【オーストラリアNEWS】日本人サーファーたちと南のポイントへサーフトリップ、オーストラリア選手の活躍

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第30回となる今回は、高橋花音がジュニアイベントで2位、スナッパーボードライダーズのクラブチャンピオンシップ、日本人サーファーたちと南のポイントへサーフトリップ、国外でのオーストラリア選手の活躍など。

取材、文、写真:菅野大典

 

海の中ではサンタクロースの帽子を被ったサーファーが何人も。

 

 

 12月のゴールドコースト

 猛暑の続いた先月と比べ、涼しい日が多かった今月。

 上旬は爆弾低気圧ができ、天候が崩れ肌寒いと感じる日も多くありました。この時期には似つかわしい長袖を羽織る人の姿もちらほら見えました。

 日本で言うお正月がクリスマスといった感じのオーストラリアでは、クリスマスの日から年明けまで店を閉めたり長期休暇になる会社もあり、街にはたくさんの人が見られます。

 

 

ビーチには人がたくさん。
ライフガードはこの時期が一番忙しいと言っても良いほど監視に注意が注がれます。
ジェットスキーも頻繁に移動しながら監視に当たっていました。

 

 

 昨年末は雨が降り続き、コロナウイルスの影響もあったせいかビーチにいる人の数も例年の半分といった感じでしたが、今年はコロナウイルスの発生以前の状態に戻ったように賑わっており、年末を楽しむ人で溢れています。

 すでにコロナウイルスというものがインフルエンザや風邪と同等の扱いになっているオーストラリアでは、昨年とはまるで世界が違うかのようにこの1年で生活環境が変わりました。

 

 海外からの観光客や留学生等もたくさん来ている状態で、問題となっていた店舗の従業員不足なども解消されてきています。しかし、人が増える一方で、学生やワーキングホリデーなどの長期滞在者が住むシェアハウス不足となっており、特にゴールドコーストでもサーフィンの盛んな地域である南東部のエリアでは、全く空きがない状態が続いています。

 

 ワーキングホリデーが再開後は仕事にもシェアハウスもある状態でしたが、今後来豪する方達は、円安、物価高もあるので少し苦労しそうです。

 
 波の状況は12月に入った途端にサイズアップ。早くもシーズンに入ったような感じでサイクロンスウェルのようなうねりを届けてくれました。

 

 

今年は年明けから何度も見たこの景色。
ジェットスキーを出してサーフィンすることはもはや当たり前となっています。
サイズが上がればラインナップにはこの人の量。ここで波を取るのは本当にむずかしいです。
果敢にチャージする15歳のリコ・ハイビトル。以前はグロメッツでこのサイズのコンディションでサーフィンをするサーファーはあまりいないように感じましたが、今では当たり前のように小さな子でもラインナップにいます。

 

 その後も大きなうねりにより地形が崩れる場所も多くありましたが、コンスタントに波のある日が続きました。

 

大きなスウェルの後はすぐに岩が剥き出しになるスナッパーロックス。ワイドなブレイクになったもののやはり人気のポイントの1つ。
先月からゴールドコーストに滞在し、やっとサイズのある波をできた長沢侑磨。キラでもいいチューブ抜けれましたと、上質な波に満足していました。
現在はジャッジとしてWSLの試合をはじめ世界中に派遣されている橋本恋。14歳の時から留学をしていた第2の故郷とも呼べる久しぶりのゴールドコーストを満喫していました。
今年1年地形が戻らなかったD-BAH。サイズは常にあるものの以前のようなクォリティーの高いブレイクは見られず。
スクールホリデーともあってボードショーツ1枚で海が遊び場となっている若いサーファーがたくさん。サーフィンをするという事がイベント事ではなく日常の一部であるように感じます。

 

 

高橋花音がジュニアイベントで2位

 

