
NOJILAND FILMこと菅野大典氏が、現地からオーストラリアの最新情報を伝えてくれる【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第21回となる今回は、WSLのハイグレードのQSイベントが行われ、6戦中5戦のベストリザルトによって決定したCSの出場者などをリポート。
取材、文、写真:菅野大典
3月のゴールドコースト。
先月末に降り出した土砂降りの雨の影響で、オーストラリア東海岸の一部の地域では町全体が水没するほど史上稀に見るほどの被害を出しました。
ミック・ファニングやジョエル・パーキンソンをはじめ、著名人から一般人までたくさんの人が自らジェットスキーや船を出し人命救助や救援物資の配達などが行われていました。


水の引いた後には、たくさんのボランティアが集まり助け合いながらの片付け作業が行われており、災害からの復興のために多くのドネーション活動やイベントも行われています。
ホームタウンが災害に見舞われたエバンズヘッズ出身のルーキーCTサーファーのキャラム・ロブソン。プライズマニーの20%をドネーションすると発表。
その後は、ようやくオーストラリアといった天候に戻り、晴れ間の広がる日が多く続いています。

減少傾向にあったコロナウイルスの感染状況は、3月に入り再び上昇傾向に。それでも死者やICUに入る感染者の数は減少傾向になっています。コロナウイルスとの共存路線の政策に舵をとったオーストラリア政府ですが、最近は以前ほどニュースで取り上げられなくなった感じがあります。
規制も緩和されており、クイーンズランドでは3月4日から屋内でのマスク着用義務は撤廃(病院や空港等の施設は除く)されました。
ただコロナウイルス陽性が発覚した場合は自宅隔離を7日間しなければならないなどといった規制はあり、従業員不足により経営困難な店舗もたくさんある状況は変わらず続いております。
3月上旬もコンディションの良い日が続いていました。

波の状況はサイクロン級のうねりが先月から引き続き残り、3月上旬もコンディションの良い日が続いていました。

毎日のように今年で1番いい波とも言えるようなコンディションが続き、水の色が茶色ながらもこのスウェルを楽しむサーファーの姿がたくさん、QSの試合の合間ながらホームに戻ってこのうねりにチャージをする選手達の姿も見られました。




レインボーベイからグリーンマウントでは何10発とアクションの入る波がブレイク。


この時期のゴールドコーストのポイントブレイクは1年を通して最も波のサイズがありコンディションが整いやすい時期。
スナッパーロックスをはじめ、レインボーベイ、グリーンマウント、キラ、カランビン、バーレーヘッズと波のポテンシャルが高い場所も多く、混雑していてたった1本の波をとる事も難しい場所ですが、その1本の波の価値はとても高く多くのサーファーを魅了しています。

オーストラリア全域で大会が開催
3月は大会も目白押し。
各ボードライダーズのイベントだけでなく、クイーンズランドチャンピオンを決める大会である「クイーンズランド・サーフフェスティバル」がサンシャインコーストで行われ、メルボルンのウェーブプールでは「リップカール・グロムサーチ」のナショナルファイナルが行われるなど、オーストラリア全域で大会が開催されています。
その中でもやはり注目のイベントはWSLクオリファイシリーズ。2月に1000のグレードを3戦終え、3月はいよいよハイグレードの試合がスタート。
オーストラリアQSスケジュール
- 2月10 – 13日(QS 1,000)Phillip Island Pro
- 2月22 – 25日(QS 1,000)CARVE Great Lakes Pro
- 2月27 – 3月1日(QS 1,000)Gage Roads Port Stephens Pro
- 3月4 – 6日(QS 1,000)Mad Mex Maroubra Pro
*災害の影響で翌年のシリーズ第1戦に延期 - 3月14 – 19日(QS 3,000)Vissla Central Coast Pro
(女子)Sisstrevolution Central Coast Pro - 3月21 – 25日(QS 5,000)Tweed Coast Pro
- 3月29 – 4月3日(QS 5,000)City of Newcastle Pro
当初3月4 – 6日に予定されていたマルーブラのQS1000は災害により延期と発表されていたが、2023年のシリーズの初戦に変更。それによって2022年のシリーズは6戦中5戦のベストリザルトによってCSへの出場権(男子9名、女子7名+ワイルドカード1名が発表されている)が争われる。
アボカビーチで行われたQS3000のセントラルコーストプロでは、男子はカラニ・ボール、女子はメイシー・キャラハンが優勝。

CTサーファーであるモリー・ピックラムも地元のビッグイベントに参加。素晴らしいサーフィンで準優勝を飾った。
そして舞台は5000のグレードのキャバリタビーチで開催のTWEED COAST PROへ。

毎年WSLの大会が開催されているキャバリタビーチは、ロケーションの良さと豊富で質の高い波で多くのサーファーに人気の場所となっています。今大会も地形が整っておりイベント期間5日間を通して形の良いライトハンドの波がブレイクしていました。

形のいい波をとればソリッドに4、5発入るコンディションだけに、ポテンシャルのない波に手を出してしまったら点数は限定的に。

アボカビーチのQS3000では好調なサーフィンを見せROUND OF 16まで進出していたオーストラリア生まれの相澤日向。間隔が長くシフトして入ってくるセットの波をうまく取ることができずにROUND OF 64で敗退の33位。乗れば点数が出るサーフィンなだけに残念な結果となってしまった。

フィリップアイランドのQS1000で優勝しているNo.1シードのジェイコブ・ウィルコックス。ROUND OF 64のヒートでは波選びに苦戦し開始から20分ノーライドという状況に。それでも終了間際には素晴らしい演技を見せ、このラウンドはメイクしていたが、ファイナルデイまで残ることができずに13位でフィニッシュ。

