オーストラリアSURFNEWSは、CS第1戦 Boost Mobile Gold Coast Pro舞台裏と新しい時代を創生していくガールズ達の話。

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第35回となる今回はチャレンジャーシリーズ第1戦 Boost Mobile Gold Coast Pro舞台裏と新しい時代を創生していくガールズ達の話。

取材、文、写真:菅野大典

 

クーランガッタの街中にはこの時期には珍しく満開に花をつけている木が。

 

5月のゴールドコースト。

 日中の日が出ている時間帯は暖かく過ごしやすいですが、朝晩はかなり冷え込み秋を通り越して冬とも思えるようなひんやりとした日が多く続いています。

 

 建設ラッシュの続くゴールドコーストは至る所で大きなクレーンが立っているのが目立ちます。

 

 一昔前には旅人サーファーに優しい値段の古びたホリデーアパートが立ち並んでいたスナッパーロックス付近の通りにも、どんどん新しいハイライズが立ち並び高級リゾート地に風変わりしていっています。

 


 

 

 以前はサーファーでシェアハウスと言ったらこの地域で簡単に見つかり、驚くほど安い値段で滞在できていましたが、時代は変わり住みたくてもなかなか住めない場所に。長期滞在をするワーキングホリデーの日本人サーファーもメジャーポイントから離れている内陸に住んでいる人がほとんどとなっています。

 5月のゴールドコーストと言えば、なんといっても5月6日から13日にかけて行われたチャレンジャーシリーズ第1戦 Boost Mobile Gold Coast Pro。

 

 残念ながらイベント期間前に約2週間も続いていたうねりが急速に収まり一気に波のない状況になってしまいました。

 

 5日に行われたローカルトライアルには相澤日向が出場。昨年は2位で本戦出場にあと一歩という所でしたが、今回は残念ながら初戦で敗退してしまいました。

 

ジェイ・トンプソンやリアム・オブライアンといったバーレーヘッズボードライダーズメンバーが応援に駆けつけサポート。
相澤日向

セット間もとても長くスコアできる波が少ない中、ノーライドでヒートを終える選手もいたほどのコンディション。メンズはクーパー・デービス、ウィメンズはシエラ・カーが優勝し本戦への切符を手に入れました。

 

シエラ・カー

 

 斬新なアプローチをするシエラ。同時に行われたプロジュニアの試合でも優勝し、この日に2つの優勝を獲得。翌週に行われたシドニーでのプロジュニアでも優勝するなど、今オーストラリアで最も輝いているサーファーと言っても過言ではない程注目を浴びる存在となっています。

 

 新しいうねりが届くのを待つためにイベント期間初日から3日間はレイデイとなるほどサイズが小さい日が続きました。

 

波が小さくCS選手から一般サーファーまで海の中はごった返し。よくないコンディションでもうまい選手はとても目立ちます。
リップカールチームのインターナショナルメンバーが集まって記念撮影していました。こういうビッグイベントでは普段集まることのないメンバーが一気に集結するので、選手にとってもメーカーにとっても有意義な時間が作れているように感じます。

日が沈む時間帯まで毎日練習している都筑有夢路。

同じく脇田紗良。毎日この時間に会ってピースしてくれました。

 

 

 スナッパーロックスの波のコンディションが良くないという事で、隣のポイントのD-BAHでサーフィンをする選手もたくさん。それぞれがビッグイベントに向けて調整を進めていました。

 

3日間のレイデーの後には新しいうねりが届き素晴らしいコンディションに。本来のチューブコンディションにはならないものの、形の良い、ほどよいサイズのロングウォールの波がブレイクし、白熱したバトルが繰り広げられました。

 

大原洋人

 

 日本人選手の結果は、イベント期間中に毎日の現地レポートでお伝えした通り。残念ながらファイナルデイまで進出する選手がいませんでした。

 

 ラウンド1、2と完璧な試合運びで1位通過したが、ラウンド3ではいい波に乗ることができずに敗退した大原洋人。

 

