
NOJILAND FILMこと菅野大典氏が、現地からオーストラリアの最新情報を伝えてくれる【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第19回となる今回は、オーストラリアのコロナ最新情報、シングルフィン・フェスティバル、USHER CUP開催などです。
取材、文、写真:菅野大典
2022年1月。
夏のゴールドコーストは晴れた日はカラッとした暖かさで、風通しのいい場所であれば冷房もいらず、日が出ない雲の多い日は気温もそこまで上がることないので、とても過ごしやすいのが特徴です。
1月26日はオーストラリアンデー(建国記念日)となる祝日で、たくさんの国旗がいたる所に掲げられ休日が楽しまれていました。
コロナウイルス感染の影響でスクールホリデーも延長され長い夏休みとなっています。
現在はピークアウトして少し減少傾向に
コロナウイルスの感染状況は、先月末から増加を一途をたどり、年末年始を家で隔離生活を過ごす人がたくさんいた状況にありました。
一時は検査場は収拾のつかない状況になり、抗原検査キットも手に入らないという状況に陥り、人手不足による物品供給の低下によりスーパーは品切れが続出、飲食店等も従業員不足により営業できない店もたくさんあり、明日店開けれるかどうかわからないという日が毎日続いていました。
中旬には国内全体での新規感染者が10万人を超す日もあり感染状況もピークを迎えましたが、現在は次第にピークアウトして少し減少傾向にあります。
COVID19data : 入院者とICUのグラフ
COVID19data : 死者平均グラフ。
重症化しにくいと言われているオミクロンと言われていますが、感染者からの割合は少ないものの、今まで封じ込めに成功していた時から死者数は増え、ICUにかかる人数は少し増加、病院も逼迫してきている様子です。
日本から隔離無しで渡航が可能に。
ワクチンの接種率は、クイーンズランド州でも2回のワクチン接種率が90%を超え州境や国境の規制を解除。これによりついに日本から隔離無しで渡航が可能となりました。
渡航条件は先月に解除されたニューサウスウェールズ州やビクトリア州と同様に2回のワクチン摂取を満たしている者で、入国してからの抗原検査で陰性証明を提示しなくてはなりません。
政府としては労働者不足を解消するために、就労可能なビザである学生ビザとワーキングホリデービザの申請料を免除にする(学生ビザは3月19日まで、ワーキングホリデーは4月19日まで)など、国外者の労働力に期待をしている状況です。
ケリー・スレーターはオーストラリアに入国できるのか。
ただし、オーストラリア政府はどんな人であっても特別待遇はしておらず、ワクチンを2回摂取していないと入国できないという規律を厳格にしており、今月テニスの全豪オープンのために来豪した前回王者のジョコビッチも、ビザの発行をめぐり裁判沙汰になり入国ができませんでした。
この事件は多くの波紋を呼ぶ事となり、今後予定されているCTのオーストラリアレッグや他のスポーツの国際大会にも少なからず影響を及ぼす事になりそうで、現在11回の世界王者であるケリー・スレーターはワクチンを打っていないことを発表しており、オーストラリアレッグの出場には疑問視されています。
波のコンディションは先月末より続くウネリもあり元旦からいい波に恵まれています。
2日、3日にはトロピカルサイクロンSETHからのウネリを受け、キラには極上の波がブレイクしました。
連日プロサーファーによるセッションで大盛り上がりし、堤防や歩道にはギャラリーが溢れ、年に1度あるかないかのスウェルの観戦を楽しまれていました。
波を切り刻むミック・ファニング。
サーファーにとっては夢のようなコンディションのキラのサイクロンスウェル。
その後も地形が崩れる場所があるものの、毎日のようにサイズのあるコンディションが続き2022年の初めから大当たりの月に。
中旬には進路的には遠いい場所に位置していたものの、素晴らしいスウェルを届けてくれたトロピカルサイクロンCODY発生。ニューサウスウェールズ州にあるとあるポイントでは極上なメンバーによるセッションが行われていた。
まん丸のディープバレルをメイクしてきたシェルドン・シムカス。
特大アーリーウープを決めるノア・ディーン。
再びサンドパンピングによる砂を流したおかげで地形がついたスナッパーロックスでは、連日チューブコンディションに。
ここで育ったサーファーはみんなエントリーはロックジャンプから。
スクールホリデーのおかげで1日中キッズサーファーがサーフィンしていました。
人が少なくなる夕暮れと共に毎日目にするのがマイキー・ライト。今年からフリーサーファーとして活動しているマイキーは、いつもカメラマンを連れて入水してきていました。
シングルフィン・フェスティバルが開催。
1月はイベントも豊富に行われ、ゴールドコーストの夏の風物詩となっているビラボンとバーレーボードライダーズ主催による「シングルフィン・フェスティバル」が8日、9日に行われた。毎年豪華なメンバーが出場することで有名なこの大会も今年で25周年。
自分に合う板を探しているディミティー・ストイル。使用ボードは全て1980年以前に作られた板を使わなくてはならない。
