NOJILAND FILMこと菅野大典氏が、現地からオーストラリアの最新情報を伝えてくれる【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第12回となる今回は、デルタ株が猛威を振るいロックダウン相次ぐ新型コロナ事情。また見事優勝を果たした馬庭彩。オーストラリアでサーフィン修行を続ける黒川楓海都のインタビューの3本立てです。
取材、文、写真:菅野大典
6月のオーストラリア。
今年は南半球全体で気温が低いと言われ、初旬にはNSWの内陸部に大寒波が襲い大雪が降る場所もあり、NSW全域で最高気温が例年よりも6~8度も低くなりました。
朝晩は気温が1桁台になる日も多いゴールドコーストですが、晴れた日中では半袖で過ごせる気持ちのいい季節。週末はビーチで遊ぶ人もたくさん見られます。
サーフレッスンが盛んなカランビンアリーではレッスンを受ける人で賑わっており、サーフライダーズファンデーションの活動も行っていました。
バケツをもらいビーチで拾ってきたゴミを分別。 ただゴミを集めるだけでなく自然にかえるものとそうでないもの、ゴミの集まりやすい場所など、サーフライダーズファンデーションの団体のメンバーが詳しく説明してくれました。
2032年のブリスベン・オリンピックも確定
地価の高騰とコロナの影響で何度もロックダウンを繰り返すシドニーやメルボルンからの移住者が激増し、コロナ前とは比べ物にならないほど人口の増加しているゴールドコースト。
都市開発も発表され、2032年のブリスベンオリンピックも確定し、賃貸の家も空いていないくらい住宅の価格も高騰しています。 海の混雑だけでなく、街には建物が増え、交通渋滞が起こるなど、年を重ねるごとに街が変化していっています。 いつまでもこの自然と融合した街が綺麗なままでいて欲しいと願うばかりです。
オーストラリアの各地で新たな感染者が発見され予断を許さない状況が続いている。
コロナの感染者の状況は、今までの封じ込めに成功していたオーストラリアですが、6月に入ってからは新規感染者が増大。 先月より引き続きロックダウンしていたビクトリア州は10日にロックダウンが解除されたものの、新たにシドニー大都市圏内でデルタ株による感染者が大量に発見され、26日より2週間のロックダウンを発表。
また別の地域で今までロックダウンのなかったノーザンテリトリーでも市中感染が確認され48時間のロックダウン。そしてブリスベンおよびクイーンズランドの南東部地域(ゴールドコーストも含む)でも29日よりロックダウンが発表されました。
ロックダウンに伴いレストランは店舗営業禁止(テイクアウトのみ)、観光施設やイベント事も中止または延期。6月の最終週から始まるスクールホリデーの最中、またしても思いっきり遊びに行くことのできない状態になりストレスに感じる人も多く見られます。
ワクチンの接種状況は、現在40歳以上の希望者(WA州では30歳以上)は接種可能となっており、接種完了した人は成人人口の約5%で、1回目の接種を受けた人は約30%。今回の感染者の増加により接種事業が遅いと批判する声も出ているようです。 このようにオーストラリアの各地で新たな感染者が発見され予断を許さない状況が続いています。
馬庭彩がジュニアイベントで優勝
2021年度 WSL Australia / Oceania リージョナル QS(クオリファイシリーズ)最終戦、QS5000 Oakberry Tweed Coast Pro(プロジュニア同時開催)がキャバリタビーチで開催。
CS(チャレンジャーシリーズ)への切符がかかるとても重要なハイグレードのこの大会は19日、20日にPRO JUNIOR、21日~25日にQS5000が行われました。
2、3月に行われたQS4戦以降に新たにMICHAEL CRISPにコーチを依頼しトレーニングを行なってきた馬庭彩。リージョナル外の選手なのでポイントはつかないが、この大会へ掛ける意気込みがヒシヒシと伝わってきた。
馬庭彩はファーストライドで6.75pt、終盤にはエクセレントスコアの8.75ptをメイクし、この日のハイエストトータルスコアとなる15.5ptでラウンド1を1位通過。
セクションがあれば果敢にエアーを繰り出し、レイバック1ターンで6.75ptをスコアーするなど次世代のサーフィンを繰り出したSIERRA KERR。馬庭彩に次ぐ14.5ptでセカンドハイエストをスコア。
プロジュニア最終日は、波のサイズも上がりメインバンクへ移動。 数々のCT選手のコーチとして知られ、前回のCTオーストラリアレッグのビーチコメンテイターを務めたSTACE GALBRAITH。今大会でもコメンテイターを務めながらZAHLI KELLYをコーチングと大忙しの様子でした。
選ぶ波に恵まれなかったが、サーフィンの技術はジュニアの中で群を抜いていたZAHLI KELLY。
終盤まで1位をキープしていたELLIE HARRISONだが、最後に馬庭彩に逆転され惜しくも2位に。2年前にオッキーグロムの試合でアンダー14、アンダー16のダブルディビジョンで優勝していた頃から見違えるように身体もサーフィンも大きくなってました。
得意のリップアクションだけでなく、カーブでもスプレーが大きく飛ぶようになった馬庭彩。
健闘を讃え合うSAGE GOLDSBURYと馬庭彩
ビーチに上がり驚きを隠せない嬉しい表情!
