写真、文:デイブ・スパークス/Rip Curl 翻訳:李リョウ
トム・カレンとメイソン・ホーのふたりが台風を追いかけて日本を訪れた「The Search」のエピソード24「The Typhoon」
第二章
トムと合流したのは、その海岸だった。「オーグダイ、スパークシ!ハウアーユーメート?イェー、 ナー、イェップ、イェップスィート、ケンオースコバー!」トムはオーストラリア・アクセントで英 語を話すことができて、コックニー訛りを上手に使い分けている。
長年オーストラリア人といろい ろな交流があったからだろう。彼はすでにこの島にしばらく滞在していてローカルバンド達とフェ スティバルで演奏などを行っている。サーフィンの調整も十分に整っているようだ。
知っている人も多いと思うけれど、彼は最近スキムボードでサーフィンをしていて、そのことに私は興味を持っていた。
それは幅のあるトーインボードのようで、浮力が十分あるようには見えなかっ た。浮力を補うために彼はフォームをデッキに糊で接着していた。全体の外見は寄せ集めた竹のようであり適当に作ったようにも見えた。
よくいえば雰囲気はあのジョージ・グリノー風でもある。 スクラップで粗野、クラシック、美学を超えた機能美。トムというクリエイターはやはり天才の域に達していたというべきか。
「このボードは早いよ」とトムは嬉しそうに言った。「事実、かつて人類が知りもしなかった速度に達するんだ」
私はなんとか評価できそうな点がないか探したが、見つけられなかった。「これは僕が作った」と彼が言って手に取った物は、最初のよりもさらに幼稚な感じだった。まるでフォームとコルクと竹の寄せ集めの悪夢。
「ロッカーはほとんど必要ないんだ。これはすごく薄くてボード自体がしなるからね。つまり必要なときに必要なだけロッカーが生まれるんだ。そのフレックで波のパワーも感じられる。このカーブもそれに影響する。
フレックスはワイドな中心に進むに連れて少なくなり狭いところで強くなる。 このカーブをどうやって作ったかわかるかい? 僕はスケートランプのカーブを参考にした。フラッ トなボトムからランプのトップに向かうカーブを利用したんだよ」
驚嘆すべきパフォーマンスは、スキムだからと言うよりもスキムにもかかわらずと言った方が正しいだろう。
私は何か気の利いた質問か、それとも意地の悪いコメントでもしようかと考えたが無駄だった。突然トムが先ほどのライトハンドのリーフに気をとらわれ、幸運にも話は中断した。彼はどうやら波が気に入ったようだ。彼は沖に向かったが、でも私はためらっていた。
「サーフしたいかい? でも、ちょっと警戒した方が良いんだよ。島が背景になるから見た目は良いけどね」それが問題ではないのだけれど。
トムは彼のスタイルでビートを刻み始めた。彼はあの「ボード」で準備万端。波は私が考えていたよりも恐ろしかった。でも彼は何本か波に乗って生還した。
彼のスキムボードでのサー フィンは、そのボード自体の性能よりも、彼の信じられないほど高い技術のほうが優っているように感じられた。
ある朝、私がメイソンにどこでサーフィンしたいかと質問したところ「トムがサーフするところならどこでも」と即答した。よく晴れた午後私たちは大きなビーチブレイクをチェックした、ソリッ ドな6-8フィートが北のコーナーでブレイクしていた。
波は厚くトリッキーだ。パドルアウトだけ でも十分にハードで、ましてや波を捕らえるのは困難に見えた。トムは波に抗うことなく順応していき、リフォームしてインサイドで再びブレイクする波をついに捕らえた。
彼のスキムボードは早すぎるほど加速し、なんとか減速するとバレルに入った。彼のスキムボードでのサー フィンは、そのボード自体の性能よりも、彼の信じられないほどの高い技術のほうが優っているよう に感じられた。
彼の海のなかでの精神状態は誰にもうかがいしれない。いやケリー・スレーターな らば理解できるだろう。彼がスキムで披露した驚嘆すべきパフォーマンスは、スキムだからと言う よりもスキムにもかかわらずと言った方が正しいだろう。
第3章へ続く。
トム・カレン&メイソン・ホー「THE TYPHOON」The Search
- プロローグ
- 第一章 パートナーはトム・カレンとメイソン・ホー
- 第二章 トム・カレン自作のスキムボード
協力:リップカールジャパン株式会社:http://ripcurl-jp.com/