中塩佳那と小濃来波、川畑友吾がオーストラリアでトレーニング。大村奈央の現地インタビュー

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第33回となる今回は、キラチームチャレンジ、中塩佳那のゴールドコースト滞在、大村奈央のインタビュー、チャレンジャーシリーズ代表決定など。

取材、文、写真:菅野大典

 

 

毎日の様に晴れ間が広がる3月。昨年とは違いこれぞオーストラリアという天候が続いています。

 

 3月のゴールドコースト。

 日中の日差しは強くまだまだ夏の雰囲気が続いています。

 月の中旬には熱波が襲い数日35℃を超える猛暑日を記録したりしましたが、その他の日は比較的に涼しく感じる日が多く過ごしやすい日が続きました。

 時折雨の降る日もありますが昨年とは大違い。数年間続いていたラニーニャ現象も終わりを迎えたとニュースで報道されており、今年の3月は雨の少ない月になりました。

 波の状況は、上旬はコンスタントにうねりが入ってきており、ハイシーズンともあって海にはたくさんの人で溢れていました。

 

ゴールドコーストといえばライトハンドのポイントブレイク。1本の綺麗な波がとても長くブレイクします。
サーファーズパラダイスの高層ビルが海に浮かぶのも特徴の1つ。自然と街が融合している場所と感じられます。

 今月も引き続きたくさんの日本人サーファーや国外のサーファーがゴールドコーストに訪れており、ローカルだけのセッションではなくパンデミック発生以前の夏のゴールドコーストの雰囲気を感じます。

 

先月から約3週間滞在していた川畑友吾。ゴールドコーストだけでなくシドニーやコフスハーバーといった場所も訪れ、久しぶりとなる大好きなオーストラリアを楽しんでいました。

 

 ポイントブレイク以外のオープンビーチでも、いい波が割れている場所もちらほらあり、各地域では毎週末ボードライダーズのクラブラウンドが行われていました。

 

 毎年この時期に行われているキラチームチャレンジも3月10日~12日に開催。今年で39回目を迎えるこの大会はオーストラリア中から総勢36ボードライダーズが集結し、それぞれのクラブが代表メンバー(オープン6名、 ジュニア2名)を選出しヒートが行われ、総合順位を競う大会となっています。

 

 

会場となったD-BAHに各ボードライダーズのテントがぎっしりと。
初日はサイズが小さかったものの2、3日目は形の良い2−3ftのコンディション。

 毎年ながら豪華なメンバーが参加するこの大会。今年もホストクラブのキラボードライダーズの代表に元世界王者であるミック・ファニングをはじめ、ビード・ダービッジやジョッシュ・カーといった元CT選手の名前もヒート表にありました。

 

1位通過を決めチームメイトに迎えられるミックファニング。同じクラブにヒーローが存在することはグロメッツにとってとても貴重なこと。
先月キャバリタで行われたQS5000で優勝した現役バリバリのジョーディー・ローラーも参加。どのヒートも本当にレベルの高いヒートばかりでした。
昔から多くの日本人選手が所属するパームビーチボードライダーズの代表の井上龍一。ヒート中に板を折るハプニングもありながら落ち着いて戦いそのヒートを2位という結果に。
同じくパームビーチボードライダーズの黒川楓海都は自分のヒートで見事1位という結果に。一発勝負なので毎回のヒートがファイナルみたいな感じで大盛り上がりします。

 

総合優勝はノースナラビーンボードライダーズ。

 

 

キラチームチャレンジ動画。

 

 

 サンシャインコーストでは同じく毎年この時期に行われている「Noosa Festival of Surfing 2023」が3日から12日の10日間にかけて行われ、Varuna Surf Logger Pro Womenのディビジョンで、吉川広夏が見事に優勝。

 

30年以上続く歴史ある大会のプロディビジョンで見事優勝した吉川広夏。PHOTO : Sunny Coast Photos

 

 中旬以降はこの時期には珍しく、波のないコンディションに。それでも少し移動すれば混雑の少ないファンウェーブがあるのがオーストラリアの東海岸。ゴールドコーストから南に下れば、たくさんのサーフポイントが点在します。

 

中塩佳那と小濃来波。ニューキャッスルのQSには参加せずにゴールドコーストに滞在しトレーニング。
透き通るくらいに水が綺麗。
昨年JPSAのグランドスラムを達成したカナちゃん。オーストラリアでもレベルの高いサーフィンがとても評価されていました。

 