元世界チャンピオンであるジョエル・パーキンソンや、マーク・オキールポという名前が大会前にはエントリーされていたが、怪我のため欠場。コロナウイルスの影響もあるせいか、昨年ほどビッグネームは出場していなかったが、それでも相変わらず大盛り上がりのイベントとなっていた。
コンテストに出場する人もしない人も、サーフィン業界の人達が毎年顔合わせの場となるイベントになっている。
バーレーヘッズローカルである相澤日向も出場。使用した板は母親がサーフィンを始めた時に初めて使用したロックダンスの板であるそうで、日本の実家に使われずに眠っていたものを持って帰ってきたものと言っていました。
惜しくもセミファイナルで敗退してしまった相澤日向だが、ホームポイントでのイベントを楽しんでいた。
女子はメイシー・キャハンが出場し見事に優勝。
ジュニアはタイ・リチャードソンが圧巻の3連覇を果たした。
男子はローカルサーファーのマディー・ジョブが長年夢見てたタイトルを獲得。完全に波を知り尽くしているヒート運びで優勝した。
表彰式には大勢の人だかり。大盛況で幕をしめた。
USHER CUPがスナッパーロックスで開催。
1月28日〜30日には、昨年から開催されているUSHER CUPがスナッパーロックスで開催。
このイベントはUSHER GROUPがスポンサーとなり、スナッパーボードライダーズクラブの主催による、各ボードライダーズの代表選手(男3名、女1名)とワイルドカードの選手によって競われるイベント。
2月から始まるオーストラリアのQSシリーズの練習であったり、各ボードライダーズや有望なサーファーをサポートする目的で開催されています。賞金総額は昨年よりも増え$73,400となり、個人の優勝には男女共に$7,000。参加するボードライダーズの数も23クラブとなり、さらにパワーアップして行われていました。
前日まで続いていたうねりも2~3ftと下がり、オンショアにより波は本来のスナッパーロックスといった感じではないが、地形の良いおかげでいい波を掴めばソリッドに4、5発はマニューバーが入るコンディション。
DAY1に女子のセミファイナルまで行われ、DAY2−3で男子のヒートを行い最後にレジェンドスーパーヒート、女子ファイナル、男子ファイナルのスケジュールで行われました。
ジャッジにはWSLのツアージャッジも務めるTy・Conaghanがヘッドジャッジ。
パームビーチ代表の西村いちごとワイルドカードを得て出場した馬庭彩。ラウンド1から同じヒートにクレジットされた。
西村いちご。序盤から5.83ptをスコアし幸先よくヒートを進めたが、バックアップを伸ばせず惜しくも敗退。
試合終了間際にいつも逆転してくる勝負強さを持つ馬庭彩。ラウンド1を勝ち上がり、ラウンド2でも最後に素晴らしいライディングを披露したが惜しくもスコアが届かず17位という結果になった。
エクセレントスコアーを連発していたディミティー・ストイル。ストレートエアーまで披露。
笑顔で談笑しながらヒートに臨むエリー・ブルックスとソフィー・マクロッチ。本番のチャレンジャーシリーズのようなピリついた雰囲気と違い、リラックスした様子の選手が多くいたのが印象的でした。
素晴らしいアプローチとトップアクションを繰り広げたザーリ・ケリ–。
若手ながらこのような豪華メンバーといい波のコンディションで対戦できるのは最高の経験。これからが楽しみなミア・ファパッツ。
ヒート前にコーチであるジェイ・トンプソンと笑顔で話す相澤日向。
クリティカルセクションに板をねじ込み特大スプレーを何発もあげていた。
個人スポーツながら同じクラブのチームメイトが暖かく迎えてくれるのがボードライダーズの良いところ。
ファイナルデイとなったDAY3は、サイズも上がりコンディションも整い、素晴らしいライディングがたくさん見られました。
ベルズビーチのローカルであるゼビアー・ハックステーブル。シングルハイエストスコアとなる9.47ptをマーク
ノースストラディー島から参加したイーサン・ユーイングの兄であるカーティス・ユーイング
良い波に乗ればスコアは付いてくる相澤日向。惜しくもラウンド3で敗退し17位という結果になったが、2月から始まるQSの連戦前にこのような練習試合ができてよかったと言っていた。
レジェンドスーパーヒートにはジョッシュ・カー、ディーン・モリソン、ライアン・ヒップウッドと豪華なメンバーに加えて、スナッパーボードライダーズのプレジデントであるジェイ・フィリップスが参戦。
優勝したジョッシュ・カー。スタイリッシュなサーフィンはいまでも健在。バリエーションのあるライディングで観客を魅了してくれました。
女子のファイナルには昨年までCTの舞台で戦っていたメイシー・キャラハン、キーリー・アンドリューとCSに出場していたエリー・ブルックス、セミファイナルで最後に大逆転劇をみせたスナッパーロックスの若手サーファー、シャーロット。
リプレイスメントサーファーでありながらチャンスをもらいファイナルへ進出したシャーロット。ファイナルでは他のメンバーに圧倒される形となったが、まだまだこれから楽しみな若手サーファー、大健闘の4位。
ヒート序盤からいい波を掴みグッドスコアを連発していたエリー・ブルックス。そのまま優勝するかと思われたが終盤で逆転され惜しくも3位に。
