ベティルー・サクラ・ジョンソン 独占インタビュー。CTまでの意外な道程。支えとなった両親が貫いた教育方針

「サクラ? 日本の名前? 誰それ? でもカリッサを抑えて優勝しちゃってるし。サーフィンめっちゃ上手いし。」

 

12月に行われたハレイワでのチャレンジャーシリーズが終了した時、そんな声が日本の人たちから流れてきた。それを聞いた私は「えっ、サクラを知らないの? それってタイガーウッズの幼少時代を知らないゴルフファンと一緒だよ」と言いたくなるほど驚いた。

 

なぜって? その意味は、ノースショアの波の季節に一日ハレイワ・アリイビーチのピクニックベンチに座りサーフィンを観戦してみれば必ず明らかになる。「サクラこそ」チャンピオンになり得る人物、だということに。では、どういう経緯で名前に「こそ」がつくような金の卵になったのか。本人とお母さんに話を聞きながら探ってみたいと思う。

 

 

2021年のマウイプロに15歳でワイルドカード出場したベティルー・サクラ・ジョンソン。初のCTイベント出場から翌年にクオリファイするなんて考えもしていなかった。 PHOTO: © WSL / Dayanidh

 

 

interview by Emiko Cohen  photo:gordinho

 

 

PART1 ーSAKURAに聞くー

 

CSの最終戦が行われたハレイワで見事優勝しCT入りを決めたサクラ photo:WSL heff

 

チャレンジャーシリーズは、まじ凄かったね。振り返ってみて今はどんな気持ちでいる?

 

「なんかあっという間のことでした。嵐が吹き抜けたような感じっていうのかな、特に大会会場が地元だったから格別でした。

 

ハレイワは自分がサーフィン始めたところで、サーファーとして育ったところですからね。家族と仲間が応援いる中で勝てたなんて、最高の思い出が作れました。」

 

 

決勝ではカリッサと戦ったけど、金メダリストにワールドチャンプとの争いはどうだった? 緊張した?

 

サクラ photo:gordinho

 

「うん、多少は。でもカリッサとはホノルアベイで一度戦ったことあるから。トップと一緒にヒートになるって本当に良い経験になるし。

 

どんな風に試合を進めるかとか実際に見れるでしょ、学びながら戦ってるわけだから、緊張とかそういうのは考えてる暇がなかったかな。同じヒートにいるってことは、私がこのチャンピオンを破る可能性もあるわけで。。。ほんとに良い機会に恵まれたと思ってます。」

 

 

HALEIWA, HAWAII -Photo by Brent Bielmann/World Surf League

 

 

他人がではなく自分が、どれほど勝つことにモチベーションを置いているか

 

 

観ているみんなは相当なエキサイトぶりだったんだよ。もう一つ勝てばCT入りだとかね。サクラは地元だから波を知り尽くしているし、みんながみんな、サクラの優勝を期待してた。逆にそれがプレッシャーになったりしなかったの?

 

 

「(笑)あまり考えないようにしていました。ランキングとかも考えてなかったし。もちろん周りの人が期待してるっていうのはわかってたけど、結局、やるのは自分だから。

 

“他人がではなく自分が” どれほど勝つことにモチベーションを置いているかが結果に現れてくるって知ってるから、期待に潰されないで済んだんだと思う。

 

とにかく、あまり考えないようにしてます。考えすぎることなく良く寝る。試合の前の夜でもとにかくタップリ寝る。それが大会で力を出せる鍵だと思ってます。」

 

 

以前イタロにインタビューした時、彼は、「大会期間中であっても、時にはサーフィンから全く離れたところに行く」って言ってた。

 

友達と街に出たり美味しいもの食べたり。それが結果的にメンタルバランスを整えることになってるんだって。サクラも何か工夫していたりする?

 

 

「うん、小さい頃からの仲良しの友達オリビア・スーザはサーファーじゃないんだけど、逆に彼女といる時間は、自分はサーファーである前にただのティーンエイジャーだって感じで楽って言うのかな。そういう空間は確かに大切なんだと思います。」

 

 

でも、そのバランスって難しくない? 特にサクラの年齢だと、友達と遊びたいって方が練習しなくちゃって方よりも大きくなったりするでしょ?

