2017年に初めてチャンピオンシップ・ツアー入りを果たしたコナー・オレアリーは、元JPSAグランドチャンピオンの柄沢明美さんを母に持つオーストラリア人サーファー。
そんな彼が今回、母の柄沢明美さんと弟のリクと3人でプライベートで来日。昔から彼ら家族をサポートする多くの友人たちと3年ぶりに再会。また日本のファンたちの交流を深め、日本のグッドウェイブも堪能した。
CTサーファーとして活躍するコナーは、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。その後ツアーから脱落するも、不屈の精神でリクオリファイ。今シーズンは自己最高の世界ランキング9位となり、更なる頂を目指して邁進する。
そんなコナーと帰国直前に会うことが出来て緊急取材。今シーズンの試合を振り返りながら、コーチングの話やオリンピックへの想いを聞いた。また以前にWSLの取材に答えたハーフに関する質問なども織り交ぜて、彼の本心を探ってみた。
コナーは29歳、今は結婚してレノックスに住んでるんだよね? レノックス・ヘッド(オーストラリアのニューサウスウェールズ州)の生活はどうですか?
コナー:いいですね。波が良いし、良いサーファーもたくさん住んでいるから。もともと住んでいたクナラもいいけど、レノックスの方がワールドクラスの波がありますね。
今回の来日の目的は何ですか?
コナー:今回はホリデー。本当は日本の友達や家族を呼んで結婚式をやる予定だったんですけど、コロナの関係で難しいということになって式はキャンセルになったんです。(オーストラリアで2020年に挙式)だけど日本には2019年から来ていなかったし、友達もみんな待っているので来ることにしました。
でもホリデーで来たつもりが、母の友達がやっているサーフショップの子供達からのラブコールがあって、千葉、湘南などを回ったんですけど、色々な場所で熱烈な大歓迎を受けて、ビックリでした。
日本は3年ぶりなんですが、そのリアクションの凄さに驚かされました。自分がCTサーファーなんだって実感しましたよ(笑)
今回は静波のプール(サーフスタジアム)にも行ったんですよね。他のプールと比べてどうでしたか?
コナー:良い波でしたね。自分は体が大きいから波が少し小さかったけど。自分はケリーのプール(サーフランチ)やメルボルンのアーバンサーフでもやったことがあるけど、ブレイクの仕方がちょっと違う感じで、静波も楽しい波でした。
今シーズンを振り返って、自己最高の世界ランク9位という成績は自分的にはどう感じている?
2022年イベント結果 最終ランキング 9位
ビラボン・プロ・パイプライン 17位
Hurley Pro サンセットビーチ 9位
MEOプロ・ポルトガル 9位
リップカールプロ・ベルズビーチ 9位
マーガレット・リバー・プロ 17位
クイックシルバープロGランド 3位
サーフシティ・エルサルバドルプロ 9位
Oiリオ・プロ 5位
コロナオープンJベイ 5位
アウターノウン・タヒチプロ 9位
コナー:良い結果だとは思っているけど、もっと行けるという自分自身に自信が持てましたね。今年はタヒチで勝てると思ったし、だから来年はトップ5に残ることと、CTイベントで優勝することを目標に頑張りたいと思います。
今シーズン印象に残った場所は?
コナー:やはりタヒチですね。でもパイプラインも良かったかな。自分はグーフィーフッターだから。怖いと思う部分もあるけど好きな波なんです。
今シーズンは、ミッドシーズンカットという新しいシステムが始まって、前半最後のマーガレットリバーでは、コナーもちょっとドキドキした部分もあったと思うんだけど。
コナー:新しいシステムで難しいね。いままでとは違って、前半に5試合しかないから、プレッシャーがかかります。これまではツアー前半の調子が悪くても、後半盛り返したりもできたから、超プレッシャーです。
そのミッドシーズン・カットをメイクして、後半戦はGランドでいきないり3位になったよね。メンタルやフィジカル面で特別なことがあったのかな?
コナー:カット後には、そのプレッシャーがなくなったから、違う目標を持てて、試合に勝ちたいという思いだけで頑張れたと思います。特にツアー中はトレーニングとか出来るわけではないので、サーフィンをたくさんするだけです。
コナーの得意とするサーフィンは?
コナー:パワーサーフィン。自分は体が大きいからね。
最近はあまりエアとかはやらないのはなぜ?
