取材:永島未知子 キュ・ニュ ホセゴー/フランス (2021年10月22日金曜日) WSL チャレンジャーシリーズ第3戦「Quiksilver and ROXY Pro France」大会最終日。
前日から予想されていた通り、日曜日に波のサイズがまた下がるため、この日ファイナルまで一気に行われることが朝、正式に通達された。残された時間は1日のみ。男子R4と女子、男子のクオーターファイナルまでが2バンクでの進行となった。
Finals Day Highlights: Big Pressure, Big Performances Dominate Quiksilver and ROXY Pro Finals
それゆえH2にクレジットされていたコナー・オレアリーのヒートも実質ファーストヒートに。8時15分にファーストコールがされたとき、空にはまだ月が残っていた。北風が吹いていたがこの日はオフショア。ただし気温は10℃以下に下がり、寒い。しかし空には雲がなく、素晴らしい夜明けの海、3〜5フィートの波があった。
そこから30分、ようやく陽が昇ってきた8時45分に北側バンクでコナー・オレアリーのヒートが開始。最初のヒートだからか、機材の故障で最初10分間は得点コールがされなかった。その間にコナーのバックサイドに5.67がついていると、中盤にまたバックサイドでリエントリー、カービングと技を入れながら最後はスープでフィニッシュ。6.83と2本きっちり揃えクオーターファイナルへ勝ち上がった。
コナー「今日は(自分の出番が)早いですね。ファーストヒートでけっこうタイドまだ(まだ)上げているからあまり割れてないけどね。2本乗ったから、けっこう楽しかったです」
続いてH4に出場した五十嵐カノアも中盤までにファアハンド、バックハンドで2本揃える。特に2本目はテイクオフして加速すると大きなターンをし、そこから際どいポジションで得意のレイバックスナップを披露。見るものを驚かせた1本に7.6がスコアされ、無事に通過した。
カノア「少し寒いですね(笑)。でも家からウエットを着て、車の中で(身体を冷やさないように)温まって、そのまま海に入った、という感じですね。朝早いヒートですが、普段から朝一で入っています。なので普段と同じ練習のようだと(錯覚させる)。そうするとプレッシャーもあまりね」
コナー・オレリー、五十嵐カノア、ともに調子は良さそうだ。それから約1時間後、正午近くにクオーターファイナルが始まった。干潮に近づいていたため波のサイズは朝より小さい。南側バンクにH1のコナー・オレリー、北側バンクにH2の五十嵐カノアが登場した。
コナーは序盤にバックハンドで縦に鋭いリエントリーを2本炸裂させると7.17をスコア。そこから試合を終始リードし続ける。最後はローカルのマキシム・フスノットに、8.67ポイントを課すまで差を広げると、危なげなく勝ち上がった。
五十嵐カノアは最初の1本から全開。フォアハンドでビッグカーブからリエントリー、ターンしながら最後まで乗り繋いで綺麗にフィニッシュ。いきなり8.00のエクセレントを出す。相手のルッカ・メシナスも同じセットの波で7.00をスコアし追うが、五十嵐は最後の残り2分でエアもメイク。リードは縮まるどころか広がり、五十嵐カノアも無事にラウンドアップを果たした。
カノア「そうですね、今日一日が長いので、一つ一つのヒートにやっぱり集中するのも大切なのですが、なるべく(余計な)エネルギーは使わなくてもいいように、そういう感じで進めています。次はSFですが、そこに上がるのは上手いサーファーなので。手ごわい戦いになります。(誰が相手でも)みんな同じ作戦っていうのかな。強い気持ちと力で頑張ります」
カノアとコナーのセミファイナルは熾烈なクロスヒートに。
こうしてコナー・オレアリーと五十嵐カノアが対戦することとなったセミファイナルのH1。時刻は14時近くになり、ビーチは観客で埋まってきた。日差しも強く、気温は上昇。朝の寒さが遠い昔のよう。
そんな熱気が増した中で始まった男子セミファイナル。オープニングライドを飾ったのはコナー。バックハンドで安定感のあるターンからフォアハンドに切り替え、そこからターンを入れ最後までまとめ上げると5.50をスコア。
それに対し五十嵐はフォアハンドでエアからのターンを決め6.33をスコアし応戦。しかしその後セットが入らなくなり、時間だけが過ぎていく。それまでに有効な得点をお互い1本しか出していなかった。