 

 

「うーん、私はうまくそのあたりはバランス取れているかも。ちょうどいい調合で波乗りも波乗りでない世界も楽しんでます。」

 

 

 

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ルル(ルアナ・シルバ)と一緒にツアー廻れるのが本当に嬉しいんです。

 

 

ハレイワのチャレンジャーシリーズが、今までの中の試合で一番の良い思い出になのかな?

 

「うん、そうですね。でも、よく覚えててる試合があって、それはメネフネ・コンテスト(地元の12歳以下の子供たちが出れる年に一度のお祭り的なサーフィン大会)の最後の年の戦い。ファイナルの時のことは事細かく覚えてる。

 

ルル(ルアナ・シルバ)との争い。一緒に(WCT)ツアー廻れるようになって、本当に嬉しいんです。やっぱり小さい頃から知ってる仲間がツアーに居るっていうのは心強いですよね。」

 

WCTツアーを回る準備は出来てる?

 

「実はチャレンジャーシリーズ終わって10日くらいした時に決意したんです。その前は、8戦を回らなきゃならないからお金もものすごく掛かるし。

 

「どうしよう、、、本当に行きたいの、私?」みたいなところがあったんだけど、友達もいるし、お母さんも半分くらい一緒に旅してくれるし、足が出てしまうにしても、ある程度スポンサーからのサポートは受けられるし、うん、今は、心の準備が出来てます!」

 

 

タヒチの試合で優勝したサクラ  – WSL / Abraham

 

 

周りはもう知ってたよ、サクラはいつかはってCT選手になるだろうって。自分で「私出来るかも」と思ったきっかけってあった?

 

「14歳の時のタヒチのQSですね。海外の大きな試合に出たのは、その時が初めてだったんだけど、プロジュニアとQSの両方で優勝できた。

 

その時に、私もしかしたらプロになっても通用するかもって。それでも2年後の今、ほんとにあっという間にCT入りを果たしたけど、なんだか不思議でならないんですよね。」

 

 

コーチのロス・ウィリアムスとハレイワのヒート前 by Brent Bielmann/World Surf League

 

元々小さい頃からコーチングとかは受けてたの?

 

「うちは両親共働きでお金がある方ではないし弟もいるし、コストの掛かるコーチングを受ける様になったのは、本当にここ最近になってから。

 

ロス(ウィリアムス)からです。それでも月に2回くらい。さすが、彼は優れた選手に関わってるだけあってコーチングの仕方が優れてると思う。的確なアドバイスを貰ってます。」

 

 

ポルトガルのチャレンジャーシリーズ  WSL / Poullenot

 

 

負けることで何か学ぶことが生まれるんだって思ってる。

 

 

なんだかサクラを見てると屈託が無いというかポジティブな固まりの様に見えるけど、何か特別なことをしてたりする?

 

 

「時々日記を書いたりしてます。飛行機の中でインターネットが繋がらない時にノート出してきて絵を描いたり、思いを連ねたり。頭の中に溜まったネガティブな思考は”書く”ことで出すことが出来るんですよね。

 

例えば負けた時にはものすごく悔しいんだけど、それをあまり表に出してはいけないんだなと親に教えられてきた。

 

悔しいとか悲しいとか思いがあったらドア閉めて部屋の中で泣けと。ネガティブを見せることは人に悪い影響与えることになるからって。

 

もちろん試合に出てれば勝つよりも負ける方が多い。でも負けちゃったら負けたことを受け入れて間違えたことを直す。負けることで何か学ぶことが生まれるんだって思ってる。もちろん、負けたくはないですよ(笑)。」

 

 

負けるのが怖くて勝負を怖がるのは間違ってる。

 

 

元々、負けず嫌いだったの?

 

「何に関しても負けるのが嫌いなんです。くだらないゲームですらも。産まれた時から(笑)。それはお父さんの血筋だと思います。

 

父は元々ミネソタ出身でアイスホッケー選手でしたから、競技が大好きなんです。だから私は、小さい頃からいろんな競技に出させてもらっていました。

 

その一つが野球だったんだけど、どの試合も負けたくありませんでしたね。その感情は人一倍強かった。だからこそ小さい頃、すでに戦いの姿勢を学んだんだと思います。

 

負けたときは怒るんじゃない。負けるのが怖くて勝負を怖がるのは間違ってる。感情のコントロールっていうか、勝負は心から楽しむものものだと。」

 

 

ホームのハレイワで練習を重ねるサクラ photo:gordinho

 

 

コンテストで活躍したいって思って波乗りをもっとする様になった。

 

 

小さい時の話が出てきたけど、波乗りを始めたのはいつ?