 NSW州のクナラビーチに住む元JPSAグランドチャンピオンでありCTサーファーのコナー・オレアリーの母親である柄沢明美さんの元でみっちりとサーフィンをした後、ゴールドコーストに10日間滞在した中塩佳那。コーチングを受けたり、サーフボードを調達したりと、来シーズンのQSに向けてしっかりと準備を進めていました。

 

 

オーストラリアのサーフィン道場D-BAHでコーチングを受けるカナちゃん。
下旬にはサイズも上がり、楽しみにしていたスナッパーロックスで思う存分サーフィン。来シーズン楽しみです。

 

 そして3月のメインイベントといえばWSL QSのオーストラリアレッグ終盤戦。

 

QS5000 Burton Automotive & Speaking in Colour Proファイナリスト。男子優勝ジョエル・ヴォーン(AUS)、準優勝ジョージ・ピター(AUS)、女子優勝ブロンテ・マコーレー(AUS)、準優勝サラ・バウム(RSA) PHOTO : WSL ダレン・アンダーソン

 

 アボカビーチで行われたQS3000とニューキャッスルで行われたQS5000に関してはアジアリージョンと共同開催ということもあり、連日サーフメディアのニュースで取り上げていましたが、オーストラリア/オセアニアリージョンのチャレンジャーシリーズ出場権を得たサーファーのランキングは以下の通り。(男子は7名+*ジャービス・アールはワールドジュニア優勝のダブルクオリファイ、女子は4名)

このメンバーに加えて男女各1名ずつのワイルドカードが発表されます。

 

 

 2022/2023シーズンのイベント数は実に15イベント(3xQS5000、3xQS3000、9xQS1000)。長い長いシリーズを終えて5月6日からスナッパーロックスで開催されるチャレンジャーシリーズの出場権をかけた戦いが幕を閉じました。

 

 

大村奈央インタビュー

数ヶ月おきに訪れていたオーストラリア。大村奈央

 

2月から長期でオーストラリアに滞在し、ロキシーチームを率いていた大村奈央にインタビュー。

 

*久しぶりのゴールドコーストはどうですか?

 

 「今まで数ヶ月おきに来るような場所だったのが、コロナの影響で全然来れなくなってしまって、でも久しぶりに来れて嬉しかった。以前と比べて物価や街並みも少し変わったけど、それ以上に自然の波とか変わらないものがあって、『こういう波だったな〜』って懐かしい気持ちになって嬉しかったです。」

 

*今回オーストラリアへ来た目的は?

 

 「3月のアボカビーチのQS3000と、ニューキャッスルのQS5000に出場する事と、その前に1ヶ月ほどゴールドコーストに滞在しようという目的があって、2022年からロキシーのチームの試合の引率をやっているので、日本の寒い時期にゴールドコーストで練習したいという子がいたら一緒に過ごそうと思ってロキシーに声をかけさせてもらいました。」

 

 

大村奈央、澤田七奈緒、松野杏莉、登坂 祐妃。

 

 今回で5回目の引率。試合の引率はロキシーが関与しているけれど、ゴールドコーストの滞在は自分からの発信。

 

海外で面倒見れる場所はゴールドコーストといった自分の安心できる知っている場所でないと難しく、体調管理や波が怖いとかは自己責任、自己判断なので自分がサーフィンを見た事があるライダーの子限定でのメンバーとなった。

 

*団体行動する事でメリットとなる事、逆に大変だなと思う事は?

 

 

 「一緒に行くメンバー同士は必ず応援しようってするようにしていて、応援してくれるという人がいるのはすごい嬉しいですよね。試合って1人で行ったら自由ですごい楽な部分もあるけど、孤独な部分も大きくなるから。

 

もちろん誰かを応援する事は、嬉しい思いをする子もいれば悔しい思いをする子もいるけれど、チーム内の空気が良ければ勢いもどんどん乗ってくるからそういう所は一緒に行くメリットだなと感じます。」

 

 

台湾オープンではロキシーチームが表彰台を独占。優勝は都築虹帆、準優勝は野中美波 PHOTO:WSL ティム・ヘイン

 

 

 昨年台湾で行われたQS5000では、都築虹帆、野中美波が1、2フィニッシュを飾る活躍。今回アボカビーチで行われたQS3000でも池田美来が3位とロキシーライダーの活躍が目立つ。個人スポーツながらお互いの選手同士を応援するブラジリアンCT選手やのオージーQSサーファーのような雰囲気が最近のロキシーチームにも感じられます。

 

