【オーストラリアNEWS】ゴールドコーストのシャークアタック、ツイードコーストプロ、日本人選手の活躍

今回、第3回となる【SURFMEDIAオーストラリアNEWS】。今回もNOJILAND FILMこと菅野大典氏がオーストラリアの最新情報を伝えてくれています。今回は、ゴールドコーストで起きたシャークアタック、グランドスラムのツイードコーストプロ、オーストラリアオープンに出場する日本人選手のインタビューなど。ぜひ最後までご覧ください。

 

取材、文、写真:菅野大典

 

 

毎日晴天が続き、春の暖かい穏やかな気候が続いているオーストラリア。

 

昨年の今頃から年末にかけては山火事に悩まされていた時期で、最近は内陸の地域で山火事発生のニュースを聞くようになってきました。乾燥した、雨のない日が続くと少し心配になります。

 

10月1日(木)午前1時より、州境地帯の制限を緩和

 

コロナの状態は先月の状況とあまり変わらずの規定の中で生活していましたが、ニューサウスウェールズ(NSW)州における感染の危険性が減少したことに伴い、10月1日(木)午前1時より、州境地帯の制限を緩和する発表をしました。
これによりQLD州境地帯の撤廃や、QLD州民は目的を問わずQLD州政府が承認したNSW州境地帯全域を移動可能となるなど、細かい規定や移動範囲の制限はあるもののロックダウン状態から再び少し解除されました。

波は9月に入り北風が多く吹くようになりましたが、それでも毎日楽しめるコンディションが続いています。毎日波もありビーチでは多くのサーファーで賑わっています。

 

 

ゴールドコーストのシャークアタックについて

 

 

 

 

9月8日17時に、ゴールドコーストのグリーンマウントビーチでシャークアタックがあり、46歳の男性が死亡するという事件が起こりました。サメの被害で有名なオーストラリアですが、ゴールドコーストはそこまで被害がなく、このような死亡に至るケースは60年ぶりのできごと。

 

ゴールドコーストでの死亡に至るシャークアタックは60年ぶり

 

安全と思われた多くのサーファーが集まるポイントでのこの出来事は、少なからずたくさんのサーファーに驚きを与え、ショックを隠しきれない出来事となっています。

 

ゴールドコーストでは、シャークネットやドラムラインというサメを岸寄りに近づけさせない対策をとっているのですが、その見直しを求める声や、生態系を傷つける(実際にこのネットにサメだけでなくクジラや他の野性生物がかかり死亡している)としての意見も上がっています。

 

3ヶ月前にもNSW州のサウスキングス・クリフビーチでシャークアタックがあり、60歳の男性が死亡した事も含め、過去に類を見ない数のシャークアタックが多発しているオーストラリア東海岸。今年は例年にも増してクジラが岸よりに多く見られ、そのクジラの死骸を求めサメが集まっていたり、ベイトフィッシュを追いかけるサメも多く目撃されています。

 

 

シャークアタックがあった翌日からバーレーヘッズより南のビーチは、10日の朝までクローズに、その数日後もキラビーチでベイトフィッシュを追いかけてきたサメが岸に近ずいてきてるのを発見され、一時的にキラビーチがクローズしました。

 

キャバリタビーチではフォイルサーファーにサメが襲いかかり、怪我はないもののフォイル部分が傷つくという事件もありました。9月に入ってからサメの被害が多発しています。

 

 

GRANDSLAM 1戦目「ツイードコーストプロ」

 

そんなサメの被害がある中、ツイードコーストプロ9月13日から14日の2日間に渡ってキャバリタビーチで行われました。

 

コロナの影響により無観客試合のため一部のエリアには立ち入り禁止であったが、ビーチやヘッドランドからは観戦可能となっていたため、地元の人を中心に観戦者も見られました。

ソーシャルディスタンスを訴える張り紙がいたるところにあり、ビーチアナウンスでも密にならないように、選手にサインや写真を求めないようにと訴えかけていました。

サメに対しては万全な準備をしているとの事で、ジェットスキーやドローンを飛ばしながら監視。いきなりラウンド1のヒート2にサメが近くにきたという事で、すぐに選手3人がジェットスキーに拾われ、一時中断になる場面もあったがその後は無事に消化していました。

トリッキーな3、4ftのレギュラーブレイクが中心となった1日目。若手のホープ、ザーリ・ケリーはいいサーフィンを見せていました。

ザーリ同様、将来のオーストラリアを背負うであろう存在の若手モリー ・ピックラムも今後楽しみな存在ということをアピール。新しい現代サーフィンを披露していました。

BLACK LIVES MATTERの文字を板に書き、試合開始から439秒間ビーチで片手を掲げて人種差別問題を訴えた、2度の世界王者タイラー ライト。この439秒は1991年以降警察に拘留されて命を落とした439人のオーストラリア先住民に対してとの事。

その後は遅れてヒートをスタートしたにも関わらず、他の選手を圧倒するサーフィンで見事に1位通過を果たした。

2x世界王者 タイラー・ライト

 

少し波が下がったものの初日よりもクリーンなコンディションになり晴天にも恵まれた2日目。

女子は実力がずば抜けていた2人、ステファニー・ギルモアとタイラー・ライトがファイナルへ。初日から勢いに乗っていたタイラー ライトがステファニー ギルモアを圧倒し優勝。