 

 

「いくつかな? 小さい波で物心があまりついてないときから押されて乗っていたっていうのは聞いていますが、サーフィンらしいサーフィンをしたのは6歳くらいの時でした。

 

ハレイワのメネフネ・コンテストに初めて出てその時に「私、波乗りもっとしたい!」って思った。それが7歳の時。その時からコンテストで活躍したいって思って波乗りをもっとする様になった。その感情はよく覚えてます。」

 

 

ハレイワはサクラの家から歩いていける場所だから、放課後毎日一人で歩いて波乗りに来てたの私も見てた。でも波が危険な時もあるでしょ。

 

気軽にアウトに出ちゃって大波に巻かれて苦しい思いをして、しばらく波乗りしたくなるってパターンが良くあるけど、サクラはどんな感じで積み上げて来たの?

 

 

「まずはスープの波で乗っていて、それからトイレットボールのインサイドで乗る様になった。それは11歳くらいかな。12歳くらいの時にようやくアウトに出るようにして、まあステップバイステップのつもりだったんだけど。

 

ある日、うねりが大きくなってきた時、すでに私はアウトに出てて、お化けセットに飲まれちゃった。当然それにすっごく巻かれちゃって、かろうじて岸に戻ってきたという。。。。

 

その時に初めて「アウトに出てはいけないときもあるんだ」って思いましたね。やっぱりノースショアだから、自分の技量で行けるか行けないかを入る前に観察してからじゃなければならない。体で覚えました(笑)。」

 

 

食べ物はやっぱりエネルギーあるものを摂ってるの?

 

 

「お母さんは日本人ですからね、やっぱりお米は必ずついてくるんですが、お寿司は大好きなんです。基本、日本食はヘルシーですからね。

 

それに食べ物からのエネルギーって本当に大きいっていうのは知ってるから、甘いものを取りすぎたりせず、力になる物を食べるように心がけてます。幸い、チョコレートは好きだけどカップケーキとかケーキはあまり好きじゃないんで、コントロールに苦しむことはありません。」

 

 

サクラ photo:gordinho

 

好きな科目は、生物や科学に数学。語学は苦手。

 

 

学業の方はどう?まだ高校生だもんね。

 

 

「学校は今、ホームスクール(オンライン)式でやってます。一般の学校の時の方が友達がたくさんいて楽しいけど、自分のキャリアを積むためには、妥協しなければと。

 

好きな科目は、生物や科学に数学。けれど、語学は苦手。たくさん読まなければならないし。読書は良いってことを知ってるから読書しないとなとは思ってはいます。」

 

 

それにしても「桜」という名前、素敵な名前だよね。漢字で書ける?

 

 

「うん、書けます。産まれたのが3月の春なんでサクラと名付けられたんです。ただサクラってアメリカの人からしたら言いにくい様で、ファーストネームのベティルーと呼ばれることも多いかな。

 

ちなみにベティルーの名前は、お父さんのおばあちゃんの名前。おばあちゃんは健在で、ミネソタに住んでる。この前、行ってきたばかり。ミネソタは平原で山も海もないけど、湖があって、すごく綺麗なところなんですよね。」

 

 

サーフィンを始める前にダートバイクと体操をやっていました。

 

 

HALEIWA, HAWAII Photo by Brent Bielmann/World Surf League

 

弟のココロもサーフィンしてるの?

 

「ココロは、あまりサーフィンしないです。ただ週末にはダークバイクに行きますよ。私も時々一緒に行くんだけど、私はトレイル派です。

 

だけど弟はジャンプの方。見てて怖いんですよね。ダートバイクでジャンプして、ランディングするって結構な迫力ですよ。」

 

 

 

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あっ覚えてる!サクラの友達のお父さんの話の中にたまたまサクラの話が出てきて「あの家はダートバイクの攻め方が尋常でない」って言ってた(笑)

 

 

「ダートバイクと体操はサーフィンを始める前にやっていました。ただ女の子のクラスがなかったんでダートバイクのレースでは男の子に混じって参戦してました。

 

3歳の時ですが(笑)。2歳半で補助輪なしで自転車やってる私をみて元々ダートバイクやってた父がその道にと連れ込んだそうです。

 

 

 

 

同時に家でバク転とかしてる私を見て、親は体操競技の道へも進ませてくれました。体操競技10年間やっていたから、サーフィンより長いんですよね。ジムには週に4回通うほど本格的にやっていて、州の代表として全国大会にも出ていました。」

 

 

オリンピックにも出たいです。体操競技ではなくサーフィンで(笑)

 

 

体操競技オリンピックに出れたかも?

