田岡なつみインタビュー「目標は世界一を獲ってロングボードの魅力をもっと伝えること」 by Mermaid & Guys

Mermaid & Guys Presents
田岡なつみインタビュー

 

小柄な体で長いロングボードを器用に操り、果敢に大きな波にチャージする。陸に上がれば、屈託のない笑顔で「あー楽しかった」と話し、彼女のポテンシャルの高さに驚くことしばしば。

 

今回は、先日3度目のJPSAグランドチャンピオンに輝き、今や日本を代表するプロロングボーダーとなり、世界の選手を相手に挑む、田岡なつみプロの強さの秘密を探りつつ、ライフスタイルやMermaid & Guysのお気に入りの商品についてなどをインタビューさせて頂きました。

 

取材、撮影:米地 有理子

 

最終戦で優勝してグランドチャンピオン獲得。出場した4試合は全て優勝の完全勝利。

 

ーまず始めにサーフィンを始めたきっかけを教えて下さい。

 

両親がサーファーで、小さい頃から海に連れて来てもらっていました。でも海の近くに住んでいなかったので、週1回しかサーフィンできなくて。高校生まで週1サーファーで頑張っていましたね。両親がロングボードだったからロングを始めました。

 

父がボードを買ってくれたことで、やる気が出て、初めて湘南のキッズの大会に出たみたいです。周りにも若い子がいっぱいいたから負けず嫌いでそんな上手くなかったんですけど「大会に出る」って言って。それが小学6年生。太東で入っていたので、みんなロングボードで、長い板がサーフィンって思っていて。自然の流れでロングになりました。

 

NSAの全日本選手権で優勝してからプロになろうと思っていたのですけど、JPSAのプロトライアルに出たら合格して、その試合で優勝もできたので、そのままプロになりました。アマチュアで無名だったから結構みんなが注目してくれました。あれから10年ぐらい経ちますね。

 

 

 

 

田原のファイナルが人生の中で一番納得できるものだった。

 

 

ー今年3度目のJPSAグランドチャンピオンを獲得しました。おめでとうございます。今年の試合はどうでしたか?

 

試合がないっていうことが結構ストレスだったり、自分のモチベーションを保つのがちょっと大変だったこともあったのですけど、ツアーが組まれた時に結構ロングボードはショートボードと比べて試合があったので凄くやる気も出ました。

 

1戦目に向けて凄くいい感じに調整ができて、トレーニングもちょっと変えたりして、自分なりに万全の状態でツアーに臨めました。結果がちゃんと付いて来てくれたのですごく良かったです。

 

 

トレーニングの成果を見せて開幕戦から3連勝

 

1戦目の一宮は、本当に大きい波で、普通だったら多分サーフィンしないようなコンディションだったんです。ヒート前に女子選手が集められて、ヒートやるかやらないかみたいなミーティングがあったのですけど、自分はそんな感じの波も練習で少しは入っていたので、私はやるっていうことを選択しました。

 

だから、しっかりとゲットしないとっていうプレッシャーもあったんですけど、そこでしっかり決めることができたので、自信に繋がる試合でした。

 

次の太東の試合は、結構小波でしたが、太東はやっぱり自分がサーフィンを始めたビーチだったので絶対に勝ちたいという強い気持ちがあって。それがライディングに表れたのかなって思います。

 

 

@千倉

 

千倉は苦手意識を持っていたビーチだけど、優勝できてすごく嬉しかったですね。最後の田原は波がすごく良くて、多分国内の試合で一番良い波だったんじゃないかなと思います。

 

自分もその波のリズムに合っていて、なんかちょっとマリブみたいな感じというか、映像で見た感じだとパーフェクトに割れていて海外みたいな波でした。

 

田原では思い通りのマニューバーを描いた。

 

最終戦の田原のファイナルのヒートが多分、この先の人生の中で一番思い出に残りそうなぐらい自分でも納得できるものでした。1本目で納得いくライディングができて、ガッツポーズとかあまりやらないのですけど、思わずやっていました。最高に気持ちよかったです。

 

茅ヶ崎の試合は出る予定だったのですけど、延期なって出られませんでした。本当は茅ヶ崎の試合に出て、その次の日にカリフォルニアに飛ぶはずだったのです。残念だったけど逆に田原の試合も延期になって出れて、シリーズチャンピオンも獲れました。いつもスケジュールを合わせるのが難しいけど、最終戦に出れたのですごく良かったと思います。

 

 

グランドチャンピオンは、1年勝ち続けていないとなれない。

 

 

ー3度目のグランドチャンピオンっていうのはどうですか?