 「あとは単純に車を運転できない年齢の子達が多いので保護者を連れていかなければいけない年齢の子達にとってはメリットが大きいと思います。QSに出始めの子も多くて、空港でてんやわんやになっていたり、私の頭の中でカオスな状態になっていたりする事がありますけど(笑)でも、みんないい子ばかりで、やってよかったなって思います。」

 

大村奈央

 

 「みんなからドライだなって感じられているかもしれないけど、勝つ選手もいれば負ける選手もいる中で、みんながいる時はできるだけ中立を保つようにしてます。

 

本当はチームメイトが勝ったら、すごいハグをしてあげたいし、負けたらいろんな事を言ってあげたいけど、それは2人の時間ができた時に言ってあげるようにしています。』と、話すナオちゃん。

 

皆が個性あるキャラクターであるロキシーチームを引率するリーダーとして、チーム全体が良い結果を出せるような雰囲気づくりを心がけている。

 

 

大村奈央

*選手としてパフォーマンスを維持、向上している秘訣は?

 

「単純にとにかくサーフィンが好きな事かな。。。短くてごめん(笑)」 

歳を重ねるにつれプロ活動を続けることが出来る選手は少ない中パフォーマンスを維持、向上させているナオちゃん。今回のアボカビーチで開催されたQS3000でも9位という結果を出した。

 

*選手以外の活動は何をしていますか?

 

 「NSAジュニア代表のコーチング、メディア活動、学校で講演をしたり、去年からは『3 Riding Ocean』というプロジェクトを始めました。

 

 3 Riding Oceanは、西本エミリ、西本ジュリと遠征の合間に世界中の海でサーフィンをしながら、サスティナブルサーチをしていくというプロジェクトで、海を守るためには何が必要なのか、今どんなことが起きているのか、世界中が取り組んでいる2030年のSDGsを目指し旅をするという活動です。」

 

コロナ以前のように再び1年の半分は海外で過ごす生活に。日本、国外いろんな場所で幅広い活動をしている。

 

サーフィンを好きで始めたのなら、好きな気持ちを大事にしたらいい。

 

 

*今の若いサーファーやこれからプロサーファーを目指す若いサーファーにアドバイスをするとしたら?

 

 

 「自分がサーフィンを好きで始めたのだったら、好きな気持ちを大事にしたらいいと思います。もしサーフィンの事がいやだったり嫌いだったら辞めればいいと思うし、やらされているのだったら続ける必要もないと思うから。

 

でも、サーフィンに固執していたら世界が狭くなってしまうから、他の社会とも繋がっていた方がいいと思う。今は学校に行かない子とかも多いけれど、学校は勉強するだけの場所ではなくて社会を学ぶ場所でもあるから。

 

 1つのことを極めるのは大事だけど、、、いろんな事をできた上でサーフィン上手だねっていうのはすごいけど、サーフィン上手だねで、いろんな事できないのはよくないから。」

 

 

若手に負けないパワフルなサーフィンを見せる大村奈央
アスリートとして絶え間ない努力があってこそのパフォーマンス。大村奈央

 

 コロナ以前は数ヶ月おきに滞在していたゴールドコーストに久しぶりに戻ってきたナオちゃん。選手としての活動だけでなくプロサーファーとして幅広く活動している姿は、まさにサーフィン選手のお手本のような存在と言えるのではないだろうか。

 

そして今まで得たたくさんの経験を後輩に伝えたりと、また1つ違うステージに成長した姿を感じさせられながらも、何よりも変わらずに『サーフィンが好き』という事が伝わる対話ができました。

 

 

大村奈央

 

 先月から引き続き3月もサーフィンのハイシーズンといった感じのオーストラリア。WSL QSオーストラリアレッグだけでなく、ブレイク・ジョンストンが世界最長のギネス世界記録を更新となる40時間以上のサーフセッションした事など、ここには書き切れないほどたくさんのイベントが行われていました。

 

渡航者も引き続き増えており、海の中はまるで日本と思わせるかのように多くの日本人サーファーにもお会いします。下旬にはQSオーストラリアレッグに参加していた選手もたくさんゴールドコーストに訪れていました。

 

 そして4月4日からベルズビーチで開催されるCTの前にゴールドコーストに訪れた、ケリー・スレーターやジョン・ジョン・フローレンス、コロへ・アンディーノも海で目撃したという情報も。そのベルズビーチでのCT後に4月20日からマーガレットリバーでもCTが開催されます。

 

 ミッドシーズンカットが決まる重要な2戦。4月もオーストラリアで熱いサーフシーンが見られそうです。

 

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。