1位~3位の得点差はわずかに0.35差、4位のSAGEも8.0ptを持っており誰が優勝してもおかしくないハイスコアリングゲームを、終盤に来た波でしっかりとニードスコアをメイク。メンタルも、技術も、試合の運び方も、コツコツと時間をかけて成長しているのがよくわかる嬉しいプロジュニアでの初優勝!
いつも支えてくれている母親のSHIHOさんと嬉しい2ショット!
『最高です!サポートして頂いているスポンサー、コーチを務めてくれたクリスピー(MICHEAL CRISP)、フィジカルトレーナーの佐藤先生、そしていつも支えてくれている家族に感謝しています。』とコメント
MEN’Sではイベントを通して安定したスコアを出し続けたLENNIX SMITHが優勝!
男女優勝者の2ショット!
翌日からは休む暇もなくQS5000がスタート。 ハイグレードな試合という事で元CT選手であるNATHAN HEADGEやBRENT DRRINGTONといった普段試合に出場しない有名な選手も参加。チャレンジャーシリーズへの切符をかけた試合は壮絶な戦いになりました。
イベント2日目には会場にサメが現れ試合が中断するハプニングがありましたが、その後は順調にヒートを消化。
ファイナルデーはオンショアの1~2ftのジャンクなコンディション。常にドローンとジェットスキーで海の安全を確認しながらイベントが行われていました。
WOMENSのファイナルに駒を進めたのは大本命の2人。17歳のZAHLI KELLYと18歳のMOLLY PICKLUM。
ZAHLI KELLY。オンショアのジャンクなコンディションとなれば、女子の試合とはいえ果敢にエアーアクションを仕掛けて来るのが今のレベル。
メリハリのあるライディングで終盤に立て続けに8点代をスコアしたMOLLY PICKLUM。最終的にはZAHLIをコンビネーションに追い込み圧勝した。
試合終了後にはこのエアーを完璧にメイク。
JOSH KERR, SIERRA KERR, MICROに担がれ祝福を受けるMOLLY。
CT選手も出場していた今シーズンのQSの試合を5戦中3戦優勝という驚異的な勝率で終えたMOLLY。18歳ながらチャレンジャーシリーズでの活躍を期待せずにはいられない、そんな次世代のサーフィンを披露してくれました。
男子のファイナルに駒を進めたのはLATEエントリーから出場しながらも7回勝ち上がりファイナルへ進出したMITCH PAKINSONと、オーストラリアの若手を代表するサーファーの1人であるCALLUM ROBSONの対決。
セミファイナルでは同じスナッパーボードライダーズの仲間であるSHLDON SIMKUSとお互いに9点台を出し合いスーパーヒートを勝ち上がったMITCH PARKINSON。MITCHのチャレンジャーシリーズへの出場条件は優勝のみ。
あと1つというところまで来るもファイナルでは動きが硬くなっているように感じました。得意のエアーもセクションのある波を見つけれずに不発に。 ポテンシャルのある波が少ない中、冷静に試合を運びエアーで着実にスコアーを重ねたCALLUMが見事に優勝。得意のエアーを何発も決めるCALLUM。
平日にも関わらずホームのエバンズヘッズから仲間が応援に駆けつけ祝福されるCALLUM。
若手ながら2019年の年にはランキングを上げハワイのQS10000にも出場し、活躍を期待されつつも昨年はコロナの影響で試合が行われず。今年のチャレンジャーシリーズでの活躍が楽しみな選手の1人で、今後も目の離せないサーファーです。
波のコンディションにも関わらず選手たちの素晴らしい演技により、最終戦にふさわしいイベントとなったOakberry Tweed Coast Pro。
平日ということもありビーチにはそこまで観客がいないものの、コーチや選手をはじめサーフィン関係者が集まるとても濃いイベントに感じました。
