでクォーターファイナルまで進出していた黒川楓海都がまさかのラウンド1で敗退。

 

黒川楓海都。「コンディションに対応できず自分のサーフィンができなかったです」とコメント。
ジャンクなコンディションながらはるか沖でエアーを決めていたクーパー・チャップマン。本日のハイエストトータルヒートとなる16.5をマーク。
QSの上位ランカーであるクリス・ザフィス、鋭いサーフィンを見せつけていた。
ラウンド2のヒート8で対決となった西村昇麻と相澤日向は1、2フィニッシュを飾りラウンド3へ。
激しいセクションにねじ込むディミティー・ストイル。 「優勝して賞金をゲットできたら最高だけど、毎ヒート自分のサーフィンをして楽しみたい」とコメント。日本大好きだよ!と答えてくれた。 インタビューに答えてくれたディミティー・ストイル。
ディミティー・ストイル

 

 

初日は男子のラウンド2のヒート16まで予定されていたが、激しい雷雨のためヒート8で試合中断。

大会2日目は会場をD-BAHに移動して再開。 前日のコンディションとは打って変わって、晴天のクリーンな2ftコンディションで試合が行われた。

 

大会2日目の会場となったD-BAH

 

シェルドン・シムカス
キャラム・ロブソン

 

トップシードの選手が実力を発揮しハイスコアーを出しながら勝ち進む中、藤本世音と西村昇麻も素晴らしいサーフィンを披露。

 

 現在PBC(パームビーチ&カランビンステートハイスクール)に留学中で今年卒業の2人。今年最後の試合は残念ながら僅差で惜しくもラウンド2で敗退となった。

 

藤本世音
西村昇麻

 

身体も板もサーフィンもひとまわり大きくなった相澤日向。 残念ながらクォーターファイナルで敗退となってしまったが、今年はコロナの影響でQSの試合を回れない中、WSLのグランドスラムのジャッジメンバーに起用されたり、サーフィンクイーンズランドのイベントに関わったり、元CTサーファーであるジェイ・トンプソンのコーチングプログラムに関わったりと20歳にしてたくさんの知識を吸収している。

 

相澤日向
日本同様熱い世代が揃っている若手オージー。マイキー・マクドナー、リアム・オブライアン、相澤日向

 

プライベートでもCTサーファーのマット・マクギリブレイやQSトップランカーであるリアム・オブライアンやキャラム・ロブソンといった次世代のオージーサーファーと行動を共にしていて、相澤日向の今後がとても楽しみだ。

 

1ターンで5.93をマークし終了間際に逆転しクォーターファイナルを勝ち上がった馬庭彩

 

安定した実力を発揮し勝ち上がっていた馬庭彩。セミファイナルではコンディションが悪化し、いい波を取ることが出来ずに敗退となったが、サンシャインコーストプロに引き続き2戦連続のセミファイナル進出。レベルの高い選手が多く出場する中で素晴らしい結果を残している。

 

健闘を讃えあう馬庭彩とパイパー・ハリソン
久しぶりに試合に出てきたコービー・エンライトは2位
圧倒的なサーフィンを見せつけたディミティー

 

女子の優勝はノリに乗っていたディミティー・ストイルが他を寄せつけないサーフィンで優勝。仲の良い7x世界王者のステファニーギルモアが応援に駆けつけていた。

 

クリス・ザフィス

 

午後に入り少しオンショアになったら、一転してエアバトルとなった男子のヒート。

ファイナルのヒート開始早々にハイエアーを決めて9.0をマークしたクリス・ザフィスがそのまま優勝かと思われたが、終了3分前にアーロン・ケリーが特大エアーを決め9.93をスコアー。トップに躍り出て逆転優勝となった。

 

特大エアーを決めるアーロン・ケリー
健闘を讃えあう男子ファイナリスト
優勝したアーロン・ケリー。ファイナリストみんなに担がれる

 

初日のジャンクコンディションからクリーンな形のいい波、そしてオンショアになる午後はワンアクション勝負。大会を通して、どのようなコンディションでも安定したパフォーマンスができなければサーフィンの試合は勝ち抜くことができないと改めて実感することのできたイベントとなりました。

 

今大会が今年最後となった選手も多く(州境の規制が緩和されてNSW州で行われるAUSTRALIAN OPENに出場する選手も多数)、QSが開催されない中このようなツアーイベントを開催したサーフィンオーストラリアに感謝を述べている選手がいる一方で、QSというツアーに回れずにメンタルを保てずにいる選手も多数いるように感じました。

 

WSLオーストラリアのリージョナルレッグのスケジュールは来週発表となっている。また選手が明確な目標を持ち、元気にサーフィンをする姿を楽しみに待っていたい。

 