大会を通して高いレベルのサーフィンを披露してくれた7x世界王者ステファニー・ギルモア

2位になったステファニー・ギルモアは、悔しそうな表情も見せながらも笑顔で、何よりも純粋にサーフィンを楽しんでるように感じた。

コロナ期間中は二人でトレーニングをするなど、お互いを高め合っていた2人。試合終了間際に笑顔で話しているのが印象的でした。

クォーターファイナルでジュリアン・ウィルソンを破り、質の高いエアーで高得点を出していたジャック・ロビンソン。しかしながらセミファイナルでまさかの敗退となった。判定に不服だったのか、ビーチに上がってもずっとブースに戻らないのが印象的だった。

ファイナルに駒を進めた、南アフリカからゴールドコーストに移住して来たマット・マクギリブレイ。今回はジャック・フリーストンのリプレイスとして参加。素晴らしいバリエーションのあるサーフィンを披露してくれた。

大会を通してダントツのサーフィンを見せてくれたイーサン・ユーイング。2年前のCTから落ちたあの時から確実にレベルアップして帰って来た。

 

2021年のシーズンが楽しみで仕方ないと感じさせてくれるようなサーフィンでした。

 

まだまだトップの選手と比べると見劣りするが、ザーリ・ケリーやモリー・ピックラムなど今後楽しみな若手選手が女子には多く、男子は相変わらず、各年代に分けて層の厚さを感じさせてくれた。

 

ツイードコーストプロ・ウィメンズ・ファイナル
1st:タイラー・ライト(AUS)
2nd:ステファニー・ギルモア(AUS)

ツイードコーストプロ・メンズ・ファイナル
1st:イーサン・ユーイング(AUS)
2nd:マット・マクギリヴレイ(ZAF)

 

 

オーストラリアン・オープン・オブ・サーフィン・ツアー開幕。日本人選手も参戦。

 

 

そしてTWEED COAST PROの翌週末となる9月19日、20日に渡っては、サンシャインコーストのクーラームビーチで国内サーキット「AUSTRALIAN OPEN OF SURFING」の第1戦目となるSUNSHINE COAST PROが行われました。

 

こちらの大会には主にCTクォリファイを狙うQSサーファーから、トップアマチュアの選手を中心にエントリーされており、現在オーストラリアにワーキングホリデーで滞在中の黒川楓海都、留学生である馬庭彩と西村いちごといった日本人選手も参戦。

 

豪華なメンバーながらセミファイナルまで進出したオーストラリア生まれの日本人、相澤日向。

西村いちご
「波が難しくポディショニングと波を見極めるのが難しかったが、うまい選手と一緒にヒートができて楽しかったです。やっぱりサーフィン大国のオーストラリアだけあって、この難しい環境の中でも試合をやってくれたりオーストラリアにきてよかったです。」と、コメント。

クォーターファイナルまで進出した、黒川楓海都
「久しぶりの試合だったので緊張したけど、それ以上にやっと大会で自分のサーフィンを試せるという嬉しい気持ちが強く、興奮を抑えるのに必死で今までにない感情でした。試合勘は思ったよりも鈍ってなく、自分が練習してきたことがスコアーとして成果が見られたのが嬉しかったです。このような大会を開催してくれて本当に感謝しています。改めてサーフィン大国オーストラリアだと感じました。」と、コメント

黒川楓海都 PHOTO : Travis Macfarlane @trav_lane

セミファイナルに進出した馬庭彩

「コロナの影響で試合が減ってしまた中、こうして試合をしてくれるのは、とても嬉しくありがたいです。もちろん負けたことは悔しいですが、今の自分の実力を知れ、他の選手から学んだことがたくさんあったので、自分の中でとても意味のある試合となりました。1位になったソフィー、2位になったディミティーのサーフィンがすごかったです。」と、コメント。

 

このシリーズとされていたイベントも、コロナの規制があり各リージョナル州のみでの参加となってしまったため、オーストラリア全土をフォローすることができなくなってしまったが、10月31日からはゴールドコーストで2戦目が予定されています。

 

Open Men Final
1st: クーパー・デービス(Noosa, QLD)
2nd: アリスター・レジナート (Alexandra Headland, QLD)
3rd: ノア・ストッカ (Peregian Beach, QLD)
4th: クリス・ザフィス (Angourie, NSW)

Open Women Final
1st: ソフィ・マクロッチ (Alexandra Headland, QLD)
2nd: ディミティ・ストイル (Maroochydore, QLD)
3rd: パイパー・ハリソン (Coolangatta, QLD)
4th: タイラ・グリーン (Buddina, QLD)

 

コロナの問題だけでなく、シャークアタックの問題などもあり、開催がスムーズにできない自然相手の競技のサーフィン。ですが、カウントダウンシリーズイベントの1戦としてオーストラリアにCTイベントのような豪華な大会が開催され、人々の中にもまたサーフィンの大会の話題が戻ってきました。

 

今後、普段通りにイベントを開催するのは時間がかかると思いますが、それでもこのような素晴らしいイベントを遂行したWSLやサーフィンオーストラリアにはたくさんの賞賛の声が挙げられていました。

 

暖かくなってきたオーストラリア、自然の中で行われるアクティビティなだけに、シャークアタックだけでなく、個人個人の正しい状況判断や、危機管理を持って海をたのしんでもらいたいです。

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。