ボーン・トゥー・サーフ:波乗りのために生まれた男。そんな言葉がぴったりのジョディ・スミス。CT選手のなかで一番のヘビーウェイトにもかかわらず、彼のサーフスタイルはパワーとスムースが高次元で融合し観客を魅了する。その類い希なる才能は天性か、それとも努力で培われたものなのか。横浜みなとみらいのスターバックスでコーヒーを待ちながらインタビューはスタートした。
Jordy Smith in Collecting Dust.
ホームブレイクはどこなの?
南アフリカ・ダーバンのニューピア。
それってハンティントンビーチみたいなピアがあるところ?
そうそう、そうだよ。
いくつでサーフィンを始めたの?
うーん3才かな。
ずいぶん早いね?
うん、そうだね。親父(グラハム・スミス)がシェイパーだったんだ。
ケイブロックではよくサーフィンするの?(南アフリカの有名なリーフブレイク)
(目が輝く)ああ、よくしたよ。
あそこはバックドアよりパワフルだって本当?
うーん、波が大きくなるとすごいよ。バックドアのほうがパーフェクトかな。ケイブロックはもっとサッキーでバレルをメイクするのが難しいんだよ。大きくなるとケイブロックは手強いね。浅くて危険だし。
Jordy Smith in Mozambique and Durban
“僕はトム・カレンのサーフィンを手本にした”
君のサーフィンはパワフルというだけじゃなくて、スムースかつファーストでしかもスタイリッシュだよね。それは練習して培ったもの?それとも持って生まれた才能なのかな?自分でどう思う?
うーん、僕はトム・カレンのサーフィンを手本にしたんだ。彼のスムースなターンをビデオでよく見て勉強したんだよ。それでJーベイのような長いブレイクで何度もターンを繰り返して練習したんだ。
ビーチブレイクのような波だとクイックにサーフしなくちゃいけないから考えてサーフィンができないんだよ。南アフリカはJ-ベイみたいなブレイクが一杯あるからそこで練習して自分のスタイルが完成したんだ。ジョエル・パーキンソンのサーフスタイルも手本にしたね。
君は2006年にASPジュニアで優勝したんだよね。翌2007年にはWQSのチャンピオンでしょう。
うん。そうだね。
その年にナイキから破格の契約金でオファーがあったんだけど、でもそれを断ってオニールと契約したんでしょう?それって本当の話?
そうだよ。
どうして?ナイキの方が提示金額は多かったんじゃない?
うーんというか。どうもなんかしっくりこなくてね。オニールはスタッフが良い奴ばかりで、なんども会いにきてくれたんだ。もちろんオニールはみんなサーファーでね。気持ちが打ち解けたんだよ。それでナイキを断ってオニールと契約したってことさ。
金よりも大事なものがあったってこと?
まあそういうことかな。
いまはカリフォルニアのサンクレメンテに住んでいるんでしょう?
うん、2年前に結婚してカリフォルニアに引っ越したんだ。
綺麗な奥さんだけど南アフリカでは有名なんだってね。(リンドール・ジャービス:ファッションモデル)
そうなんだ。彼女は僕より有名なんだぜ、笑。
引っ越した理由は?
南アフリカは、波は良いんだけど。遠いからアクセスに問題があってね。カリフォルニアにはスポンサーもあるし。コンテストのことを考えると便利なんだよ。
横浜のSURF VILLAGEでもサイン会が行われ、オニールチームと合流。
南アフリカのサーフシーンは他の場所とくらべてどんな風に感じている?
南アフリカは、波はすごく良いんだけど、それだからサーファーは外に出なくなってしまうんだよね。サーフトリップに出かけて波が悪いと「地元のほうが、波が良いや」ってなるからさ。遠いところにあるし、発展しないのはそこかな。
最終戦のパイプとかトリプルクラウンは特別な思いがある?
ああ、今年はトリプルクラウンを狙うよ。だから試合は三つ出る予定だ。パイプも楽しみにしている。
パイプラインでのサーフィンはどうなの?いまでも怖い?
もちろんパイプは怖いよ。波が読めないから難しいんだ。バックドアはパーフェクトだから予測がつくけど、レフトは難しいね。
CTはジョンジョンに世界タイトルが決まっちゃったけど、ポルトガルは惜しかったね。君がジョンジョンにストップをかけると誰もが思っていたと思う。
そうなんだよ。セミファイナルはコナー・コフィンとのプライオリティーの駆け引きもあったし、もう一本が足りなかったかな。でも海が相手だからそういうときもあるさ。
そういえば、優勝したトラッソルズで使ったボードのことを聞きたんだけど。
あれはC.Iの「The Bunny Chow」だよ。厚いしエポキシで軽いんだ。ソフトな波のための専用ボードだね。トラッソルズのような。
だからヨーロッパでは、そのボードは使わなかったんだ。
ああ、あれはトラッソルズ専用みたいなものだよ。
トラッソルズでは勝ち運があるね。(ジョディはハーレープロで2年連続優勝している)
今はホームだからね波がよく判るんだ。
そういえば怪我はもう良いの?
ああ、もう完璧に治ってる。
完治まで時間がかかったようだけど、どこが悪かったの?
背中の筋肉なんだ。練習し過ぎだったんだよ。疲れているのに無理してしまった。
“どこがというより、良い波があるかないか。その時、その場所にいれるかどうか”
ビッグウェーブチャレンジには興味がある?ジョシュ・カーがトドス・サントスで勝ったね。
ああ興味あるよ。やってみたいね。でも、いまはCTだけで手が一杯だよ。CTの試合だけでも一度に20~30のボードだろう?それに加えてガンもとなると超大変なんだ。
ツイギー・ベイカー(南アフリカ出身の世界チャンピオン)はハワイやカリフォルニアやオーストラリアにガンを置いてビッグウェーブに備えている。だから、そこまでするとなるとちょっと大変。ビッグウェーブに興味はあるけどね。
世界でサーフしてきてどこの波が良かった?
ハワイもチョプーもいい波だよね。フィージーもインドネシアもね。やっぱりJ-ベイかな、地元だしね。
でも、どこでも良い波のときは良い波だよ。つまり有名なサーフポイントでも波が悪いときは悪いってこと。だから、どこがというより良い波があるかないか。そのときそこにいるか。そこが肝心だと思うんだ。
君のサーフィンに大きな影響を与えた人、たとえば子供の頃にサーフヒーローとかはいたの?
親父だね。彼は僕にとって永遠のヒーローさ。
最後に世界チャンピオン以外に人生のゴールとしているものはなにかある?
(黙考)ハッピーになることかな。いつもハッピーでいられる人生を目指している。シリアスにならない。それが僕の人生の目標だよ。
世界の波をサーフし、戦い、金を稼ぐ。コンマ数ポイントというシビアな競技。勝利もしくは敗北という相反とのジレンマ。高次元なポジションに身を置くCTサーファーでありながらも、まるで友人と接するようなフランクさで私の質問に答えてくれたジョディ。
いつも和んだ空気を漂わせていた彼は「笑顔をしすぎて顔の筋肉が硬くなっちゃった」とサイン会の後にとぼけて周囲を笑わせた。CTの台風の目として来年も彼が大暴れするのは間違いないだろうし、新しいチャンピオンとして輝く可能性も十分に秘めている。とにかくは2016年シーズン最後のハワイでの彼の活躍を期待したい。
取材協力:オニール https://www.instagram.com/oneill_japan/
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