コナー:そうですね。今年のツアーのスポットは、サンセットとかパイプとかチョープーとか、エアをするのは難しい場所ばかりだったから。パワーサーフィンの方がいい場所だから。でも、また機会があればエアとかやりたいね。
往年のトッププロであるリチャード・ドッグ・マーシュにコーチングを受けていると思うけど、それはいつから受けているの?
コナー:去年のメキシコの最終戦が終わって、ポルトガルのチャレンジャーシリーズに出場することが決まってから。
どんなコーチングを受けているんですか?
コナー:シンプルなコーチングですね。あと板のこと。CTになるとサーフィンのレベルが上がって、コーチも上を要求してくるんです。でもリチャードは、シンプルにベイシックな部分の選手として必要なことを言ってくれる。
最初からプレッシャーをかけたりはしないし、でも一番大事な波のことだったり、板のことは凄いんです。彼はそこを一番大切にしています。自分は考え過ぎてしまうので、シンプルに自分の今できることをやりなさいって言ってくるのがいいんです。
全て自分が自分にチャンスを与えるかどうかにかかっている。
最初の年にルーキーオブザイヤーを獲得して、次の年はツアーから落ちて、QS廻って、また復活したわけだけど、ルーキーで廻っていた年と今では気持ちはどう違う?
コナー:当然今の方がスリリング。調子の悪かった年は、自分に自信がなくなり、やる気さえも失いそうになっていたけど。それを超えて今、トップの連中と並んでいるってところにいて「全て自分が自分にチャンスを与えるかどうかにかかっている」と気付いた感じです。
変な自信ではなく、この悪い状況の中でも、いかに自分を見せる機会を自分で与えることができるかというか、「今」にしっかり立っているのを感じられている今の方が気持ちの上で充実しています。
ツアーのサーフィンレベル自体も急に上がった感じもするし。
コナー:そうですね。ここ最近サーフィンのレベルは上がってる。信じられないくらい。そんな中に自分が入ってるって言うのが、信じられないです。洗練された世界の中でサーフィンできるって最高に幸せだと思う。
そんなコナーが子供時代を過ごした、オーストラリアのニューサウスウェールズ州シドニー郊外にあるクロヌラってどんなところ?
コナー:波乗りの達人がたくさん居て、自分は小さい時から、そんな人たちに囲まれて刺激を受けて育った。オーストラリアの東海岸はどこでも有能なサーファーが必ずいるんだよね。
コナーはそこで、どんな風にして育ったの? お母さん、お父さん、兄弟の話を聞かせてくれる?
コナー:13年間は、一人っ子だったんだ。母と父はサーフィン大好きだったから週末は波乗りっていうパターンだったんだけど、13歳の時に弟が出来た。ちょっと年の離れた弟で子守とかもさせられたけど、自分の子供みたいに良い人生経験ができたと思っている。
コナーのお母さんはコンペティターだったんだよね。そこでお父さんと知り合ったとか、、、そのあたりの話をしてくれる?
コナー:ママが大会に出てる時に、試合がクナラであって、そこで父に出会って、そのまま居ついたという訳なんだ(笑)父はサーフィン大好きなんだけど、試合とかには興味がない。
逆にママは、競技としての波乗りが好きで、自分はどちらの良いところももらった感じだと思う。競技サーフィンも好きだけど、スイッチ切って、楽しんで波乗りをすることも出来るし。それがうまい具合にバランス取れる要素となってるんだ。
コンテストジャージに2つの国旗を入れている理由
WSLのコンテストジャージに、2つの国旗を入れているよね。オーストラリアと日本の。どうしてそうしようと思ったの?
