【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】サーフィン大国、オーストラリアが2032年ブリスベン・オリンピックに向けて本気モード

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】今回は2つのビッグタイトルの獲得から見るオーストラリアの本当の強さ。吉川広夏が準優勝したロングボードのベルズ大会、そしてキラ・ジュニアチームチャレンジ&シスターエボリューション・ウィメンズチームチャレンジの模様などをお伝えします。

取材、文、写真:菅野大典

 

9月のゴールドコースト。

 日が昇る時間も早くなり、暖かい日々が続いています。ビーチにはボードショーツ1枚で遊ぶ人の姿も多く見られるようになりました。

 

毎年この時期にカランビンビーチで行われるスウェルイベント。今年は範囲も拡大され大勢の人がビーチに作られたアートの鑑賞に来ていました
WSLからもブースが出ていました。
ゴールドコーストのビーチフロントは充実。数年前まで工事だらけでしたが、今は綺麗に整備されサーフィンだけでなく年間を通して様々なイベントが行われています。

 

 ゴールドコーストの波の状況はこの時期特有の北風が吹く日が多く、スナッパーロックスやバーレーヘッズなどワールドクラスの波がブレイクするポイントはオンショアになりイマイチなコンディション。

 

オンショアのスナッパーロックス。

 

 その代わりにゴールドコースト北部や、ツイードコーストのバックビーチのコンパクトなビーチブレイクが楽しめます。ただ今年は鯨の数が多いせいもあるのか、サメの目撃情報が頻繁に報告されており、近隣のキャバリタビーチをはじめオーストラリアの各所で被害が出ています。

 

 9月5日から7日にかけてはキラ・ジュニアチームチャレンジ&シスターエボリューション・ウィメンズチームチャレンジがD-BAHで開催されました。

 

 

 

先月のキラ・チームチャレンジに続き今月もオーストラリア中のボードライダーズがD-BAHに集結。
チーム戦とはいえキラチームチャレンジは各クラブの代表選手による個人戦なので一戦一戦がファイナル。チーム総出となって応援しながら戦うヒートは盛り上がります。
波はオンショアのトリッキーなコンディション。スナッパーボードライダーズの女子代表を務めた馬庭彩。
カランビンアリーボードライダーズの女子代表を務めた高橋花音、最後の最後で逆転されてしまい2位という結果となってしまいましたが素晴らしいサーフィンを披露していました。
キレキレのサーフィンを披露していた昨年のISAアンダー16ガールズのワールドチャンピオンであるジギー・マッケンジー。
バーレーボードライダーズのヘッドコーチを務める相沢日向とCTサーファーのリアム・オブライアンもビーチに出てきて勝利を祝福。
元CTサーファーであるノースショアボードライダーズの代表ソフィー・マカラック。9ポイントを含むトータル15.43ポイントをスコアし格の違いを見せつけていました。

 

 イベントはMNMボードライダーズがジュニアボーイズディビジョンで、バーレーヘッズボードライダーズがウィメンズディビジョンで総合優勝を果たしました。

 

 オーストラリア南部の地域である、ビクトリア州などは波のコンディションが良くなるハイシーズン。17日から21日には、ベルズビーチでWSL LTの第2戦バイオグラン・ベルズビーチ・ロングボードクラシックが開催。

 

 この世界最高峰のロングボードイベントに日本からは、井上鷹、田岡なつみ、吉川広夏、井上楓、井上桜が出場。サーフメディアの記事でもお伝えさせていただきましたが、吉川広夏が見事に準優勝となる活躍を見せてくれました。

 

https://surfmedia.jp/2025/09/21/2025-bioglan-bells-beach-longboard-classic-04/

 

 

ファイナリスト4名 Credit: WSL / Cait Miers

 

 史上初の3連覇を果たしたソレイユ・エリコと準優勝の吉川広夏。男子はマックス・ウェストンが優勝、ケビン・スクバーナが準優勝となった。

 

吉川広夏 Credit: WSL / Cait Miers

 

 33歳にしてキャリア最高の結果を収めた吉川広夏。ツアー残り1戦を前に2025年サーフシティ・エルサルバドル・ロングボードチャンピオンシップへの出場権も確定した。

 昨年の田岡なつみに次ぐ日本人女子ロングボーダーのファイナル進出は素晴らしい快挙。来年はベルズビーチという歴史ある場所での優勝を期待したい。

 

 また、中国ナショナルチームもビクトリア州で強化練習中という情報もありました。

 

