「2024 ISA ワールドサーフィンゲームス」は、2/23(金)~3/3(日)の日程でプエルトリコで行われた。今大会の日本チーム 「波乗りジャパン」の成績は団体総合で11位。個人では女子の都筑有夢路の21位が日本人最高位という結果となった。
3/5(火)には激闘を戦ったチーム「波乗りジャパン」の稲葉玲王、松田詩野、都筑有夢路の選手3名にコーチの大野修聖、田中樹らスタッフが羽田に帰国(五十嵐カノア、コナー柄沢オレアリーは3/6から始まるWSLのCT第3戦でポルトガルへ。前田マヒナはハワイへ)。
その羽田では正式にオリンピック出場権を獲得した稲葉玲王と松田詩野の囲み会見が行われ、多くの報道陣が集まる中、この大会の感想とタヒチで行われるオリンピックに向けて、改めて意気込みを語った。
パリ五輪サーフィン日本代表 稲葉玲王
まず正式にオリンピック出場が決まった今の心境を教えてください。条件付き内定は出ていましたが、新たに反響などありましたか?
稲葉:本当にすごく嬉しいですね。まだそんなに実感も湧かず。特に変わらずって感じですね。家族とか応援してくれてる人たちに感謝の気持ちを伝えたいですね。やっとこういうチャンスが来たので、ここで満足っていうよりは、やっぱりオリンピックでのメダルを頑張ってとりたいと思います。
本大会としては、振り返って、どんな感想を持っていますか?
ちょっと個人的にはあんまり良い成績じゃなかったんですけど、でもやっぱり、このオリンピック前に世界の方トップレベルで戦えたことは、すごいプラスになったと思います。
世界のトップで戦って感じたことは?
全然まだ戦えるなっていうことを感じましたね。
オリンピックの戦いの舞台となるチョープーへの対策、取り組みはありますか。
ここからオリンピックまで、できるだけタヒチの現地に行ったりとか、あとはハワイとかで、ちょっと大きな波で練習とか。できるだけそっちに時間を費やすと思います。
自分の中で一生に残るような波に乗る。
メダル獲得するためにどういう気持ちで取り組んで行きますか?
気合いです。笑
新しいチームジャパンのチームはどうでしたか。
そうですね今回、メンズは新しいチームだったんですが。カノアもコナーもCT選手で世界のトップ選手なので、いろいろ教えてくれたりとか、良い刺激もあって良かったです。
オリンピックで、改めてどんな結果を残したいか意気込みを聞かせてください。
オリンピックは本当にもう金メダル絶対取るって感じで、あと、物凄い波なんですけど、自分の中で一生に残るような一本っていう波に乗れるように頑張ります。
パリ五輪サーフィン日本代表 松田詩野
おめでとうございます。正式にオリンピック出場が決まって、いまの気持ちを教えてください。
松田:正式にオリンピック出場を決めることができて嬉しいです。あとオリンピックまで数ヶ月なので、悔いのないように過ごして、オリンピックの舞台では楽しみたいと思います。
条件付き内定は一番で出てましたけど、実感はありますか。
本当にオリンピックが条件付きで1年前のISAで決まったときから、タヒチでのイメージをしていたので、それが実現することができて嬉しいです。あとは、その舞台で自分が出来る限りのことをやることに最終的にフォーカスして行きたいです。
この大会としては振り返ってみて手応えとかいかがでしたか。
今大会はチームでもメダルと個人でも過去の順位を超えてっていうことを目標にしていたんですけど。それが達成できなかったことは悔しくて。でもISAの大会は負けてしまっても、敗者復活戦があって、そのヒート数を普段の大会よりもやることができて、それもすごく良い学びになったので。今回学んだことを生かして行きたいです。
その悔しい経験が自分には必要だった。
何か技術的に感じた課題とか収穫とかがあったら教えてください。
技術的にはターンのバリエーションだったり、あとは試合運びも凄く勉強になったので、もっと足りない課題とかを伸ばして行きたいです。
あとチョープーまで数ヶ月っていうところで、タヒチは波も特別な場所なので合宿をしっかり行って、環境に慣れて、その波にも慣れて、チューブスキルを上げて行きたいなって思います。
今回で自分の中で楽しかったことはなんですか?