 

 

グラチャン、まだ3回目ですよね。みんなにまだ3回なんだって言われたり。今年気付いたらプロになって10年目ぐらいで。最初何年間なれなかったんだろう。。。ずっと2位とか3位とかギリギリでグランドチャンピオン獲れていない時期もあったりして。

 

やっぱり、1回の優勝じゃなくて、グランドチャンピオンっていうのは、すごく難しいことだし、常に自分のコンディションがいい状態で1年勝ち続けていないとなれないので、やっぱりグランドチャンピオンは特別だなと思います。

 

 

 

来年ウェイブプールが決まったら、しっかりチューブをメイクできるようにしたい。

 

 

ー話は変わって、初めて出場したWSLサーフランチの試合はどうでしたか?

 

 

サーフランチが決まった時に、練習が1本ずつしかできないっていうインフォメーションが来て、アメリカの選手は国内の試合とかで経験したことがあって、ちょっと難しいからイメージトレーニングした方がいいよと言われて。

 

いろいろ動画や情報を貰っていたので、行く前にどこで何をしたら良いとかイメトレはすごくしてきたのですけど、実際に入ると人工の波っていうのを一番に感じて。景色がプールっていうのもあるけど。波に乗った時のパワーもすごいし、水の流れが違う感じがしてロングボードには私は早いって感じました。

 

photo:Riku Yoneyama

 

最初の練習1本目は、全部後ろに引き込まれちゃって全然自分の板が進んでくれなくて、すごいフォローなセクションにいっちゃってめくり上げられちゃう感じのライディングでした。レギュラーとグーフィーの1本ずつしか練習できなかったのですけど、グーフィーはすぐこけちゃって、波の感じがわからないまま試合が始まってしまったので、すごく緊張しました。

 

一人ずつプールに入ってやるから、メンタルもトレーニングがもっと必要だなーって思いました。インサイドのチューブセクションもやっぱり女の子でもしっかり攻めないと点にならないって思って。

 

試合構成とかをしっかりやっている選手はどこで何をしたら良い点が出るとわかっていて、そういう映像を振り返りながら2日目に臨んだのですけど、やっぱり慣れもありますね。

 

なんとか4本目終わった時点で次のクォーターファイナルに進むことができて、そこでは自分で構成考えながら、次ハングファイブやって、ハングテンやって、次ターンだって、ちょっと頭でイメージしながら出来たのでよかったです。

 

 

真剣な眼差しで波を見つめる。サーフランチ PHOTO:GORDINHO

 

最初の練習と本番の一本ずつぐらいは波に完全に遊ばれちゃって何もできなかったのがすごくもったいなくて残念でした。

 

ちょっと掴んだので来年もしあるなら、すごく楽しみですね。それまでに準備しないといけないのはターンとチューブの練習です。ロングボードでチューブに入るって練習はなかなか日本で出来ないじゃないですか。

 

最近、日本でもウェイブプールがあるので、短い板でストールのさせ方とかを体で覚えないと。どんな感じかもわからず、チューブを狙ってイメージトレーニングだけで調整してみても全然ダメだったので。実際にトレーニングしないとダメだなって思います。

 

来年、もしウェイブプールが決まったら、しっかりチューブをメイクできるようにしたいと思います。今年すごくいい経験になって、めちゃめちゃ楽しかったです。

 

 

世界の選手の技を見て、いろいろ勉強できました。

 

PHOTO:GORDINHO

 

ー次のマリブの試合はどうでしたか?

 

サーフランチの後の試合だったのですが、もっとサイズが上がる予報だったんですけど全然上がらなくて。でも、やっぱり波のクオリティはすごくよくて、私は自然の波の方が好きだって思ったし、マリブの波って他の場所の波と比べると独特で。

 

今みんなロングの重たいボード、シングルフィン使っているんですけど、シングルフィンで臨んだ試合でした。

 

@MALIBU PHOTO:GORDINHO

 

前回のマリブの試合の時はスタビのEPSで臨んで、やっぱり重たい板じゃないと滑らなくて、前が捕まっちゃうイメージだったんですけど、今年からシングル一本にして臨んで、そのいい感じのフロー感とかを味わえたので、マリブでノーズライディングが上手くなった気になっています(笑)

 

ノーズのコツが掴めたっていうのと世界のいろんな選手の技を見てきて、いろいろ勉強できて、いろいろ盗めるところがあるなと思って。これをちょっと冬に練習したいなって思ってます。

 

印象に残っている選手は、ジョエル・チューダーですかね。無駄な動きがない綺麗なサーフィンで、ラインもすごく大きいし、やっぱり綺麗。ああいうサーフィンをしたいです。

 

試合以外でマリブは3回ぐらい入ったのですけど、普段は100人ぐらい入っていて、ドロップインが当たり前で練習にならなくて。結構ストレスになって、選手たちも朝イチだけとか人が少ない時間帯になってちょろっと入るぐらいでしたね。

 

 

今年一年の国内と海外の試合のドキュメンタリー映像を作成中。

 

 

ー普段はどのように過ごしているんですか?

