【オーストラリアNOW】グランドスラム「ブーストモバイルプロ」とKUMAサーフボードの熊谷充功って誰?

今回、第4回となる【SURFMEDIAオーストラリアNEWS】。今回もNOJILAND FILMこと菅野大典氏がオーストラリアの最新情報を伝えてくれています。

今回は、グランドスラムの「ブーストモバイルプロ」と「WSL x MF SOFTBOARDS GLOBAL SHAPER CHALLENGE」で優勝したKUMA SURFBOARDの熊谷充功氏のインタビュー。ぜひ最後までご覧ください。

 

取材、文、写真:菅野大典

 

 

10月に入ったゴールドコースト。

海にはボードショーツで入るサーファーの数も見えて来て春を通り越して、夏のような日々を感じさせてくれています。

波のサイズもアベレージサイズをキープしながら、時折大きなスウェルが入ることもあった東海岸では、相変わらず地形のいい場所ではサーフィンできる日が続いていました。

 

形の良いビーチブレイクが至る所で見られるゴールドコースト

 

7月下旬から8月にかけてビクトリア州を中心に新規感染者を多く出していたオーストラリアでの新型コロナウイルスの状況も、最近では国内全体での新規感染者数が1桁台の日が多く見られ、州境の規制を緩和する動きや、イベント等に対する規制はほぼ緩和されており、ニュージーランドからの旅行者に対して隔離措置を免除するなどの動きも出てきています。

 

日本、シンガポール、韓国など感染者が少ない国への国際線の再開の議論なども進められるなどして、オーストラリア国内の州ごとのコロナに対する政策は異なりますが、新型コロナウイルスの影響によって止まっていたものが再び動き出しそうな感じも見られています。

 

ただ、依然として世界の新型コロナウイルスの状況は不安定な状況なので、今後の状況は未だに不透明なままですが、新規感染者の人数は以前に比べて激減しています。

 

 

AUSTRALIAN GRAND SLAM 第2戦 Boost Mobile Pro Gold Coast

 

South Stradbroke Island – WSL / ANDREW SHIELD

 

東の沖合からのビッグスウェルが入ったタイミングで行われた オーストラリアン グランドスラム 第2戦となるゴールドコーストプロが10月6日〜7日にサウスストラドブロークアイランドで行われました。

 

このサウスストラドブロークアイランド(通称サウスストラディ)はゴールドコースト最北端であるスピットの北側に位置する島で、他の場所よりもうねりを拾いやすく、常にサンドパンピングによる砂の放出によりチューブ質の波がブレイクすることが多く人気の高いサーフスポット。

ゴールドコーストのビーチの至る場所で見られるサンドバイパスシステム。河口に溜まった砂を組み上げて船の出入りをスムーズにさせる目的と、海岸侵食を防ぐ目的などとして設置されている。

 

大会は4−6ftの強烈なバレルコンディション。

 

CTレベルの選手もワイプアウト続出となるようなコンディションで、ミッチ クルーズやリアム オブライアンがヒート中に波に揉まれてゼッケンが脱げてしまい裸になるというハプニングもあったほどパワフルな波で行われました。

 

村松爽香

 

NORTH END BOARDRIDERS枠によるローカルワイルドカードとして出場した村松爽香は7x世界チャンピオンであるステファニー ギルモア、インディア ロビンソンと対戦。

 

インディア・ロビンソンがリードする中、ステファニー・ギルモアと共にバックアップスコアーを見つけれずにいた村松爽香は、惜しくも僅差で敗退。残念ながらラウンド1で姿を消してしまった。

 

試合後、村松爽香は『あと1本乗るべきだった』と少し後悔を見せるも、『でもステフと話せて、戦えて楽しかったです。この機会をくれたクラブ(NORTH END BOARDRIDERS)に感謝しています』とコメント。

 

今後の彼女の活躍に期待したい。

 

大会はヒートを通して何本もチューブを決め、ファイナルではジャイアント・バレルをメイクし9.83をスコアしたマイキー・ライトが優勝。

 

ウィメンズでは、前回のツイードコーストプロでのファイナリストであるタイラー・ライトがラウンド1で敗退、ステファニー・ギルモアがクォーターファイナルで敗退するという波乱もありながら、2日間を通して安定したパフォーマンスを披露していたイザベラ・ニコルズが優勝。

