サーフィン男子の東京五輪銀メダリストで、2022 ISA WORLD SURFING GAMESで日本人初の金メダルを獲得した五十嵐カノア (木下グループ所属)が凱旋。彼のスポンサーである「SHISEIDO」のフラッグシップストアで、記者会見が行われた。
2019年より、SHISEIDO BLUE PROJECTのアンバサダー として活動する五十嵐カノアは、ファンやフォロワーが海洋保護に関心をもち、活動に参加してくれることを目指している。
またSHISEIDOは、2019年より”Respect for Oceans”をテーマに、「WSL(ワールドサーフリーグ」と、WSLの非営利団体「WSL PURE」、そして五十嵐カノアをはじめとする世界で活躍するトッププロサーファ 一達とビーチクリーンを実施するなど、海を守る「SHISEIDO BLUE PROJECT」を推進している。
WSLで最終ランキング5位、ISA世界選手権では金メダルを獲得した2022年はどんな年でしたか?
カノア:良い結果も残せたんですが、すごく勉強になった年でもありました。サーフィンのテクニックだけではなくて、まだまだ学ぶことがたくさんあります。今がやっとスタートという感じで、これからが楽しみです。
今回のISA世界選手権で金メダルを取れた勝因はなんでしょうか?
カノア:今年最後のイベントで、体もちょっと疲れていたんですが、チームイベントで日本のためにという気持ちで戦ったことが力になりました。
他のCT選手はシーズンが終わってバケーションでリラックスしていたりしていたんですが、自分はメンタルとフィジカルの両方がちょっと疲れていた感じでした。
でも周りのチームからサポートで凄くパワーをもらって、日本のファンのサポートのおかげですね。みんなのために頑張って、みんなのために次のオリンピックに向けて、幸せのニーズをみんなに見せたいなって思って頑張れたのが勝因です。
ハンティントンの慣れ親しんだ海での試合は有利に働いたのでしょうか?
カノア:自信がありました。練習もリラックスしてやれましたね。大会前もいつもとは違うプレッシャーで。板の調子も凄くよくて、乗り易い慣れた板で、あと体もすごく調子が良かったことと、チームのサポートもあって、全てが上手くいった感じです。チームのために頑張ろうというエネルギーが良い結果に結びついたんだと思います。
ファイナルで印象に残ったライディングはありますか?
カノア:1本目ですごく良いエアを決めて、決勝でエアを決めた瞬間に今日は絶対勝てる日だと思いました。
これまで難しいこともあったけど、ネバーギブアップという絶対に諦めないという心というか、子供の頃から『絶対に勝つ』という思いがあって、それが良かったんだと思います。
世界チャンピオンとパリオリンピックで金メダルを取ることが目標です。
世界中でサーフィンするカノア選手ですが、どこの海が一番好きですか?
