村上舜がジャパンオープンで2大会ぶり2度目の優勝、都筑有夢路が初優勝でISA世界選手権の日本代表が決定。

取材、撮影:山本貞彦「第3回 ジャパンオープンオブサーフィン」が静波サーフスタジアムPerfectSwell®で開催。この大会はNSA(日本サーフィン連盟)とJPSA(日本プロサーフィン連盟)が開催するもので、日本一のサーファーを決める大会だ。

また、2022年開催予定(日程、場所未定)の「ISAワールドサーフィンゲームス」出場権の1枠(男女各1名)を争う選考大会にもなっている。

 

 

参加選手は3/12-13千葉県鴨川マルキポイントでおこなれた「強化合宿」の選考で男女14名。女子が 松岡 亜音、野中 美波、脇田 紗良、都筑 有夢路、中塩 佳那、前田 マヒナ、都築 虹帆、大村 奈央、鈴木 莉珠、登坂 祐妃、西元 萌 エミリ、上門 涼風、 川瀬 心那、川合 美乃里。

 

 

男子が 西 慶司郎、田中 大貴、大原 洋人、鈴木 一歩、新井 洋人、 脇田 泰地、伊東 李安琉、金沢 呂偉、上山キアヌ久里朱、鈴木 耀竣、岩見 天獅、 酒井 仙太郎、 西 修司、鳥潟 一太。

 

これに加え、先日終了した「ASIA OPEN」の男女とも上位4名。女子が 松永 莉奈、松田 詩野、黒川 日菜子、池田 美来。男子が稲葉 玲王、村上 舜、鈴木 仁、安室 丈が入り、合計男女各18名で争われる。(今回、鈴木 仁は怪我のため不参加)

 

都筑有夢路

 

競技ルールはこうだ。まずR-1では18人を2つのグループに分け、ライトとレフトの波を3本ずつライディング。1人6本のうちベスト2ウェイブがカウントされ、上位8名がR-2に進出。

続いて、R-2では、8名がライトとレフトの波を4本ずつ乗って、上位4名がセミファイナルへ。セミファイナルでは6本、ファイナルでは8本の波に乗り、優勝を決める。

 

松田詩野

 

その波の種類だが、R-1では波を数多く出す必要があり、3発続けて出せる中級者用(マリブ)となった。ただ、1本目がタルいこともあり、全員が乗る順番を変えて、全ての波に乗るように工夫した。

 

でも、この中級の波は深いボトムターンをすると、その後がメイクできなくなる。だから、逆に上級者には難しい波となっている。

 

脇田紗良

 

R-2からはエキスパート用の波で戦う。パブリックの2連の波とエアーができるハイボール。これをライト、レフトの1本ずつ乗って、演技する。

セミファイナルではパブリックの2連のライト、レフトが2本に。そして、ハイボールをライト、レフト1本を乗って争う。

 

村上舜

 

そして、決勝は新たにチューブができるプロローワーの波が与えられ、それをライト、レフト2本ずつ。最後にエアーのできるハイボールをライト、レフト2本乗って、優勝を決める。

 

 

優勝した都筑有夢路
2位となった松田詩野

 

女子は松田、都筑とも最後にはエアーを試みるもインコンプリート。結局、マニューバー勝負になって、ここは都筑が優勝。

 

このフルローテを決め大逆転。優勝した村上舜
2位となった大原洋人

 

男子の村上舜と大原洋人の決勝はリップは5発を決めまくるやり合い。最後はエアーのメイク勝負となった。村上が先にメイクして、9.43ポイント。大原はニード9.10ポイント。大原はラストウェィブでメイクするものの8.20ポイントで逆転に一歩及ばず。これで、村上の優勝が決まった。

 

稲葉玲王、舜、泰地

 

板に関しては、プールということもありEPS。でも、PUに乗る選手もいて、それぞれ選手の考え方で別れた感じ。

 

やはり、ウェーブプール経験者がやはり有利だろうとはいえ、R-1は男女とも順当の顔ぶれがアップ。プールでもその波質を見極めて、レールワークがキッチリできたものが勝ち上がった。

 

松田詩野

 

R-2以降はエキスパート用の波ということで、選手はよりアグレッシブなサーフィンを展開。エアーの波を出るということで、女子でも果敢に攻めの演技が繰り広げられた。

 

3位の新井洋人
西慶司郎
脇田紗良
川合 美乃里

 