 

結果は以下の通り。

 

ブーストモバイルプロ ゴールドコースト
メンズ・ファイナル

1st:マイキー・ライト(AUS)
2nd:リアム・オブライアン(AUS)

ウィメンズ・ファイナル

1st:イザベラ・ニコルズ(AUS)
2nd:ソフィー・マカロック(AUS)

 

*AUSTRALIAN GRANDSLAM 3戦目に予定されているマーガレットリバープロはイベント期間が10月31日までなのだが、WSLからの開催日の予定は未だになくイベントのキャンセルが濃厚な感じとなっています。

 

 

29日時点でのAUSTRALIAN GRAND SLAMランキングでは、メンズはマイキー・ライトとイーサン・ユーイング同率1位で、ウィメンズはイザベラ・ニコルズがリーダーとなっている。

 

 

WSL x MF SOFTBOARDS GLOBAL SHAPER CHALLENGE 2020でゴールドコースト在住の熊谷充功が優勝

 

WSLの #StayLocal キャンペーンの一環として行われたWSLとミック・ファニングによる「MF Softboards Global Shaper Challenge」と呼ばれるソフトボード・デザイン・コンテストが行われた。

 

このデザインコンテストは、コロナ期間中に新たな才能を持ったシェイパーをサポートと認識を高める活動を目的として行われ、参加資格はSHAPE3DかACUによるボードデザイン、ボードコンセプトの説明、ロゴとボードに付けたい色、シェイパーまたはブランドの説明を提出という事が応募条件。誰もが参加できるコンテストとして世界中のシェイパーからエントリーがあった。

 

ラウンド1となるのデザイン審査を勝ち上がった8つのシェイパーのデザインが、ラウンド2ではマンオンマンのWSLのインスタグラムのストーリーによる投票で競われ、その勝者となる4名とワイルドカードとして選ばれた2名の合計6名の板がファイナルに進出。

 

ファイナルでは実際にミックファニングが、その6つの板に乗り優勝ボードを選出。KUMA SURFBOARDの”KUMA FISH”が見事優勝を飾った。

 

このKUMA SURFBOARDの”KUMA FISH”はMFソフトボードとコラボモデルとして2021年にリリース。1年間のみ発売される。

 

KUMA SURFBOARD
熊谷充功インタビュー

 

名前、シェイプ歴を教えてください。

 

熊谷充功です。ニックネームはクマでみんなにそう呼ばれています。シェイプ歴は15年ですが、シェイプでお金を稼げるようになったのは7年前からです。

 

シェイパーを目指した理由、ゴールドコーストに移り住んだ理由などをお聞かせください。

 

仲のいい友人に自分の乗る板を自分で作らない?”という事を言われたのがきっかけで、行きつけのサーフショップに行ってHOW TO SHAPE 1オン1というビデオがあって、それを何度も見て頭にインプットしたのが始まりです。ですが、愛知県に住んでたので、なかなかシェイプするというのが難しく、始めは自分の板や先輩の板のリペアからやり始めました。

 

ゴールドコーストへ来たのはサーフィンの本場であるオーストラリアのシェイパーを見ようと思いワーキングホリデーで渡豪しました。そこでDHDのシェイパーであるダレンハンドレーに出会い、ダレンの元で働きながら修行を重ねるようになりました。

 

真剣な表情で板に向き合う熊谷氏。ダレン・ハンドレーと出会ってから15年、現在はKUMA SURFBOARDを作ると共に、DHDのシェイプマネージャーでありナンバー1シャドウシェイパーとしてダレン・ハンドレーの右腕的な存在となっている。

 

 

優勝した板はフィッシュのデザインですが、なぜこの板のモデルを選んで出したのですか?

 

今回のコンテストを出場する際にMFソフトボードのモデルレンジを見たら、今流行っている本当のツインフィンのモデルが一個もなかったから、あったらいいのにと思って、自分のツインフィンのモデルである”KUMA FISH”でエントリーしました。

 

自分の好きなボードの種類は?どのような板をメインにデザインしていますか?

