9月のオーストラリア。キラ・ジュニア・チームチャレンジ、大学選手権、フィリップアイランド・ジュニアプロ、ISA世界ジュニア代表

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第39回となる今回は、キラ・ジュニア・チームチャレンジ、オーストラリアサーフィン大学選手権には井上龍一が出場、フィリップアイランド・ジュニアプロ、ISAワールドジュニア代表が決定。

取材、文、写真:菅野大典

 

 9月のゴールドコースト。

 晴れ間が広がれば気温は30度近くまで上昇する日もあり、春を通り越して夏の雰囲気を感じる日が続いています。

 

 

 週末のビーチに並ぶガゼボの数も先月より増えてきた感じで、暖かくなったビーチライフを満喫する人が増えてきました。

 

 

 屋外で行われるイベント事にはたくさんの人が。9月は日本の春休みにあたるスクールホリデーと重なるため、子連れで出掛けている人をよく目にします。

 

 

 毎年カランビンビーチで行われているスウェルイベント。人が多くいながらもゴミがそこまで出ないのは、ゴールドコーストのビーチでのイベントのいいところ。

 

 ゴールドコーストの波の状況はこの時期には珍しく初旬から東からのうねりが続きコンディションの良い日が続きました。

 

 

 地形の良いオープンビーチもあちらこちらに点在し、人も分散されているように感じます。

 

砂のついているポイントブレイクではチューブコンディションに。QSサーファーがニアスにいる間、ローカルサーファーやキッズサーファーが中心にサーフィンしていました。

 

 中旬にはさらにサイズアップ。D-BAHではキラジュニアチームチャレンジが15日〜17日にかけて開催されました。

 

 

 このイベントは、毎年夏の時期に行われるキラチームチャレンジのジュニアと女子のディビジョン版といった感じで、今大会にはオーストラリア中から総勢24ボードライダーズが集結。

 

それぞれのクラブが代表メンバー(U-18、16、14の各男女、U-12の男子、オープン女子)を選出しヒートが行われました。

 

 初日はまだまだサイズが抑えられていたものの、2日目からは一気にサイズが上がり年齢の低いディビジョンの選手には厳しいコンディションに。ゲットできずにスープに1本乗って終わってしまう選手や、ノーライドの選手も続出していました。

 

 

 特に風が吹き潮が引いている時間帯は、波もよれよれのチャレンジングコンディションになりましたが、それでも強い選手は繰り返し波に乗っていました。

 

パームビーチボードライダーズU -18代表のゼーン・シルベスター。子供の頃からフェイスの大きな波でサーフィンしているオージーサーファーはラインが太い。

 厳しいコンディションの中でもきっちりと2本の6点台を出したロングビーチボードライダーズオープン女子代表のギャビ・スパーク。

 

堤防の先にまで行き応援する姿や、勝った選手をみんなでビーチで迎える姿など、ボードライダーズならではの光景。
ボランティアスタッフによる出店。出場しない選手もクラブメンバーみんなで協力し合っています。

 ビーチにはたくさんのクラブメンバーの応援団が常に集結。毎ヒートがファイナルなのでずっと盛り上がりが冷めません。

 

 ヒートに向かう選手を送り出し、ビーチで演技を応援し、ヒートを終えた選手を迎え入れる。

 

 単純な事ですが、それがあるだけで出場する選手には力になるし、出れない選手はその舞台に立つ事を目標に努力する。ジュニア世代や女子選手にとっては厳しいコンディションの今大会でしたが、個人スポーツのサーフィンの競技でチームが協力し合い戦えるこのフォーマットは、やはり素晴らしいなと感じました。

 

 大会の総合優勝は男子はメレウェザーサーフボードクラブ、女子はロングリーフボードライダーズとアリーボードライダーズが同率首位となりました。

 

 下旬も波は続きゴールドコーストの9月は1ヶ月を通して波が続く月となりました。

 

スクールホリデーという事もあり昼間からキッズサーファーの姿がたくさん。

エピックなコンディションにはならないものの、風の合う場所や潮の良い時間帯には良いコンディションでサーフィンができる日が多い月となりました。

 

 今月に入ってから朝早い時間帯から強い北風が3、4日吹き続き、南風に変わりまた3、4日吹き続けるといった感じで、ゴールドコーストは完全に季節が変わった感じがします。

 

 まだまだウエットスーツを着ている人も多いですが、南風が吹き続いたあとは水温が上がりボードショーツでも海に入れる温度になる事も。昨年までの気候とは違い夏に向かう時期が早まっているように感じます。

 

 26日から28日にはマイアミビーチでユニスポーツによるオーストラリアサーフィン大学選手権が開催。

 

 ユニスポーツとは、オーストラリアにある42校の加盟大学の学生によるスポーツイベントで、サーフィンだけでなくラグビーやバスケットボールなど31種目の競技の大会があり、今年はゴールドコーストで開催され全国から6000人以上の大学生が参加。

