
現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。今回はビクトリア州サーフトリップ、テイラー・スティールのSOLENTOサーフィンフェスティバル、オッキー・グロムコンプなど。
取材、文、写真:菅野大典
6月のゴールドコースト。
朝晩の気温は一桁台になる日もありますが、晴れた日中は過ごしやすく気持ちのいい日が続いています。
今年は暖冬とも言われており、日中の天気の良い日であれば半袖Tシャツ一枚でも過ごせる快適さ。1年を通しても過ごしやすい気候はゴールドコーストの特徴の1つ。冬場でもビーチに人が集まり遊んでいる姿が見られます。
今月も綺麗な夕焼けを拝めました。
ゴールドコーストの波の状況は、先月のエクセレントなコンディションから一転、初旬は典型的な冬のスモールコンディションの日が多く続きました。
スウェルマグネットと呼ばれるD-BAHも湖に。1年を通してもここまで小さなコンディションは珍しいです。
先月地形が戻りエピックなコンディションが続いたスナッパーロックスもうねりが入らない日が多く続きました。
同じオーストラリアでも南部の地域はオンシーズン。ゴールドコーストから少し下った南うねりを拾いやすい場所ではサイズのある波がブレイクしています。
人知れず無人のチューブがブレイクしている場所も。この時期は風が弱く吹く日が多く、地形のある場所では良いコンディションでサーフィンを楽しめます。
下旬にはまとまったうねりが入り、ファンなコンディション。スクールホリデーとも重なりD-BAHにはたくさんのグロメッツが集まっていました。
今月はビクトリア州へサーフトリップに行ってきました。
オーストラリア本土でも一番南に位置するビクトリア州ですが、ゴールドコーストとは比べ物にならない程の寒さ。
それに加えて6月はオーストラリアの冬至にあたる日でもあり、日の出時間が7:30過ぎ、日の入りが17:00前と、日照時間も短く過酷な旅となりました(笑)
毎年イースターホリデーの期間中に開催されるCTイベントでお馴染みのベルズビーチ。冬の時期はうねりを拾いやすくオフショアになる日が多く、コンディションが整いやすい。
サーフコースト(ビクトリアの南西部の地域)の中心の街であるトーキー。リップカールやクイックシルバーといったブランドの発祥の地としても知られ、オーストラリアで1番と言える程の規模を誇る多くのサーフショップが立ち並んでいます。
ベルズビーチやウィンキーポップといった有名な場所だけでなく、コーストラインには多くのサーフポイントが点在。トーキーから約250kmに渡って続くグレートオーシャンロードには無数に広がる無人のブレイクがありました。
壮大なロケーションにサーフポイントがたくさん。
ベルズビーチでのCTのバックアップ会場にもなっていたジョアンナビーチ。岸には山が聳え立ち、ゴールドコーストとは違った波がブレイク。常に波があるこの場所では、水の量も波のパワーも比べられない程に大きい。
無人のレフトの波にリップする黒川楓海都。ビクトリア州でもベルズビーチやウィンキーポップといったポイントではサーフィンをした経験はあったものの、それ以外の場所は初めてとの事。今回は色々な場所で入水し、まさにサーフトリップの真髄を味わっていました。
現在オーストラリアの専門学校に留学中の鈴木アーサ。初めて入る場所でも臆する事なくチャージ。普段の混雑している場所とは違い、水を得た魚のようにチューブに突っ込んでいました。
昨年タスマニアを訪れた時にも感じた事ですが、波の良い場所はたくさんあるもののゴールドコーストや他の東海岸のサーフポイントと比べるとアクセスしにくい場所であったり、街から離れている場所であったりと、日常にサーフィンをしながら生活するのは少し難しく感じました。
それでも有名なポイントであるベルズビーチや、ウィンキーポップといった場所は、アクセスしやすく駐車場などもしっかりと整備されており、日の出と共にたくさんの人がブーツにヘッドキャップを身につけ準備をしていました。
人によってサーフィンの環境の良さというのは異なると思いますが、雄大な自然と混雑のない海が広がり、ゴールドコーストやシドニーのエリアがある東海岸とはまた違ったオーストラリアのサーフシーンが広がっています。一味違ったサーフトリップを楽しめました。
6月もオーストラリアで全土でたくさんのサーフィンイベントが行われました。
7日から14日にはSOLENTOサーフィンフェスティバルが開催。
このイベントはサーフィンムービー界の巨匠であるテイラー・スティールがダイレクターを務め、サーフィンの大会やフィルムフェスティバルなど様々なイベントが開催されていました。

