オーストラリアの先住民族 “アボリジナル” の血を引くフリーサーファー/アーティスト の Otis Carey (オーティス・キャリー)。彼が描く全ては、広大なオーストラリアの大自然や動植物からインスパイアされ、アボリジナルの独特な手法を用いて描かれている。 彼が手掛けるアートは、世界でも知られるシドニーのチャイナ・ハイツ・ギャラリーに所属するほどの作品だ。
そんな彼が今年5月末に横浜赤レンガ倉庫で行われたGREENROOM FESTIVAL’23のために来日。会場では、彼のインパクトあるアートを車両自体にライブペインティングし話題となった。
BILLABONGは今年もADVENTURE DIVISIONをテーマとした車両の展示に加え、WOMENSコンテナブース、そして 50周年を記念したワークショップなどの内容で出展し大盛況となった。
また、昨年に引き続きUSA本社所属のデザイナー2名、カミロ・ハラミロとアーロン・ラスボーンがアーティストとして来日しArt Galleryでの展示販売も実施された。
また今回オーティスは、ビラボンとコラボがきっかけで出会った、日本人アーティスト、Yoshi47さんが住む愛知県の伊良湖まで、台風のスウェルを追いかけてサーフトリップ。Yoshi47さんの工房でもアート創作に没頭、十分すぎる波にも出会えて、大好きな釣りも満喫し、日本のトリップを堪能した。
そんな彼に今回はサーフメディアが独占インタビュー。彼のアートへの想いを聞いてみた。
⬛︎どこで生まれ育ったんですか?
OTIS CAREY(O.C):僕はオーストラリア東海岸のバイロンベイ出身で、そこから1時間ぐらいのグラフトンというところで生まれたんだ。人生の大部分はバイロンベイで過ごしてきて、今もバイロンベイに住んでいます。
⬛︎あなたの作品はアボリジナルアートの中でも独創的だと思うんですけど、子供の頃どんな風に生活を送っていたんですか?
O.C:子供の頃は電気や水道のない所で育ったんです。本当に常に自然と隣り合わせの生活だった。もちろん学校とかにも行っていたんだけど、ビーチが側にあったので、自然が僕の遊び場という環境だったんです。
いまはバイロンベイでは、サーフィンをしながらアーティスト活動を続けていて、3人の子供(12歳、5歳、3歳)と農場に住んで、牛などの家畜をの世話をしながら生活をしているんです。
⬛︎最近は釣りにハマっていると聞きましたが?
O.C:そうなんです。釣りは子供の頃から、ずっとやっていたんです。でもSNSで写真を載せたりはしてなくて、最近はビラボンとのコラボとかもあって、釣りの事も発信するようになりました。
⬛︎どんな風にアートと出会ったのですか? いつから、どんなきっかけでアートを描くようになったんですか。
O.C:絵を描き始めたのは2014年からで、きっかけはメンタル・ヘルス。何でもそうだと思うけど、年を取ると自分をより深く理解できるようになるし、そうするといろいろな方法で自分を表現できるようになる。だから、僕は絵を描き始めたんだけど、それが文化との結びつきを強めてくれたんだ。
サーフィンを通じて、瞑想の要素であったり、自然の中にいることによって、精神の均衡を保っていた部分があったんだけれど、サーフィン以外のところで、何かやりたいなって思った時に絵を初めて見た。
精神的にも集中ができるし、やっていて凄く落ち着くというのがあって、それで始めるようになりました。
もともと文化との結びつきは強かったけど、人間としての自分を理解し、脳や感情の働き方を理解することで、そのすべてを注ぎ込むことができる。アートが自分にとって意味を持つためには、そういったものがすべて揃う必要があったんです。
⬛︎オーティスのアートは、最大のインスピレーションは何ですか?