 

 

試合がない時は月火水、マイナビの千葉支社に出社しています。仕事内容は総務で、社内の美化、事務作業を中心に行なっています。

 

支社長のアポイントに同行したり、体育会系学生向け講座にちょっと私のデュアルキャリアという働き方、競技と仕事を両立させるという働き方についてとか、サーフィンについてやちょっと環境問題について話す時間を10分ぐらいもらっていたり。

 

いろいろな経験ができていて仕事もすごく楽しいです。木金土日は基本的に練習で、ほぼサーフィンしているんですけど、もし海外の試合がある時は1か月間とか休ませてもらっています。

 

サーフィンを優先にしていいよと言ってもらっていて、社内の皆さんがサーフィンをやったことがない、見たことがなかったのにライブで応援してくれて。サーフィンに興味持ってくれる人が増えるのは嬉しいなって思います。

 

 

ートレーニングとかはしているんですか?

 

トレーニングは体幹トレーニングをメインに自分で考えてやっています。あとはヨガをやるようにしています。

 

ーYouTubeとかは見たり、アップしたりしないの?

 

めったに見ないんですよ~。どっちかって言うとYouTubeはサーフィンじゃなくて魚のさばき方と料理とかを調べるのに見たり。あんまり動画見るのが得意じゃなくて。YouTube始めた方がいいよって言われるのですけど始めようと思ったことはちょっともないです。これからもやらないかな(笑)。

 

でも今年一年の国内と海外の試合のドキュメンタリー映像を作成中で、今年は無観客試合だったので試合の雰囲気を味わってもらいたいです!

 

 

ーコロナ禍で生活はどう変わりましたか?

 

変わったことといえば海外の試合に行けなくなってしまって。冬はいつもトレーニングに行ってたのが行けなかったんですけど、逆に小波を延々と練習していたので、苦手意識を持っていた小波が結構自信持てるようになったのが自分の中で大きい収穫です。

 

私はコロナでいろいろ新しい趣味を見つけられたり、料理とかもめちゃめちゃやるようになったんです。家のベランダとかも畑みたいになっていて自分で野菜を育ててみたり、その野菜で料理したり。

 

コロナで試合がなかった時はモチベーションが下がるまではいかなかったけど、ツアーがあるときは常に次の試合に向けてトレーニング、トレーニングって調整できるのが、試合がいつあるかわからないってなったからトレーニングとかは、ちょっと今までよりは力が入らなかった部分もあるかもしれないです。

 

 

最終戦で決めたソールアーチ

 

でも楽しんでサーフィン、そう、サーフィンをすごく楽しめていました。常に試合があるから試合のサーフィンを今までしてきたけど、コロナの期間で海外の人の楽しそうにするフリーサーフィンを見て、こういうサーフィンのやり方もありだなとか点数になるライディングだけじゃなくて何か楽しさを見せるライディングっていうのを勉強できたかな。

 

ソウルアーチとか、この期間にめちゃめちゃ練習して、最終戦でソウルアーチができて。ソウルアーチの練習をして腰が痛くなったりしたこともあったのですけど、ソウルアーチを見せれて、みんなにすごいって言われたのが嬉しかったです。

 

 

ー今年オリンピックがありましたが、どう思いましたか?

 

オリンピックにロングボードがなかったのは、すごく残念ですけど、サーフィンのルールとか、技の名前とか、魅力とかが自分が観ているニュースとかで流れるのを見て嬉しかったです。

 

今までサーフィンはマイナースポーツって感じていたのが、試合で勝った(五十嵐)カノアくんとかアムちゃん(都筑有夢路)の名前をサーフィンをしていない周りの人が知っていて、サーフィンがメジャーになったんだなって感じました。

 

ロングボードもオリンピック種目になってくれたら本当にすごく盛り上がると思うのに~。私、60歳ぐらいまで現役やるんで(笑)。それまでに是非なってほしいですね。10年後とかでも出たいです。

 

 

世界一を目指すのが自分の競技での一番の目標です。

 

 

ー今後の活動や目標について教えて下さい。

 

今後の1番の目標は、世界一を獲ること。今年初めてWLTで最高順位5位で総合ランキング7位に入ってシードも獲得できて。来年もそのWLTに出られる権利をもらえたので、世界一を目指すっていうのが自分の競技での一番の目標です。

 

試合以外での目標はサーフィンの魅力をいろいろな人に伝えること。サーフィン=ショートボードだけではなくて、ロングボードの魅力も伝えたいです。JPSAは出たいのですけど、いつもスケジュールが海外の試合とぶつかっちゃうので、ぶつからないことを願っています。

 

JPSAのライブを観てくれている方がすごく多くて。JPSAが終わった後にインスタでメッセージくれる人も多いので。自分を見せられる試合は出ていきたいです。

 

ーショートボードのプロでもあるけど、ショートボードの方は?

