日本サーフィン連盟は、2024パリオリンピックに向けて、選手強化に特化した新体制を発表

「左から、宮部周作、酒井厚志、関口嘉雄、佐藤正麗穂、宗像富次郎、牛越峰統、松本恵、大野修聖、田中樹(敬称略)」

取材、文:山本貞彦  NSA(日本サーフィン連盟)は記者会見を行い、2024パリオリンピックの出場権獲得・オリンピックでのメダル獲得に向けて、選手強化に特化した新体制の発足を発表した。

 

今まで強化本部・強化委員会はNSAの役員にて構成されていたが、今年度からNSAとの連携団体であるJPSA(日本プロサーフィン連盟)から、名誉顧問であり、元JPSA理事長の牛越峰統氏を強化委員長として招聘。プロを含めオールジャパンで選手育成にあたる体制を整えた(任期は2年)。

 

牛越峰統氏を強化委員長
大野修聖氏がヘッドコーチに昇格
大野氏をサポートする形でJPSAから理事である田中樹氏が就任

 

また、コーチについてはヘッドコーチであったウェイド・シャープ氏の退任にあたり、「波のりジャパン」チームキャプテンであり、現場コーチであった大野修聖氏がヘッドコーチに昇格。また、大野氏をサポートする形でJPSAから理事であり、コンテストディレクターでもある田中樹氏が就任することとなった。

 

NSA 酒井厚志 理事長

 

NSA 酒井厚志 理事長はこの新体制を作るにあたって、こう語る。
「オリンピック終わってから、ここ3年ぐらい日本の力がだいぶ落ちたと感じています。ここで日本のサーフィン界を一つにして、本当に強い選手を作っていかないといけない。そのためには経験値の高い大野くんや田中くんがコーチとして現場に立つべきだと思いました。

 

NSAには栄養士の方もいるし、ドクターもいるし、トレーナーの方もいる。皆さんの力を借りて、本当の育成強化に臨んでいかないと、もう間に合わなくなるんではないかという危機感から始まっています。

 

日本のポテンシャルはすごく高くて、これだけ北海道から沖縄まで、どこでもサーフィンできるという良い環境があるわけですから、一枚岩、ワンチームになって、育成強化を進めていきたいという、そういう思いから始まっております。」


 

 

参考:NSA役員構成

https://www.nsa-surf.org/organization/wp-content/uploads/sites/17/2023/04/org_file202304.pdf

以上の新体制で、世界で活躍する選手の育成と日本のサーフィン競技の底上げを行なっていく。まずは2024年のパリオリンピックに向けて選手強化の取り組みからスタート。5/30-6/7にエルサルバドルで行われる世界大会「2023 ISA WORLD SURFING GAMES」において、オリンピックの出場権獲得を目指す。

 

牛越峰統 強化委員長

 

牛越峰統 強化委員長は今回の代表選手に対してプランをこう語る。

 

「今回、この委員会のメンバーで、いろいろメニューを組んでいきたいと思っています。ただ、ISA世界選手権については、エルサルバドルに向かって選手を作るというより、自信をつけさせることが今は大事であり、そのイメージをコミュニケーションを取って、声がけして、送り出そうと思っています。」

 

この「2023 ISA WORLD SURFING GAMES」は大陸別に選出された男女各4名。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの男女各上位入賞した選手にオリンピック出場枠が与えられることになっている。

 

日本代表には男子が五十嵐カノア、稲葉玲王、脇田泰地。女子は都筑有夢路、前田マヒナ、松田詩野。このエルサルバドルの大会でアジア1位になれば、オリンピック出場(個人として)が決まる。

 

 

2023 ISA WORLD SURFING GAMES

NAMINORI JAPAN 選手
男子: 五十嵐カノア、稲葉玲王、脇田泰地
女子: 都筑有夢路、前田マヒナ、松田詩野

 

監督:宗像富次郎
コーチ:大野修聖
コーチ:田中樹
栄養士:松本恵
マネージャー:大石純也
マネージャー:道幸もも

また、オリンピック開催年の2024年強化指定選手基準も併せて発表された。こちらはNSAとJPSA、WSL各団体の大会成績による選考となっている(詳細は下記)。

 

2024年サーフィン強化指定選手の選考方法についてシニア枠

 

①NSA メンクラス・ウィメンクラスランキング上位 2 名
②WSL2023 日本人ワールドランキング上位 8 名(男女)
但し、日本国籍を有し、NSA 及び JOC の規定に準じるCT選手は強化指定選手として、いつでも追加し選抜することができる。
③JPSA 日本ランキング上位 6 名(男女)
④強化部推薦 2024 オリンピック パリ大会(タヒチ)の波に適した選手
⑤2020 東京オリンピック出場選手
※ISA世界選手権代表はナショナルチーム期間として登録年(参加年)より2年間、強化指定選手として更新することができる。
※WSLのランキングやスケジュール、怪我などの変更事由に伴い、CS参戦メンバーに加わった場合、強化指定選手としていつでも追加し選抜することが出来る。

 

2024年サーフィン強化指定選手の選考方法についてジュニア枠U18・U18G・U16・U16G

 