イベント直前にJSから渡された板がものすごく調子が良かったようで、今回の3ヒートはその板を使用したとの事。腰を怪我する以前よりもパワーアップしたサーフィンで、スピードある世界レベルのライディングは周りからも非常に高く評価されていました。 

 

都築虹帆

 

 CS1年生の都築虹帆。よくない波に乗ってしまったりプライオリティーを失うパドルをしたりと、『最低限のことができなかった』とヒート後にミスを反省していました。ラウンド1では7.33ptを出すなど、ライディングへの評価は高いだけに、30分ヒートのいい波での試合で経験を積めば今後は結果がついて来そう。

 

松岡亜音

 

 同じくCS1年生の松岡亜音。今回のオーストラリアレッグでは思った結果がついてこなかったが、まだ若い彼女がシーズンを通してどこまで成長していくのか楽しみです。

 

 今大会の1番のハイライトと感じたのは女子のラウンドオブ16のヒート2に行われた、8度の世界王者でローカルスターであるステファニー・ギルモアと、同じくローカルのヤングスターであるシエラ・カーのマンオンマンヒート。

試合後健闘を讃えあう2人。残り4分までコンビネーションスコアで負けていたステフが、怒涛の大逆転劇を披露し見事勝利するというドラマティックな試合展開。

 

 スナッパーロックスという場所の素晴らしい波で、現世界王者と次世代のスターが素晴らしい試合を披露。この姿を生で見ているローカルの子供達には、間違いなくとてもいい刺激と将来自分の目指す場所というものが明確になったと思います。

 

シエラのヒートにはいつも父親であるジョッシュ・カーの姿が。敗れたもののバリエーションのある多彩なマニューバーと斬新なアプローチの仕方には新しい時代の幕開けを感じました。
ステファニー・ギルモアのヒート終了後は毎回サインや写真を求める行列が。
ミッドシーズンカットをクリアできずにCTから陥落してしまったサリー・フィッツギボンズだが、ステフと同じく今大会で3位という成績を収め、翌週にナラビーンで行われたGWM Sydney Surf Proでも2位という成績。いかにCTという舞台がレベルの高い場所という事が感じられます。
サリーのヒート終了後もまたサインや写真を求める子供の行列が。今大会ではこの2人の人気がダントツにあり、ステフ、サリー渋滞と呼ばれるくらいヒートを終えても帰ってこれませんでした。

 

 現場にいて感じたことは、それぞれの選手へのサポート体制について。ライブ中継でも目立っていたサンクレメンテのメンバーをはじめ、一緒にツアーを回っている同じ国の選手であったり、コーチやサポート役の人であったり、個人スポーツながら海と陸がつながっていると感じるくらいチームとして戦っている感じがある選手が何人もいました。

 コロへ・アンディーノを中心にチームとして、とてもまとまっていたサンクレメンテのメンバー。ただ指笛を鳴らして応援するだけでなくしっかりと状況を伝えていたりとしていて、男子ではクロスビー・コラピントとジェット・シリングが今大会3位、女子ではソイヤー・リンドブラッドが2位になるなど好成績を収めていた。

 

 女子で優勝したインディア・ロビンソンとコーチのジェイ・ボトル・トンプソン。タクティスや知識だけでなく、選手の性格を理解して、試合でいい雰囲気の作り出すボトルの存在はとても大きい。たくさんの若いオージーサーファーから慕われる兄貴的存在というか、こういうコーチの元で戦っている選手は試合中に迷子になる事がない。

優勝後にはサリーとソフィー・マクロックに担がれオージーチームで輪になり”OG OG OG オイオイオイ”とお決まりの号令も。オージーも一体となって団結していました。

 優勝直後のサミュエル・プーポ。さすがブラジルと思わせる大きな盛り上がりを見せ、ゴールドコーストとは思えないほどポルトガル語が叫ばれ、指笛が鳴り、ブラジル国旗が何枚も掲げられていました。

 

 それぞれの選手によって試合の臨み方は違いますが、異国の地でありながら現場でホームの感じを出すのは戦っている選手にはとても心強いはず。今回結果を出している選手達の裏方部分を見て、そのような事が感じとれました。

 

