稲葉玲王、都筑有夢路が優勝。2023 ISAワールドサーフィンゲームス日本代表 男女6名が決定

ファイナリスト4名

文、写真:山本貞彦 4月23日(日)「第4回 ジャパンオープンオブサーフィン」が 宮城県仙台市仙台新港で開催された。これはNSA(日本サーフィン連盟)とJPSA(日本プロサーフィン連盟)が協力して行う、サーフィン日本一を決める大会。

 

波、天候と申し分のない条件が揃った今回のジャパンオープン
開会式には国歌斉唱で、国旗を掲げた。選手代表で大原洋人、都筑有夢路。酒井NSA理事長、細川JPSA理事長。

 

ここで優勝すると 5月30日から6月7日までの日程で、エルサルバドルにて開催される世界大会「ISA / 2023 WSG(ワールドサーフィンゲームス)」の日本代表選手となることができる。

 

この2023 WSGの「NAMINORI JAPAN」日本代表となる選手の内訳は ①WSL 2022 年のランキング日本人1位の選手、②「第4回 ジャパンオープンオブサーフィン」の優勝者、③NSAの強化部推薦枠。これで男女各3名を選出し、エルサルバドルに派遣する。

 

日本一を決める大会。さらに世界戦、オリンピックに続く大会ということで、取材陣も多く会場に訪れた。

 

そして、このWSGの大会がタヒチのチョープーで開催される 「2024 パリオリンピック」への選考大会となっており、その選出方法は 2023年度のWSLのCT枠に加え、今回のエルサルバドルの2023大会と、来年2月に開催されるプエルトリコの2024大会で、各国の出場選手が決まる。

 

パリオリンピックでは出場選手が男女各20名から24名に増加。各国の選手枠は基本は男女とも各2名上限だが、新たに追加枠で2022年、2024年のWSGの優勝チームに1つの出場枠が与えられることとなった。

 

2022年にカリフォルニア・ハンティントンビーチで行われたWSGでは五十嵐カノアが金メダルを取り、男子の総合優勝は日本が獲得した。これで日本は男子が +1 枠獲得済みとなり、日本男子は最高3枠取れることとなった。現在、女子は最高で2枠。2024WSGの結果次第では、女子も増える可能性がある。

 

 

オリンピックへ出場するための第一歩。

 

 

 

オリンピックへ出場をかける選手にとって、まずはこのWSGの日本代表になることが第一歩。自力でその枠を取ることができるのが、この「第4回 ジャパンオープンオブサーフィン」だ。

 

この大会に出場する選手は 2022年、2023 強化指定選手及び2022特定強化指定選手。日本国籍を有しNSA及びJOCの規定に準じるWSL CT選手。過去3年間のWSL CT、WSL CSの中でタヒチ、ハワイなどのレフトのチューブ波の実績がある選手。

 

今回も選手のゼッケンには、肩に日の丸が入る。

 

さらに、2022強化指定選手、2022特定強化指定選手、2023強化指定選手の中で、2022年11月1日~2023年5月31日までの期間に撮影したタヒチ(チョープーのみ)またはハワイ(パイプラインなど)の男子6ft、女子4ft以上のレフトのチューブ波の映像を提出し、強化本部並びにNSA理事会にて承認された選手となっている。

 

 

男子12名
女子8名

 

以上の条件をクリアして「2024パリ大会特定強化指定選手」として招集されたのは、男子が安室丈、伊東李安琉、稲葉玲王、大野修聖、大原洋人、金沢呂偉、上山キアヌ久里朱、鈴木仁、西慶司郎、松岡慧斗、松永大輝、村上舜、脇田泰地の13名だったが、村上舜が欠場し、今大会参加は12名に。

女子は川瀬心那、黒川日菜子、都筑有夢路、都築虹帆、前田マヒナ、松岡亜音、松田詩野、松永莉奈の8名となった。

 

 

進行スケジュールはR-1で男子が3人ヒート、女子はマンオンマン。勝ち上がると男子はクォーターファイナル、女子はセミフイナルへ進出。そして、男子もここからファイナルまでマンオンマンで戦うこととなる。

 