 

 

「はい。その路線にいたんですが、12歳か13歳の時に父が急に「怪我したらサーフィンできなくなるから体操かサーフィンか選んだ方がいいぞ」と言われ、考えた末、サーフィンを選びました。」

 

 

なるほど。究極の選択だったけどすでに結果を出してるもんね。今後の目標は?

 

 

「ツアーという世界を廻れるチャンスを与えられたので、サーフィン以外のことも、この眼でしっかりみてきたいですね。こんな貴重な体験は、なかなかないと思ってます。

 

フルに楽しもうと思ってます。キャリア的には、やっぱりいつかは世界チャンピオンを獲得したいです。オリンピックにも出たいです。体操競技ではなくサーフィンで(笑)」

 

 

 

 

PART2 ーSHINOBU(桜ママ)に聞くー

 

しのぶさんとサクラ

 

 

スバリ、サクラをサポートする秘訣は?

 

「うーん、愛情、かな。」

 

なるほど。でも途切れることってない?

 

「ファミリーサポートが一番。自分だけが頑張ってるわけじゃなくってみんなサポートし合ってるんです、お互いに。みんながわかってる。お互いのサポートが一番大事だよねってこと。」

 

家族の中のバランスって一番難しいんじゃない? みんなにバランスよくエネルギーと愛情、そしてお金も行き渡らなければならないわけでしょ。

 

一つ覚えてるのが、アマチュアのUSチャンピオンシップがカリフォルニアである時に、本当は、旦那さんが釣りのボートを買うためにためていたお金を、旅費にあてることになって、旦那さんが「今回の試合を最後にしてくれよ」って言ったとか言ってた(笑)(結局、サクラはアメリカ全国大会で優勝)

 

「そう、みんなそれぞれやりたいことあるし、他にも色々お金は必要だしね。生活の上でも。順番に公平にお金を振り分けるというか、それは気をつけながらやってる。ただ、ボートは未だ買ってませんけど(笑)」

 

犠牲になってる感はないの?

 

「ない、、かな。自分もちろんやりたいことは人間としてある。けど、子供できたら子供が全部だと思う。それが親だと思ってる。」

 

それはどこから? しのぶちゃんの親がそう言う方達だったの?

 

「うちの旦那と私にはその考えが初めからあったんですよ。自分よりも子供が先だよねって。だって子供の成長するって早いんじゃないですか。

 

人生の中の18年ってものすごく短い。大人になったら出て行くわけだし。18年頑張ろうっていっつも言ってた。深刻に話したわけじゃないけど、お互い、わかってるんです。

 

一緒になった時から力を合わせようっていう感じでやってきたんですよね。まだ桜は16だからまだ終わってないですよね。だけど多分、子供が好きだからっていうのがあるけど夫婦同士の仲も良いんだと思う。。。と言っても、毎日が学びです。本当に毎日いろいろです。学んでます。」

 

 

 

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私も子供がいるからわかるんだけど、一番難しいのは、16とか17ごろからの様な気がするんだ。家の中よりも、外からの刺激が大きくなるでしょ。

 

インスタやSNSなんかで、ネガティブに落とされるようなコメントとかあるし、誘惑とかいろいろあるし、シンプルにまっすぐに行かなくなる可能性がある。

 

 

「多分さくらの性格もあると思うんだけど、そうやってネガティブなことを言ってる人もいるけれど、「気にしない方がいいよ」って。

 

ほら、人間だから良いことを言う人だけでなく悪いことを言う人もいるし。だからいちいち気にしてたらやってけないよって。世界は広いんだしぃ、いろんな人がいる。

 

 

でも、そんな他人の悪評に振り回されて、落ち込むようなことは必要ないでえ、って、日頃から伝えてます。もともと桜は、気にしない方なんですよね。

 

聞いても反対の耳からプシュッって抜けてっちゃうタイプみたい。気にしてたら、この先やってけないというのも本人がわかってるんだと思う。」

 

 

負けた時の心のサポートが一番大事だと思ってる。

 

 

今までじゃあ、負けた時とか落ち込んで、サーフィンやめるって言ったことはないの?