2023 ブースト・モバイル・ゴールド・コースト・プロ pres.by GWM
女子結果:

1. インディア・ロビンソン(AUS)
2. ソイヤー・リンドブラッド(USA)

3. ステファニー・ギルモア(AUS)サリー・フィッツギボンズ(AUS)

男子結果:
1. サミュエル・プポ(BRA)
2. イマイカラニ・デヴォルト(HAW)

3. ジェット・シリング(USA)
 クロスビー・コラピント(USA)

 

 翌週の17日から22日にかけてシドニーのノースナラビーンで行われたチャレンジャー・シリーズの第2戦 GWM Sydney Surf Proでは、タフなコンディションのヒートもありながらも、ソリッドなチューブコンディションもあったりと、波にも恵まれた白熱したイベントとなり、コール・ハウシュマンドとイザベラ・ニコルズが優勝。5月のメインイベントであるチャレンジャーシリーズオーストラリアレッグが終了しました。

ファイナリスト4名  PHOTO:WSL Ryder

 

GWMシドニー・サーフ・プロ
女子結果:
1. イザベラ・ニコルズ(AUS)
2. サリー・フィッツギボンズ(AUS)

3. ベラ・ケンワージー(USA)
 インディア・ロビンソン(AUS)

男子結果:
1. コール・ハウシュマンド(USA)
2. ジェイコブ・ウィルコックス(AUS)

3. ジャクソン・ベイカー(AUS)
 ジェイコブ・ウィルコックス(AUS)

 

 5月のオーストラリアの波の状況は、東海岸だけでなく南のビクトリア州や、ウエスタンオーストラリアにもスウェルが届き、各地でとても良いコンディションとなりました。

 


ビクトリア州のベルズビーチには大きなうねりがヒットし数日間に渡って最高のコンディションに。

 東海岸は完全冬型配置の天気図。次から次へと低気圧ができ南うねりを届けてくれました。

 

ゴールドコースト周辺は南うねりになると地形が整いやすくなるポイントもたくさん。
あいかわらず人気のポイントD-BAH。
ハイエアーを決めるネーサン・カワニ。
足立海世

 得意のチューブライドを決める足立海世。仲の良い山本来夢や小野里弦と純粋にスキルアップの為に約1ヶ月オーストラリアに滞在。オフショアになりやすい午前中はウェーブハントに出かけ、風が吹く午後はD-BAHでサーフィンという生活を繰り返し、貸切のチューブセッションをしたりといい時間を過ごしている様子でした。

 

 

バリエーションが多くとても器用なサーフィンを披露するリオ。見ていて飽きさせないサーファーです。

 5月のゴールドコーストも先月と同様に地形の良い場所も多く、毎日のように波があり、サーフィンの楽しめる月となりました。

 

また、2月から始まったのリージョナルのQSから4月のCT、そして今月のCSと、長期に渡ってオーストラリアで開催されていたWSLイベントもひと段落し、来月からは国内のジュニアを中心としたイベントに移行していきます。

 

新しい時代を創生していくガールズ達の台頭

 

モリー・ピックラム© WSL / Sloane

 オーストラリア(世界中でもある)のサーフィン業界内では若い女子サーファーに注目が集まっている様子が感じられます。

 

 数えればキリが無いほど現在は若いサーファーがどんどん注目を浴びていっていますが、モリー・ピックラム、ケイティー・シマーズ、サクラ・ジョンソン、エリン・ブルックス、シエラ・カーなど、今までの女子サーフィンの枠を超えて、革新的なサーフィンをする彼女らに時代はシフトしていくのは明確です。

 

ケイトリン・シマーズ © WSL / Poullenot

 

 ここ10年以上ステファニー・ギルモア、カリッサ・ムーア、タイラー・ライトの3人からしか世界チャンピオンが生まれなかった時代から、この世代に変わっていくのか。昔は女子に板をサポートしても売れないと言われていましたが、この世代はそれを覆すことができるかどうかなど、新しい時代の女子サーファーの注目は高まるばかりです。

 

 日本の女子サーファーも強いので、どうにかもう一つ上の段階にみんなで引き上げてほしいです。

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。