2月~3月にニューサウスウェールズの南部ではQSが行われましたが、ゴールドコースト付近でのQSは数年ぶり。久しぶりにWSLのクオリファイシリーズを肌で感じることができました。
コロナで時間が止まっていましたが、確実に選手のレベル、コーチの質、サーフィンの大会のレベルというものが上がっていて、ますます今後のサーフィンの大会がどうなっていくのか楽しみになりました。
大会結果は以下の通り
Oakberry Tweed Coast ProMEN’S
1ST : CALLUM ROBSON
2ND : MITCH PARKINSON
3RD : KALANI BALL SHELDON SIMKUS
WOMEN’S
1ST : MOLLY PICKLUM
2ND : ZAHLI KELLY
3RD : SOPHIE MCCULLOCH KOBIE ENRIGHT
Oakberry Tweed Coast Pro JuniorMEN’S
1ST : LENNIX SMITH
2ND : MARLON HARRISON
3RD : TY RICHARDSON
4TH : TOUMA CAMERON
WOMEN’S
1ST : SAI MANIWA
2ND : ELLIE HARRISON
3RD : ZAHLI KELLY
4TH : SAGE GOLDSBURY
黒川楓海都にオーストラリアの生活についてインタビュー
今回はQS5000 Oakberry Tweed Coast Proの試合に参加するためにゴールドコーストに滞在していた黒川楓海都にオーストラリアの生活についてインタビューをしました。
DAISUKE (以下D) : 自己紹介をお願いします。
KAITO (以下K) : 大阪出身のプロサーファーの黒川カイトです。現在ワーキングホリデービザでオーストラリアのサンシャインコーストに滞在しています。
D:試合(QS5000 Oakberry Tweed Coast Proに出場も早期ラウンドで敗退) 残念でしたね。
K:残念でした。。。
D:国内にいる選手のみとはいえQS5000という事で、オージーにとってはチャレンジャーシリーズへの出場がかかる最終戦でみんな気合入ってたし、普段出場しない上手いメンバーも出ていたけど、どうだった?
K:QS5000というグレードに初めて出るということでフォーカスしていたのですが、硬くなっている部分がありました。でも、このライディングでこの点数が出るという事が分かったので、もっと自分が思い描いている事ができたら点数がつくと思ったので、落ち込まずに次の機会にまた頑張ります。
自分を変えたいと思いオーストラリア行きを決断しました。
D:オーストラリアに来た目的とワーキングホリデーというビザを選んだ理由は?
K:姉(黒川日菜子プロ)が、昔にワーキングホリデーでオーストラリアに滞在していた時に生活の様子などを聞いていて、その頃自分はJPSAで勝てずにいて、、、自分を変えたいと思い決断しました。
サーフィンだけでなく海外の試合とかでは英語を使わないといけない場面もあるので英語も学びたいと思いオーストラリアを選びました。
ビザは、金銭面的に学生ビザよりもワーキングホリデーの方がいいなと思って。学生生活に縛られずにサーフィンの時間と働く時間を持てると思ったので、ワーキングホリデービザを使いました。
D:やはりお姉ちゃんの影響はあった?
K:はい、こっちにきて英語もできるようになって、サーフィンも上手くなってたので、一番影響が強いですね。実際当時ワーキングホリデービザの存在も知らなかったので、、、
D:カイトの生活の様子を見ていてものすごく楽しそうに生活していて、オーストラリアのライフスタイルと合ってるなと思うけど、こっちの生活は楽しい?
