【オーストラリアNEWS】国全体が一丸となって競技サーフィンを支え、育成に重点を置くオーストラリア

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第29回となる今回は、育成を大事にしているオーストラリアのサーフィン団体について。

 

取材、文、写真:菅野大典

 

 

 

11月のゴールドコースト。

初夏といった暖かい気温でビーチにはたくさんの人が集まっています。

 

 あたりを見渡してみてもゴミが落ちていないのがゴールドコーストのビーチのいい所。この綺麗な砂浜が南北に約47kmも続いています。

 

 11月のゴールドコーストは晴れの日が多く続きましたが、オーストラリアの南東部やビクトリア州の一部の地域では、先月より続いている大雨の影響で洪水の被害がたくさん出ています。シドニーの年間降水量は過去最多を更新しており、気候変動によるものなのか、2022年は雨の多く降る年となっています。

 

 

 東海岸での大規模な洪水は今年に入ってからすでに4度目。今後もこのような気候が続くのか懸念されています。

 

今年の初めはゴールドコーストも洪水の被害に遭いこのような光景が各地で見られました。雨が降り続きゴールドコーストらしい夏を感じられませんでしたが、今夏はどうなるのか少し不安です。

 

 

 11月はオーストラリアの高校の卒業の月でもあり、スクーリーズと呼ばれる卒業旅行イベントによりサーファーズパラダイスの街中は賑わっていました。

 

毎年逮捕者が出たり騒動の絶えないイベントですが、今年はゴミ問題が多く取り上げられており、環境問題を教わって育った世代ながら街中に落ちている大量のゴミに失望の意見が挙がっていました。綺麗なイメージのゴールドコーストの中でもゴミのないビーチがある一方で、大量のゴミが放置されている場所もあります。

 

 コロナウイルス状況は、感染者の数が少し上昇した様子ですが、先月から感染者の自己隔離が不要となり風邪やインフルエンザ等と同じような扱いとなった事から、あまりコロナウイルスという言葉を聞く事がなくなりました。収束したわけではありませんが、オーストラリア国内ではそこまで国民が気にしている感じはないように感じます。

 

 

 波のコンディションは、例年に反して大当たりだった先月のゴールドコーストでしたが、今月に入ると途端に波もなくなり、せっかくカメラを持ってポイントに向かっても大半の日がスモールコンディションの状況でした。

ピークの砂もなくなり11月はほぼフラットなコンディションとなっていたスナッパーロックス。

レインボーベイのインサイドもこのような状況の日が何日もありました。

オープンビーチも地形の良い場所はあるもののサイズの小さなコンディション。

 唯一うねりを拾いやすいD-BAHではサイズのある波がブレイク。しかし、昨年末から地形がずっと戻らず本来のアクションのしやすい波とは違ったブレイクを見せています。

 


 やたらうまいサーファーがいると思ったら、ニューボードをテストしていたジャック・ロビンソンの姿が。波の良くないコンディションでもアクションを入れながらインサイドまで乗りつないでいました。

 現在サザンクロス大学に留学中の井上龍一。課題をやっていたらこの時間になってしまいました。と、夕方遅くに入水。文武両道を目指す留学生サーファーがゴールドコーストにはたくさんいます。

 

 中旬以降も少しサイズが上がる日はあるものの、長続きはせずいまいちのコンディションが続きました。それでも気温も暖かく、日が長くなりたくさんのサーファーが遅くまで練習する姿も見られます。

 

