取材:永島未知子 キュ・ニュ ホセゴー/フランス (2021年10月19日火曜日) WSL チャレンジャーシリーズ第3戦「Quiksilver and ROXY Pro France」大会2日目。
日曜と月曜が小波でレイデイとなったため、初日から2日あけた本日、火曜からの再開となった。朝に女子R1の残りヒートがスタートすると、続いて男子のR1に突入。日没までノンストップで進められ、H13までが行われた。
さて、午前中の女子R1では H11に松田詩野、H12に前田マヒナ、H16 に脇田紗良が登場。
この日の干潮は10時40分、満潮17時、満ち引きの差は満月も近いため大きく、つまりは波のコンディションがいつも以上に変化しやすい。
H11、松田詩野の試合が始まったのは10時半近くと、この日一番引いた時間帯での試合となった。それまでは2フィートほどだったサイズが、さらに小さくなったように見えた。試合の流れが決まるようなライディングが出ないまま中盤まで経過。するとそこでセットが入り、ローカルで元CTサーファーのポーリン・アド(FRA)が頭一つ抜ける。
松田は3位につけ、その時点でラウンドアップに必要なのは3.21。その後セットがこないまま5分ほど経過し、残りも10分を切った。波数の少なさと残り時間が気になってきた頃、優先権を持っていた松田は落ち着いて1本決める。それに3 .53ポイントが出て逆転。そのまま試合終了となり、ラウンドアップを果たした。
―ラウンドアップおめでとうございます。フランスでの1試合目はどうでしたか?
「ありがとうございます。試合全体がロースコアの戦いで、自分に必要なスコアも低かったのですが、大野修聖コーチと点数の出せる波を探す練習をしていたので、後半落ち着いて待てて最後2位にジャンプアップできたのかなと思います」
―ポルトガルでは大きい波での試合でしたが、今日は小さい波。波へ身体をどう対応させていますか?
「ポルトガルはポルトガルで合っていて調子がよかった。フランスについてからはまだ一度も波のサイズは上がっていません。でも潮の満ち引き、いろんな時間に入るようにしています。
一応どんなコンディションでも挑めるような状態は今日までに作れたかと思います。でも、まだまだこれから波のサイズも上がっていくと思うので、上がった状態の波をたくさん観察して、勝ち上がりたいと思います」
続くH12には前田マヒナが登場。潮が引きから上げに変わるタイミングで、波のコンディションが少し乱れる中、前田はヒート開始から積極的に波に乗る。10分過ぎにはターンからの綺麗なスプレーの上がったリエントリーで6 .33をスコアし、トップに立つ。
しかし波の面が落ち着いてきた中盤くらいから他の選手の追い上げが始まり、順位を落としてしまう。最後まで攻め続けるも、勝ち上がりに必要な点数が出るには至らず、ヒート時間の30分が終了した。
前田マヒナのヒートが終わると、2バンクで2試合が同時進行される事に変わり、H15にクレジットされていた脇田紗良の出番は通常より30分早くなった。その頃には波も少しサイズアップし、ヒートが始まると順調にセットが入り、選手らは順番のようにそれぞれが波に乗った。
15分が経過した時点で、脇田は鋭いリエントリーを入れた2本を揃えて2位に。ただし3位につけているのはその前のポルトガル戦で準優勝したガブリエラ・ブライアン(HAW)。5.71のニードを課しているとはいえ、気が抜けない。
しかし中盤を過ぎた頃からセットが入ってこなくなり、残り5分になるまで誰も乗らない状態が続いた。ようやく小さなセットが入ってくると、ガブリエラは何本もテイクオフを繰り返すが、ポイントが出ない。その間、脇田は優先権を持ち続ける。結局、最後までリードしたまま脇田は優先権をキープし、ガブリエラに乗らせつつも逆転を許さなかった。
―ラウンドアップおめでとうございます。
「ありがとうございます。ドキドキでした!」
―後半から波に乗らない時間が長かったのですが、プライオリティを持ち続ける作戦だったのでしょうか?
