競技の世界から、まだ見ぬ波を求める“ウェイブハント”という新たな道へ。独自の哲学とスタイルで多くのファンを魅了するプロサーファー村上舜。彼が今、見据えるものとは。海外での刺激的な経験から、仲間との新たなプロジェクト、そして、これからの夢について、率直な言葉で語ってくれた。
最近の活動について尋ねると、「今年は本当に波がなくて、まともに日本では狙ってる波っていうのはできてないっすね」と少し残念そうに語る村上舜。それでも撮影で訪れたメンタワイでは、最終日に良い波に恵まれたという。


体のコンディションは「すごく良いっすね」と好調そのもの。「やりたいサーフィンにどんどん近づいていってるかなって思ってます」と、自身の進化に手応えを感じているようだ。
最近で最も印象的だったセッションは、今年の冬に訪れたハワイのパイプラインだという。「久しぶりにパイプラインをやりに行って、やっぱりすごい刺激的でした。昔は人が多くて好きじゃなかったけど、改めて行ってみて揉まれて、刺激を得ることってすごい大切だなって感じましたね」。
世界最高峰の波とサーファーたちの中で得た経験は、彼をさらに強くしたに違いない。
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自分の『乗りたい』っていう欲が恐怖心に勝るんです。

危険なビッグウェイブやチューブに挑むウェイブハント。その恐怖心をどう乗り越えているのか。
「恐怖心はなくならないと思うんですけど、経験を重ねるごとに少しずつ慣れてくる。それよりも、自分の『乗りたい』っていう欲が強かったら、それが恐怖心に勝るんです。いつも『あの波に乗りたい』っていう欲が勝ってますね」。
彼の言葉からは、恐怖を凌駕するほどの純粋な探求心と情熱が伝わってくる。また、適度な緊張感はむしろプラスに働くという。「波がデカくてすごく緊張してる時とか、逆にアドレナリンが出て、いつも以上のパフォーマンスができることもあります」。
サーフィン以外の時間は、仲間たちとの新たなプロジェクトに時間を費やしている。
「友達と『MOBB』っていうチーム(脇田泰地や弟の村上蓮らが中心になって活動)で、アパレルを出していきたいねって話をしてて。デザインを考えたり、色々調べたりしています」。
ブランド名はMOBBの文字を裏から見ると「DOLOM」と読めると言った脇田泰地のアイデアから命名。彼らの新たな夢がここから始まろうとしている。


自身のルーツである故郷・湯河原については、「自然との触れ合い方とか、海に関しても多くの事を知ることができました。自然に生かされているんだなって思います」と語る。豊かな自然環境が、彼のサーフィン観や価値観の礎となっている。

プロサーファーとして、次世代に伝えたいことは何か、という問いに対して村上舜は、。「若い子達に新しい道が一つ増やせたらいいなって、ずっと思っています。
試合でCT(チャンピオンシップツアー)を目指す道も素晴らしいけど、それだけじゃない。僕はもっとサーフィンを楽しみたいし、自分のサーフィンを見てほしいと思って、フリーサーフィンで作品を作る道を選びました。若い子たちが選べる選択肢が一つでも増えたらいいなと思います」。
2023年にウェイブハント中心の活動を宣言してから約2年。自身の思い描く道はまだ始まったばかりだという。
「まだ始まってないって感じですね。これから自分の作品を出して、そこから動いていくんじゃないかなって期待を込めてます。海外に挑戦したいなって思ってます。
メキシコも行きたいし、タヒチも挑戦したいし。海外の波に挑戦して映像作りたいです。でも、そのためには資金が必要で、自分が他の仕事をして、何か資金を作るのか、それともプレイヤーとして、また頑張るのかみたいな。そういう今考えが色々あります。」

6年ぶりに復活した「MURASAKI SHONAN OPEN 2025」TOP of TOP SURFINGで村上舜が優勝。賞金100万円を獲得
このインタビューの数週間後に村上舜は、ムラサキ湘南オープンに出場して、優勝し賞金100万円を獲得した。
WSLなどの試合ではなかったとはいえ、日本のトップ選手が出場。その中でも彼の持つスキルは光り輝き、今なお日本代表を凌ぐほどの実力を見せた。
そのサーフィンを再びコンテストの世界でも見たい!と多くのギャラリーが思ったに違いない。
そして、インタビューの最後には彼は旅の最終目標を語った。それは、シンプルかつ究極だ。
「自分の満足いく波に乗りたいです。1本でいい。本当にもう『これ以上できない』っていう波に乗れたら、すごい満足できるかなって思います」。
その究極の1本を求め、村上舜の挑戦はこれからも続いていく。彼の瞳は、すでにまだ見ぬ世界の波を見据えている。