結果
Open Men:
1st: Aaron Kelly (Sunshine Beach, QLD)
2nd: Chris Zaffis (Angourie, NSW)
3rd: Alister Reginato (Alexandra Headland, QLD)
4th: Quinn Bruce (Coolangatta, QLD)

Open Women:
1st: Dimity Stoyle (Maroochyoore, QLD)
2nd: Kobie Enright (Coolangatta, QLD)
3rd: Sophie McCulloch (Alexandra Headland, QLD)
4th: Raya Campbell (Coolangatta, QLD)

 

 

 

 

 

オーストラリアの国内ツアーで2戦連続セミファイナル進出を果たした、現在パームビーチ&カランビンステートハイスクール(以下PBC)に通う馬庭彩ちゃんに海外の高校生活や近況について話を聞きました。

 

 

D-SKE: 年齢、在豪歴を教えてください。

 

SAI: 今年17歳になりました。オーストラリアには去年の4月にきたので1年8ヶ月になります。

 

D: なぜ海外留学を決めたのですか?

 

S: CTサーファーになるのが私の目標で、私の住んでいた湘南はあまり波がなくてどうしても海外の選手や千葉の選手に比べると少なくなってしまうので、海外の波で練習したら上達のカギになると思って海外を選びました。

 

 

D: メインはサーフィンの上達という事ですか?

 

 

S: はい。湘南は波があまり無いのと、あとPBCというCTサーファーをたくさん輩出している学校があるのを知って、どういう事をしているのだろうと興味があり選びました。

 

 

D: 以前からオッキーグロムやスカルキャンディの試合でオーストラリアに来ていたと思いますが、オーストラリアは好きですか?

 

 

S: はい、大好きです! 天気がいつも良くてそれに伴って自然も豊かで、何よりも人がみんなフレンドリーなところです。目があっただけでみんなニコニコしていて、そんなオーストラリアの環境がいいなって思います。

 

D: こっちの学生生活は慣れましたか?

 

S: はい、もう慣れました。すごく楽しいです!

 

 

 

苦労した事は、やっぱり最初は英語の部分ですね。

 

D: 日本と比べて良いと思う事、逆に苦労する事は?

 

S: 自分のやりたい教科を選択出来る事です。その教科の中には日本でできない事がたくさんあって、例えばアクアテック・プラクティスの授業は、サーフィンを授業でやったり、セーリングボートやフィッシング、シュノーケリングなどを学校の近くの川や海の自然を使って授業をできるんです。

あとフィットネスの授業というのは、学校のジムを使ってどうやってトレーニングするとか、筋肉の構造とか、栄養学とか、アスリートに大切な事を学べたりするので、すごく教科の内容が充実しています。

 

D: なるほど、大学や専門学校で習うような事を高校で選択して習えるんだ。それはすごいね。

 

S: でも、授業中はみんなリラックスしていて、先生もおもしろくていい雰囲気です!

 

D: 先生遅刻してくるでしょ?

 

S: はい(笑)先生が机の上に座りながら授業してるし、日本じゃありえないですよ(笑)

 

D: まあ、みんなリラックスしていて、そこがいいところでもあるよね(笑)

 

S: 苦労した事は、やっぱり最初は英語の部分ですね。はじめはジェスチャーとかで乗り切ってたのですけど、深い話などができなくて、思ってる事がすぐ言えないっていうのがストレスだったりしました。

 

 

D: 今はもう全然平気?

 

 

S: はい、生活に支障がないほどに!

 

 

D: 学校の授業でスポーツエクセレンスという、サーフィンのコーチングがあると聞いたのですが、それについて教えてもらってもいいですか?

 

 

 

学校の授業でサーフィンのコーチングがある

 

 

S: はい。週3、4回、朝か午後の授業で1時間半くらい海でコーチングを受けています。波のない日はジムでトレーニングしたりしています。ジムもすごく、しっかりしています。ファルビー(スポーツエクセレント担当コーチ)がフィットネスの先生なので、とても詳しくトレーニングを教えてくれます。

このサーフィンのスポーツエクセレンスに入るには、トライアルに合格しないと入れなくて、そのトライアルの内容はコーチのジャッジによる、サーフィンの点数や、波をとる技術、海の中での動き、他での試合の結果を見られて合格者が決まります。

 

日本の中学を卒業してからこっちに来たので、すでにトライアルが終わってて最初の年は入れませんでしたが、今年の分のトライアルを去年末にやって入れました!

 

 

D: 最高の環境だよね。何人このスポーツエクセレンスにいるの?

