現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第38回となる今回はサーフトリップキャンプ、サーフィン業界のインフレ、ジャック・ロビンソン、オーストラリアン・サーフ・チャンピオンシップ、ベルズのロングボード・クラシック。
取材、文、写真:菅野大典
8月のゴールドコースト。
短い冬が過ぎ、春の陽気が広がっています。
国土の広いオーストラリアの南に位置する街などでは、まだまだ寒い日が続いていますが、ゴールドコーストでは晴れた日中にもなると気温が25度を越す日もあり、週末のビーチにはガゼボを広げて楽しむ人の姿もたくさん。
日が昇っている時間も長くなりビーチに来る人の数も増えて来ているように感じます。
ハワイのマウイ島で大規模な山火事が発生し多大な被害を被るという残念な出来事がありましたが、オーストラリアでも雨の降らない日が続いており、乾燥した日が続いています。少し内陸に足を運んだ時には、山火事の煙を見たり匂いを感じる日もありました。
最近はしばらく耳にすることのなかったコロナウイルスの症状にかかっている人も増えていて、風邪も流行しています。晴れた日が続くのはいいですが、乾燥しやすく水不足や山火事などの懸念があるオーストラリアでは雨の降らな過ぎも心配になります。
昨年まではどこも忙しかったオーストラリアのサーフィン業界も急激なインフレと共に少しゆっくりな感じとなっています。
材料費や人件費の価格高騰に伴いサーフボードの値段もパンデミック以前と比べてオーストラリアドルで100ドル〜200ドル値上がりしており、クリアのショートボードでも1000ドルを超える値段のブランドも出てきました。
昨年まではコロナウイルス給付金などもあり、消費者の支えにもなっていましたが、それらが無くなった今年はサーフショップの売り上げも減少している様子。生産数が減少した事からサーフボード工場をしばらく閉めるという所もあったりするなど、サーフィン業界にとっては安定しない年となっています。
ゴールドコーストの波の状況は、初旬にこの時期には珍しく北東から大きなスウェルが入ってきてサイズアップ。チューブ質の掘れた波でポイントブレイクを中心に楽しめていました。
今月もゴールドコーストから車で約2時間南へドライブし、最近はまっているサーフトリップキャンプへ行ってきました。
北東うねりが入るとゴールドコーストよりも南の場所はサイズダウンする場所も多く、ファンウェーブに巡り会えます。
サイズが一番上がった日にはクラシカルなポイントのアンゴーリーポイントへ。
クリス・ザフィス、ダコダ・ウォルターズ、オスカー・ベリーといった、スタイルのある若手サーファーを排出している小さな街で、数年前までは人が少なかったイメージですが、最近は週末になると多くのサーファーが訪れる人気のサーフポイントになっています。
中旬以降は典型的なこの時期の感じでスモールコンディションが続き、北東の風が吹くとオンショアとなるサーフポイントが多いゴールドコーストでは、海にサーファーを見かけないという日がありました。
それでもスウェルマグネットと呼ばれるオーストラリアの波乗り道場であるD-BAHにはトレーニングに励むサーファーが。
仕事や学校に行く前の風の影響が少ない朝方や、仕事や学校終わりの夕方の時間帯のD-BAHは、波のコンディションがそこまで良くなくてもたくさんのサーファーが集中する場所ですが、平日の昼間の時間帯に行ってみるとこういったセッションが行われています。
週末で風が合う日は波が小さくてもこのような激混みコンディションに。同じ昼間の時間帯でもたくさんのサーファーで賑わいます。
暖かくなりながらもまだまだ水温は冷たくフルスーツを着ている人もいますが、ボードショーツ1枚で海に入るサーファーもちらほら。
季節感がよくわからない状態になっていますが、体温の高い欧米人と違い日本人は基本的にはフルスーツで入るくらいの水温の冷たさです(笑)
月の終わりにはタヒチで行われたCTで見事優勝したジャック・ロビンソンの姿がありました。
今年の前半戦から好調に結果を残し序盤はイエロージャージを着ていたましたが、ベルズビーチの試合で怪我をし、シーズン中になかなか本調子には戻れずにいたジャック。最後の最後でドラマティックな優勝を飾り、滑り込みのWSL FINAL5とパリオリンピックの出場権を獲得しました。