フォーマットも通常のサーフィンの大会とは異なり、ラウンド1はクアッドフィン、ラウンド2はスラスター、セミファイナルはツインフィン、ファイナルはシングルフィンのサーフボードを使用。





他にもエキシビジョンマッチとして、「コースト・オブ・オリジン」と呼ばれるNSW州 VS QLD州の対抗戦もあり、ミック・ファニングやジョエル・パーキンソンといった豪華なメンバーが出場。
バーレーヘッズという土地柄、イベントを見に来る人も多く盛り上がりを見せていました。
WSL チャレンジャーシリーズ(CS)がいよいよ開幕。
バートン・オートモーティブ・ニューカッスル・サーフフェスト・プレゼンテッド・バイ・ボンソイが、6月2日から8日にかけてニューカッスルビーチで開催されました。
サーフメディアでも連日取り上げましたが(https://surfmedia.jp/2025/06/08/burton-automotive-newcastle-surfest-final/)、今回のCSには日本人選手の男女共に7人の選手が出場し、ライブ中継でも選手達同士で日の丸の旗を振り合うなど、日本チームとして応援し合う姿が見られました。



大会期間中にはCSイベントが7戦になる事も発表され、新たに第6戦にハワイのパイプライン、そして最終戦にまたしてもニューカッスルで開催が決定。今後も日本人選手の活躍を期待したい。
3月から続いていたオーストラリアでのWSLイベントも終了し、国内ではグロメッツシーズンがスタートしています。
オッキー・グロムコンプが開催。
いろいろな大会が行われていますが、今月1番のイベントといえばオッキーグロムコンプ。20回目となる今年は、サーフィンオーストラリア・ジュニア・ランキングシステムに反映されるハイグレードイベントとして、ジュニアサーファーにとって重要なイベントの1つ。


過去に日本人でも都筑有夢路や伊東李安琉といった選手が入賞するなど、以前は国外のサーファーも多く受け入れ、若手の登竜門的なインターナショナルイベントとして開催されていましたが、オリンピックにサーフィンが採用されてから、オーストラリア国内でのジュニア育成システムがすばやく改善され、国内のサーファーがメインに出場している大会になりました。

