2021年JPSAグランドチャンピオン西慶司郎インタビュー 僕のサーフィン人生を大きく変えてくれたひと

2021年JPSAグランドチャンピオン西慶司郎

 

今シーズンの西慶司郎は、JPSAにおいて開幕戦の一宮プロで3位、茨城で5位、鴨川と最終戦の田原で2戦連続の準優勝するなど、優勝こそなかったが圧倒的な存在感でツアーを席巻。初のグランドチャンピオンを獲得した。

 

長男の修司、三男の優司とともに西三兄弟の次男として知られる西慶司郎。幼少期は四国でサーフィンスキルを磨き、プロ転向と同時に千葉に移住。現在は千葉の一宮をホームに活動している。そんな西慶司郎に強さの秘密を聞いた。

 

 

取材、撮影:DELTA FORCE SURF

 

 

ーーグランドチャンピオン獲得おめでとうございます。少し時間が経って、今シーズンを振り返って、どんなシーズンだったでしょうか。

 

ありがとうございます。今シーズンはスキル、メンタルの部分で、すごく成長を感じられた一年間でしたね。

 

 

ーー昨年鴨川で行われたJPSA特別戦での優勝。多くのファンが、西慶司郎のサーフィンが物凄いことになっていると驚いたはずです。何があったのでしょうか?

 

コロナの影響が大きかったと思います。

今までは、試合と試合の間隔がなく次から次へと試合が行われる環境でした。上手い選手のサーフィンを観て、それを吸収は出来るものの、その吸収したものを練習する時間がありませんでした。

でも、コロナの影響で試合が行われなかったことで練習する時間が増えて、吸収したものを自分のものにアレンジするために、今まで以上にサーフィンという競技に向き合ったのかなと思います。

私生活から、競技に繋がる部分だったり、トレーニングから繋がる部分を常に考えて動いたって感じです。

 

西慶司郎

 

ーー鴨川での優勝後ずっとJPSAグランドチャンピオンを目標にしてきたとコメントしていましたが、これまではグラチャンとかを考えたことはなかったんですか?

 

これまではスポットでの参戦が多かったので、意識した事は全然無かったです。でも将来的に獲れればとは思ってました。

 

ーーメンタル面、フィジカル面など、今回グラチャンを獲得できた要因はなんだと思っていますか? また、ヒーローインタビューで『人と同じでいいのか』という言葉があったから今の自分があると言っていました。その言葉をどのように受け止めていたんですか?

 

それは、アマチュア時代から面倒を見てもらっていて、生活面からサーフィンに向き合う姿勢などを厳しく指導して頂いた方からの言葉です。

 

スキル、フィジカルは、どれだけそこに時間をかけれたかだと思っています。

 

「他人と同じ量でいいのか?」をいつも自問自答しながら、日々のサーフィン、トレーニングに取り組む事で、誰よりも競技に打ち込んでいることになるので、自然に絶対的な自信がつきました。その結果がグラチャン獲得に繋がったのかなと思います。

 

 

海外のQSでは素晴らしいバレルライドを披露。パチタン Credit:(C) WSL / Tim Hain

 

ーーサーフィンを始めたきっかけは?

 

ありきたりですが、両親がやっていたから自然な流れでやるようになりました。

 

ーープロとしての活動は、2015年頃からだと思いますが、その当時のことを覚えていますか?

 

小さい頃からプロになりたいと思っていたので、常に目標にしていました。プロトライアルになると緊張しちゃって、2回トライアルで負けて、同い年の奴らがどんどんプロに転向していって、自分だけ取り残されていく中、3回目の田原でやっとプロになれた時は嬉しいよりもホッとしたって感じだったのを覚えています。

 

 

兄の修司には勝ちたい、弟の優司には負けたくない。

 

 

 

この投稿をInstagramで見る

 

西慶司郎(@keijironishi2)がシェアした投稿

ーーアマチュア時代から兄弟三人とも日本のトップクラスの選手でした。当然、兄弟の影響はあったと思うんですが、ライバルのような存在だったんですか?

 

はい、ライバルです。修司には勝ちたい、優司には負けたくないと今でも思います(笑笑) でも、兄弟のなかで1番センスがなかったのが自分でしたね(笑)。同じサーフィンという競技をやっている分、余計にそれを体感するし、悔しい思いも1番したと思います。

 

アマチュア時代は、修司がU-18、優司がU-16でISAの世界選手権に行くなか、自分1人だけ家で留守番ですからね(笑笑)。優司は同じU-16ディビジョンだっただけに、めっちゃ悔しかったです。それが2、3年続いたと思います。

 

 

2021年のJPSA初戦で優勝し、WSLのチャレンジャー・シリーズに参戦する稲葉玲王や川合美乃里も田中樹コーチとともに世界を目指してきたサーファーである。

 

 

ライバルは稲葉玲王。自分より遥か先のステージで戦ってる選手

 

 

ーー兄弟以外でライバルだと思うサーファーはいますか?