K:楽しいですね(笑)働くにしても、みんな生き生きと仕事していて、何よりも波がいい事と上手いサーファーがたくさんいて、毎日とても刺激的です。
サーフィンをしながらファームに行ける場所を考えてサンシャインコーストを選びました。
D:なんでゴールドコーストではなくサンシャインコーストを選んだの?
K:これはみんなに聞かれるんですけど、、、最初にプランがあって、ファーム(農場)での仕事を3ヶ月行かないとワーキングホリデーの2年目のビザ(*1)が取れないので、最初の1ヶ月間語学学校に行って、その後にファームステイを3ヶ月しようと考えていました。
そこでゴールドコーストだと、ファームジョブをできる場所がないので、サーフィンをしながらファームに行ける場所を考えてサンシャインコーストを選びました。
*1 現在オーストラリアのワーキングホリデービザは、政府指定の農場での仕事を3ヶ月すると2年目のビザが取得でき、2年目にまた政府指定の農場での仕事を6ヶ月すると3年目のビザが取得できる。
D:そうだったんだ、ファーム目的だったんだね。
K:はい、でもそこでヌーサの波の良さに出会ってしまって(笑)そこで入っている人もみんな上手くて。サンシャインコーストはそこまで混んでいるわけではなく、自分のしたい練習に合わせてポイントも選べるので、大会でバイロンベイやゴールドコーストはいけるのでここを拠点にしました。
D:いいね。サンシャインコーストってゴールドコーストやバイロンベイに比べてあまり日本に知られてないもんね。
K:僕自身も初め情報収集に苦労しました。知り合いも誰もいないのではじめはめちゃくちゃ不安でした。
いつもニコニコしているカイトだが海に入れば真剣な顔つきに。鋭いリップを何発も繰り出していた。
D:最近はYouTubeも始めてサンシャインコーストの様子を出してるね。
K:はい、多分僕ぐらいしかやってないんじゃないですか?サンシャインコーストのこと。
D:そうだよね。ヌーサは有名だけど、いいビーチブレイクがあるなんて事あんま知られてないと思うよ。
K:是非僕のチャンネル見てください(笑)
プロサーファーカイト【黒川楓海都】のYouTubeチャンネル
オーストラリア自体がサーフィンに対して情熱を注いでいる事を感じますね。
D:オーストラリアと日本との環境の違いはどうですか?
K:サーフィンが国技という事もあって、一般の人がサーフィンというものを遊びと捉えてない事をすごい感じます。子供へのサポートの仕方とかもすごいし、オーストラリア自体がサーフィンに対して情熱を注いでいる事を感じますね。
日本だと少しサーファー=マナーが悪いとか、そういう部分が未だに思われているじゃないですか。こっちでサーフィンやっているって言うと、かっこいいとか、すごいとか尊敬されるような感じで、メンタル的にもすごくサーフィンをやりやすい部分があります。
ビーチの設備とかも無料のシャワーが付いていたりとかサーフィンのしやすい環境になっていて、日本とは全然違うなと思いました。
D:なるほど。
K:はい、この環境はみんなサーフィン好きになるなって思いました。
D:コーチングやフィジカルトレーニング等は受けてる?
K:はい、こっちに来た初めの頃はDEAN BRADYというヌーサのプロサーファーがいて、その人のグループレッスンを20代で僕一人だけ子供に混じって毎週受けていました(笑)
D:いいじゃん(笑)
K:それがコロナの影響でしばらくできなくなってしまって、それからは個人のコーチを探して受けたりしています。今回のプロジュニアで優勝したサイちゃん(馬庭彩)のコーチのクリスピー(MICHAEL CRISP)にもジェットスキーで引っ張ってもらって、エアートレーニングをしたりしました。
フィジカルはPRO MOVEMENTという場所がヌーサにあって、ジュリアン(JULIAN WILSON)とかも通っているところなんですけど、そこに半年前くらいから週1ペースでパーソナルレッスンを受けています。
あと、ブラジリアン柔術の日本人で世界チャンピオンであるYOSHI HASEGAWAさんが経営しているCAZAという所があるのですけど、そこに週2~3回のペースで柔術をしに通っています。
定期的にはサーフィンのコーチは今つけていなくて、またグループレッスンを受けてもいいんですけど、個人のコーチをつけたいなと探し中です。
D:クリスピーとかのジェットスキーで引っ張ってのエアーもそうだけど、こっちのコーチはみんなジェットスキーで引っ張ってやってるよね?
