東京五輪 銅メダリストの都筑有夢路（木下グループ）が4日、サーフメディアのインタビューに応じ、苦しかった今シーズンを振り返り、親友との戦いを経て掴んだ勝利、そして来年のオリンピック、自分の将来について語った。
過去2シーズン、出場したすべてのQSでファイナル進出を果たしている22歳の都筑有夢路は、韓国のウェイブプールで初開催となったWSL QS3000 「シフン・コリア・オープン」で圧倒的な強さを見せて優勝。
パーフェクトに近い9.50（10点満点）という大会のシングル・ハイエストと女子のヒートトータル最高得点18.10（20点満点）をマークし優勝。彼女のサーフィンが明らかに進化し続けていることが示された。
優勝おめでとうございます。今回の韓国のウェイブプールは寒かったですよね。
ありがとうございます。初雪を韓国で迎えました。笑 水も凄く冷たくて体調管理だったり、ウォーミングアップに時間をかけましたね。韓国には試合の始まる２日前ぐらいに入りました。
海と違って練習時間が決まっているので、自分は今日の何時から何時まで練習できますみたいな、そういうシステムで練習していたんです。いつもみたいに好きな時間に海行ってみたいな感じではなかったんです。
韓国では何か美味しいものは食べられましたか？
キンパが凄く美味しかったです。本場の味がしましたね。辛いものは苦手で、キムチぐらいしか食べなかったんですけど。笑
大会を振り返り、今回の勝利の感想を聞かせてください。
そうですね。凄く嬉しい気持ちだったのと、最初のファーストラウンドとかは波との調子が合わなくて、どうやってこの波を攻略しようかなって凄い考えていました。それでファイナルに向けて調子が合って、良い試合、良い経験になったんじゃないかなって思います。
ラウンド１を１位通過、 ラウンド２では脇田選手に継いで２位でアップ。 QFからはマンオンマンで中塩選手に僅差の勝利、セミでは再び脇田選手との対戦で9.15 と8.25で勝利。さらにファイナルでは9.50 + 8.60トータル18.10という大会最高得点をマークしての圧勝でした。
ラウンドを重ねるごとに、スコアを上げていく感じは自分の中で意識されていましたか。
そうですね。試合では常にそういう気持ちでいたいんですけど、今回はそれがすごく上手くいって、次の波ではこうして試してみようとか、次の波での課題を見つけて、それを試合で試してやって、それが上手くハマっていった感じですね。
都筑選手は、これまでCTでサーフランチ、静波、韓国とタイプの違うウェイブプールを経験されてきたわけですが、静波と韓国では優勝もしてますし、プールでのサーフィンが得意な感じですか？
プールは好きですけど、特別好きという訳ではなくって。でも自分の中でもやっぱり結果が出ているし、相性が良いんだなって思いますね。
韓国のセミファイナルでは、脇田選手とのマンオンマンで、台湾のファイナルのリマッチとなったわけですが、親友との戦いは特別な気持ちとかがありましたか？
みんな特別ですけど、韓国での美波（野中）とのファイナルも特別でした。ファイナルを親友と戦うという機会はなかなかないですからね。
お互い一緒に１０年以上試合をしてきて、悔しいことも嬉しいことも分かち合える仲間ですから。台湾では敗れたけど、素直に相手の優勝を喜べたので涙も出ました。一生忘れないだろうなって思いましたね。
４人で表彰台に上がれたことは本当に良い思い出
アムちゃん（都筑有夢路）、サラちゃん（脇田紗良）、ミナミちゃん（野中美波）、シノちゃん（松田詩野）という、日本のトップ４で表彰台に上がれた気持ちは？
みんなで表彰台に上がれて、すごく嬉しかったです。もちろん優勝できなかった相手が辛いのも自分は知っているので、これからもっと、みんなが優勝した時は自分も喜びたいし、お互いをリスペクトしあえる関係で凄い自分も大切にしているので、今回みんなで表彰台に上がれたことは本当に良い思い出になりました。
紗良ちゃん（脇田）も詩野（松田）も年はひとつ下なんですけど、同級生な感覚で、いつも戦ってきているメンツだし、みんなお互いをリスペクトし合っている。試合で当たると、一緒に試合を楽しみたいなって気持ちですね。今回みたいなことは初めてかもしれないですね。
なかなか結果が出せなくて、本当に苦しい１年だった。
オリンピック後、都筑選手の笑顔が変わったような気がしていた。心の底から笑っているように見えなかった。でも今回の台湾と韓国では彼女の本当の笑顔を見ることができた。メンタル面とかで変化があったんですか？
はい、ありました。前半は、なかなか結果が出せなくて、本当に苦しい１年だったんです。去年も今年も、オリンピックのあと、自分の課題は一つづつクリアして行っているし、調子は良かったんですけど、なかなか結果が出なくて。
楽しさとプレッシャーのバランスが取れず、自分の気持ちを整理できなかった。
今年は自分の気持ちと向き合ったし、自分を見つめ直す時間になって。今年のISA（エルサルバドル）もそうなんですけど、プレッシャーも感じて、みんなからの期待もあったし、それに応えて勝たなきゃいけないって気持ちでした。