 

稲葉玲王です。自分とレオはサーフィンの種類が違うんです。 自分のサーフィンは、フローと切れが武器ですが、レオのようなパワーがないので、いつも盗みたいと思って一緒にサーフィンしてます(笑)

 

メンタル面でもそうですが、今年の試合の安定感は、レオとのサーフセッションの影響もありますね。

 

レオは自分より遥か先のステージで戦ってる選手で、身近に自分の夢に近い選手が居るっていうのは、かなりプラスになりますし、身近に居る分勝ちたいといつも思います。

 

 

サーフィン人生でのターニングポイントとなった田中樹との出会い。

 

 

ーー2017年の4月にインドネシのクルイで行われたWSLのQSで優勝、その年の10月に志田ではJPSA初優勝をしました。これまでのサーフィン人生でのターニングポイントと言えるのはいつでしたか? また田中樹コーチの存在とは?

 

樹君(田中樹)と出会ったのは、小4の頃ですね。生見でO’NEILL の試合があり、チームマネージャーの方が「試合終わりにチームO’Neill で集合写真を撮るから集まって」って言われて行ったのが、初めてだったと思います。

 

 

 

 

サーフィンが上手くならずに伸び悩んでました。

 

その後、小6で東北トリップ、中2で日本海トリップとO’Neill トリップに連れて行って貰いました。色々と楽しいトリップでした(笑)

 

高1の時に出場した湘南オープンの時に、樹君から、「これ終わったら千葉に拉致っから」って言われて千葉に連れて来られました(笑笑)それから樹君の家にしょっちゅう転がり込みましたね。今もですが。(笑笑)

 

当時はサーフィンが上手くならずに伸び悩んでましたし、兄弟との差、同年代で埋もれちゃってたのもあって、樹君にサーフィンのことでアドバイスを貰える環境でサーフィン出来たら最高だなと思って高2の時、千葉に引っ越しました。そこが人生を左右する選択だったのかなと思います。

 

 

 

プロに転向してから今まで、練習でのスキルアップコーチングと試合で勝つ為のヒートコーチングの2つにフォーカスして取り組んで来ました。

 

レッスンのレベルも変わって、頭をよく使って動くようになり、波の取り方、乗らせ方と常に相手選手のやりたい事をさせない動きは、樹君の知識、経験を活かした独特のヒートコーチングだから出来る賜物だと思います。自分が試合をするうえで絶対に欠かせない存在です。

 

 

樹コーチとの二人三脚でグランドチャンピオンを獲得

 

今年の慶司郎の強さを彼のコーチである田中樹はこう分析する。「今年一年を通して慶司郎に対して、 どのようにしたら試合に勝ちやすいかをメインに指導しました。何点スコアが出て、どのようにしたら自分のサーフィンが出せるのか。

結局これができてる選手は、自分が見ていて少ないですし、簡単そうで難しいと思います。 慶司郎は今年これが自分の中で少し上手く行ったのだと思います。 これが国内じゃなくて、世界になったらもっとスキルと共にに詰めていかないと行けないと思います。」

 

 

 

ーーコロナ前は海外の試合にフォーカスしてきたと思うのですが、日本のチャンピオンを獲って今後はどんな目標を掲げて行きますか? 計画があったら教えてください。

 

今年からWSLもチャレンジャー制に変わった事もあって、誰がCTにクォリファイしてもおかしくないシステムに変わったので、来年は自分もCTクォリファイを目指します。

 

日本トップ選手や海外の選手に比べれば、まだまだサーフィン、フィジカル、メンタルと弱点だらけなので、この冬シーズン気合を入れて練習に打ち込みます。

 

 

西慶司郎の2021年の成績 JPSA

  •  第1戦 さわかみチャレンジシリーズ
    一宮プロ -Challenge I- 3位
  • 第3戦 さわかみチャレンジシリーズ
    第25回茨城サーフィンクラシック さわかみ杯 -Challenge II- 5位
  • 第4戦 ムラサキ 鴨川オープン supported by 秀吉内装 2位
  • 第5戦 さわかみチャレンジシリーズ
    ALL JAPAN 田原プロ -Challenge III- 2位

 

 

今シーズンついに覚醒した西慶司郎。その大活躍の陰には彼の絶え間ない努力があった。そしてSNSで「僕のサーフィン人生を大きく変えてくれたひと」とコーチである田中樹に対する感謝の気持ちも忘れない。

 

心も体も次のステージへ進む準備はできた。今後は、来年3月に予定されているアジア・オープンにフォーカス。ベスト6に入りCS行きの切符を手に入れることが目の前の目標だ。

 

 

世界を目指す彼の活躍を期待し、エールを送り続けたい。頑張れ!西慶司郎!

 

 

西慶司郎:

https://www.instagram.com/keijironishi2/