勝負の決め手は後半戦へ。最初に動いたのはコナー。バックハンドで鋭いターンを入れ5.17を加算。この時点でコナーがリード。すると五十嵐はファアハンドのターンからレイバックを繰り出し、6.02をスコアして五十嵐がコナーを逆転。
2人の点差は6.90。残り時間は5分ほど。波のサイズや、これまでのスコアを考慮すると、このままのシチュエーションでいくのだろう。そんな雰囲気が会場に漂ったが、それを消すかのようにコナーが火を吹いた。バックハンドで小波ながら高さのあるリエントリーにキレのあるターンを繰り返した。目が見開いてしまうようなライディングにギャラリーが沸く。
8.43のエクセレントがアナウンスされ、コナーが再び逆転。五十嵐が勝ち上がるのに必要なのは7.61。しかし残り時間は後わずか。終了間際で五十嵐はエアにトライするもメイクならず。激戦のクロスヒートを制しコナー・オレアリーが決勝へ駒を進めた。
五十嵐カノアはCSランキングでトップに躍り出た。
今回は3位でフィニッシュとなった五十嵐カノア。今回の結果でチャレンジャーシリーズ・ツアーランキングでトップに躍り出た。そんなカノアにヒート後に話を聞いた。
―お疲れさまでした。海から上がって選手テントに戻ってくるまでに時間がかかりましたね。たくさんのファンに囲まれていました。
「そうですね、本当に有難いことです。この大会は試合だけど、ファンの前でいいパフォーマンスを見せることが一番の目標だった、のかなとも思います。負けてもファンにはいつも有難い思いです」
―最後のエア、着地できませんでしたが見応えありました。
「ありがとうございます。最後7点が必要ということで、100%の一番いい技を出さないといけなかったのですが、波が弱かったので…。でもその中でもいい勝負ができたと思うので、楽しかったです」
―最後に、少し前の話になりますが、オリンピックで銀メダルを取られて、何か変わったことはありますか?
「そうですね、オリンピックでサーフィンを世界に見せられたのは、すごく有難い事なので。日本の旗を振って日本のファンの前で。コロナの事でみんなちょっと落ち込んじゃっていたかもしれないけど、みんなを幸せに、ハッピーに(したかった)。もしかしたら、それがちょっとだけでもできたのかな? というのが自分の中で嬉しかったです。今回もいいパフォーマンスみせられてよかったです」
コナー・オレアリーが優勝。CSランク6位にジャンプアップ。
男子決勝はこの日最後の試合。コナー・オレリーは最初も最後のヒートも味わうことになった。朝から7時間が経過している。長い1日はもうすぐ終わる。時刻はすでに16時近く。波のサイズは3〜4フィート、ファイナルの相手がフランス人のミシェル・ボレーズなのもあり、ギャラリーの数はさらに増した。
ファイナルは試合時間が5分延長された35分ヒートだ。ヒートが開始すると、コナーはレフト、ミシェルはライトとお互いフォアハンドでスコアを狙う。序盤はお互い1本のスコアを持つ状態で進んでいたが開始10分過ぎ、1本の波が潮目を変えた。
同じ波にミシェルはライト、コナーはレフトにテイクオフ。コナーはフォアハンドで力強いリエントリーを決め、エンドセクションではブローテールを決めてフィニッシュ。1本の波で力強さとテクニックを見せつけられギャラリーは大喜び。6.03をスコアするとトップに立つ。
そこから少しセットを待つと、続けて6.73をスコア。試合の流れを手にすると、コナーはそのまま最後までキープし、試合は終了。感無量、コナー・オレリーが勝利を手にした。
―優勝おめでとうございます! 今日は1日4ヒートでした。
「めちゃ疲れました!長い日だったね。でも、とても楽しかった!」
―最後のヒートを振り返ってみてどうですか?
「最初はけっこう波がよくなかった。いっぱい波を乗りたかったから(それはしょうがないが残念、しかし結果)、いいスコアを取れてハッピーだった」
―レフトの波狙いで?
「レフトのリップボウル、狙っていたからね。うん、とても楽しい試合だった!」
―表彰式が始まる前、階段にミシェルと2人並んで座って、何を話していたのですか?
「ミシェルはとてもクロースの友達なので…。2人でハッピーでした!」
―久しぶりの優勝だと思いますが。
「気分、超いいです! 疲れたけど!(笑) いい日になりました」
―2021年のシーズンを振り返って?