スクールホリデーとなる12月は国内でのジュニアイベントが盛り沢山。

先月から8日間にわたって開催されていたWoolworths Australian Junior Surfing(日本でいう全日本選手権サーフィン大会のジュニア以下のクラス)をはじめ、サンシャインコーストで行われたリップカールグロムサーチシリーズの最終戦など、毎週のように大会が開催されていました。

 

高橋花音 PHOTO : SURFING QUEENSLAND

 

Woolworths Surfer Groms Compシリーズ最終戦(14歳以下のオーストラリア全土で行われるシリーズ戦)で、見事ファイナルまで進出し2位という結果でフィニッシュした高橋花音。ゴールドコーストへ来て半年、すでにたくさんの人から知られる存在となっています。

 

リコ・ハイビトルとココ・ケアンズ。PHOTO : SURFING AUSTRALIA

 

 Woolworths Australian Junior Surfingの男子アンダー16ディビジョンのオーストラリア王者となったリコ・ハイビトルと女子アンダー18ディビジョンのココ・ケアンズ。彼らの活躍もありステートオブオリジンと呼ばれる州ごとの王者を決める順位にもクイーンズランド州が1位となった。

 

 この世代にもタレントが揃っているオージーサーファー達。次の舞台はQSとなり、サーフィン大国オーストラリアの層がどんどん厚みを増してくることでしょう。

 

 

 

 ビクトリアのメルボルンにあるアーバンサーフでは国内で初となるウェーブプールでのQS1000が開催。コイントスにより男子がレフト、女子がライトの波に会場が振り分けられ、試合用の波のセッティングで行われました。

 

PHOTO : WSL
優勝はゼビアー・ハクステーブルとニクシー・ライアン。PHOTO : WSL

 

 レフトとライトの良質な波が2ヶ所同時にブレイクするアーバンサーフのウェーブプール。各自4本の波に乗る事ができ(セミファイナルとファイナルは6本)、2本のトップスコアで勝敗を決めるレギュレーション。PHOTO : WSL

 

 波がバラバラで思ってた所でセクションがなかったりと意外と難しいと選手達からの意見がありましたが、日本人で出場した黒川楓海都はうまく対応し自身2度目となるオーストラリアのQSで5位という好成績を残しました。

 

クラブのメンバーなら子供から大人まで誰でもスナッパーロックスで試合ができる豪華なイベント。

 

 年末になるとまた大きなうねりが入り出し、スナッパーロックスでは年末の恒例行事であるスナッパーボードライダーズのクラブチャンピオンシップが開催されていました。

 

波のサイズは4−5ftで1本乗ったらパドルでピークに帰るのに相当時間がかかる激しいコンディション。それでも当たり前のように試合が行われます。
今年の5月に行われたチャレンジャーシリーズでもそうだったが、このコンディションでの試合は岩からジャンプしてゲットするエントリーが最重要。リスクは伴うが決められた時間内でジェットスキーアシストの無い試合で勝ち上がるには、試合中に何度もこれを繰り返さなければならない。
一瞬の波のブレイクしない間を狙ってジャンプオフ。ここで育っているサーファーは技術だけでなくタフな試合に必要な物が子供の時から身に付けられているように感じます。
タレント揃いのスナッパーロックスボードライダーズ。シェルドン・シムカス、ジャガー・バーソロミューと言った現役選手に加え、元世界王者のジョエル・パーキンソンも毎年参加しています。WSLのようなシリアスな試合とは違い、仲の良いチーム員同士の試合という事もありみんなリラックスした表情が印象的でした。
ジュニア世代ながらファイナルまで進出し2位という成績を残したライリー・ムンロ。タフなコンディションでも形の良い波を選びしっかりと技をコンプリートしていました。
優勝は元世界王者のジョエル・パーキンソン。途切れる事のない華麗なサーフィンを披露し圧巻の勝利。
ラウンド1から岩ゲットとビーチランの繰り返しを何度も行い疲れ果てていましたが、ファイナルを終えてこの表情。久しぶりにスナッパーボードライダーズのクラブチャンピオンに返り咲きました。