オージーのキッズサーファーはアプローチの仕方を見ていても型にハマらないサーフィンをする子が多い。個性豊かなサーファーが生まれるのが納得します。

ゴールドコーストに移住してきた双子姉妹の姉の高橋花梨。

妹の高橋花音。あたりが暗くなるまで同世代のサーファーと切磋琢磨に練習している姿がありました。

コーチングを受けているキッズ達。日が長くなり放課後の練習にもみっちりと時間が使われるようになりました。


別の日のD-BAH。サイズが少し上がればこの混雑。一昔前は海の中では日本語が飛び交っている感じでしたが、今はブラジル人が多くポルトガル語が飛び交っています。

ボードショーツでサーフィンするミック・ファニング。ツインフィンながらバシバシ当て込んでいました。


難しい波でうまく乗れているサーファーが少ない中、さすがの元世界チャンピオン。1人目立っていました。

下旬には、またまたサイズが下がり、2022年の中でも11月は本当に波に恵まれない月となりました。

 

今月はD-BAHばかり(笑)小波でもたくさんのサーファーで溢れていました。

 今年のJPSAロングボード女子グランドチャンピオンに輝いた吉川広夏がミッドレングスの板でクルーズする姿も。フライトが再開し日本人サーファーもたくさん目にするようになってきました。

 

 

 11月は、台湾で行われたQSイベントやブラジルやハワイで行われているCSイベントといった、WSLのイベントがオーストラリア国外であり、いつもいる選手達をあまり見かけませんでした。

 

 国内のイベントも11月26日から12月3日にかけて行われている Woolworths Australian Junior Titles(日本で言う全日本選手権大会の18歳以下の大会)以外は特に大きなイベントはありませんでしたが、11月12日にはクリッターズコンプと呼ばれるイベントがマイアミビーチで行われました。

 

 

ロケーションの良いマイアミビーチの歩道にはたくさんのテントが立ち並び、お散歩をする人も含め多くの人が集まっていました。

 

 このイベントは毎年MNMボードライダーズが主催するゴールドコーストのキッズに向けたイベントで、今年は10、12、14、16歳以下のボーイズクラスと12、16歳以下のガールズクラスが開催。

 

サーファーズパラダイスのハイライズが近く見えるマイアミビーチ。

波はオンショアの1−2ftといったコンディションながら、キッズには十分なコンディション。

 
オンショアの波となればキッズは、とにかくいっぱい乗りまくる。ジャッジは大変だったと思います。

アンダー16ボーイズの選手となればアクションも全然違う。素晴らしいサーフィンをしていたスコット・アンドレ。

今年の16歳以下クイーンズランドチャンピオンのリコ・ヘイビトル。いい波を掴む事ができずに16歳以下のボーイズ2位となりましたが、レベルの高いサーフィンを見せてくれました。

 キレキレのサーフィンで見事16歳以下のボーイズクラスで優勝したザヤ・ヘッション。個性的でサーフィンセンスのあるこの選手が今後どのようなサーファーになっていくのか楽しみです。


 MNMボードライダーズのトレーラー式ジャッジブース。マイアミビーチの一番いいバンクの目の前に停めて大会を行うスタイルはお馴染みとなっています。

 

育成を大事にしているオーストラリアのサーフィン団体

 

 WSLやサーフィンオーストラリアのイベントとは別に、今大会のようなオーストラリアのローカルコンテストは、その地域ごとのボードライダーズがホストクラブとなり、その地域で大会が開催されます。

 

 大会規模は、それぞれのイベントによって全然違いますが、このイベントもこの日の2週間後から立て続けに予定されているキッズの大会、Woolworths Australian Junior Titles、Woolworths Surfer Grom Comp、Rip Curl GromSerchといったビッグイベントに向けてのいい練習試合になったと感じます。

 

 オーストラリアのサーフィン団体は本当に育成を大事にしていて、選手ファーストであることはもちろんの事、ビラボンが行うオッキーグロムや、リップカールが行うグロムサーチであったり、サーフィンオーストラリアの主催の大会にはウールワースという大手の企業がスポンサーになっており、団体やメーカーを含め国全体が一丸となって競技サーフィンを支えているように感じます。

 

 小さなボードライダーズのイベントでしたが、それぞれの小さなボードライダーズの活動が根っこにありこのサーフィン大国を作り出しているのかなと感じました。

 

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。