大会のレギュレーションは1ヒート20分。ノーマキシマムウェイブでベスト2ウェイブ。パドルアウトは3分前。プライオリティールールが採用された。

 

 

会場のコンディションは晴れ。風はオフショア。昨日の夜に風が強く吹いたことで、波が小さくなるかと思いきや、波のサイズはムネカタ。面はクリーンで、ベストコンディションの朝を迎えた。

 

今大会、チューブになる波も入るコンディション。しかし、ただチューブを抜けるだけではエクセレントは出ない。その抜けた後、エンドセクションに向けて技を決められるかで評価が変わる。

 

さらに、会場はピークがたくさんあることで、ポジショニングにも差が出た。併せて、波の選択が勝負の分かれ目となった。

 

 

女子ファイナルは、都筑vs前田

 

都筑有夢路

決勝は引きいっぱいに近くなり、波がスローな展開。まずは女子から。都筑有夢路と前田マヒナが対戦。試合は前田が前半から積極的に攻めて、終始リードする展開。

 

前田マヒナ

都筑は波を取るもワイプアウトが続くことで、出遅れる。しかし、今の都筑のレールサーフィンは、波さえ取れば点が出せる。試合は最後の最後でお手本のような演技。レールワーク素晴らしく、リエントリーでスプレーを飛ばせば、それに8.00ポイント。これで逆転優勝、今大会の2連覇を決めた。おめでとう!

 

 

男子ファイナルは脇田泰地と稲葉玲王

 

稲葉玲王

 

男子は脇田泰地と稲葉玲王のマッチアップ。女子の決勝終了後、10分間のインターバルを置いたものの、ちょうど引きいっぱいで潮止まり。2人とも準決勝までの勢いはどこへやら。

 

脇田泰地

 

それでも脇田が手こずりながらもポイントをコツコツ重ねリード。稲葉もライトの波を攻めるも点は伸びず。試合終了まで3分を切って、脇田リードは変わらず。稲葉に必要な点は5.68ポイント。

 

 

残り20秒で掴んだライトの波にフルレール2発。これには大きな手応え、本人は雄叫びでアピール。試合終了後のコールは6.07ポイントで大逆転。これでサーフィン日本一の称号を手に入れた。おめでとう!

 

 

稲葉玲王
試合で海外に通用する選手。パワーを武器に攻撃的なサーフィン。波とのサイクルが合ったら、誰も止められない。バックハンドリップのスプレーの大きさ、厚さはピカイチだ。

脇田泰地
セミファイナルで見せたチューブからの攻撃的なリエントリー。今日のハイスコアである9.07ポイントを叩き出した。今や、脇田のオリジナルムーブともいうべきか。攻める姿勢に磨きがかかった。

都筑有夢路 
R-1ではシングルハイスコアの8.00ポイントを出し、さらにセミフィナルではトータルハイスコアの15.16ポイントを叩き出す。乗れば勝てるという強さを身につけた。

前田マヒナ
試合の主導権を握る動きが巧みだった。プライオリティが無くても、相手選手の側で待つ。これってプライオリティを持っている選手にとって、居心地悪い。常にプレッシャーを与え続けて、自分のペースに持ち込んだ。

大野修聖 
42歳という年齢ながら、未だサーフィンは進化か。一つ一つのターンが深くて大きい。だから、スプレーが飛ぶんだ。

松岡慧斗 
地元仙台であり、日本を代表するビッグウェーバー。やはり、他の選手と違うスタイルというか、オーラというか。試合は負けたけど、印象の残るライディングを見せてくれた。次回のオリンピックはタヒチのチョープーということで、是非とも松岡に期待したい。

松田詩野 
バックハンド、フォアハンドともシャープでラディカルなサーフィンを披露した松田詩野。「仙台はいつも良い波で練習できていて、良いイメージのまま試合に臨めた」と語った松田。今回は高得点を出すなど今大会の成績から推薦枠からISA出場を決めた。

都築虹帆 
試合でも物怖じせずエアリアルにチャレンジする虹帆。その常に前向きな姿勢が次のステップにつながる。今回は惜しくもエルサルバドルのISA出場は叶わなかったが、チャレンジャーシリーズで自分のサーフィンを更に磨いてほしい。

