【オーストラリアNOW】コロナ事情から開幕したQSイベント、コロナ禍のオーストラリア・サーフィン業界の現状

NOJILAND FILMこと菅野大典氏がオーストラリアの最新情報を伝えてくれる【SURFMEDIAオーストラリアNEWS】第8回となる今回は、コロナ事情からオーストラリアで開幕したQSイベント、オーストラリアのサーフィン業界の様子です。ぜひ最後までご覧ください。

 

取材、文、写真:菅野大典

 

 

先月より引き続き地形の良いグリーンマウント。

今年は雨も多く、涼しい夏の日々が続いているゴールドコースト。真夏の2月ながら過ごしやすい日々が続いています。先月より引き続き地形の良いグリーンマウントは天気が悪い日でも多くのサーファーで賑わっています。

 

コロナの状況は、相変わらず感染者が出たら、その地域をロックダウンし、封じ込めるという政策をとっており、時折発生するクラスターがあってもコントロールされています。

 

現在の陽性者推移グラフ 引用:https://www.covid19data.com.au

 

 

イベント開催前から出場選手と関係者に陽性者が発見され、入国後に14日間の完全隔離を義務付けられていたメルボルンで行われたテニスの全豪オープンでは、無事に開催されたものの2月9日にメルボルン空港の隔離ホテルでクラスターが発覚し、ビクトリア州は13日に5日間のロックダウン。それにより無観客試合となって行われた(18日からは再び有観客)

 

当初予定されていたWSLのスケジュールも大幅に変更され、長年行われてきたベルズビーチとゴールドコーストでのイベントは昨年に引き続き今年も行われず、ニューサウスウェールズ州で2戦、ウエスタンオーストラリアで2戦行われることになった。

 

今年もこのスナッパーロックスでのイベントが行われないのは寂しい。

 

今後もインターナショナルのイベントは、開催に困難を強いられる状況ですが、早く選手が試合に集中してできる環境になる事を願うばかりです。

 

そのCTの舞台にクオリファイする為のシリーズである2021年のクオリファイシリーズ(QS)がスタート。

 

このQSに関しても今までのルールと異なり、リージョナル選手のみにポイントが付くことになっており、インターナショナルの選手にはポイントが加算されないようになっているが、オーストラリアに滞在しているリージョナル以外の選手も何名かエントリーされていました。

 

現在留学中でジュニア最後の年の馬庭彩。ポイントはつかないがオーストラリアレッグを全戦フォロー。

 

5月にもゴールドコーストで1戦予定されているが、他の4戦全てニューサウスウェールズ州で行われる予定で、数年前にはNSW PRO SURF SERIESと題してニューサウスウェールズ州で行われるQSをサーキットにしたり、最近ではGRAND SLAMの試合やAUSTRALIA OPEN OF SURFINGの試合を5戦行うなどしたり、毎年オーストラリアンバトルというボードライダーズのナンバー1を決める大会もNSW州で行われたりと、オーストラリアの中でもサーフィンに最も力を入れている州である。

 

 

初戦のブーメランで行われたGreat Lakes Proで優勝したリーフ・ヘイゼルウッズと、世界が注目する若手サーファーのモリー・ピックラム。2人とも嬉しい初優勝。PHOTO : ETHAN SMITH

2戦目となるPort Stephens Pro presented by Mad Mexではジャクソン・ベイカーとコビー・エンライトが優勝。PHOTO : ETHAN SMITH

 

リージョナル選手のみにポイントがつくことによって、QS1000では普段出場しないような選手が出場しハイレベルな試合を展開しているクオリファイシリーズ。4戦目のQS3000の試合にはCT選手も何名か参加するため、よりハイレベルなイベントになりそうです。

 

このニューサウスウェールズ州での4戦は以下のスケジュールで開催中。

 