K:そうですね。トレーニングの仕方が日本ではできないような笑
D:グループレッスンとかがキッズに対して当たり前にあって、CTとかそのレベルを狙う人とかはジェットでやったりしてて、最近ではJOSH KERRの娘のSIERRA KERRもそうだけどトレーニングの仕方がすごいよね。
K : はい、僕も同じトレーニングやれた時に、同じトレーニングやれてるんだって感動しました(笑)値段高いですけど日本だったらできないし、なんであんなにエアー高く飛べるんだろうって思ってたのが納得です。
エアーの成功率も上がってきてるのを実感しているとのこと。この日も果敢にエアーに取り組んでいた。
D:今後のサーフィンがどんな形になっていくのかを見ていると、こういうトレーニングって必要だよね?
K:そうですね、体に覚えさせるというか、必要ですよね。
仕事もクビになって1ヶ月近く収入がなくて、初めてそのお弁当食べた時、泣いちゃいました
D:でも週1フィジカルやって、個人のコーチにたまに頼んでってなるとお金も大変じゃない?コロナの影響もあってワーキングホリデーというビザだからオージーと同じような保証を得れなかったっと思うけど、、、生活で大変なことある?
K:めちゃくちゃ大変です(笑)コロナの最中にフリーフードというのがあったんですけど、でもそれは学生ビザの人のみにしか与えられないでワーキングホリデービザの人には対象外で、、、
D:そんなのあったんだ。
K:そうなんです。僕たちもちゃんとオーストラリアに税金納めているのに、ワーキングホリデービザの人だけ保証もそういうのもなくて、、、でも居酒屋ATEという日本食レストランのオーナーさんが、僕とか本当は食べれないのにフリーフードを食べさしてくれたり、そのオーナーさんが個人的に週に2回くらいはご飯をフリーでテイクアウトしていいよと言ってくれて、タダでご飯を食べさせてくれて。。。
その時仕事もクビになって1ヶ月近く収入がなくて、初めてそのお弁当食べた時、泣いちゃいました笑。その時はほんと日本に帰るわけにもいかないし、サーフィンもしなければいけないし、、、仕事探すのに移動しまくってレジメ(履歴書)を配り回って、蕁麻疹が10年ぶりに全身に出ました(笑)
D:ストレスで?
K:はい、ストレスです。でも、サーフィンのレベル上げるためにこっちに来たのでやらなきゃいけないし、仕事も探さなきゃいけないしで、、、今までの人生で一番精神的に追い詰められました。
D:コロナの真最中だから2020年の3月くらい?
K:そうです。すぐに仕事クビになって、自分1人で生活するというのは無理でしたね。親にも助けてもらったし、周りの人たちのおかげで助けられました。
D:大変だったんだね。今はもう生活は安定した?