カノア:タヒチとハンティントンビーチですね。ハンティントンビーチは、子供の頃からサーフィンしてきた「ホームブレイク」です。
タヒチは自分にとって、ちょっと怖いチャレンジな波だったんです。それが最近練習して面白く感じられるようになって、自信が持てるようになった。ハンティントビーチとはタイプの違う波だけど、すごく好きです。
タヒチが世界の中で一番好きな波になった。
タヒチは乗るのが難しいパワフルな波で、慣れていないと乗れない波です。最近になってやっと慣れてきた感じで。タヒチの波にチャレンジすることに向けてトレーニングして、それを克服できて、自分にとって世界の中で一番好きな波になったことが嬉しいです。
東京五輪ではサーフィンを良いイメージにしたかった。
タヒチといえば、ビッグイベント(パリオリンピック)がありますね。
カノア:東京オリンピックが終わったばかりだけれど、すでにパリオリンピックに向けて、練習も始まっています。予選(ISA世界選手権)も始まって、東京とはまた違ったプレッシャーがかかっています。そのチャレンジが1日1日近付いて来ているというだけで、ワクワクする気持ちですね。
東京オリンピックでは、サーフィンが初めてオリンピック競技になるということで、サーフィン自体を世界に良く見せたかった。そのプレッシャーがありました。自分の結果も大事だけど、サーフィンを良いイメージにしたかった。あと日本開催というのもプレッシャーでした。
次のパリでは結果に対するプレッシャーがあります。去年は銀メダルで悔しい気持ちでした。パリでは金メダルを目指します。(オリンピックが)初めてのプレッシャーもないし、日本開催でもない、ちょっと違うプレッシャーなのかなって。それも面白いチャレンジだと思っています。
自分の100パーセントの力を世界に見せられていない。
サーフィンがオリンピックになったことで、よりプロスポーツとして認められるようになって、世界から注目されるようになった。世界が見てくれていることが、また新しいプレッシャーとモチベーションにもなってます。
1年ぐらい前から世界チャンピオンになれるという自信が出てきたし、トップの選手と戦っているということだけでなく、そこで世界チャンピオンになるっていう新しい目標ができて、さらに面白くなってきました。
どこでも勝てることを目標にやってきました。去年ぐらいからCTのカレンダーを見ても、苦手に思う開催地がなくなったんです。そういう自信が持てたことで、試合に勝つことに集中できています。
まだ100パーセントの自分のサーフィンの力を世界に見せられていないんだと思います。それが悔しい部分もある。プロアスリートとしても、まだまだ見せられる部分があると思うので、そういう意味でこれからがスタートだと思います。
これからの目標を教えてください。
カノア:(ハンティントンのISA世界選手権で)パリオリンピックに行くための枠をゲットできたことは『ミッション・コンプリート』と感じています。
これからの目標はWSLの世界チャンピオンになること。そこに向かって集中していくのと、2022年−2023年はパリオリンピックの準備をスタートし、2024年にはパリオリンピックで金メダルを取ることが目標です。
その2つの目標だけで、1日1日が凄く忙しくなると思うので、トレーニングも一杯して、その次のロサンゼルスのオリンピックも直ぐそこなので、ちょっとずつ毎日目標に近付けるように集中していきます。
先日のISA世界選手権でカノア選手が金メダルを取ったことにより、2024年のパリオリンピックでの日本の1枠獲得につながりました。日本にとっても意味のある勝利だったと思いますが、カノア選手にとって、日本代表の意味は?
カノア:日本を代表することは嬉しいですね。サーフィンは世界のスポーツだけど、オーストラリア、アメリカ、ブラジルといった強い国のトップの選手が出場するわけですが、日本もサーフィンが強いというのを世界に見せたい。
世界で日本の旗を振って見せられることは、本当にありがたいし感謝の気持ちで一杯です。日本の旗を振るだけではなくてサーフィンの旗を振れることが嬉しい。これからもずっとみんなに幸せを毎日のように届けたい。その気持ちがモチベーションになって力になっています。
環境保全にも力を入れているカノア選手、海を守る大切さについてはどのように考えていますか?
大会の結果も大切ですが、自分はサーフィンが大好きで、試合も大好きです。そのサーフィンは何処でやるのかというと海です。海のおかげで、全てのことが成り立っている。その海を大切にすることが一番大事かなと思います。
優勝するの目標、そのためのトレーニングとか言っているけど、海を守る目標もある。SHISEIDO BLUE PROJECTと一緒にコラボレーションして、その目標に近付けることは本当に嬉しいことです。プロアスリートは勝つことだけではなくて、世界をよくすることも大切だと思っています。
世界的なサーフィンスターとなった五十嵐カノア。来年の1月には2023年度のワールドサーフリーグのチャンピオンシップツアーがハワイで始まる。そこで年間のトップ10に入ることでパリ五輪の出場権を獲得できる。
改めてカノアの考えていたことや、これから彼が進もうとする道が明確になったような久しぶりの会見だった。プロアスリートとして、ひとまわりもふたまわりも大きく成長が感じられるカノア。来シーズンは更なる飛躍の年となりそうだ。頑張れ!カノア!