①2023NSA ジュニアクラスランキング上位 8 名
②2023NSA ボーイズクラスランキング上位 8 名
③2023NSA キッズクラスランキング上位 8 名
④2023NSA ガールズクラスランキング上位 8 名
⑤強化部推薦 2024・28 オリンピック パリフランス大会(タヒチ)・ロサンゼルス大会の波に適した選手
⑥強化部推薦 U18 の選手で海外またはプロで活躍する選手を選考することができる。
※各ジュニア以下のクラスで対象年齢者が 8 名以下の場合、NSAランキングより翌年のU18・U16対象クラスに分け計8名をランキングより追加選抜する場合がある。
※ISA世界ジュニア選手権代表・補欠選手はナショナルチーム育成期間として登録年(参加年)と翌年の2年間を強化指定選手として更新する。

●その他
※ジュニア・ガールズクラスの強化指定選手選考者で、シニアクラスに上がる選手はシニアクラスの強化指定選手とする。

 

 

ISAロングボード世界選手権大会は選考会。

 

また、現在、ISAがIOCにロングボードをオリンピック競技として働きかけを行なっていることを踏まえ、2024年にISAロングボード世界選手権大会が開催が決まった際には、各団体のチャンピオンの派遣ではなく、それぞれの上位選手を集めて選考会を行うことも発表された。

 

今回、エルサルバドで行われたISAロングボード世界選手権大会で7位となった浜瀬海と吉川広夏は、上位9名までが出場できる「ANOCワールドビーチゲームズ」への出場が決定。今大会は8月にインドネシアのバリで開催される。


※ 「ANOCワールドビーチゲームズ」は、国内オリンピック委員会連合(ANOC)が主催するビーチスポーツの国際総合競技大会

 

今まで強化指定選手の選考は、各協会の年間ランキング上位者から選出してきた。ただ、これは選手自身が苦労して出した結果であり、協会主導で何かをしたわけではない。ここで注目すべきは、その強化選手に選ばれた後の指導育成が、どのように行われて来たかということだ。

 

オリンピック予選となる「ISAで戦うこと=チーム団体戦」ということから、これまで画一的な指導になりがちだった。この時点で選手を一から育成ということは難しく、技術向上やメンタル強化については、選手個人の努力に頼っていたのが現状だ。

 

NSAとJPSAが同じ組織内で、選手の管理育成を行う

 

それが今回、NSAとJPSAが同じ組織内で、選手の管理育成を行うことになったことは、非常に歓迎すべきことだと思う。これでプロアマ一貫で海外に通用する選手を育成する土台ができたとも言える。

 

サーフインは基本、個人スポーツだ。選手の長所、短所など個人それぞれ違う個性を活かしつつ、各々が抱えている問題に寄り添った指導が、この新体制で行われることに期待したい。

 

これはあくまでもオリンピックに向けて、JOC傘下であるNSAが主導して行うものだが、このシステムが上手く稼働すれば、間違いなく海外で通用する日本人選手の強化につながることになるだろう。

 

 

オリンピック代表選手への道。

 

各国ごと男女各2名上限。
ただし、2022年、2024年のWSGの優勝チームに例外が設けられ、1つの出場枠が獲得できることになり、最高で3枠取れることとなった。また、条件の一つとして、2023年と2024年のWSGに出場する必要があるとした。代表選手の優先順位は8つ。

 

1. 2023年CTの上位選手、男子10名、女子8名(ミッドカット後でも最終CTランキングから選出することとなる)

2. 2023年WSGの大陸別に選出された男女各4名。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの男女各上位入賞した選手。(この大会でアジア1位になれば、オリンピック出場が個人名で決定する)

3. 2023年パンアメリカンゲームスの男女各1位。

上記2 . 3は同じ大陸枠となるが、アメリカ大陸はパンアメリカンゲームスからの選出。東京大会では、この大陸枠の優先順位が低かったため、WSGでの大陸枠では暫定決定となっていたが、2023年の大陸別枠を獲得した選手は、その場でパリ五輪出場が決定する。

4. 2024年WSGの男子1位〜5位、女子1位〜7位に入賞した選手。

東京大会では、男子4名女子6名だったが1名ずつ追加になっている。

5. 2024年WSGの男女別の優勝チームに1枠。


6. 2022年WSGの男女別の優勝チームに1枠。(日本男子が優勝して+1枠獲得済)

通常 ワールドサーフィンゲームス(WSG)では、男子 3名女子 3名男女 6名の合計で国別順位を決定するが、2022年のWSGからは、男子女子別々の選考となり、男子の優勝チームには1枠、女子の優勝チームに1枠が与えられることとなる。この5 . 6.は選手でなく各国に1枠与えられ、国が出場選手を決めることになる。

7. 開催国枠。開催国であるフランスは男女各1枠が保証される。しかし、1~6までの階層でフランス選手がクオリファイした場合、その枠は2024年WSG参加資格のあるサーファーの中で最もランクの高い選手に割り当てられる。

 8. ユニバーサリティ枠。今回初めて資格を有するNOCに男女各1名の出場枠が与えられる。この出場枠の資格基準はチョープーの波質を特別であるといこうとから設置されたもの。

以上の優先順位でも的確なサーファーがいない場合、選手枠は2024年WSGから最高ランクの適格なサーファーに再分配される。この枠の完全なプロセスと選考基準は後日、IOCから通知される。

1から6が日本に与えられる出場枠。その中で最大で男女各3枠と機会が増えたことで、日本は合計6人を送り出していくための強化を進めていくとしている。

 

NSA 関口 事務局長
JPSA 久米 事務局長   JPSA 細川 理事長