この場所での試合中の様子で感じた事ですが、沖では激しい波がブレイクし、一般サーファーも混じりながらヒートを開催。インサイドの波の立たないところではキッズが水遊びをし、それを見守る親御さん。

 

この写真の反対側には大勢の観客、カメラマン、散歩している人、この試合に関わる人もそうで無い人も、みんながサーフィンを身近に感じ、ビーチが日常にあるのかなと、ボードライダーズのクラブイベントでしたが貴重な気づきをもらいました。

 

年末のSURFLINEの波情報サイトを見るとこのような光景が毎日のように続いています。

 

ビーチも海の中も人だらけの年末。今年のクーランガッタの人の数は尋常ではありません。

 

 

日本人サーファーと南のポイントへサーフトリップ

 

ゴールドコーストから南へ約2時間。オーストラリア東海岸はポイントの宝庫です。

 

 少しでも空いているいい波の場所を探しにゴールドコーストにいる日本人サーファーを連れ出し南のポイントへサーフトリップに出かけました。

 

秘密基地を作り準備をするプロサーファー達。

 

黒川楓海都と萩田泰智、留学生である丸山晴凧、高橋花音、高橋花梨。年齢、性別、出身地、実力が違えど、日本人同士お互いに仲良くなれるのがオーストラリアのいい所。15年ほど住んでいて何度もこのような光景を見てきました。

 

 

 初めてのポイントに入る高橋姉妹とハルタにいろいろ教えるカイト。カイトとは長年の付き合いとなりますが、歳を重ねサーフィンの実力だけでなく人としてもオーストラリアで大きく成長しているように感じます。

 

 

 

国外でもオーストラリア選手が活躍。

 

ハレイワで優勝し大逆転のクオリファイを果たしたソフィー。長年ツアーを周り遂に夢の舞台への切符を手にした。PHOTO : WSL

 

 オーストラリア国内で波もイベント事もたくさんあった12月。国外では、ハレイワで行われたチャレンジャーシリーズ最終戦で見事にソフィー・マクロックが優勝し長年の夢であったCTクオリファイを果たした。

 

招待制の新しいスペシャリティ・イベントとなったVansパイプ・マスターズでは、モリー・ピックラムがタイトルを獲得。

 

またインターフェアとなったもののセミファイナルで素晴らしいチューブライドをメイクしたシエラ・カーなどオージーサーファーの活躍の話題が尽きない月となりました。

 

 

男子はリアム・オブライアンが再びCTクオリファイを果たすも、残念ながらクオリファイラインギリギリの所でメイクする事ができなかった選手が多くいました。それでもここ数年のヤングオージーサーファーの活躍は目立っています。
パイプ・マスターズででインタフェアながら素晴らしいチューブを決めた若干15歳のシエラ・カー。スタブハイ2022で決めたフルローテーションのエアといい明らかに他の同世代のサーファーとは次元の違うサーフィンをしています。

 

 2022年を振り返ってみて、ラニーニャ現象によるものなのか天気が崩れる日が多く洪水の被害等の災害を被る年ともなりましたが、東海岸は本当に波に恵まれた1年でありました。その豊富な波を余す事なく使うように、今では若手サーファーでもジェットスキーでのアシストも当たり前のように使用され、サーフィン環境のスケールの大きさを感じる事ができました。

 

 もちろん根底にあるオーストラリアのビーチカルチャーや政府のサポート、ボードライダーズの仕組みなどもありますが、タフで強いオージーサーファーを育てている環境やサーフィンの今後の発展はこのオーストラリアで見られると改めて感じる事のできる年でもありました。

 

 またコロナウイルスに対する政府の政策もガラリと変わり、昨年とはまるで世界が違うかのように生活環境が変わりました。2023年はさらに多くの海外からのサーファーが訪れる事となりそうな予感がします。

 

 最後までお読み頂きありがとうございます。

 2023年もよろしくお願いいたします。

 

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。