K:そうですね、安定して、、、正直いうと今もあんまり安定してはいないです(笑)
D:え?(笑)
K:しばらくしてから日本食レストランで仕事が見つかって、1日6時間、週4日ペースで働いていて少しは安定していたのですけど、やっぱりサーフィンに集中したくて働くペースを週3日にしてもらって、、、でも板とか買いたいし、自分への投資と思ってトレーニング代とかに使っているとやっぱり支出と収入の割合が合わなくなってきて(笑)
D:はいはいはい(笑)
K:でもYouTubeを始めて僕の中で半年以内に登録者1000人達成っていうのを決めて、その間はサーフィンとYouTubeに集中する。もし半年で達成できなかったら仕事をもっと増やすって、決めてやっていました。 1000人いったら広告つけて収益もでるのでって、安易な考えだったんですけど、でも、それまではどれだけ生活が苦しかろうとサーフィンに没頭しようと思って。
ファームで働いている時に朝1とかやっぱり海に入れないので、本当にそれが嫌で。。。自分を追い込んでどこまでできるかやってみたかったんですよね。それで今後大会に勝てなかったらそれまでだし、、、でも追い込んだ結果が、今はお金ないみたいな(笑)
D:(苦笑)
K:でも自分の中で本当に追い込みたかったんですよね。お金がなくても、どこまで自分を追い込めるかをやりたくて。苦しいけど、それだけ夢に向かってやっていってるっていう日々を感じれるので、後悔はないですね。
D:なるほど!でもYouTubeも登録者1000人いったからね、これからはその収益も入ってくるね。
誰も知り合いがいないところから、今ではこんな支えてくれる人がいる
K:そうですね!それに今働いているBLUE PLUMという日本食レストランのオーナーが僕のサーフィンをめちゃくちゃ応援してくれていて、今回の大会も仕事を休みにしてくれたりとか、波がいい時は遅くきていいよとか言ってくれて、余ったご飯とかも持ち帰らしてくれて、もう本当にそのお陰でやっていけてます。
D:周りの人にすごい支えられてるんだね。
K:めちゃくちゃ支えられています。もう本当に感謝しきれないくらいです。
D:いいね、こんな異国の地で。
K:はい、誰も知り合いがいないところから、今ではこんな支えてくれる人がいるっていうのが僕の中で感慨深い事で。
D:試合とかもよく応援団みたいに、みんなが応援に駆けつけてくれてるよね。
K:日本では全然なかったのに(笑)こっちの方がいっぱい応援に駆けつけてくれてます。
完全にパワーアップした状態で日本に帰りたいと思っています。
自分のことを包み隠さずに話してくれるカイト。インタビューをしていても人柄の良さが伝わって来ました。
D:最高だね。じゃあまた質問に戻るけど、3年もいるっていうのはある意味日本でプロ活動出来なくなってしまってるのだけど、日本に帰ろうと思った事はない?
K:1回もないですね。オーストラリアから帰ってきたらJPSAに参戦してグラチャンを獲るというのを目標にしていて、もちろんその目標は変わらないんですけど、ワーキングホリデーでの滞在期間ていうのは限られているので、その間はこっちの大会にフォーカスしてQSとか大きいイベントとかで成績を残すことができたらと思っています。だから日本のQSやJPSAは一旦お休みにして、完全にパワーアップした状態で日本に帰りたいと思っています。
D:なるほど。。。じゃあ、ずばりワーキングホリデーの魅力は?
K:そうですね、、、うーーん。。。
D:なんかないの(笑)?
K:うーーん、自分のやりたい事や、夢に向かってフォーカスできる事ですかね。働きたければその分お金が稼げるし、逆に言ったら日本でお金を貯めてきていたらこっちで好きな事をいくらでもできるし、、、
何かを成し遂げたいことができる手段の1つっていうのが、ワーキングホリデーの魅力だと思います。 あとは自由であるということ。。。生かすも殺すも自分次第ですけど(笑)
パリオリンピック出場とCTに入るというのが一番のゴールになります。
D:なるほど(笑)じゃあ最後の質問。オリンピック日本代表が決まりました。カイトもアンダー18の日本代表としてジュニア時代を過ごして、今はワーキングホリデーで3年目のオーストラリア。今が一番旬な年頃で、プロサーファーとしての方向性もたくさんあると思うけど、今後のカイトにとってのゴールは何ですか?
K:自分のゴールをズバリと言うと、パリオリンピック出場とCTに入るというのが一番のゴールになります。 こっちに来る前に強化指定選手だったんですけど、成績が伴わずに外されて、その年にJPSAでも成績も残せなくて、、、
その時に東京オリンピックは見切りをつけて、2024年のパリオリンピックに日本代表として出場するというのを決意してオーストラリアに来たので、、、だから今でもその夢は諦めてないです。
それとCTにクオリファイするために、QSにはどんだけお金がかかろうと出ると決めているので、、、サーフィンで成績を残すという事が、今まで応援してくれている人だったり、出会った人達への全部の恩返しだと思っているので、それができるまで僕は絶対に諦めないです。
D:コンペティターだね。
K:そうですね。僕はコンペティターです(笑)
自分の夢に対して一切ブレずにインタビューに答えてくれた黒川楓海都。今後の活躍に期待したい。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
INSTAGRAM : https://www.instagram.com/nojiland/?hl=ja