波も小さく、周りのサーファーと仲良く話したりとリラックスしながらのサーフィンでしたが、やはり技術はずば抜けており、国内ではオーストラリアから世界王者が誕生する事が期待されています。
現在はゴールドコーストに拠点を置いているジャック・ロビンソン。WSL FINALに向けてニューボードをピックアップし束の間のホームで調整を行なっている様子でした。
8月4日〜21日にかけて、2023 Australian Surf Championshipsがポートマッコーリーで開催。
このイベントは、5つの分野の競技(ショートボード、ロングボード、ロガー、パラサーフィン、ボディーボード)の各年代のオーストラリアチャンピオンを決める大会で、各州の予選を勝ち抜いた500人以上の選手が参加。
日本で言うならばNSAの全日本サーフィン選手権のような感じだが、プロ資格といったものがないオーストラリアでは、CT選手以外のサーファーは出場する事ができます。17日間に渡ってポートマッコリーにある3つのサーフポイントで行われたこの大きなイベントは、波にも恵まれ大成功を収めました。
8月30日〜9月2日にはベルズビーチで初となるWSL-LTの試合、”Bioglan Bells Beach Longboard Classic”が開催。サーフメディアでも毎日試合の詳細をレポート(https://surfmedia.jp/2023/09/02/bioglan-bells-beach-longboard-classic04/)してきましたが、今大会に日本人選手は男子に井上鷹、女子に田岡なつみに加え、前日に行われたトライアルで準優勝をした井上楓が出場しました。
オーストラリア本土の南に位置トーキーのベルズビーチは、ゴールドコーストとは違い、まだまだ冬の季節。気温は1桁台で南極からの海流が入ってくる海の水温はとても冷たく、試合中にはブーツを履く選手もいました。
先日行われた2023 Australian Surf ChampionshipsではロガーオープンメンズとU/18メンズの2ディビジョンで優勝。ロングボードオープンメンズとU/18の2ディビジョンで準優勝という成績を収めたランデン。ショートボードも乗りこなし昨年のオッキーグロムでも優勝する若い二刀流サーファーが世界の舞台でもその才能を見せつけた。
オープニングラウンドでは8.33ptのDAY1のシングルハイエストをスコアし、ラウンドオブ16では、開幕戦のハンティントン・ビーチ・ロングボード・クラシックで優勝したケリス・カレオパアに勝利する活躍を見せた田岡なつみ。
8月のオーストラリアは、ゴールドコーストは波に恵まれなかったのですが、南の地域では常に波のサイズがある状況で、普段ゴールドコーストで見かけるプロサーファーも、国外や南の地域へ波を求めて動いているサーファーが多くいたようです。
また、サーフィンのニュースではありませんが、先月からニュージーランドとの共同で行われているサッカー女子ワールドカップが開催され、シドニースタジアムで行われた開幕戦のマチルダ(女子サッカーオーストラリア代表)対アイルランドの試合では75,000人を超える観客が集まり、TVの視聴率も2001年以降最も高い視聴率をマークするなど、大盛り上がりの1ヶ月が続きました。
マチルダの試合は常に満席。チケットもすぐに売り切れてしまうほど人気でした。
準々決勝で優勝候補の一角であるフランスを倒した後には、『もしマチルダが優勝したら次の日を祝日にする』と州知事が発言したりするなど、国中で注目されていました。
残念ながらマチルダは準決勝でイングランドに敗れこの計画はなくなってしまいましたが、ベスト4まで進出し健闘したマチルダを讃え、オーストラリア政府は女子スポーツに2億ドル(約190億円)という巨額の資金援助を発表しました。
コロナウイルスの時の対応もそうですが、政治を含め海外はすぐに動く。良し悪しはありますが、オーストラリア政府のスポーツに対する向き合い方は面白いですね。
今後オーストラリアの女子スポーツも強くなりそうです。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
INSTAGRAM :https://www.instagram.com/nojiland/