Feb 16 – 19 – Great Lakes Pro (QS 1,000)
Feb 21 – 23 – Port Stephens Pro presented by Mad Mex (QS 1,000)
Feb 26 – 28 – Mad Mex Maroubra Pro (QS 1,000)
Mar 02 – 07 – Vissla Central Coast Pro / Sisstrevolution Central Coast Pro (QS 3,000)

 

キラの丘にはカメラマンとギャラリーが集まった。

 

ゴールドコーストのサーフィンのコンディションは、初旬にはトロピカルサイクロンLUCASが発生し、程よい進路で被害をもたらす事なく最高なスウェルをもたらしてくれました。キラの丘にはカメラマンとギャラリーが集まった。

 

いつもの夏とは違く混雑しない時間もあり、形のいいチューブを堪能。

 

サイズアップした期間はそこまで長くなかったが、コンスタントにうねりを届けてくれ、毎日がファンウェーブ。地形の整っているスポットXや、キラを中心に多くのサーファーがチューブを堪能していました。 各地域でのボードライダーズの活動もスタートし、毎週末いろいろなビーチでテントを立てて大会が行われています。

 

昨年よりずっと地形が残っているレーシーズ。
ゴールドコースト特有の良質なライトハンドの波
キッズもチャージ
子供をプッシュするために親もフィンを履いて一緒に入水。

 

サイズもありながらどのレベルの人も楽しめる波が割れていて、新たなシーズンの再開に選手みんな真剣勝負の楽しさを感じられる最高の試合環境となっていました。

 

昨年末のビッグスウェルにより砂がなくなっていたスナッパーロックスにもサンドパンピングからの砂が少しだけだが放出され、地形が戻ってきていました。岩は以前むき出しの状態ですが、ピーク周辺では掘れた波がブレイク。

 

地形が戻ればすぐに混雑するスナッパーロックス。それだけここの波の価値は高い。
スナッパーボードライダーズのコーチング風景。

 

スナッパーロックス・ボードライダーズも毎週火曜日の午後に行われるコーチングセッションを再開。マーク・リチャードソン、ジェイ・フィリップス、ソルトパフォーマンスのマルコスといった、豪華なメンバーからスナッパーロックスでトレーニングを受けれる。まさに最高の環境が揃っているクラブ。

 

岩の周りはキッズだらけ。ゴールドコーストにお越しになられた際には火曜日の午後はスナッパー以外でサーフィンすることをお勧めします(笑)

 

毎日波はあり、地形の整っている場所も多いのですが、例年とは違った形の夏を迎えているゴールドコースト。普段なら日本からサーフィン修行に訪れる日本人サーファーを目にする時期ですが、今年はコロナの影響でその姿は見ることができず。個人的にいろいろな人と再会できる季節なだけに残念です。夏の大イベントとなるCTの開催もなくなったため、寂しい夏に感じてしまいます。

 

 

オーストラリアのサーフィン業界の様子

コロナの影響を受けてからもう少しで1年。オーストラリアのサーフィン業界の様子はどうだったかというと、被害を多く受けていた飲食店や観光業とは裏腹に大忙しの1年間でありました。あるメーカーでは半年待ちや、オーダーストップとなっていたりと、前年度をはるかに超える忙しさでほとんどのサーフボード工場の生産が上がっていました。

DHDやJSと共にオーストラリアのサーフボードファクトリーをリードするTHE GLASS LAB。

グラスラブ工場内。ボードラックは常にフルに埋まっていて、所狭しとブランクスや完成された板も置かれています。

 

コロナの発生当初は誰もが生産が落ち込むと予想してたのですが、国民が国内外に旅行に行くことができずにいた事、毎日波がある事、コロナによる失業手当や補助金といったものが充実していた事、基本的にお金を溜め込まない性格の多いオーストラリア人は、娯楽に当てることができたのだと考えられます。

 

ツアーがなく不安に感じていたインダストリーワーカーにとっては、仕事を失う事なくむしろ忙しい日々を送る事になった1年。今後はどのような影響が起こるのか予測はできませんが、世界中のサーファーがまたこの時期にゴールドコーストにこれるようになる事を願います。

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。