以前はCTで活躍していたスチュワート・ケネディー。久しぶりにコンテストシーンに戻ってきた様子が全然なくヒートを着実にこなして9位でフィニッシュ。

昨年のこの大会で準優勝のミッチ・パーキンソン。どんなに点差が離れていようとエアー1発で試合をひっくり返す勝負強さは健在。9位でフィニッシュながらもランキングを一気に上げ、最終戦次第でCS出場権を獲得できる位置まで上り詰めた。
沖にはジェットスキーを2台配置し、常にドローンも飛ばしながら、サメの対策へ厳戒態勢で試合が開催。今大会ではサメが規定の距離まで侵入してきたということで2度中断されたヒートがありました。
最終日はうねりがだいぶ小さくなるものの、地形のいいおかげで時折入ってくるセットは3ftほどのコンディション。
QS1000の試合には参加せず、アボカビーチのQS3000から出場しているキーリー・アンドリュー。キレキレのサーフィンを披露し3位でフィニッシュ。
ファイナルではお馴染みの顔とも言えるソフィー・マカラック。今年出場している試合では、優勝を含む全てが3位以上の結果。それだけ試合運びと技術が安定している。
見事優勝したディミティー・ストイル。マンオンマンのいい波のコンディションとなれば実力が際立つ。他の試合では結果が残せてなかったが、ここでの優勝5000ポイントでCS出場権を確定させた。

2年前に”オーストラリアングランドスラム”の1戦として開催され、素晴らしいサーフィンを見せて優勝したのが記憶に新しい、現役のCTサーファーであるイーサン・ユーイング。
ラウンドオブ112から出場し、他を寄せ付けないダントツのサーフィンで勝ち上がっていたが、セミファイナルでカイアス・キングに敗れ3位という結果に。それでもバリエーションある1つ1つのライディングは素晴らしく、他のサーファーよりも格段にレベルの高いサーフィンを披露していた。

今年の初めから、このQSオーストラリアレッグのためにニュージーランドから来ているキーフ・バトラー。CT選手をはじめ、多くの若手オージーサーファーの頼れるコーチであるジェイ・トンプソンの元、セミファイナルまで進出。



アボカビーチでのQS3000では初戦敗退と取りこぼしたものの、再び安定した強さを見せたジョエル・ボーン。準優勝を勝ち取り、若手ながら堂々のシリーズランキング1位で最終戦へ。
現代の試合ではエアーは必須。バリエーションも多く成功率がとにかく高い。
そして見事優勝を飾ったのはバイロンベイ出身のカイアス・キング。

幼少の時からスーパーグロムとして注目されていた選手であり、若手サーファーのカリスマ的存在のカイアスですが、今までに大きな大会での勝利が無かっただけにとても嬉しいWSLイベントの初優勝。
セミファイナル、ファイナルのヒート共に開始早々に形のいい波をとり、エクセレントライディングを出すなど、波数が少ないコンディションのヒートで完璧な試合運びと、ヒートへの集中力を見せていた。


そして、リージョナルシリーズ最終戦となるニューキャッスルでは、毎年このイベントに参加している元CTサーファーであるジュリアン・ウィルソンをはじめ、現役のCTサーファーであるライアン・カリナン、ジャクソン・ベイカー、レオナルド・フィオラバンティ、フレデリコ・モラリスといったメンバーがベルズビーチで行われるCTイベントのウォームアップとして出場。
トップシードが早期敗退するなど波乱の展開が続きながら、ストームの接近によりクローズコンディションが続きイベントのフォーマットを変更したりするなど、最終日の最後の最後まで誰がチャレンジャーシリーズの出場権を勝ち取るのかわからない状況。
その中で優勝を勝ちとったのはニューキャッスルをホームとするジャクソン・ベイカーとメイシー・キャラハン。

通常のフォーマットから4人ヒート20分で全て行い、ファイナルが終了する時間はすでに日が沈んでいた。
CSに出場するオーストラリア / オセアニア地区のサーファーが確定。
そして最終ランキングは以下の通りとなり、CSに出場するオーストラリア / オセアニア地区のサーファーが確定。1枠あるワイルドカードはまた後日発表される予定です。
オーストラリア・オセアニア チャレンジャーシリーズ 男子予選通過者
- ジョエル・ヴォーン
- カラニ・ボール
- カイアス・キング
- ビリー・ステアマンド
- テ・ケフ・ケフ・バトラー
- ジェイコブ・ウィルコックス
- マイキー・マクドナー
- クリス・ザフィス
- シェルドン・シムクス
オーストラリア・オセアニア チャレンジャー・シリーズ女子予選通過者。
- メイシー・キャラハン
- ディミティ・ストイル
- ソフィー・マッカロク
- ペイジ・ハレブ
- フィリッパ・アンダーソン
- ホリー・ウィリアムズ
- ザーリ・ケリー
地域別男女ワイルドカード は未定
グレードの高い試合が残っていたため、毎ヒートごとにランキングが移り変わり、前半戦終了時とは大分違った結果となりました。
2ヶ月で6戦という熱い2021/22年度のクオリファイシリーズを終えたばかりですが、選手達は休む間もなく4月5日から2022/23年度のクオリファイシリーズの1戦目であるMad Mex Maroubra Pro(QS 1,000)が開催。2戦目にもGold Coast Open(QS1000)が4月30日からスケジュールされています。
そして何よりも10日から始まるRip Curl Pro Bells Beachと24日から始まるMargaret River ProのCT2戦は大注目の大会。4月のオーストラリアのサーフシーンは見逃せません。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
INSTAGRAM :https://www.instagram.com/nojiland/