黒川日菜子が5年ぶりにゴールドコーストで楓海都とセッション、スカルキャンディ・オージーグロムコンプ

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第49回となる今回は、黒川日菜子が5年ぶりにゴールドコーストで弟の楓海都とセッション、スカルキャンディ・オージーグロムコンプ、ベルズ・ビーチ・ロングボード・クラシックなど

取材、文、写真:菅野大典

 

7月のゴールドコースト。

 初旬は天候が崩れたり、真冬のように凍える日もあれば、夏のような暖かさの日もあり、さまざまな天候が楽しめる月でもありました。

 

晴れ間が広がれば気持ちの良い空気になるこの季節。朝から海沿いの歩道には散歩をしたりサイクリングをする人がたくさんいます。歩道沿いには綺麗な芝生が広がっています。ゴールドコーストでは自分の敷地内の芝生の管理など景観に関わる規則があり、常にメンテナンスが施されています。 スクールホリデーとも重なって、ビーチでは子供が元気に遊んでいる姿も。温暖な気候のゴールドコーストでは冬でもビーチが遊び場となっています。

 

 ゴールドコーストの波の状況は、先月の小さなコンディションから一気に変わり、初旬からサイズのある日々。例年、冬のゴールドコーストは波の小さいコンディションが多いのですが、今月は素晴らしいうねりが届きました。

 

 

今年に入ってからずっと良い地形を保ち続けているスナッパーロックス。掘れほれのチューブが毎日のように割れていました。スクールホリデーと重なり朝から夕方までキッズサーファーもたくさん。陸にはカメラマンも多く、時期外れのスウェルを堪能していました。 先月末から行われていたオッキーズグロムコンプで優勝したレイハニ・ゾイック。波に乗っては陸を走ってピークからエントリーし、休む間もなく何度も繰り返しラインナップについていました。スナッパーロックスのお隣のポイントD-BAHではワイルドなコンディションの中サーフィンをするロカナ・カレンの姿がありました。 陸に上がってはカメラで映像をチェックし、またしてもウォール沿いまで走ってゲットの繰り返し。海の中でも忙しく波に乗り、プロさながらのトレーニングをしていました。とにかく波に乗る本数がケタ違い。ジャンクなコンディションなので普通のサーファーにはゲットすることもハードですが、それだけに人の数も少ないので乗れる本数もたくさん。海の中でも縦横無尽に駆け巡っていました。

 

 この時期のクーランガッタ周辺は、オッキーズグロムコンプやスカルキャンディオージーグロムコンプといったイベントが開催するので、オーストラリア全土からグロムサーファーが集まりキッズサーファーにとっては刺激たっぷり。特に今年は波のサイズもあり、切磋琢磨にサーフィンに打ち込んでいる同年代のキッズがたくさんいました。

 

 朝から陽が沈むまで1日中この場所で時間を使う人がたくさん。大人の一般サーファーにとっては全然波がとれずに厳しい場所ですが(笑)、世界チャンピオンを何人も輩出している土地なだけあって、キッズサーファーにとっては最高の環境です。

 

 中旬はさらにサイズも上がりエピックなコンディションに。

 

ワーキングホリデーでニュージーランドに住んでいる黒川日菜子も、5年ぶりにゴールドコーストへ訪れ最高のスウェルを堪能していました。弟の黒川楓海都と共にスナッパーロックスでセッション。オーストラリアに住み始めて5年以上になる楓海都は、現在BHLCという語学学校からスポンサーされ学生ビザで滞在中。サーファーやスケーターを中心としたBHLCのアスリートチームに選ばれている楓海都。この学校では、語学だけでなくサーフィンやスケボーのレッスンも受講でき、多くの国から留学生が通うゴールドコーストの中でも人気の語学学校の1つとなっています。今年からはブラジリアン柔術やサッカー選手などもサポートされ、学生ビザで滞在するアスリートにとって配慮の効いた語学学校となっています。 以前はQSで優勝したり日本代表としてワールドゲームスに出場するなどの経歴を持つ日菜子。最近は試合に出場することは無くなりましたが、スタイリッシュでキレキレのサーフィンはいまだに健在でした。 この日何度もチューブをメイクしていた小濃来波。チューブだけに限らずバリエーション豊富なサーフィンはカメラを向けていてとても楽しい存在。2週間のスウェルを明一杯やりきり、波が小さくなると同時にインドネシアへ。フットワークの軽い動きはプロサーファーにとってとても大事なこと。波がオンショアに変わってもサイズのある時のスナッパーロックスはサーファーがたくさん。オリンピックに出場する前のジャック・ロビンソンも毎日のように姿を表していました。
7月の中旬はゴールドコーストだけでなく、オーストラリア全土で波が大当たりとなるレアな日々に。

マーガレットリバー、ベルズビーチ、スナッパーロックスといったオーストラリアの有名な3ポイントだけでなく、シドニーやタスマニアの地域など、ほぼ全ての地域でエピックな日となりました。PHOTO : @markonorati

その後のゴールドコーストでは徐々にサイズが下がりながらも、地形の良い場所ではサーフィンを楽しめるコンディションが続きました。

 

 ハワイからゴールドコーストに訪れていた西元エミリー。夕焼けのサーファーズパラダイスの景色をバックにツインフィンでクルーズ。掘れほれの波からクルーズできる波まで、色々な種類の波があるのがゴールドコーストでのサーフィンが人気の場所となっている理由の1つ。板にしゃがみ込む日菜子。波に恵まれた2週間の滞在となり、改めてゴールドコーストの良さを感じとれたと話していました。

