昨年、10月にアメリカの老舗サーフィン専門誌「SURFER MAGZINE」が60年の歴史に幕を下ろした。そして、日本の「F+ MAGAZINE」もWSLの大会キャンセルに伴い、昨年6月の発刊をもって休刊となったことは記憶に新しい。
そして、この2月に日本でも大きな動きがあった。まず、「NALU」「BLADES」「SurfStyle」「SurfTrip JOURNAL」などを発刊している枻出版社。こちらは2月9日に民事再生法を申請し、受理された。負債総額は57億8800万円である。
枻出版社は雑誌、書籍の出版事業に加え、制作請負事業、飲食店事業や住宅建築設計事業、ゴルフ事業など幅広く展開。しかし、出版不況とこのコロナ禍で売り上げの落ち込みに歯止めが掛からず、自主再建を諦め、法的手続きによって再建を目指すことになった。
出版事業については、昨年の12月に投資会社のドリームインキュベータに譲渡を決定済み。ドリームインキュベータ100%出資の新設会社のピークスを2月に設立して、サーフ誌の他にアウトドア誌、ゴルフ誌、釣り誌、自転車誌等々の出版事業を引き続き行うと発表した。
そして、もう一社は「Blue」「HONEY」などを発刊していたネコ・パブリッシング。2月にTSUTAYAで有名なカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)傘下のカルチュア・エンタテインメント株式会社に吸収合併された。
2012年にカルチュア・エンタテインメント株式会社より買収され、子会社化していたネコ・パブリッシングだったが、この合併により経営の効率化を図るという。エンタテインメントとライフスタイルコンテンツの企画編集力を融合させ、多様なニーズに対応できる体制とサービスを強化する。
会社名はカルチュア・エンタテインメント株式会社に変わるものの、定期刊行物の発行や「ネコ・パブリッシング」事業のブランド名は残るとして、大きな変更はないと付け加えられている。
生き残りを懸けて出版会社もデジタル化を推進、WEBの作り込みなど紙媒体と連携したコンテンツ作りなど、できる限りの手は打っていた。しかし、「本離れ」からの出版不況に加え、このコロナ禍が要因となり、経営が圧迫されたとも言えるだろう。
前述のカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)は、カルチュア・エンタテインメント株式会社を通して、これまで多くの出版会社を買収。2012年にネコ・パブリッシング、2013年に徳間書店を買収、2017年に主婦の友社なども子会社化している。
これはデジタル社会に向けて、多種多様なコンテンツが必要となることを見越し、各業界の特化している情報、モノを集めるため。そこで集めたライフスタイルコンテンツを企画、編集し、それをエンタテインメント・カルチャーに変えて提供。人生をより豊かにすることに貢献したいと謳っている。
ここ数年、サーフィン業界が資本の大きな会社に買収される動きは、Quiksilver、Billabong、Volcom、Hurleyなど大手有名ブランドだけでなく、このサーフィン専門媒体も同じ運命であった。広告収入減から経営が悪化。その先は消滅か、吸収されてしまうのか。
デジタル化は必須としても、紙媒体でできることをより明確化、差別化していくことも必要。生き残るためには特化したオリジナルコンテンツを制作、販売していくことが鍵となるだろう。原点に戻って、読者のニーズに応えること。それこそがWEBも含め媒体に課せられた使命でもある。
取材、文:山本貞彦