大原洋人
バレルをメイクするなど、ラウンド1、クオーターとエクセレントをスコアして絶好調の大原だったが、「まだ自分的には納得のいくライディングができていない。ガッツポーズが出るようなパフォーマンスがしたい」とコメント。しかし惜しくもセミファイナルで敗れて3位でフィニッシュとなった。

西慶司郎

「自分の中で良い流れが作れたんで、そのペースでヒートをリードできて良かった」と語った西。去年からムーブメントのトレーニングを取り入れていて、筋力アップにプラスして動きのフローという部分を取り入れて、サーフィンに良い影響が出ていると言った。

 

劇的ブザービーター、稲葉玲王の大逆転勝利

 

 

「ファイナルは、仲が良い(脇田)泰地との対決だったのですごく楽しみながらやれまし た。その一方で、プレッシャーがあって緊張もしました。最後は待って、まずまずの波に乗 れて点数を出して逆転できたので良かったです。応援してくれた皆様ありがとうございました。」

大会を振り返って
「いったん延期になりましたが、波がある中で試合できたことは良 かったです。自分は波があるほうが得意なので、自分のサーフィンができたことに満足し ています。」

大会初優勝について
「これまで悔しい 2 位があったのですが、ようやく優勝すること ができました。結果を残したうえでワールドサーフィンゲームスに選出されたことは、自分の力でつかんだという実感があります。」

ワールドサーフィンゲームスに向けて
「しっかり勝ち残って優勝して、メダルを取る気持ちで頑張りたいと思います。そして、オリンピックの 出場枠を勝ち取りたいです。」

 

ジャパンオープン2連覇、ISA日本代表は3年連続 都筑有夢路。

 

 

「この大会に優勝できて、すごく嬉しい気持ちでいっぱいです。大会 2 連覇ということで 本当にうれしいです。優勝できたことはいつもサポートしてくれる皆さんのおかげで、応援もすごく力になりました。」

大会を振り返って
「良いコンディションでできたので楽しく試合に臨めました。楽しく 試合をすることが一番難しいのですが、大会を通じてそこをクリアできたことは自分が成長できた証かと思います。」

決勝のパフォーマンスについて
「最初はリズムをつかめずに焦っていましたが、最後 は「良い波がくればできる」と自分に言い聞かせていたら、良い波がきたのでやるしかないと心を決めました。」

ワールドサーフィンゲームスに向けて
「重要な大会になるので、しっかりと準備して(開催地の)エルサルバドルへ向かいたいと思います。優勝目指して頑張ります。」

 

仙台新港はパワーある波がブレイクする日本有数のサーフポイントの一つ。

ジャッジブース。JPSAの運営システムを使用。

 

WEBでは実況を日本テレビの田中毅アナウンサー。牛越峰統プロ、仙台が地元の高橋みなとプロが解説を行った。

歴代優勝者の名前が刻まれる優勝トロフィー。

 

 

 

第4回 ジャパンオープンオブサーフィン大会結果

優勝:都筑有夢路、稲葉玲王
2位:前田マヒナ、脇田泰地


【男子】
1位:稲葉玲王
 2位:脇田泰地
3位:大原洋人、西慶司郎

【女子】
1位:都筑有夢路 
2位:前田マヒナ 
3位:松田詩野、都築虹帆

 

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「ジャパンオープンオブサーフィン」過去の優勝者

第1回優勝 男子:村上舜  女子:松田詩野
第2回優勝 男子:大原洋人 女子:前田マヒナ
第3回優勝 男子:村上舜  女子:都筑有夢路

 

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開催期間:2023年4月27日(木)

開 催 地:仙台新港(宮城県仙台市宮城野区中野)

主 催:一般社団法人 日本サーフィン連盟(NSA)

共 催:一般社団法人 日本プロサーフィン連盟(JPSA)

主 管:ジャパンオープンオブサーフィン実行委員会
MEDIA PARTNER : 読売新聞社朝日新聞社、デイリースポーツ
後援:宮城県・仙台市
協力:ハンディ

出場選手:男子12名、女子8名
大会公式ホームページ: https://japanopenofsurfing.jp

 