 

「やめるって言ったことは一度もないなサクラは。本人はすごい悔しいと思う。それは見ててもわかる、だけど、うちの旦那は、負けた時は一番大事って言うんだよね。絶対怒らない。

 

子供が負けた時に、周りの大人は言いたくなるでしょ、本人に。でも、うちの旦那は、絶対に何も言わない。一度たりとも怒ったことはない。」

 

 

へええええ!!そうなんだ!!! 日本では反省っていうのが習慣になってる感じでしょ、とくにうまくことがいかなかった時は。それをしてると、どんどん感情的になるよね、お互いに。コーチする側も、親も、選手も、子供も。

 

 

「それはうちの旦那によく言われます。感情的に絶対なるな。終わったことはぐちゃぐちゃ言うなって。負けた時の心のサポートって一番大事だと私たちは思ってるんだけど、やたら慰めるんじゃなくって、たださらっとしてること。

 

「次があるから大丈夫だよ」って、笑顔でね。だからサクラとはいい関係なんだと思う。うちの旦那もスポーツからきてるから(アイスホッケー、野球)そういうのが良くわかるんだと思う。」

 

 

旦那さんは大工さんでしょ、すごい重労働だよね、そしてしのぶちゃんも働いている。そのお金を使って子供がコンテストに参加するわけでしょ。

 

もし結果が出せなければ、「俺がこんだけ頑張って働いてきたのに、お前は結果を出せないで!」って思うよね、普通の人間なら。旦那さん偉いよね。

 

 

「うんうん、言ってることは、わかる、そのお金で自分の好きなものが買えたのにってなるよねってなるよね、普通。でも、うちの旦那はきっと、勝ち負けに関係なく、子供が何か一生懸命になって頑張ってる姿を見るのに最高の幸せを感じているんだと思う。いつも冷静なんですよね、結果っていうよりも、楽しんで見守ってる感じで。」

 

しのぶさんとサクラ WSL / Poullenot

 

そこからCTまで行くなんてなんて、全く考えてなかった。

 

 

今回はうまくCT入りしたからよかったけど、入れなくっても全然大丈夫だったの?

 

「あ、そのCTは、全然うちら頭に入ってなかったんだ。チャレンジャーシリーズに入れただけでも、よかったね的な感じだったから。チャレンジャーシリーズに行けて、そこからCTまで行くなんてなんて、全く考えてなかった。

 

サクラ的にも、自分がどこまで力があるのか試すっていうのが彼女のゴールだったくらいで、予想外? 家の中では誰も私もCT入りのこと口にしてませんでした。」

 

 

笑、それは以外。周りだけだったんだ、エキサイトしてみてたのは。地元だし、桜、入っちゃうんじゃないの、ってみんな期待していたよ。

 

 

うん、周りの人からは、誰々が負けて、誰々が勝って、こうこうこうなったら、こうなるよね、ってのは、なんとなく聞いてたけど、うちの中では、一切なし。

 

だって、余計なプレッシャーは必要ないし。周りからの期待は多分大きかったんだろうけど、本人には、「あまり気にしない方がいいでえ」とは言ってた。

 

サクラは「トロフィーが欲しい」って言ってて、友達にクリスマス・プレゼント何欲しいって聞かれた時に「ハレイワの大会のトロフィーが欲しい」って言ってたらしいんですよね。

 

私はそれは知らなかったけど、結果的に優勝した時に、その友達から聞かされて。「よかったね、欲しかったトロフィーもらえて」って。うちの旦那もCT入りなんて頭に入れてなかったし、だからすごいびっくりで。」

 

 

だけどさ、みんなCT目指して戦ってるわけじゃん、後どれくらいのポイント出せば、入れるとか、いつも計算してるじゃん。

 

「それを何年かやってる方もいらっしゃいますよね。だからやっぱり運もあるんじゃないかなと思って。。」

 

運というかメンタルでやられる人が多いと思うんだけど、そのあたり、すごくうまくサポートできているよね。

 

「あまり気にしないんじゃないかな。考えすぎないタイプだから。コーチとかも毎日のコーチじゃないし。うちはそういうのは押してないし。

 

小さい頃から、コーチつけてる子が多いけど、うちは、もう、そこまで出せないって言って、コーチつけたのも一番遅かったと思う。自分で全部やってきて、14歳くらいになった時に、ロスからやろうか、みたいな声がかかってきて。。一週間に一回とか、一ヶ月に2、3回とか。」

 