またシリーズのイベントにはナショナル・ローリング・シーディングといった、アンダー18からアンダー12の全選手一貫のシーディングシステムが採用されており、以前までは大会のエントリー開始後に早押し抽選のような形で試合に出れるか出れないかが決まっていましたが、現在は実力ある選手が純粋にハイグレードの試合に出場できるシステムとなりました。
このシステムによりアンダー12、14の選手も将来を見据えてイベントに参加しており、国内の選手全員がフェアに大会に参加しながら、それぞれ目指す場所が明確になりました。
7年後に開催されるブリスベンオリンピックの主役は間違い無く今のジュニア世代。すでに将来を見据えて幼い頃から競争が始まっている。
まだ幼い年齢の選手には指示が必要。陸ではコーチ又は親が指示を出している姿が見られました。
ヒート終了後には選手同士で健闘を讃えるだけでなく、陸にいる友人も選手に駆け寄りハイファイブをしているのが印象的。1人で試合をしているのではなく、応援してくれる人がいるのは心強い。
イベント4日目からはサイズも上がり、高得点も連発。オーストラリア育ちのスナッパーロックスボードライダーズの福田ロイ。ラウンド2のヒート終盤に猛攻を見せるものの逆転まで一歩届かずに敗退となりましたが、素晴らしいサーフィンを披露していました。
過去に大会2連覇を果たしているアンダー16のロカナ・カレン。イベントを通して素晴らしいサーフィンを披露していましたが、セミファイナルで敗退。少し前まではレベルの高い同世代の中でも実力は1つ抜けていましたが、今では周りの選手もメキメキと実力をつけています。
波も良ければ点数も大きなものに、エクセレントライドを出しても勝てないヒートも多数出るほど、見ていておもしろいヒートがたくさんありました。
ファイナルデイはさらにサイズが上がりキッズ世代にとってはチャレンジングコンディション。向かい風となるサイドオフショアが強く吹く、難しいコンディションとなりました。
アンダー12の女子ながらセットの大きな波にフォーカスし、果敢にチャージしていたエベリー・モーガン。
ライディング後は岸を走りゲットを繰り返し。何度も仲間が一緒に走って声援をかけていました。ファイナルでは惜しくも敗れてしまいましたが、今後が楽しみな11歳です。
エベリーと同じディビジョンのアンダー12女子で優勝は、セイジ・フレミング。難しいコンディションの中しっかりとセクションのある波を見つけ出しリップアクションを入れているのが印象的でした。
スナッパーロックスという大舞台での優勝は格別。仲間に囲まれ笑顔が溢れていました。
エアーだけで無くヒートタクティス、マニューバー、全てにおいてレベルが格段に上がっていたレイハニ・ゾイック。全てのヒートでエクセレントを出し、圧倒的な強さを見せてアンダー14女子優勝を飾りました。オッキーグロムでは負けなしの3連覇。
ファイナルで戦ったナヴァ・ホルムズと健闘を讃えあうレイハニ。アンダー14ながらオージーは身体が大きい。今後も注目の12歳ガールです。
激戦区のディビジョンとなるアンダー16男子で見事優勝したルカ・マーティン。昨年に続き2連覇を達成。
世代別にタレントが揃っている今のオーストラリアのジュニア世代ですが、その中でもたくさん揃っているのが今年のアンダー18男子。ファイナルを迎えロックジャンプをするジェス・ファーガソン。


しっかりとレールを入れてトラックを刻むジェス。点数が伸びなければアプローチを変えてライディングに変化をもたらし、波を乗りこなすというよりも、バリエーション豊富に波を操って演技しているのが印象的でした。もう一人のファイナリストのカッシュ・ブラウンも同様バリエーションあるサーフィンでハイスコアをメイク。
目の前に岩があっても躊躇せずリップアクションを繰り出すカッシュ。それだけ重要なイベントであり、2人共リスクをとって攻め攻めサーフィンをしていました。
お互いに健闘を讃えあうジェス・ファーガソンとカッシュ・ブラウン。終了間際までクロースヒートを展開し、最後の最後までどちらが優勝かわからないほど白熱のバトルでしたが、残り30秒で乗った波で9.23ポイントを出したカッシュ・ブラウンが見事勝利。締めくくりにふさわしい戦いを披露してくれました。
ブリスベンオリンピックを視野に入れてジュニアを育成
毎年ゴールドコーストで行われるCTやCS共に欠かさず観戦しているオッキー・グロムコンプですが、今年は波にも恵まれ、今までで1番と呼べるほどの良いコンディションで行われました。
残念ながら国内のランキングシステム状況により、インターナショナルサーファーの出場が難しくなり日本人選手が活躍する場では無くなってしまいましたが、それだけ今のオーストラリアのサーフィンがジュニア育成にフォーカスしており、組織だけでなく若い選手自身も2032年に開催予定であるブリスベンオリンピックを視野に入れていると感じられます。
また毎年の事ながら感じる事ですが、サーフィンのレベルが年々上がっており、世界のサーフィンを見てもそうですが、進化するスピードが加速しているように感じました。
選手達は休む間もなくレノックスヘッドでWSLプロジュニアと混合のイベントであるオージー・グロム・オープンとオージー・グロム・プロジュニアのイベントが7月3日から開催されます。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
INSTAGRAM :https://www.instagram.com/nojiland/