コナー:妻のステファニーに「日本の国旗をジャージに入れたらどう? WSLに聞いてみなよ」と言われた時に、元々そのことは、自分の中で考えていたことだったんで、その言葉がきっかけとなり、行動に移そうと思ったんです。
WSLがそれに理解を示してくれたことにとても感謝してる。本来の自分を表すことが、やっと出来た様な気がした。
血筋と言うだけでなく、実際に自分は日本にサポートしてくれている家族や友達が、オーストラリアと同じくらいの数だけ居るんだ。
小さい頃から毎年2ヶ月、日本に滞在していたし、母が僕を産んだ時は、英語があまり出来なかったから、僕には日本語で話しかけていたので英語を覚える前に日本語を喋ってた。
だから母国語が日本語なんだよね。幼稚園に行く様になって英語が話せる様になったんだから。
オーストラリアで育った自分の中に、日本がたくさん詰め込まれているっていうことが素晴らしいこと、セレブレイトすべきことなんだっていうのが、今になってようやく理解出来る様になったんです。
ハーフであることをネガティブに感じていた時期もあった。
子供の頃は、ハーフであることが、なんだか後ろめたいように、周りから感じさせられられる部分っていうのがあった。
別に忘れられないイジメがあったというのではないけど、周りがみんな純正のオーストラリア人なのに、自分だけが違うっていうことを何気にネガティブに感じていた時期もあったんです。
例えばママが弁当に寿司を入れてくれたときがあって、それを周りの子供たちに「なんか変な匂いがするぞ」って言われたりして、ママにそれから「普通のサンドイッチにして」とお願いしたりしたこともある。(笑)
なぜ自分は純オーストラリアの子供じゃないんだって思ったこともある。それが大人になるにつれて逆転したんだ。ハーフであることって、なろうと思って出来ることじゃない。2カ国を背負っているというのは、なんて素晴らしいことなんだと、ようやく思える様になったんだ。
いまはハーフでいたことがハッピーなことだと思う。
堂々と自分がWSLのジャージにふたつの国の国旗をつけることで、今まで日本でサポートしてくれた人たちへの感謝の現れにもなるし、いろんな国の血筋が入っている子供達へ「自分であることに自信を持って欲しい」という勇気づけになるんじゃないかなと思ったんだ。
血筋が混じっているというのは、全く恥ずかしいことじゃない、喜ばしいことなんだということを全世界の子供たちに伝えられたらという希望がある。
今は本当に、ハーフでいたことがハッピーなことだと思ってて、自分の子供が出来たときには、日本語を教えたいと思ってる。
自分のサーフィンのルーツは日本なんだ。
コナー:ママは彼女を頼ってオーストラリアに来る日本の子供達の面倒を見ていたから、僕は自分がサーフィンを本格的に始める前から、彼らと遊んでいたんだ。
辻裕次郎や大橋海人、仲野マー君、達也(深川)他にもたくさんのサーファーと遊んでいた。自分がサーフィンを始めたのは裕次郎(辻)のお古の板だったんだよ。
謙虚さとか礼儀正しさとかリスペクトする想い
日本とオーストラリアの両方を見て育ってきたコナーにとって、日本の良さを感じているってことだよね。
コナー:日本人の友達のサーフィンを見てサーフィンを学んだりしていた。だから自分のサーフィンのルーツは日本。自分が日本から学んだのは謙虚さとか礼儀正しさとかリスペクトする想いかな。
人に対して敬う気持ちとかママから、うるさく言われてきたしね。プロサーファーだからって、偉いわけでもない普通の人なんです。オーストラリア人も最近、謙虚な心が大事って言われている。
フィリーペとかも一緒。ガブとかも今は親とかが一緒じゃないし。前は親がブロックして、他の選手との横のつながりがなかった。そういうことをやってると最後は自分のメンタルが壊れてしまう。親が離れて、みんなリラックスしてリスペクトできて、横のつながりができるようになった。
選手同士でもお互いにリスペクトすることが大事。良いサーファーと仲良くなったら、自分も良いサーファーになれると思う。だから今オーストラリアのサーファーの成績が良くなってきいる。
普通が大事なんです。普通の人でも、頑張ればワールドタイトルを取れると思うんです。
日本人は早く有名に成り過ぎ。
トップ5に入るような選手は、俺が俺がって、やっていくことが大事だよね。サーフィンは個人競技だし。逆に日本人は、それが足りないのかな。
コナー:でも日本人は早く有名に成り過ぎ。メダル取ってから有名になるとかは全然問題ない。そこまで支える親が大変だから、早く有名になって欲しいんだと思う。そういう親が多いと思う。
とにかく楽しんでほしい。子供たちはみんな真面目過ぎ
CTサーファーだから言える、世界を目指して頑張っている日本の子供たちに伝えたいことアドバイスとかありますか?
コナー:とにかく楽しんで。子供たちはみんな真面目過ぎで、18歳ぐらいで疲れちゃう。楽しんでないから、やりたくなくなっちゃう。楽しければ波がどんなでも行くでしょ? やりたいから。その気持ちが早すぎる。
それから、好きなサーファーの動画をいっぱい見ること。コーチング受けるより良いよ。みんな親にビデオ撮ってもらっているから、それを見比べると良い。
来シーズンの目標はなんですか。
コナー:目標は3つ。CTでトップ5に入ること。そして、CTイベントで優勝すること、そしてオリンピックにクオリファイすること。
最後に将来の夢があれば、教えてください。
今が夢見たいな生活だからね。ハッピーでヘルシーなのが一番大切だと思う。人生は短いから楽しみたいね。