うちなんか3人いるけど、一人がサーフィンで飛び抜けてたりするから、一人に親が集中しがちになっちゃうんだよね、エコひいきじゃないけど、人間だから、エキサイトしすぎちゃったり、一人の子だけに。

 

「うん、私も旦那に言われたことがあるんだ。「うちは2人子供がいるんだぜ」って。2人同じように、エネルギー注げって。うちの旦那って仕事であんまりいないんだけど、一生懸命、家族のために働いて、汚れた姿で、夜遅く帰ってくるという頑張ってるお父さんなんで、子供たちもお父さんの話はよく聞くんですよ。私も旦那さんには感謝してます。」

 

素晴らしいなああ。親の鏡というか。桜から見返りは求めてないの?

 

「笑、うちの旦那言ってます。大きくなったら、家賃、待ってるよって。電話代金と食事代も(笑)」

 

ところでしのぶちゃんは、日本のどこ出身なの?

 

「東京の浅草出身です。」

 

 

ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)WSL / Brent Bielmann
開幕戦のパイプラインでは9位だった。ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)WSL / Brent Bielmann

 

 

日本で活躍したいと言い出したら、やればいいと思ってます。

 

 

日本との関わりはどう考えている? しのぶちゃんみていると、日本からステップアウトして、ハワイに足つけてやってるような感じに見える。日本を変にひきづってないみたいな。桜には日本で活躍して欲しいという気持ちは?

 

 

「うーん、オリンピックとかありますもんね、パスポート持ってるし、サクラは日本が大好きだし。4回くらい行ってるんだけど、食事もカルチャーも大好きで、毎年、行きたいとは言ってるんですが、時間がないんですよね。

 

だけど、彼女自身が日本とアメリカのハーフだってことを知ってるし、国籍も持っているのを知ってるから、日本で活躍したいとは、まだ言ったことはないけど、もし言い出したとしたら、彼女の気持ちを尊重して、やればいいと思ってます。

 

日本語も勉強したいって、少しずつ勉強してる。うちの旦那に言われてるんですよね。そこはうちの旦那プレッシャーかけてますよ、お前日本人なのに、なんで日本語しゃべれないんだって(笑)。

 

でも本人も他の国に行った時に英語しか喋れないのがショックだったって。3ヶ国語とか普通に喋る人がいますからね。サーフインの大会で他の国に行った時に、様々な人に会うじゃないですか、そういう経験はすごいと思います。」

 

 

サーフィン以上に、ライフスキルが一番大切

 

 

大会に出てる子って大抵勝ち負けだけに集中しすぎるから、せっかく海を渡って別の国にいるのに、文化も何も学ばない。。。もったいないよね。

 

 

「そうなんですよね。うちはそうはさせたくないんです。サーフィンももちろん練習やるけど他のこともやる。試合で旅した時に旦那は、国立公園とか、海以外のところにも行ったり、サーフィンだけじゃなくて、魚釣りとか山にハイキングに行ったりとか、試合の前でもやってますよ。

 

旦那はいつも、サーフィン以上に、ライフスキルが一番大切だって言ってます。この夏もひいおばあちゃんの家に3週間くらい行って、キャンピングカー借りて、魚つりとか、山の方とか、行ってたんです。バランスがいいんだと思う。サーフィンばっかりじゃないってのが。」

 

 

それも信じられない、この前の夏でしょ? だって冬にチャレンジャーシリーズのでかい大会を控えてるわけで、普通ならがっちり練習ばかりしちゃうんじゃないかなと思うけど。

 

 

「旦那は人生をフルに経験して欲しいって。過剰にサーフィンばかりはよくないって。子供だからまた、飽きちゃったりとかもあるし、サーフィンのキャリアを積むのって、ロングランじゃないですか、飽きてやめるっていうのは一番もったいない。

 

「今、始まったばかり」だってこと私たち親も知っていて、エキサイトしすぎないようにって言ってる。誰だって、いくら林檎が美味しくっても、毎日、林檎ばかり続けて食べたら飽きちゃいますもんね。たまにはみかんも食べなくなるのが普通ですよね。」

 

 

へええ、、そんなにゆるいんだ。驚いた。

 

 

「そう、だから今年の夏に初めてQSの大会に行った時ね、USオープン。会場の波は初めてだったんだけど、2日前に到着して、ちょろちょろって練習して、結果は9位。

 