 

S: 今は16人かな?女の子は4人しかいないです。

 

D: そんな狭い枠に入れるのすごいね!今までの日本人留学生も入れてるし、すごい良い仕組みだよね。

 

S: スポーツエクセレント担当のファルビーと元ミックファニングのコーチで現在はイーサン・ユーイングのコーチをしているフィルがスポーツエクセレンとプログラムのコーチです。2人共とても良いコーチで一人一人に適切なアドバイスやフィードバックをしてくれます。特にフィルはCTサーファーのコーチなので彼から学ぶ事が本当に多いです。

 

 

着実にサーフィンの実力を伸ばしている彩ちゃん。レベルの高い海の中でも目立つ存在になってきた。

 

 

D: 学校終わった後もコーチングを受けてる姿をよく目にするのですが、学校のコーチング以外にもサーフィンのためのトレーニングは何をしていますか?

 

S: サーフィンの頻度は毎日で、学校始まる前の朝1と終わった後の夕方やっています。それで、毎週火曜日の夕方はスナッパーボードライダーズのコーチングがあって、イザベラ・ニコラスのコーチをやっているマーク・リチャードソンからコーチングを受ける事ができています。

ウォームアップとかの事とかは、ソルトパフォーマンスのマルコスという人が教えてくれています。毎週土曜か日曜日には、日本の佐藤秀男先生とズームを使ってフィジカルトレーニングを行なっています。そんな感じで毎週やっています。

 

 

D: ゴールドコーストのサーフィンの環境はどうですか?

 

S: もう最高だと思います!入っている人みんな上手いし、パドルも早いし、日本だと女子に波ゆずってくれるけど、こっちの人ガツガツだから(笑)でも、譲ってくれる人は譲ってくれるけど、波をとるのとかも勉強になるし、CTサーファーとかそこら辺にいるので、良いサーフィンを間近で見られるので最高です。

 

D: ケリー・スレーターに話しかけてたもんね(笑)

 

S: するしかないって思って(笑)ケリーさんにスプレーかけられて、暗くなって人も空いて来た時で、『どうやってスプレー出すんですか』って(笑) そのあと優しく答えてくれて、色々聞かせてくれて、本当に話しててもレジェンドだなって感じが伝わって来ました(笑)

 

D: 俺が聞いたら絶対答えてくれなかったよ(笑)でも、ローカルだけじゃなくて世界中の上手いサーファーが集まるからいいよね。CTをやっている場所だけあって。

 

S: そう!本当にそう思います。

 

D: コーチとかもいっぱいいるし、本当にいい環境だよね。

 

 

S: やっぱり、サーフィンに力を入れてる国だから、学校でもサーフィンをやらない友達もみんなサーフィンのことを知っているし、サーフィンに対する尊敬みたいな事が感じられます。国技って感じだなって思います。

 

 

いつもニコニコ笑顔。夕方のD-BAHに行けばほぼ毎日顔を合わします(笑)PIC:@freshlyanimated

 

D: オーストラリアンオープン2戦連続セミファイナルという結果でしたが、満足?不満足?

 

S: 不満足です!

 

D: レベル高い中で、このセミファイナルは素晴らしい結果だと思うけど?

 

S: 1戦目のサンシャインコーストプロでセミファイナルで負けて、その時は波も大きくてスタミナ不足であったり、他の選手より打点が低かったりで、自分のサーフィンを出しきれなくて、1戦1戦ベストと言える試合ができなかったのです。

2戦目までにスタミナもつけて、メンタル面とかも改善して、クォーターファイナルまではその成果を出せていたのですが、でもセミファイナルで急に波が悪くなって。海に入った瞬間に波が分からなくなってしまって、波のセレクト面でほかの選手より圧倒的に差があったと自分で感じました。

 

同じヒートにいたソフィー選手はどんなコンディションでもいい波を見つけるのが上手いなって思いました。サーフィンも切れてるし。

 

D: ソフィーうまかったよね!

 

S: はい、他の選手から学ぶ事がたくさんあります。

 

 

日本の試合よりも、オーストラリアにいる時間を長く使いたいなと思っていました。

 

D: 昨年末からオーストラリアのQSに出場していましたが、今年はコロナの影響がなかったらオーストラリア以外の試合のQSやジャパンオープンを出場する予定でしたか?

 

 

S: ジャパンオープンは元々コロナがあろうとなかろうと出場する予定はなくて、オーストラリアにいる時間は今しかないから日本の試合よりもこっちにいる時間を長く使いたいなと思っていました。日程もジャパンオープンとオーストラリアオープンが重なっていたので、こっちの試合に出たと思います!

 

 

 

 

D: 今後の予定と目標を教えてください!

 

S: 高校卒業が再来年なのですけど、来年オーストラリアのQSがあるなら、それを回る予定で、結果次第でその後のことは考えるつもりです。 CTに入って、CTイベントで優勝するというのが目標なんですけど、まだまだ改善点がたくさんあるので、それを直していって目標達成できるように頑張ります!

 

 

ゴールドコーストの最高の環境を最大限に生かしている馬庭彩ちゃん。今後も是非頑張って活躍してほしい!

 

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。