そうですね。ヒート数がやっぱり他の大会よりも多いので、そのヒートごとに課題を決めて、試合運びとかを実践できたのは良かったなと思っています。去年のISAの大会と比べて、プレッシャーっていうのは少なかったんですけど、その分もっと試合運びとかの方に集中してやることができたのが去年と違う点で良かったと思います。
今大会で凄いと感じた選手はいましたか?
ブラジルチームはチーム優勝して、男子と女子のもう一枠を獲得したので、チームとしても凄く強かったですね。
あとタヒチまで数ヶ月ですけど、今後のスケジュールは?
チームで決まってるのは5月頃からいって6月、とりあえず、またオリピック前に行くって感じで、4月もいけることがあれば行きたいなって思います。
今回のチームの良さは、どうでしたか。
チームもすごい仲良くて、海を上がった陸でもすごくチームとしてみんなで高め合うことができたので、凄くいいチームだったなって思います。
東京を目指してから4年間経つと思うんですが、今の自分と4年前の自分を比較して一番変わったなっていう部分はありますか?
4年前に悔しい思いをして、でもその悔しい経験がやっぱり自分には必要だったから訪れたことだったなと思うので。それを乗り越えて、いまパリに挑戦できる場所に立てているのは、本当に周りの方のおかげでもあります。
そんな気持ちを忘れずに自分の目標をしっかり決めて、諦めないということを学んだので、それをしっかりとやっていきたいなと思います。代表をとりかけて失ってしまったのが一番悔しい出来事だったんですけど、それがあっての今でもあると思っています。
最後に改めてオリンピックでどんな結果を残していきたいと思いますか?
オリンピックはやっぱり金メダルを目指して、その特別なタヒチのチョープーの波を楽しむっていうことを、その一瞬一瞬、波を楽しむ気持ちで挑みたいです。
本当のプレッシャーというのが、どういうものかを知りました。
「波乗りジャパン 」最後の一人となり戦い続けた都筑有夢路は今大会について。
「東京オリンピックが終わってから、銅メダルというプレッシャーの中でずっとやってきて。自分の中でやはりプレッシャーとか、不安な気持ちを作っていた部分も大きかったです。」
でも、その中で波乗りジャパンの一員でいれたことが、とても救われたと言う。
「今回、それでもあと一歩勝てばというところまで行けたのは、本当にコーチとスタッフのおかげだなって、すごく感じています。本当に最高なチームに入れて、良かったなと思っています。」
ただ、わかっていたはずのプレッシャーというものが、今回とてつもなく大きいものに変わったと言う。
「本当のプレッシャーというのが、どういうものかを知りました。プレッシャーって、自分を辛くさせるというか、自分ではなくなってしまうんだということを初めて知りました。でも、試合を続ける限り、一生、このプレッシャーはついてくるので、そのプレッシャーと自分がどう向き合っていくか。これからしっかり考えていきたいと思います。」と語った。
そして、都筑は休む間も無く、3/11から始まるQS最終戦のためにオーストラリアへ旅立つ。
ジュニアから見直して、育成を行わないと世界と戦えなくなる。
田中樹コーチはこの大会を振り返り。
「やはりコンディションが難しかったというのもありましたけど、スタートが良くなかったことが最後まで足を引っ張ってしまった。すぐ立て直したんですけど、その後も尾を引く形で負けが続く形になってしまいました。」
その中で唯一、勝ち残っていた都筑が代表を逃したことについては、こう反省する。
「アムちゃんがあと一歩までというところで、取りきれなかった。実力的には勝てたと思うんですけど。プレッシャーなのか、それでも最後の一押しができなかったのは、コーチ陣含め反省するところではあります。」
コナーがことあるごとにCTのレベルの話をしてくれた。
それと同時に今回の「波乗りジャパン」のチーム雰囲気が大きく変わったと言う。
「コナーが新しく入って来たことで、ことあるごとにCTのレベルの話をしてくれました。カノアも前からアドバイスをくれて、声かけしてくれて。他の選手は学ぶところが多かったと思います。結果はすぐには出ませんでしたけど、その効果は十分あったと思います。」
とはいえ、全体を通して危機意識は増したと言う。
「中南米、中国とどんどん力をつけて、レベルも上がっています。日本も次を育てていかないといけない。まずはジュニアから見直して、育成を行わないと世界と戦えなくなるとと思います。これからは現地で合宿とかも含め、実戦を強化することが必要だと思います。」