 

最近はショートに全く乗っていないんですけど、5’2のフィッシュとかミッドレングスとかに乗るとすごく楽しくて。やっぱり短い板の良さもすごくあるし、ターンを短い板で練習して、さらにシングルフィンでもっと深いターンを練習したり。

 

いろいろな板をいろいろな波に合わせて乗るのが一番楽しいので。楽しんでサーフィンして、その中でコツをつかんでいくっていうのが私のサーフィン向上のスタイルです。いろいろな板に乗ってそこから良いところをロングに活用できればいいなって。

 

 

ーどうしたらそんなに上手くなるんだろうって思うのですけど、アドバイスするとしたら?

 

毎日が楽しいんです。サーフィンも毎ラウンド、どの板を使おうって考えたり、入る仲間だったり。上手い人と一緒に入ると、自分の弟とかなのですけど、すごくターンが上手いんですよ。上手いライディングを間近で見ながら、できなくて悔しくて何回も練習したり。

 

常に何も考えないでサーフィンするのではなくて、今日はこれやろうって一つに絞って練習する時間を作ったり、そういうメリハリをつけて練習することで技ができるようになったりするので。とにかく楽しむってことが一番ですね!

 

 

 

ー美について心がけていることは?

 

 

私に美について聞きますか(笑)。若い頃って日焼け止めも塗らないで海に入っていて。最近はもう27歳になったんで、シミとか結構出てきちゃったりするので。普段化粧をしないから、化粧しないんだったら綺麗な肌でいたいから、しっかりスキンケア、ヘアケアを心がけています。

 

私が一番嫌なのがファンデーションで、ファンデーションした後は肌が荒れることが多くて。だからファンデーションはほぼしないです。何か自分に合ったものが、まだ見つけられていないっていうのもあるかもしれないけど、興味のないものは追求しないので、化粧とか出来ないんです。仕事に行く時は軽く化粧しますけど。

 

 

 

ーMermaid & Guysのお気に入りの商品について教えて下さい。

 

一番使っているのはヘアミルク(アウステア アウトバスパック)。私、高校生ぐらいからずっとパーマかけていて、長い髪がよくて。朝起きて、ミストもあるんですけど、ミスト(ヘア&フェイストリートメント ローション)をばーっとかけて、ヘアミルクをつけるだけで、カールが戻るんです。海上がりと夜にも使っています。

 

 

もう一つはボディクリーム(AND BODY CREAM)。冬って乾燥するじゃないですか。あと、ボディクリームを塗って海に入ると、スルってウェットが脱げるんですよ。だからボディクリームは夜絶対塗るようにしていて。伸びるんで、ワンプッシュで全身塗れちゃう感じです。

 

Mermaid & Guysのライダー、素敵な人たちばかりなんです。パッケージとか製品とか、テスターをもらってみんなでこれがいい、あれがいいって意見を言い合いながら出来たものなんです。プロサーファーたちが実際に使っていいと思ったものが詰まっていて、信頼できる商品だと思います。

 

 

今回のおすすめ商品では持ってこなかったのですけど、スティックタイプの日焼け止め(サンスクリーンUVスティック GOLD)があって、それは私が塗っても肌が荒れないんです。

 

基本的に毎日朝は髪にミストとミルク、ちょっとボディミルクを体に塗って、夜寝る前の髪の毛にMermaid & Guysのオイルもすごくいいです。毎日ほぼ全商品使っています!

 

 

持ち前の”負けず嫌い”を大いに発揮して、世界に向かって進む彼女だが、声をかければ、変わらない気さくな”なっちゃん”。ますますの活躍を期待しています。ロングボードでオリンピック出場も?!60歳現役も楽しみです。

 

 

取材、撮影:米地 有理子

取材協力:Mermaid & Guys(マーメイドアンドガイズ)

 

 

【プロフィール】
田岡なつみ(たおかなつみ)
千葉県出身在住。1994年生まれ。2011年JPSAロングボードのプロトライアルでプロ公認を獲得、その試合で優勝を果たし、2011年JPSAロングボードのルーキー・オブ・ザ・イヤーも獲得。2017年、2018年、2021年JPSAロングボードグランドチャンピオン。2021年WSL Women’s Longboard Tour International Ranking 7位。