 

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 「2022 ISAワールドサーフィンゲームス」出場者

 

男子:五十嵐カノア、稲葉玲王、脇田泰地
女子:都筑有夢路、前田マヒナ、松田詩野


 

2023 WSGの男女各3名の日本代表選考の内訳。
①2022年度WSLランキングトップの選手:五十嵐カノア( CT 5位)、都筑有夢路(CS13位)
②「第4回 ジャパンオープンオブサーフィン」の優勝者:稲葉玲王、都筑有夢路     

③NSAの強化部推薦枠
男子は1名。女子は都筑有夢路が①と②の2枠を取ったことで、推薦枠が2名になった。

男子は脇田泰地。今大会で準優勝。さらにWSLのCSランキングの日本人トップであり、チューブライディングの実績から決定。

女子は1枠めは前田マヒナ。過去の2021年度ISAエルサルバドルで8位、そして、オリンピック出場。今大会が準優勝という成績にて決定。

2枠目は松田詩野。ISA宮崎大会でアジア1位で条件付きオリンピック出場権を取ったこと。今大会のセミファイナルで敗退したものの、高得点を出していたことなど今大会の成績から決定。

 

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「第5回 ジャパンオープンオブサーフィン」

 

オリンピック最終予選となる2024年ISA WSGは、来年の2/22-3/2までプエルトリコで開催される。この日程を考慮し「第5回 ジャパンオープンオブサーフィン」も開催する予定。ただし、現在は開催時期は未定。波のある時期を考慮して、会場等を組織委員会とJPSAで相談して発表するとのこと。

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オリンピック代表選手への道。

 

各国ごと男女各2名上限。
ただし、2022年、2024年のWSGの優勝チームに例外が設けられ、1つの出場枠が獲得できることになり、最高で3枠取れることとなった。また、条件の一つとして、2023年と2024年のWSGに出場する必要があるとした。

代表選手の優先順位は8つ。

1. 2023年CTの上位選手、男子10名、女子8名(ミッドカット後でも最終CTランキングから選出することとなる)

2. 2023年WSGの大陸別に選出された男女各4名。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの男女各上位入賞した選手。(この大会でアジア1位になれば、オリンピック出場が個人名で決定する)

3. 2023年パンアメリカンゲームスの男女各1位。

上記2 . 3は同じ大陸枠となるが、アメリカ大陸はパンアメリカンゲームスからの選出。東京大会では、この大陸枠の優先順位が低かったため、WSGでの大陸枠では暫定決定となっていたが、2023年の大陸別枠を獲得した選手は、その場でパリ五輪出場が決定する。

4. 2024年WSGの男子1位〜5位、女子1位〜7位に入賞した選手。

東京大会では、男子4名女子6名だったが1名ずつ追加になっている。

5. 2024年WSGの男女別の優勝チームに1枠。
6. 2022年WSGの男女別の優勝チームに1枠。

通常 ワールドサーフィンゲームス(WSG)では、男子 3名女子 3名男女 6名の合計で国別順位を決定するが、2022年のWSGからは、男子女子別々の選考となり、男子の優勝チームには1枠、女子の優勝チームに1枠が与えられることとなる。

この5 . 6は選手でなく各国に1枠与えられ、国が出場選手を決めることになる。

7. 開催国枠。開催国であるフランスは男女各1枠が保証される。しかし、1~6までの階層でフランス選手がクオリファイした場合、その枠は2024年WSG参加資格のあるサーファーの中で最もランクの高い選手に割り当てられる。

 8. ユニバーサリティ枠。今回初めて資格を有するNOCに男女各1名の出場枠が与えられる。この出場枠の資格基準はチョープーの波質を特別であるといこうとから設置されたもの。

以上の優先順位でも的確なサーファーがいない場合、選手枠は2024年WSGから最高ランクの適格なサーファーに再分配される。この枠の完全なプロセスと選考基準は後日、IOCから通知される。

1から6が日本に与えられる出場枠。その中で最大で男女各3枠と機会が増えたことで、日本は合計6人を送り出していくための強化を進めていくとしている。