 

 9月23日から29日の期間が設けられ、各競技のオーストラリアの大学王者が決められました。

 

サーフィンの会場となったマイアミビーチ。 現在サザンクロス大学に留学中の井上龍一もこの大会に参加。シリアスな雰囲気というよりもヒート前も選手同士で話すなどリラックスした感じでみんな笑顔で溢れていました。

 ラウンド1、2と順調に勝ち進むもクォーターファイナルではインターフェアを犯し、窮地に立たされる中、後半に爆発し8点台と7点(3.5点)を出しファイナルデイに進出。 試合後勝ち上がった選手には砂をかけてお祝いなど、学生の試合ならでは。

 

 大学生のイベントといえどサーフィン大国オーストラリアのサーフィン大会。トゥリー・スターリングやニアスのQS5000で3位となったロジー・スマートらQS選手も参加。その他のサーファーもファイナルデイに残るメンバーのレベルは高く白熱したヒートが繰り広げられました。

 

突然のストームにより途中オンホールドになる時間帯もあったファイナルデイ。

ファイナルへ向かう龍一。イベントを通して初日の朝以外はぐちゃぐちゃな2〜3ftといったコンディションでした。終了間際にヒートハイエストとなる6.5ptをスコアするものの、序盤にスコアをまとめることができずに3位で大会を終了。ニードスコアが少なかっただけに悔やまれる結果となった。

女子の優勝はロジー・スマート。素晴らしいバックハンドの演技で見事オーストラリアの大学王者に輝いた。試合後笑顔を見せるロジー。男子も女子も混戦したファイナルでした。

終了間際までギリギリの攻防となった男子ファイナルは、カイ・タンドラーが優勝。同じ大学のチームメイトと喜びを交わすカイ。以前はプロジュニアで優勝するなどとした実力を持ちながらも、今シーズンからはQSの試合に姿を見せなくなったが、素晴らしい実力を持つ選手。嬉しいオーストラリアの大学王者に輝いた。

 

フィリップアイランド・ジュニアプロ

 

9月は国外でWSLファイナルズやニアスのQS5000などのWSLイベントがある中、国内ではスクールホリデーと重なる事もありジュニアのイベントが充実した月となりました。

 

ビクトリア州やニューサウスウェールズ州ではリップカールグロムサーチ予選やウールワースグロムコンプ等国内の大会が行われ、フィリップアイランドでは、サーフィンオーストラリアのナショナル・ジュニア・ランキングのハイエストグレード(8スターイベント)であるフィリップアイランドジュニアプロが行われ、全国各地からジュニアサーファーが集結。

 

 

またしてもビッグタイトルを勝ち取ったU18ガールズで優勝のミラ・ブラウン。PIC:@moshxmedia

 

U14ボーイズファイナルでは9.25ptに加えフルローテーションエアーを決め10ptを出し19.25ptのヒートトータルで優勝した12歳のルカナ・カレン。もはや同世代には敵なしと思うくらい実力が抜けています。PIC : @moshxmedia

 

そしてこのイベントの数日後にサーフィンオーストラリアは11月にブラジルで行われるISAワールドジュニアチャンピオンシップのチームイルカンジス(オーストラリア代表)のメンバーを発表しました。

 

2023 ISA World Junior Surfing Championship – Team Irukandjis:

 

U18 ガールズ
ココ・ケアンズ、エリー・ハリソン、ジャーリ・ストークス

U18 ボーイズ
ハーレー・ウォルターズ、レニックス・スミス、ウィリス・ドルーマー

U16 ガールズ
アイラ・ハパッツ、ミラ・ブラウン、シエラ・カー

U16 ボーイズ
カッシュ・ブラウン、リコ・ハイビトル、フレッチャー・ケラー

 

 

子供にやらせるというより一緒にやる。家族ベースで楽しむ

 

今シーズンは残念ながらWSLの世界王者のタイトルを持ってくることができなかったオーストラリアでしたが、ベースとなる国内のジュニアのイベントを見ていても、今後もますます選手たちが強くなるだろうなと感じさせられました。

やはりオーストラリアのサーフィンをする環境の良さは素晴らしく、ただ質の良い波があるだけでなくオーストラリア人のライフスタイルも関わっているのかなと思います。

サーフィンは個人競技ですが、子供にとっては家族の協力は必要不可欠であり、スクールホリデーに合わせて家族がまとめて長期休暇をとったり、世界中で行われていたサーフエイドのメイク・ア・ウェーブ・チャレンジ(9月の30日間毎日サーフィンする企画)を一緒にやっていたり、サーフィンというものが身近にありながら、やらせるというより一緒にやる、子供のためにというよりも家族ベースで楽しんでいる感じがある気がしました。

 

夏場のシーズンでないにも関わらずいつもたくさんのキッズサーファーが溢れていた9月のゴールドコーストからのニュースでした。

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。