ここで、上位陣がすごいのはエアー用の波でも、エアーを敢えてしない。それに変わり、厳しく3発から4発当て込むとか。与えられた波で、まずは確実にベスト2を揃えることを考えているところだ。ウェーブプールでも、試合は試合。そこがコンペに長けているといったところか。

 

 

女子の決勝は松田詩野と都筑有夢路

 

やはり、セミまで来ると、海での試合と同じだった。ただ、波での駆け引きはないものの、どんな演技構成にするか。相手のポイントで、技の構成を変える。

 

これはある意味、スノーボード、スケートボードと同じだろう。だから、試合中でも一人がエアーをメイクすれば、みんなで歓声を上げてハイタッチ。勝敗関係なく相手の演技を称賛する。

 

脇田泰地
脇田泰地がメイク。村上舜、稲葉玲王も歓声あげてハイタッチ。

 

サーフィンの場合、海なので中々、条件が揃わない。しかし、ウェーブプールだと同じ波に乗れるから、より自分のスタイル、個性を出せる。それが、今までの海での試合と違ったところだろう。

 

 

朝一に出るファーストウェイブは面ツルのグラッシーな波。

 

ウェーブプール。まず、波があるということが一番。選手にとってのメリットは、同じ波で何度も反復練習ができること。スキルアップ、新しい技に挑戦とかには、もってこいの場所だろう。

 

 

脇田紗良
脇田紗良

 

ただ、今回、怪我人も出てしまった。 脇田紗良が底に頭をぶつけて、軽い脳震盪。 村上舜は決勝の最後の波で試みたエアーの着地で踵を強打し骨折。 あれだけの実績とスキルのある選手でもだ。 はやく回復することを祈ります。お大事に!

 

村上舜

 

プールでも安全面は考えられれているものの、やはり、怪我人は出る。より自分をプッシュアップしてしまうことも一つの要因だろう。

 

みんなでこの場をシェアしていることで、己のスタイルを見せたい欲求。だから、限界にも挑戦したくなる。ここに勝敗は関係ないのかもしれない。

 

 

 

もちろん、海でもクリエィティブで先進的なサーフィンを披露することもできる。ただ、ウェーブプールの試合は同じ波での戦いだからこそ、より人と違う演技が必要となることだ。今回の「ジャパンオープンオブサーフィン」は、ウェーブプールの新しい可能性を感じさせてくれたものの、いろんな意味で、考えさせられた大会だった。

 

 

優勝の都筑有夢路、2位の松田詩野と大原洋人。男子優勝の村上舜は治療の為、欠席。

「第3回 ジャパンオープンオブサーフィン」

最終結果
【男子決勝】
1位:村上舜  9.43+8.73=18.16
2位:大原洋人 9.07+8.83=17.90

3位:新井洋人
3位:西慶司郎

 

【女子決勝】
1位:都筑 有夢路 9.33+8.43=17.76
2位:松田 詩野  8.33+5.83=14.16

3位:川合 美乃里
3位:脇田 紗良

 

「2022 ISAワールドサーフィンゲームス」出場権
男子:村上 舜 女子:都筑 有夢路

 

選手は演技終了後、モニターで自分の演技をチェック。優勝トロフィーには歴代優勝者の名前が刻まれる。スタッフジャンパーは静岡のお茶にちなんで、グリーンで統一。牧之原市の杉本市長とゆるキャラのマスコット。その名もお茶とサーフィンで「チャーフィン」だそうです。今回は無観客でライブ放送のみだったが、多くの報道関係、メディアが集まった。試合用の選手のゼッケンは色分けだけでなく、背番号を入れてわかりやすく。

 

 

 

都筑有夢路の優勝インタビュー

 

「プールの試合は海とは違って、海だったら1時間前から波を見て、どのように波が変化しているとか見て、すごく大変なんですけど、ウェイブプールの試合は、波も決まっているし、考えることが、いつもより少なかったのでリラックスして楽しめました。

 

強靭な足腰で繰り出すボトムターンから一気にトップへ駆け上がり際どいセクションで激しく板を蹴り出すアムロ。

 

今回はEPSのボードを使おうとしたんですけど、ステッカーを持ってくるのを忘れてしまって、PUのボードでいいやって感じでPUを使ってました。迷わなくてそのままGO出来たんで逆に良かったです。

 

 