「けっこうバラバラなシーズンだったね。CTのリザルトがあまりよくなかったので、この試合でいっぱい良いサーフィンをしたかった。それができてハッピーです」
―CTのジャージにはオーストラリアと日本の国旗をつけていました。
「お母さんが日本人(元日本チャンピオンの柄沢明美さん)なので。たくさん日本のファンの方もいるから。それをレペゼンしたかった」
―日本のファンに一言お願いします。
「日本のファンの方はいっぱいサポートしてくれます。いつもサポートありがとうございます。ハレイワ、もっと頑張ってCTに復活します」
チャレンジャーシリーズのランキングは、五十嵐がトップに。村上は20位に後退。
今週のフランスでは、他にもルッカ・メシナス(PER)、ジョアン・チアンカ(BRA)、カルロス・ムニョス(CRI)らが大活躍し、現在予選トップ12に入った。セミファイナリストのマテウス・ハーディ(BRA)は17位となり、五十嵐カノア(JPN)はランキングトップに立ったが、すでに彼はCTからクオリファイを決めている。
女子のランキングでは、ソーヤー・リンドブラッド(USA)とヴァヒネ・フィエロ(FRA)がトップ6に入り、ケイトリン・シマーズ(USA)はフランスでのセミファイナル進出で3位に入り、少し余裕が出てきた。
日本勢は、男子は五十嵐カノアがトップ、20位 村上舜 、33位 大原洋人、74位 稲葉玲王、89位 西修司 。女子では15位の松田詩野がトップで、20位 脇田紗良、29位 野中美波、31位 黒川日菜子、37位 前田マヒナ、47位 都筑有夢路というランキング。
CTから既にクオリファイを決めているカノア以外の日本人選手にとっては厳しい戦いとなっているが、最終戦のハレイワがまだ残っている。ランキングによっては出場できない選手も出てくるかもしれないが、最後までチャージを続けて欲しい。
現在、チャレンジャーシリーズの男子トップ12と女子トップ6は以下の通りです。
男子チャレンジャーシリーズ トップ12
1 – 五十嵐カノア(JPN)
2 – イズキール・ラウ(HAW)
3 – ジェイク・マーシャル(USA)
4 – イマイカラニ・デボルト(HAW )
5 – ナット・ヤング (USA)
6 – コナー・オレアリー (AUS)
6 – ルッカ・メシナス (PER)
6 – ジョアン・チアンカ (BRA)
9 – リアム・オブライエン (AUS)
9 – グリフィン・コラピント (USA)
11 – カルロス・ムニョス (CRI)
12 – カルム・ロブソン (AUS)
女子チャレンジャーシリーズ トップ6
1 – ブリサ・ヘネシー(CRI)
2 – ガブリエラ・ブライアン(HAW)
3 – ケイトリン・シマーズ(USA)
4 – インディア・ロビンソン(AUS
5 – ソイヤー・リンドブラッド(USA)
6 – ヴァヒネ・フィエロ(FRA)
2021年チャレンジャーシリーズの最終戦は、11月26日から12月7日まで、ハワイのハレイワで開催。世界最高のサーファーたちがCTクオリファイのために戦う。
QUIKSILVER PRO FRANCE 決勝
1 – コナー・オレアリー(AUS)12.76
2 – ミシェル・ボレーズ(FRA) 10.73
ROXY PRO FRANCE決勝
1 – ブリサ・ヘネシー(CRI) 15.23
2 – インディア・ロビンソン (AUS) 13.16
QUIKSILVER PRO FRANCE準決勝
SF 1:コナー・オレアリー(AUS)13.93 def.五十嵐カノア(JPN)12.40
SF 2:ミシェル・ボレーズ(FRA)15.17 def.マテウス・ハーディ(BRA)5.53
ROXY PRO FRANCE準決勝
SF 1:ブリサ・ヘネシー(CRI)14.50 def.ソーヤー・リンドブラッド(USA)13.73
SF 2:インディア・ロビンソン(AUS)15.60 def.ケイトリン・シマーズ(USA)10.27
QUIKSILVER PRO FRANCE 準々決勝
QF 1:コナー・オレアリー(AUS)12.84 def.マキシム・フスナット(FRA)7.37
QF 2:五十嵐カノア(JPN)14.70 def.ルッカ・メシナス(PER)13.84
QF 3:マテウス・ハーディ(BRA)13.73 def.カルロス・ムニョス(CRI)2.30
QF 4:ミシェル・ブレス(FRA)9.77 def.フレデリコ・モライス(PRT)9.60
ROXY PRO FRANCE準々決勝
QF 1:ソーヤー・リンドブラッド(USA)15.17 def.ディミティ・ストイル(AUS)7.20
QF 2:ブリサ・ヘネシー(CRI)13.33 def.アリッサ・スペンサー(USA)8.83
QF 3:インディア・ロビンソン(AUS)10.50 def.モリー・ピックラム(AUS)10.07
QF 4:ケイトリン・シマーズ(USA)11.93 def.ヴァヒネ・フィエロ(FRA)11.04
彼らの活躍を期待しエールを送り続けたい。がんばれ!日本!