ウエットスーツも着慣れてないし、多分、一週間とか2週間前からとかいってた人が多かったと思うんですけど、カリフォルニアについた時にうちの旦那は「俺はサクラをまず魚釣りに連れて行く」って。サクラも魚釣りに行くって(笑)。

 

タヒチで優勝した大会でも、本当は、テキサスのウエーブプールに撮影で呼ばれて、サクラはテキサスの方に行きたいって言ってたんですよね。

 

だけど、旅の前に急にうちの旦那が、友達のところに泊まれるから、タヒチに行ったらどうかって、最後の最後に決めて、そしたら優勝して、結果、チャレンジャーシリーズにつながった。不思議ですよね(笑)

 

マイペースなんだね。でもサクラは焦んないのかな、他がすごい頑張ってるでしょ。私も練習もっとしなきゃとかないのかな?

 

「ないみたい。ほら、大会の前とか、朝早く起きて、練習するサーファーっているじゃないですか、でもサクラはあまり入らないタイプ。パジャマで波を見て「あ~みんな入ってんだなあ」くらいな感じですごくマイペース。私と旦那も、とにかくやるのは自分なんだから「任せるでえ」って感じなんですよね(笑)。」

 

 

練習行けって私たちから一度も言ったことがない。

 

 

すごく意外。サクラのことは小さいときから私も次女のサリーも長女のティナもよく見ていて、サクラは他の子に比べてバネが違うよね、絶対いつかはトップに入るねって、うちは家族の中で言ってたんだけど、今回やっぱりなぁって思った。きっと、ばっちりプロのコーチとかつけてガチガチ練習してんのかなあと思ってた。

 

 

「笑、全然(笑)あんまり真剣に考えてないっていうか、、いいのかなって思うけど、それがいいんだろうなって思う。旦那は子供達に「心からやりたいことをやれ」って言ってる。

 

練習行けって私たちから一度も言ったことがない。馬が荷物を引っ張ってたとしたら、サクラは馬だと思ってますから。本人にも言ってます。サクラ自身が進む道を決めて、私たちは後ろからついていくだけだよって。」

 

 

馬が違う方向に行こうとしたら、それでもいいの?サーフィンやめて音楽に進みたいって言ったとしたら、それでもいいと思う?

 

 

「うん、いいと思う。でも一言言うかも。「今まで頑張って練習してきて時間もかけてきて」って。うちの旦那は自分で決めて頑張ろうと思ったことは、とりあえず頑張ってみろって言ってます。でも、もし、そこで感じ取れないとしたら、仕方ないよなって。

 

結局は親の人生ではなくて、彼女の人生ですから。彼女が行く方向を決めるのがベスト。「人生は一度きりで、君のものだから。やりたいものがあれば、やった方がいい」そう言うかんじなんですよね。いつも、一歩下がって、大きいビジョンで観れる、それがうちの旦那なんですよね。世界は大きいんだぞって。」

 

 

いやあ、本当に驚いたよ。貴重な話をありがとう。

 

 

山頂を目指す方法はいくらでもある。ただ山頂だけを見つめて進んでいくのではなく、仲間も一緒に飛び交う蝶々や咲く花の色や森林の香りを楽しみながら山頂を目指して登っていく。そうゆう方法もあるってことを、二人の話を聞いていて気が尽かされた気がした。

 

プラス、なんだか最初の目的だった「サクラがどうして成功したのか」の目的はどうでも良い気になり、2時間半もの間、この二人と話をしているうちに、自分の娘達をどうサポートするか、自分のパートナーをどうリスペクトするか、などと課題が重くのしかかってきた様な気がしているのは私だけではなく、記事を読まれた多くの人(あなた)も私と同じ思いでいるのではないだろうか?(苦笑)

 

P.S. サクラに用意しておいた最後の言葉「頑張ってワールドタイトル目指してね」を「ツアー楽しんでね!」に変えた事も追記しておこう。

 

 

CTの第2戦となる「Hurley Pro Sunset Beach presented by SHISEIDO」のウェイティング期間が、現地時間2月11日(金)からスタートしたものの、コンディションで不良で試合はスタートできず。サクラは、ラウンド1で、H3にクレジット。カリッサトパイプの覇者モアナと対戦する。頑張れ!サクラ!

 

今回もサーフメディアではハワイの最新情報をお届けしますので、お楽しみに。

 

 

ライブ中継ほか詳細はオフィシャルサイトから

男子Hurley Pro Sunset Beach

女子Hurley Pro Sunset Beach