撮影&現地リポート:永島未知子 ウイメンズの開幕から一夜開けた8月28日、事前アナウンス通りに本日は朝からWSLメンズQS3000「Pull&Bear Pantin Classic Galicia Pro」が開催された。
Pull&Bear Pantin Classic Galicia Pro 2018 Highlights: Pumping Surf for Opening Day of Men’s QS
午前中の時点ではウーメンズの試合も午後に行われる可能性も残されていたが、小波の27日とはうって変わって1m50cm〜2m近くまでサイズアップした波、クローズアウト気味になる時間帯など、1日を通してパンティンビーチは終始ハードコンディションのまま。結局メンズのラウンド1から始まり、ラウンド3の途中ヒート6までとメンズデイとなった大会2日目。
この日に登場した日本人選手は全部で5名。その中でラウンド3のヒート7以降に駒を進められたのは田中大貴選手だった。
田中はラウンド2からの出番。その前までのヒートでは選手はビーチ中央より左寄りで試合をしていたが、田中のヒートが始まるとブレイクポイントは右側へ移動。
試合が始まると早速レギュラーの波にテイクオフする田中。縦のラインを描いたファーストターンにもう1発ターンを入れるとその1本に5点がスコアされる。それからしばらく動きはなく、途中に入ってきたセットも他の選手が乗るなかやり過ごすなど、その間に順位を落とすも、残り5分を切った時点で乗った波で4発ターンを決める。それに7.67ポイントがつき、トップに返り咲く。そしてそのままトップ通過となった。
田中大貴「ハードなコンディションでした。落ち着いていたかのように見えました? いやぁ、途中で他の選手がポイントを出していたようにも思えたし、自分の得点も(風向きと波のブレイクする音で)ハッキリ聞こえなかった。でも勝ち上がれてよかったです。イギリス、フランスの試合をしてから、アメリカを挟んで、それでわざわざまたヨーロッパに戻ってきたので(笑)」
そしてラウンドアップはかたいだろうという予想の中、残念な結果となったのが稲葉玲王選手。アメリカ東海岸で2日前に開催されていた「Vans Pro」で2位になり、スペイン入りしたのは27日の夕方。決勝、アメリカ東海岸からスペインへの移動、また時差もある。パンティンビーチに到着して約24時間後に自身のヒート、ラウンド3が行われるというハードスケジュールではあったが、それでも勝てる試合だったようにみえた。
稲葉選手のラウンド3ヒート1が行われたのは夕方17時過ぎ。サイズは少し下がり風も弱くなったが、セットが入ると一気にサイズアップ。稲葉は序盤に波の感触を確かめるように2本乗ると、3本目のバックハンドでスプレーがキレイに飛ぶファーストターンを決め、それに5点台がスコア。
それに比べ、他の選手はインサイドまで細かく乗り継ぎ、技を何発も入れて点数を稼ぐスタイル。技の数は少なくても際どい波で点を出すか、沖に戻る時間が長くなるリスクを持ちながらインサイドまで技を入れながら乗り切るか…。選手たちがその作戦を持っていたかどうかは定かではないが、観ている側からすると軍配は後者の選手に上がった。
会うと常に笑顔でいてくれる稲葉選手。しかしヒート後はさすがに苦渋の表情だった。「波は(ヒートが始まる前からずっと)見ていたけど...」と、変化が激し過ぎるパンティンビーチの波に苦戦したようだ。
パンティンビーチはいつもタイドによる変化が激しい。
このパンティンビーチの波の急激な変化には他の日本人選手も苦戦していたようにみえた。ヒート開始直後から波にのり、序盤でトップにつけても、中盤から後半にかけ他の選手に逆転されてしまう。もし戦略でヒート前半にポイントを稼ぎ、そして後半は落ち着きながら自分のペースでバックスコアのアップを計るというパターンを持っているとしたら、パンティンの波に至ってはその戦略はハマりづらいのかもしれない。セットが入るごとに波は変化していく。
なぜそこまでパンティンビーチの波は変化が激しいのか。WSLの人に聞いてみると「それはここの地形がフラットだから。その分、潮の満ち引きの影響をダイレクトに受け、そのたびに砂が動く。この時期が特別ではなくて、パンティンビーチはいつもタイドによる変化が激しい。他の場所で似ているポイントをあげるなら、フランスのブルターニュ地方がそう。雨が多いところも似ている(笑)」
WSLメンズQS3000「Pull&Bear Pantin Classic Galicia Pro」の初日、敵は変化が激し過ぎるパンティンビーチの波への順応性にあったようだ。
波は明日になると少しだけサイズダウンし、木曜にまた少しアップするとの予報。それを受け大会3日目となる8月29日(水)はメンズがOFF、ウイメンズのQS6000が集中して行われる。ラウンド4から始まり、ヒート1に田代凪沙、続けて川合美乃里、前田マヒナに脇田紗良と続く。トップシードが出てくるラウンド4。日本人女子の活躍に期待したい。ファーストコールは現地時間朝9時(日本時間16時)より。
西慶司郎
ラウンド2に出場。ヒートが行われた15時は小雨が振り出し、風が急に冷たくなり午前中の蒸し暑さが嘘のよう。涼しいを通り越してむしろ肌寒い。会場の雰囲気も天気に合わせ、緊張感が増す中で行われた。
しかしそんな雰囲気も関係ないような様子で序盤から積極的に波に乗り、4点台を続けて出し順位をリード。しかし後半、他の選手が波に調子を合わせ点数を上げてきた。そうすると1本の持ち点が及ばず、ラウンドアップできず。見応えのあるサーフィンを披露していたので、とても惜しい。
西優司
ブレイクポイントは中央に移動、波の形もそれまでよりは少しだけ落ち着いて見えたが、ヒートの序盤が西選手ともう1人の選手しか乗っていなかったのを思うと、波選びが以前難しいままだったのは容易に推測できる。グーフィの波で最初に5ポイントを出し、続いてレギュラーの波にも乗りリード。
しかし中盤で他の選手がグーフィの波をインサイドまで長く乗って点数を出していく。レギュラーの点数が出る波を狙っていたのか、波に乗っていない時間が続く。最後にレギュラーで2発入れるもラウンドアップのスコアには足りず。
ヒートが始まる前から集中して波を見続けていた姿が印象的だったが、パンティンの波はその予想をはるかに上回る変化を見せたのかもしれない。
都築百斗
ショアブレイク、クローズコンディション気味だったラウンド1をトップ通過! 「緊張はしていない。昨日まで波が小さかったから、サイズが上がった中で試合ができるのが嬉しい」。
そのままの調子でラウンド2のアップにも期待できたが、波待ちのポジションがヒート範囲外になってしまったというアクシデント発生。そこでのタイムロスがもったいなかった。最後に気持ちや戦略をおそらく変えて乗ったであろうグーフィの1本。インサイドまで乗り継ぎ、ラウンドアップに繋がる点数は出なかったがその姿勢はとても好感でした。次の試合に活かせる学びの多い敗退だったことでしょう。
世界を目指して戦い続ける、日本のサーフ・アスリートたちの活躍を期待し、エールを送り続けたい。がんばれ!日本!
メンズ:http://www.worldsurfleague.com/events/2018/mqs/2786/pantin-classic-galicia-pro
ウイメンズQS:http://www.worldsurfleague.com/events/2018/wqs/2785/pantin-classic-galicia-pro