 

 

さらに月末には、またしても東海岸の沖合に特大の低気圧ができ、7月はゴールドコーストにとって大きなあたりの月となりました。

 

 

31日の日にはキラでもブレイクする大きなコンディションに。この大きなうねりは8月に入ってもしばらく続きそうです。

 

 7月もオーストラリア全土でたくさんのコンテストが開催。

 7月4日から9日には、レノックスヘッズではスカルキャンディオージーグロムコンプが行われました。

 この試合は先月末から行われていたオッキーズグロムコンプ同様、サーフィンオーストラリアのランキングシステムに反映されるグロムサーファーにとっては重要な一戦であります。

またアンダー18以下のディビジョンのみならず、WSLのプロジュニアも共同で同時開催され、白熱した6日間のバトルが繰り広げられました。

 

イベント期間中は波にも恵まれ最高の舞台となったレノックスヘッズ。PHOTO:SURFING NSW/ETHAN SMITHU-18ISAワールドジュニア王者であるデーン・ヘンリーが、プロジュニアで10ポイントライドを出し優勝するなど、大盛り上がりのイベントとなった。PHOTO:SURFING NSW/ETHAN SMITH セミファイナルでは19.37ポイント、ファイナルでは18.43ポイントという脅威的なトータルスコアを出して勝利したデーン・ヘンリー。波のコンディションが良ければ実力が発揮される強い選手です。U-16ディビジョンでファイナルに進出し、同世代の良きライバルであるエライザ・リチャードソンとマンオンマンを戦った高橋花音。 同世代で双子の姉妹の妹でグーフィーフッターと境遇がとても似ている2人。今回はエライザに軍配があがったが、今後もこの2人の成長にも目が離せません。 レノックスヘッズに住んでいるコナー・オレアリーも応援に駆けつけ花音を祝福。アンダー16最後の年で良い結果を残しました。

 

 

 他にもサンシャインコーストで10日から12日に開催された大学サーフィン選手権大会で馬庭彩が3位に入賞するなど、たくさんのコンテストが行われましたが、今月1番のイベントといえばベルズビーチで開催された、WSLロングボードツアーの開幕戦となるバイオグラン・ベルズ・ビーチ・ロングボード・クラシック。

 

 連日サーフメディアの記事(https://surfmedia.jp/2024/07/21/bioglan-bells-beach-longboard-classic-05/)でも取り上げましたが、井上楓、井上桜が姉妹でトライアルに出場して本戦の出場権を獲得し、井上鷹、浜瀬海、田岡なつみと共に五人の日本人選手が出場しました。

 

 

会場となったベルズビーチ。PHOTO : WSL / Miers
トライアルに出場し本戦出場を果たした井上楓と桜の姉妹。楓はラウンドオブ16まで進出の9位、桜は17位という結果。WSL / Miers
ワールドツアー初出場となった浜瀬海は9位という結果。PHOTO:WSL / Nic Phillips
終了間際にまさかの逆転劇を演じられ、悔しい敗退を喫した井上鷹も9位でイベントを去った。PHOTO:WSL / Nic Phillip
他の日本人選手が敗退する中しっかりと良い波を掴みファイナルデイまで駒を進めた田岡なつみ。PHOTO:WSL / Nic Phillips
ファイナルデイにはコンディションも整い、田岡なつみの勢いも増すばかり。クォーターファイナルでは15.17ポイント、セミファイナルではエクセレントライドの8.23ptを含む16ポイントのトータルスコアで見事にファイナルへ進出。PHOTO:WSL / Cait Miers
ファイナルではWSLロングボードチャンピオンであるソレイユ・エリコに敗退してしまったが、自身初となるWLT準優勝という結果を収めた田岡なつみ。PHOTO:WSL / Cait Miers
バイオグラン・ベルズ・ビーチ・ロングボード・クラシック男女ファイナリスト。左から男子準優勝ジョン・マイケル・ヴァン・ホーエンシュタイン、男子優勝テイラー・ジェンセン、女子準優勝田岡なつみ、女子優勝ソレイユ・エリコ。

 

再び波に恵まれた7月のオーストラリア。

 気づけばゴールドコーストでは、6月こそサイズの小さいコンディションが続いたものの、今年に入ってからポイントの地形も大きく崩れる事なく、波のコンディションの良い日が続いています。

 コロナウイルスの規制が解除された昨年から、多くの日本人観光者や留学生がゴールドコーストに再び訪ねてくるようになり、今年は夏だけでなく冬の時期でもさらに多くの人が訪れています。

ホームステイ不足やシェアハウス不足から留学したくても受け入れ先がないと言われるほど人気の留学先となっており、円安、物価高騰などといった影響がありながらも、ゴールドコーストは魅力的な滞在先ということが感じられます。

 

 

 改めて、ゴールドコーストはサーファーにとって住みやすく、環境の整っている場所だと感じました。
 

 最後になりましたが、7月23日にポートマッコーリーのノースショアビーチで、プロサーファーであるカイ・マッケンジーがシャークアッタックの被害にあうという事故がありました。ビーチを散歩していた非番の警察が発見し救助にあたり、現在は病院に搬送され一命は取り留めていますが、片足が切断されるほど大きな怪我を負いました。

 それでもカイは、27日に自身のインスタグラムを更新し、家族や彼女、友人に感謝を述べると共に、力強い言葉で海への復帰を誓っていました。

 

 

@kai_mckenzie

オーストラリアのサーファーにとって、シャークアタックの問題は常についてまわるもの。

一刻も早い回復を願うと共に、海への復帰を願っています。

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。