「ガブリエラはセットに乗ったら点数を出してくるのがわかったので、逆にセットの波じゃなかったら乗らせておくと。それは田中樹コーチと相談して立てました」
―前のヒートから2バンクでのスタートになりました。時間調整など大変ではなかったですか?
「直前まで知らなくて、ちょっと焦りもあったけど、波をずっと見ていましたので。自分のヒートもずっと波を見ていた場所でやったので、大丈夫でした」
―それにしても見ている方もドキドキしました。仕掛けますね。
「いや、(相手に点数が出たらどうしようかと)ドキドキでした!!」
女子のR1が終わると、続いて男子のR1が始まった。2バンク開催も数ヒート分が行われるとまた元の1バンクに戻った。日本人選手はH9に村上舜、H 12に五十嵐カノア、稲葉玲王がクレジット。
日本人選手トップバッターとなる村上舜のH9は16時半過ぎにスタートと、この日一番潮が上がっていく時間帯。割れるのか否か、波の見極めがより難しくなるタイミングに加え、海に向かって沈んでいく太陽の逆光はどんどん強くなる。
最初の10分近くに誰も乗らない難しいコンディションの中、村上も苦戦。1本目で5 .50をスコアするも、その後ノーライドの時間が続く。残り5分になりようやく2本目に乗るも、必要なポイントは出ず。潮回りに恵まれなかったか。3位での終了となった。
それから1時間後。ますます西陽が強くなると、逆光のせいでジャッジがしづらいとの理由で、場所を隣に移動させることになった。そうして始まった五十嵐カノアと稲葉玲王のH 12。
セットが入ると5〜6フィートほどに波はサイズアップ。ときにダンパーのショアブレイクと、午前中と同じ場所とは思えないほどに波は変化した。試合内容も誰かが乗るたびに順位が変わるなど、忙しかったが最終的に1位抜けをしたのは五十嵐カノア。
稲葉玲王はヒートがスタートしてから最初に波に乗るなど、トリッキーなコンディションの中でも対応し、まとめ上げようとしたが、ラウンドアップには至らなかった。五十嵐は中盤に華麗なリエントリーで6.00ポイントを出すと、最後に6.37をスコアし、それ以上のシチュエーション・チェンジをさせずにヒートを終わらせた。
―おめでとうございます。ヒートが終わっての率直な感想を教えてください。
「ありがとうございます。そうですね、今日のコンディションは難しかったです。10分ずつで本当に波が変わっていった。でもね、それがやっぱりフランスらしい波(笑)。ここはプランを立てても、その通りに絶対ならないという場所。フランスではプランなしのヒート運びをしようとしています」
―ヒート中、順位がコロコロ変りましたが、それは気になっていましたか?
「この大会はどちらかというとリラックス、楽しんでやっています」
―カノアくんはキッチリ勝ち上がり、波選びに長けている印象があります。波を見つけるポイントは何でしょうか?
「もしかしたら波を見つけるというよりも、よくない波を良く見えるようにサーフィンをします。(いい波に乗る、というよりも)波をいい波に見せることなのかな、と思っています」
ネクストコールは、現地時間の水曜日の午前8時15分、日本時間の 2021年10月20日15時15分です。男子のラウンド1はH 14西修司、H 15大原洋人が登場する。
女子のラウンド2が続けばH1野中美波、H4黒川日菜子、H5松田詩野、H7脇田紗良の出番となる。明日は本日より少しサイズアップの予報、風が出てきてこれまた読みづらいコンディションとなりそうだが、活躍を期待したい。
2021年チャレンジャーシリーズ「Quiksilver and ROXY Pro France」は、2021年10月16日から24日まで開催。WorldSurfLeague.comでライブでご覧ください。
今回も彼らの活躍を期待しエールを送り続けたい。がんばれ!日本!