 ベルズビーチがあるサーフコーストにはポイントブレイクからビーチブレイクまで幅広いレンジの波が割れており、車で1時間ほど離れた州都のメルボルンにはウェーブプールも。気温、水温ともに寒さはありますが、その分人は少なくオーストラリアが冬場の時期を中心に波のコンディションが良くなります。

 

 

 分厚いライトハンドがブレイクするベルズビーチ。3ヶ月前にビクトリア州を訪れましたが、常に波がありながらも人は少なくオーストラリア東海岸とはまた違った雰囲気のサーフィン環境を味わうことができました。

 

 チームで一緒に練習するだけでなく、チームでまとめてサーフボードをオーダーしてテストしたりと、他の国の選手とは違う動きをしている中国チーム。個人レベルで動くのではなくチームとしてサーフィンという競技に向き合っているように感じます。

 

 

オーストラリアの選手がワールドタイトルを獲得

 

デーン・ヘンリーの優勝に加えて、サリー・フィッツギボンズとキャラム・ロブソンもファイナルに進出しブロンズメダルを獲得するなど力強い総合力を見せたオーストラリアチーム。PHOTO:ISA

 

 最後に9月の1番のニュースと言えば、オーストラリアの選手がワールドタイトルを獲得した事。

 

 ISAワールドサーフィンゲームスでは、デーン・ヘンリーが優勝し見事ゴールドメダルを獲得。その活躍と共にオーストラリア代表チームである『イルカンジス』は見事14年ぶりに団体優勝を果たしました。

 

 

デーン・ヘンリー(AUS)  Credit: ISA /Sean Evans
デーン・ヘンリー(AUS)Credit: ISA /Pablo Franco

 

 デーン・ヘンリーは昨年ワールドジュニアゲームスでも優勝を果たしており、ワールドジュニアチャンピオンのタイトルを保持したまま二冠を達成するという歴史的快挙。過去には、トム・カレン、ガブリエル・メディーナ、ジョーディ・スミスも同様にジュニアとオープンのタイトルを獲得していますが、この偉業は史上4人目。

 

 現在19歳のデーン・ヘンリー。オージーの男子は若くしてQSに本格的に参加している選手は少ないが、今の10代にはたくさんのタレントが揃っています。

 

 

モリー・ピックラムがWSL女子世界タイトルを獲得。

 

モリー・ピックラム(AUS)WSL / Cait Miers
モリー・ピックラム(AUS)WSL / Ed Sloane
モリー・ピックラム WSL / Cait Miers

 

 そしてなんと言ってもモリー・ピックラムがWSL女子ワールドタイトルを獲得という大快挙。

 

 素晴らしい成績で今シーズンを戦い、イエロージャージでフィジーでのWSLファイナルズに臨み、見事に世界王者を勝ち取ったモリー。

 

 やはり世界王者が自分の国にいるのといないのでは全く違い、こういった快挙が成される事でオーストラリアのサーフィン界は盛り上がる。

 

 肌感ではありますが、今のオーストラリアのジュニア世代の選手はCTと共に、2032年に自国開催となるブリスベンオリンピックの代表を目的としている選手が多く感じます。

 

サーフィンの進化が著しい今では、選手も若年齢化して女子CT選手の中央値は22歳ほど。男子と比べて数段に若くしてピークとなっているので、そう考えると22歳のモリーは決して若くはないが、いずれにしてもオーストラリアの育成システムがいかに効果を出しているかを示す結果に思います。

 

 

奨学金制度も充実していて、金銭的なサポートだけでなくメンターシップも

 

 

 ベースにボードライダーズがあり、グロメッツの試合はシンプルにシステム化していて、TID(タレント発掘と育成システム)や大会で結果を出したりしている選手は、各州の規模で行われているアカデミーによる育成プログラムが受講でき、さらにその上に行けばナショナルレベルの育成プログラムがある。

 

 州ごとや国ごとの様々な奨学金制度も充実していて、金銭的なサポートだけでなくメンターシップもあり、競技以外のメンタル面やキャリア形成面も強化される。モリー・ピックラムも4年前にスポーツオーストラリア・ホール・オブ・フェイムの奨学金を受けサポートされていました。

 

 メーカーのサポートとは別に国家レベルの育成サポートがあるのは、競技を突き詰めるという意味でとても心強い。

 

もちろんサーフィンというものがオーストラリアの国技であり、国内に波のある環境が揃っているというのが大きな要因ですが、今月の2つのビッグタイトルの獲得のニュースを受け、オーストラリアのサーフィンの強さを支えるベースにあるものが、いかに効果を示している事を感じました。

 

 

 

菅野大典20年近くオーストラリアのゴールドコーストを拠点にして、サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、選手の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。