QS1000と、この試合に向けて、去年のハレイワの試合が終わって今年に入ってから、本気で追い込んで、本当に頑張ってきてきたんで、こういう結果が出て嬉しいなって思います。

ワールドタイトルを取るっていう自分の目標があるので、そこに対しての通過点だと思って、この経験を次の試合に生かせればと思います。」

 

エアにチャレンジする都筑有夢路。「これからは世界で戦うために女子もエアが必要になってくる技だと思っているので、エアをものにしたいです。」

 

自分のサーフィンができた。松田詩野

 

「特にファイナルは良い波で出来て、バックサイドが調子良くて、自分のサーフィンがウェイブプールの大会で出来たかなって思います。

1日を通して観客はいなかったんですけど、メディアの方がたくさんいて、その中でプレッシャーというよりも凄く良いサーフィンを見せたいなっていう気持ちで楽しめたのが良かったなって思います。

 

 

「プールは、普通の大会とは違って試合運びとかは、自分のメンタルと良いサーフィンができるかだと思います。パリ五輪に関しては、自分のサーフィンを今年来年ともっとスキルアップさせて大会で結果を残していきたいなって思います。

今年のトレーニングでパワーとスピードがついて来た実感があるので、そこをもっと強化していきたいです。またプールでは、エア専用の波とかが出せるので、もっと練習していきたいと思いました。」

 

 

今年1年試合に出たくないと思っていた。大原洋人

 

大原洋人

「楽しかったです。ここには何度も来たことがあって、毎回毎回楽しませてもらっていたんで、そこで試合ができたのが楽しかったです。

経験がある場所なので、この波なら自分のベストはこういうことができるだろうとか、こうすればこういう点が出るとかの予想がついたので、今日初めてやった選手に比べれば、自分にプラスの面はあったかなと思います。」

 

オリンピックについては「去年の東京オリンピックでメダルが取れず、自分の地元であったので悔しい思いをしたんですが、メダル取るのと取らないのでは訳が違うんだなって実感して。だからパリでもメダル取るまではオリンピック目指して頑張りたいと思います。」

 

 

家族の支えがあったから戦えた。

 

またアジアオープンで敗れ、気持ちの切り替えはできていたのかという質問に対してもコメント。

 

「落ち込む部分も凄くありました。でも、そんな中で家族の支えというか奥さんがずっと自分が落ち込んでいる中でも色々言ってくれたりして、自分を高められる言葉をかけてくれたりとか。もし家族がいなかったら今回も1回戦で負けて帰っていても、おかしくなかったなって思います。

 

今年、自分の中で(アジアオープンに)負けて、今年1年試合に出たくないなって思ったりもしたんですけど。

 

『試合に出て良いサーフィンして勝って』とか、『そういう姿をまた見せて欲しい』とか、『負けても一番上手だったよ』とか言ってくれる人(家族)がいるのに、自分の気持ちが落ち込んでるんじゃ、その人に失礼だし、その人が願っていることを自分がやってあげられるはずなのに、やってあげられなくなるかなと思ったし。

 

だから今回は少しでも良い順位で、少しでもカッコイイなって思ってもらえるような姿を見せられたら良いなってこの試合には望みました。」

 

目標を見つけられてない。

 

今年の目標については「そうですね。優勝できなかったんで世界戦に出れるかどうかわからないんですけど。目標っていう意味では見つけられてないかなって思います。

 

でも1年経ってまた来年スタートした時に確実にCT入れるとか、オリンピックでメダル取れるとかのレベルにする時間はたくさんあるんで、試合ではなくて、そういうことにフォーカスしたいなって思っています。」

 

 

日本サーフィン連盟副理事長である井本実行委員長から世界選手権の残りの二枠についての説明があった。

 

 

 

「ISA世界選手権の日本代表は、一つの枠は今回のジャパンオープンの優勝者、2つ目と3つ目の枠は会場が決まり次第、正式発表となります。

 

一つはWSLのワールドランキング(2021年のランキング)、2つ目は強化部推薦としてISAの過去の国際大会の実績とジャパンオープンの成績。もし時期的な問題で、今回怪我を負った村上選手が欠場となれば、強化部推薦が一人増えることになる。」とコメントした。

 

 

この大会の模様はAbemaにて独占生中継された。

https://abema.tv/channels/world-sports-1/slots/BUpEK6Vgfp2WFh

 

大会公式ホームページ: https://japanopenofsurfing.jp