果敢にチューブになる波にトライし、キレキレのリップアクションも連発していたキーリー・アンドリューが2位。今年からCTの舞台から外れたもののサーフィンの実力は群を抜いていた。
サイズのある波を選び、しっかりとした大きなターンでエクセレントライドをしたメイシー・キャラハンが優勝。
笑顔で陸に上がり優勝を喜ぶメイシー。サーフィンを楽しみながらも、しっかりとした試合運びをするのが印象的でした。
健闘を讃え合うメイシーとキーリー。CTというレベルの高い場所で戦っていただけに、大会を通して二人の実力は群を抜いていました。
男子のファイナリストは昨年度の準優勝者であるスナッパーロックスのローカルであるジャガー・バーソロミューと同じくローカルサーファーであるシェルドン・シムカス、11月にゴールドコーストで開かれたオーストラリアンオープンでカムバックし見事優勝したベテランのネーサン・ヘッジと若干16歳ながら素晴らしいサーフィンで勝ち上がってきたヌーサのベン・ローレンソン。
今大会で間違いなくその名を知らしめたベン。素晴らしいバックハンドサーフィンを披露してくれたが、ファイナルでは思うように波を見つけれずに4位となった。
昨年に続き堂々のファイナル進出のジャガー。ファイナルでは波数も減り自分の実力を出し切れずに不完全燃焼といった感じの3位となった。
他の選手がいい波を見つけるのに苦労している中で、1人序盤からスコアーを重ねていたネーサン。ベテランながらの経験と試合運びは群を抜いていたが0.01pt差で惜しくも2位となった。
そして、この豪華メンバーによる戦いの頂点に立ったのはスナッパーロックスのローカルヒーローであるシェルドン・シムカス。
開始16分はノーライド。そして手を出した波もショルダーが続かず単発のライディングに。
アンダープライオリティーとなり時間が無くなる中、作戦を切り替え1人ビハインドロックに向かいサイズのある波をゲット。身体がすっぽりっと入るチューブからソリッドに2発のターンを入れ、プライオリティを持っている選手にブロックされるも、すぐさまプルアウトし後ろにきている波にテイクオフし、今度はエアーリバースをメイク。わずか30秒で7.07ptと7.70ptをスコアした。
ビハインドロックから、ディープバレルを決めるシェルドン。
さらに次の波にもテイクオフして難易度の高いエアーリバースをメイク。ローカルならではのサーフィンで第逆転劇を演じた。
同じスナッパーロックスのチームメイトに祝福を受けるシェルドン。嬉しい優勝を獲得した。
日本にもボードライダーズクラブの仕組みを作って。
昨年に続き素晴らしいイベントとなったUSHER CUP。
選手を大事にし、育成も兼ねて、選手ファーストの配慮が感じさせられるイベントを2022年の初めの月から観戦させていただきました。
また、このUSHER CUPは来年からアメリカのサンクレメンテや、ニュージーランドのラグランなど、インターナショナルのボードライダーズクラブを招待し、ワールドクラブチャンピオンシップを行う予定である事を発表。
昨年度から始まった大会ですが、今後も大注目のイベントとなりそうです。そして、是非日本にもボードライダーズクラブの仕組みを作ってワールドクラブチャンピオンシップに出場してもらいたいなと感じました。
コロナウイルス感染により国境を閉ざしてから約2年立ち、やっとまた国境がオープンしました。
まだ落ち着いてはいない今のオーストラリアの感染状況や、個人的なコロナウイルスのワクチンに対する考えもあるので、あまり声を大にしては言えないのですが、サーフィンを好きな人には長期滞在ビザによるオーストラリアへの渡航はお勧めしたいと思っています。
サーフィンを好きな人にとってゴールドコーストをはじめとするオーストラリアは、とても魅力的な場所だと思うし、昔と違い人口も増え混雑はしてきているものの、それだけ生活しやすい環境になっています。
英語ができなくても働く場所はたくさんあり、サーフボード作りであったりとかサーフィンに関わる仕事にも携われる環境もありながら、最低時給で2000円程もらえるような環境で、仕事に対してもサービス残業などなく融通もきく社会になっています。
もちろん異国の地で文化も違うので人によっては合わない部分などもあると思うし、厳しく感じる部分などもあると思いますが、長い人生の何年かくらいは海外で生活してみるのもいいと思います。
と言って自分は10年以上住んでしまっているのですが、、、(笑)
先月クイーンズランド観光局のコラムで、サーフィンで夢を叶えた人たちの事を書かせていただきました。
ゴールドコーストのサーフボード業界の様子や変化など書いているのでぜひご覧になってみてください。
https://www.queensland.com/jp/ja/things-to-do/adventure/surfing/gold-coast-shapers
クイーンズランド観光局の記事
可能性は無限大。1度きりの人生の充実したサーフィンライフを楽しめたらと思います。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
INSTAGRAM :https://www.instagram.com/nojiland/