楽しさとプレッシャーのバランスが、ずっと上手く取れてなくて。自分の気持ちを整理できてないことが凄く多かったんです。
後半に向けて、しっかり自分と向き合えたし、楽しんでやることが大事だなって改めて思えたので、『楽しんでやろう！』という気持ちでやれました。
負けても、その経験は自分の成長に必要だし、夢のワールドタイトルを取るために必要だったんだって思い直すようにしたのが、自分の中でも良いバランスが取れて、ちょっとリズムを掴めてきたのかなって思いました。
３年連続でCS出場で、今年はワイルドカードをもらって、チャレンジャーシリーズ（CS）に出たわけですが、現在アジアQSランク８位というポジションは、決して楽観視できる順位ではないと思うんですが。今後をどのように戦いますか？
今年CS回っている期間はCSにフォーカスしたかったので、QSには一切出ていなくって、CSが終わってからQSに出ようと思っていました。
ツアーも終盤、自分なら出来ると思っているし、もしそれがダメでも自分に必要な経験だったんだって思うしかない。来年１年も今後の自分に繋げる１年にしたいって思います。
もちろんベストは尽くすし、全部優勝する気持ちで今もいます。もしそれができなくても、そう思うことで、自分が強くなれるんだったら、それも苦じゃないです。今後はフィリピンとかオーストラリアと予定しているQSは全部出る予定です。
WSL-QS3000フィリピン、1月22日〜28日
ISAオリピック最終予選プエルトリコ 2月22日～3月2日
WSLアジアリージョンからは男子6名、女子4名が2024年チャレンジャーシリーズに出場できる。その内訳は男子がリージョナルQSランキング上位5名＋リージョナル・ワイルドカード1名、女子はリージョナルQSランキング上位3名＋リージョナル・ワイルドカード1名 。
2023/24シーズンのQSは、2023年4月から2024年3月までに開催されたイベントのトップ５がカウントされる。都筑は２試合のみ出場で現在８位にランキングされている。
本当にいま調子が良いので、そこで勝てる気しかしないです。
今月、オリンピック最終予選となるISAのプエルトリコ大会に出場の日本代表選考会がありますが、オリンピックへの思いを聞かせてください。
今年のISAと似たような状況なので、今年のISAの反省を活かして、２月のISA（プエルトリコ）に向けて調整していきたいし、本当にいま調子が良いので、そこで勝てる気しかしないです。
もちろん、１位を狙ってもう一枠（日本のオリンピック出場枠）増やしたい気持ちでいるので。そのモチベーションを保ちたいなって思います。
代表になるとあの波での戦いとなりますが、都筑選手にとってチョープーの波へのイメージは？
正直『怖い』が一番最初にくるんですけど、去年の４月強化合宿で１回行っていて、CTもタヒチであるし、今後のために絶対に必要な経験、必要なスキルなので、そういう部分でもオリンピックに向けて更に練習もしなくてはいけないし、板の調整だったり、トレーニングも含め、更に追い込んでいきたいなって思います。
ビッグウェイブは得意な方ですか？
全然です。笑。世界の女の子たちと比べると、日本で育ってきたし、経験は少ないのかなって正直思うんですけど。まぁ努力でどうにかなると思うので、頑張りたいって思います。
東京オリンピックで五十嵐カノア選手と都筑選手がメダルをとって日本のサーフシーンが変わったと思いますか。
自分の中では、そんなに変わったって感じはないですね。認知度は上がったし、そういう面では良かったなって思うんですけど、まだまだニュースで取り上げてもらえる回数も少ないですし、スポーツとみられてないのかなって思うんですけど。
選手としてできることは結果を出し続けて、活躍することが一番なのかなって自分では思っているんで。自分が頑張り続ける姿を見せられたら良いなと思います。
その一方で、都筑選手の活躍があって、子供たちにオリンピックに出て、メダル取れるんだって、夢を与えられているんだと思うんですが、そのような感覚はありますか。
自分が子供たちに夢を与えられて、そういう気持ちになってもらっているんだったら凄く嬉しいし、それが自分の夢でもあります。だから子供たちが夢を持ってくれるっていう、それも含め、時間はかかるものですけど、夢を叶えていけたら良いなって思いますね。
自分がサーフィンで人間として成長させてもらっているので、サーフィンを通して子供達に（自分と）同じように成長を知ってもらえたら凄くいいなと思っています。
そういうことを伝える存在になりたいというのが、競技サーフィンを辞めた後の自分の目標。サーフィンを通して、子供たちが成長できる何かを見つける手助けが出来たらいいですね。」。
五輪2大会連続出場を目標に掲げる都筑は、まずは確実にISA日本代表入りを決め、ISAのプエルトリコ大会で上位に入る必要がある。都筑有夢路の世界への挑戦はこれからも続く。日本のみんなが応援している。がんばれ！アムちゃん！