 

好きな板はスピードが早い板です。もちろん早いだけでなく当然ターンもしやすい板なのですが、シェイプのデザインもそういう板が得意です。メインで削っているモデルはコンテストで使うようなパフォーマンスボードを削っていますが、ここ2年位でフィッシュの板を削ることが多くなりました。

 

シェイパーにとって今回のようなコンテストはどのように感じますか?

 

めちゃくちゃ嬉しいです(笑)シェイプのコンテストというのは珍しく、スタブインザダークなど招待制のトップブランドしか出れないようなコンテストしかないので、誰でも優勝するチャンスがあるこのコンテストがあってくれてめちゃくちゃ嬉しいです。自分でもシェイプコンテストは初めてで、それが初優勝に繋がったので最高です。もっとこのようなコンテストが増えて欲しいとも思います。

 

ゴールドコーストはサーフボードを作る環境はどうですか?

 

板を作る環境として最高な場所だと思います。ブランクスを作っている工場も何社かありすぐ手に入るし、シェイプするための道具やグラッシングの道具、材料も身近で手に入るのですごく作りやすいです。

 

育成という面でも自分が働いている所には、たくさんのシェイパーがいて、シェイパー同士で情報交換を常にしているし、以前DHDがBASEとして工場を構えていた時はサイモン・アンダーソンやマリー・バートンといったレジェンド・シェイパーがいて、それに加えて、他にもすごいシャドーシェイパーもたくさんいたので、指導という形ではないけど、たくさんいい見本がいたので、常に見て勉強していました。

 

こっちの人って結構教えたがりというか、全然シークレットにしないで全然教えてくれるから、『シェイプ見ていい?』と聞いたら『いいよ』って、すごいウエルカムに言ってくれるので、そういう意味で凄くいい環境だと思います。

 

そして板を作っている本数がものすごい量なので、たくさんの板に触れる事ができました。

 

使いこなされた年季の入ったシェイプツール。
板を削り出してからは無言で淡々と作業をこなす職人そのもの。カメラを向けても集中力が切れる事なく最後まで板を仕上げていった。

 

 

ミックがシェイプルームに入って来た時に素直に感じたことは?

 

なんでミックがここにいるのって思いました(笑)

実はダレンから工場の撮影があるって前日に聞いていて、部屋に来て撮影もするからと言われていたのですが、それで入ってきたのがミックで驚きました(笑)後ろにはいたずら顔のダレンがいて、なにこれ?みたいな(笑)

 

最後に何か一言お願いいたします。

 

このコンテストは世界のトップサーファーが実際に試乗し勝者を決めるという、自分の中でとても夢のあるものだと思いました。しかもそのプロサーファーが昔から憧れていたんだミックファニングで絶対自分の板に乗ってくれることないと思ってたので、その人が乗ってくれて、しかもその人にものすごく早い板と言ってもらえて、本当に嬉しかったです。

 

またこのコンテストを通して他のエントリーした名だたるシェイパーたちからもメッセージを頂いたり、繋がることができました。その人たちのシェーパーとしてだけでなく人としての素晴らしさにも感動して、、、またSNSなどを通して答えてくださった皆様の温かさにも改めて気づくことができとても貴重な経験となりました。

 

ボトムにはメッセージとサインが入っているミックファニングが実際に乗った板。

 

まさに日本人シェイパーが新たに世界で認められることとなった今回のMF Softboards Global Shaper Challenge

 

オーストラリアという場所がサーフィンをする環境だけでなく、サーフボードを作る環境としても世界のトップクラスだと感じさせてくれるニュースとなりました。

 

エンドレスサマーじゃないけど、いつか日本や他の海外にシェイプしに行きながら、いろいろな土地のいろんな工場を見て回りたい。オーストラリアにある工場でもそれぞれやり方が違うので、またたくさんの刺激があると思う。と語る熊谷氏。

 

探究心の尽きない世界に認められたシェイパーの今後の活躍に期待したい。

 

熊谷充功

 

おめでとう熊谷充功 ”KUMA SURFBOARD”
https://kumasurf.com

 

今週末10月31日〜11月1日にはAUSTRALIA OPEN OF SURFING GOLDCOAST PROが予定されており、このイベントにはオーストラリア滞在中の日本人サーファーが出場予定。来月のニュースでレポートします。

 

またしても日本人の活躍を期待して、頑張れ日本!!

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。