O.C:一番に来るのが家族で、身近な人との関係とかがあるんですけど、それと同じぐらい大切なのは、自分の源がアボリジニからきているところが一番大きいと思います。
自分と自然との関わりというのが一番のインスピレーションソースになっています。
⬛︎ビラボンとの出会いは? 最初はサーフィンの技量が買われて、プロライダーになった感じだったんですか?
O.C:ビラボンとのコネクションは2016年に始まりました。最初は単にサーファーとして、チームライダーとしての契約が始まって、2018年に自分のアーティストとしての作品をフィーチャーしたコレクションをビラボンがリリースしてくれたんです。
⬛︎ビラボンは、あなたの作品を商品化していますが、自分が描く本来のアートとの違いがありますか。
O.C:基本的には違いはないですね。同じ感じでやっています。
⬛︎今回のオーティスの最新コレクションはどんなものなのですか?
O.C:コレクションのインスピレーションのもとになったのは、「Gumgali Yuludarla」(黒いゴアナ(トカゲ))というアボリジニに伝わっている伝説のようなものなんです。
トカゲが昔、ハンターに追いかけられて土の中に逃げ込んで、そのあと土の中を逃げ回って、海の中から顔を出したという言い伝えがあって。実際にトカゲが顔を出した岩があるんです。その話に着想を得てコレクションを作りました。
https://shop.billabongstore.jp/fs/billabong/c/otis_cc
⬛︎アボリジニであるということ、インディジナス 先住民として生きてきたことについて教えて下さい。
O.C:僕の母がアボリジナルで、父が白人(オーストラリア人)のいわゆるハーフなんです。特に子供の時とか若い頃とかは人種差別的なことの経験もあって、自分のアイデンティティで悩んだ頃もあったんだすけど、ハーフであるということは両方の良いところ取りみたいな部分もあったり。
若い頃は嫌な思いもしたけれど、大人になって自分はミックスだというアイデンティティを確立してしまっていたから、気にしなくなりましたね。
⬛︎あなたにとってのサーフィンとは?
O.C:サーフィンは素晴らしいですよね。サーフィンは自然と自分の関係を確立させてくれる重要なツールであるし、自分にとって凄くスピリチュアルなものです。
⬛︎あなたにとってのアートとは? 今後のアーティスト活動について
サーフィンと近い部分はあるんですけど、自然のモチーフとかを使っていることもあって、自分の人間としての自然の関わりを毎回リアライズするようなものになっているし、メディテーション(瞑想)自分にとって心の落ち着きを取り戻せるようなものだと思っています。
自分の最大の師は母なる大地。一人で、自然の中で座っていると、昔の人たちの歌声や物語が聞こえてきます。
いつも精神衛生施設のための募金活動、資金調達に協力しているんです。アート作品やコラボレーションの売り上げの多くは、草の根レベルでコミュニティに還元しているんです。
人間、誰でも嫌な思いや落ち込んだりすることはあると思います。みんな、そうやって生きていると思うので、それに対して自分が出来るサポートをすることは大切なことだと思っています。今後もこのような活動は続けていきたいと思っています。
彼のアートは「アボリジナルアート」の一つとして総称され、「アボリジナルアート」はアボリジナルの文化を語る上で欠かせない。アボリジナルとは古代からオーストラリアに定住する先住民族の呼称で、ルーツは約5万年前までさかのぼる。
「読む」「書く」文字を持っていなかったアボリジナルの人々は、絵を描くことで重要な文化を後世に伝えてきた。その独特な色彩や表現方法など、他の文化に類を見るものはないアボリジナルアートは世界中のアートコレクターから人気となっていて、オーティス・キャリーの作品もビラボンをはじめ、多くのブランドとのコラボレーションが行われ、大人気となっている。
それに加えてソウルフルなサーファーであるオーティスは、ウェイブ・ライディングの魅力的な感覚を世界と共有することができる。だからこそ、僕たちは彼の作品に魅力を感じてしまうのかもしれない。
オーティス・キャリーのインスタグラム
https://www.instagram.com/otishopecarey/
取材協力:https://billabongstore.jp/