世界が本気なのだから、日本も本気を見せないといけない。
大野修聖ヘッドコーチは今大会の総括をこう述べた。
「現実を見ると世界のレベルが思っている以上に上がっていて。ヨーロッパ勢、中南米も強くなっているし。もう世界は先に行っているということを実感しました。だから、日本も本気でやらないと。ジュニアから立て直していかないといけない。」
その中で、現在の日本の状況もこう分析する。
「今まで結果が残っていたことで、気づかなかったんだと思います。それに甘んじていたわけではないですが、今、アジアで日本が一番でリードできているか、どうなんだろうって。もう肩を並べられているか、もしくは、先に行かれているか。世界で比べたら、世界はもうだいぶ先に進んでいるし。ここでもう一度考え直す、作戦を練り直さないといけないと思います。」
自分をアピールする熱量が日本人選手には少ない。
その中で特に日本人選手に足りない部分については。
「サーフィンのレベルもそうですけど、日本人選手のメンタル的な部分。熱量が足りないと思います。同じレベルだとして、競り合った時の最後の一かきだったり、最後の一発で残るとか。そこは自分をアピールする熱量が日本人選手には少ない気がします。」
さらにメンタルだけでなく、日本のサーフィンの環境について。
「若い時に世界をどれだけ経験できるか。それが全てではないですけど。どれだけの波とどれだけ違うコンディションでサーフィンができているか。特に自分の居心地が良い場所から外に出ているかどうか。これらができているかが問われていると思います。」
日本はその選手育成だけでなく、さらにコーチ、ジャッジやスタッフには専門職を取り入れるなどして、すべてを改革をしないといけないとも言う。
「今や他国はそれだけのことをやってきています。今までのやり方で通用する状況ではありません。世界が本気なのですから。日本も本気を見せないといけません。」
ヨーロッパ勢、中南米の躍進。インドネシア、フィリピン、中国の台頭。
オリンピック最終予選となった今大会。アメリカ、オーストラリア、ブラジル三強に加え、今回のプエルトリコでの予選で目立ったのはヨーロッパ勢、中南米の躍進。そして、アジアではインドネシアの和井田理央に、中国のスーチー・ヤンが出場権を獲得した。
インドネシアは国別総合では日本に譲るものの、男子総合では9位と日本を上回った。そして、中国は男女3人を揃えられなかった中で、特に女子のスーチー・ヤン(14歳)はサーフィンはまだ未完成ながら、世界のトップと戦ってのクオリファイは賞賛に値する。
今まで世界大会で目立たなかった中国が、オリンピック2大会目にして選手を送り込むことに成功した。これは幼少期から波のある海外メインで経験を積ませるなど、国主導で選手を一から育成を行っているからだ。インドネシア、フィリピンだけでなく、中国の台頭も、すぐそこまで来ている。
2024年パリオリンピック。日本は男子が3枠、女子は1枠の確定。男子は五十嵐カノア、稲葉玲王。国別枠として獲得した最後の1枠はNSA理事会の承認後、コナー柄沢オレアリーが確実となっている。女子は松田詩野の一人となった。
それでもアジアトップを走る日本は、今回も世界で戦える強い選手が選ばれた。パリオリンピックまであと143日。日本は更なる強化に向けて、タヒチでの合宿を5月、6月と行う予定だ。日本からみんなでエールを送ろう!Go!Naminori Japan!
・NAMINORI JAPAN(日本代表選手)結果
[ 男子 ]
コナー柄沢オレアリー 37位
稲葉 玲王 46位
五十嵐カノア 64位
[ 女子 ]
都筑 有夢路 21位
松田 詩野 25位
前田 マヒナ 33位
[ 国別団体 ]
国別総合 : 11位
男子総合 : 20位
女子総合 : 9位
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名 称:2024 ISA WORLD SURFING GAMES
主 催:国際サーフィン連盟(ISA)
期 間:2024年2月23日(金)~3月3日(日)
開催地:プエルトリコ
NSAホームページ
https://www.nsa-surf.org/
「波乗りジャパン」
男子 / 五十嵐カノア、稲葉玲王、コナー柄沢オレアリー
女子 / 松田詩野、都筑有夢路、前田マヒナ
監督代行:大石純也
コーチ:大野修聖、田中樹
メディカル:湯澤斎、前原優湖
栄養士:松本恵
映像分析:緒方清、新井庸仁
マネージャー:岡野宣正