【オーストラリアNOW】ロックダウンが9月末まで延長。ゴールドコーストの隣のNSW州がまるで海外のよう

NOJILAND FILMこと菅野大典氏が、現地からオーストラリアの最新情報を伝えてくれる【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第14回となる今回は、悪化し続けているコロナウイルスの状況、AUSTRALIAN BOARDRIDERS BATTLE』のクイーンズランド予選、Woolworths QLD Junior Titles #2など。

 

取材、文、写真:菅野大典

 

 

冬が過ぎ春の陽気が広がり始めている8月のゴールドコースト。 晴天の日が続き暖かい朝を迎える日も多くなってきました。

 

くっきりとサーファーズパラダイスのビル群が見えるレインボーベイ。

水温もそこまで低くなく裸で海水浴をしている人もちらほら出始めてきています。沖合いでは鯨がはねている姿もよく見られ、ホエールウォッチングのシーズンの真っ盛りの時期で もあります。

船やジェットスキーにのって見物に行く人の姿も見られました。タイミングよく撮影できませんでしたが、親子クジラと思われる何匹かで気持ち良さそうにクルージングしていました。

 

 

悪化し続けているオーストラリアのコロナウイルスの状況

 

 

先々月から悪化し続けているオーストラリアのコロナウイルスの状況ですが、8月に入ってもさ らに感染拡大を広げており、日を追うごとに新規感染者数の最高人数を更新をしています。

 

6月26日から続いている大シドニー地域(シドニーとその周りをとりまく複数のサバーブ)の ロックダウンは更に9月末までの延長が確定。少なくとも13週間という長期の厳しい措置が決 まっています。

 

大シドニー地域だけでなくオーストラリア全土にも感染被害は広まっており、ニューサウスウェールズ(NSW)州、ACT (オーストラリアの首都キャンベラがある特別自治区)、ビクトリア州の全ての地域が現在(8月 30日)ロックダウンとなっており、一部の地域では夜間外出制限(午後9時から午前5時まで外出 禁止)や、生活必需品の買い物や運動は自宅から5km圏内まで、屋外の運動は1日最大1時間など といったとても厳しい措置が設けられています。

 

 

ツイードヘッズとクーランガッタの州境でも激しいデモ活動

 

 

今までにないコロナウイルスによる被害を受けている状況のオーストラリア。当然のことながら 市民のフラストレーションも高まり各地で大きなデモ運動も先月と同様に各地で見られており、 終息が見られない状況に感じられます。

 

NSW州とQLD州の州境の街であるツイードヘッズとクーランガッタの州境でも激しいデモ活動 が21日に行われ、8名もの逮捕者が出ました。

 

 

 

 

このツイードヘッズとクーランガッタは州は違いますが、隣り合わせの街であり、仕事とプライベートを含め多くの人々が行き来をしており、この州境であるボーダーゾーンに住む人やビジネスを営む人は今までにない厳しい規制措置※1により経済的に大打撃を受けている状態となっています。

 

※1オーストラリアは6つの州と2つの特別地域で区分されており、それぞれの州ごとに設けられている法律があります。コロナに対する規制もそれぞれ独自の州で決められている事があり、 各州 に入るためにボーダーパスをとらなければいけない場合があります。

 

今までの規制措置では、大部分の仕事や特別な用事の為であればボーダーパスを取る事が可能で、NSW州からQLD州に入る事が可能でしたが、8月15日から規制措置によりNSW州に住む人は特別な仕事や用事以外では、どの州にも入る事ができなくなっています。

 

 

サーフィン業界にとっても大きな痛手

 

 

これによりNSW州に住みながらQLD州で仕事をしている人、QLD州に住みながらNSW州に仕事に行く人(NSW州に入る事はできるが、QLD州に戻ってくる事ができない)が、仕事をする事ができない状態になりました。

 

この地域にはJSインダストリーといった大手サーフボードファクトリーも多く、世界トップクラスのサーフボード生産地域であり、たくさんのサーフショップが立ち並ぶ地域。人の行き来ができないゆえに人手不足による生産が減少している状況で、サーフィン業界にとっても大きな痛手を被っています。

 

 

州のボーダーから約2kmほどの位置にある南半球最大級のサーフショップのキラサーフ。

サーフボードサプライヤーがボーダーゾーンに集まり、仕事道具や発注用品を渡し合う姿も見られました。

 

 

仕事のために家族と離れ、別々の州に暮らす人や、州を跨いで引っ越しをした事業主もいるほ ど。

 

サーフィン業界でなく、多くのビジネスが巻き込まれている現状に、州のボーダーゾーンの改正を求める提案なども求められていますが、依然としてそのルールは適用されず、いろいろな憶測の ニュースが飛び交う状況に市民の混乱の様子が見受けられます。

 

また、国を代表しオリンピックで戦って帰国した選手で28日間の隔離措置(シドニーで14 日間のホテル隔離とその後NSW州からの移動という事でまた14日間の隔離)を受けた選手がいるなど、あいかわらずどのような帰国者に対しても徹底した措置をしています。

 

このような状況下でいかにアスリートが大変な思いをしているのがわかると同時に今後世界に挑戦する人が少なくなってしまうのではと感じてしまいました。

 

一方で、このコロナの感染拡大に伴い、ワクチンの摂取ペースはとても迅速に進んでおり、NSW 州内の成人人口の65%が1回は接種を受けており、35%が2回の完全接種を受けている。NSW州政 府はコロナウイルス規制緩和社会正常化への道程として成人完全接種率70%を目標としています。

 

 

コロナの影響で少しサーファーの数が少なくなった

 

 

ゴールドコーストのサーフィンのコンディションは波の小さい日が続いていましたが、地形のいい場所を中心に楽しめる日が続いており、コロナの影響でNSW州からの人が来れないせいか少しサーファーの人数が少なくなったと感じます。

 

 

スナッパーロックスにも砂が付いていて、形のいいブレイク。 地形のあるD-BAHは引き続きファンなコンディション。

 

元CTサーファーのミッチ・クルーズと弟のアレックス。最近アレックスの手掛けるACSODサーフボードのライダーになり、兄弟で一 緒にサーフィンをする姿がよく見られボード開発に意欲を注いでいる。

MITCH CREWS

残念ながらオーストラリアのQSトップ10には入れずチャレンジャーシリーズには出場できない がスピードもスプレーの量もものすごい。海の中でも一際目立つ存在です。

ALEX CREWS

弟アレックスもサーフィンの技術はトップレベル。キレキレのバックハンドを決め込んでいまし た。

サイズが少し上がればカメラマンも現れ熱いセッションが繰り広げられています。

過去に3Degrees(ミックファニング、ジョエルパーキンソン、ディーンモリソン出演)などの 数々のヒットサーフムービーを担当したフィルマーのSHAGGA。

そのシャガの前で何本もハイエアを決めていたZANE ASSINK

何種類ものバリエーションあるエアーをメイクしていたOSCAR BERRY。

最近はカメラマンのアンドリューと撮影をしている姿をよく目にします。

月の後半には3~4ftサイズの綺麗なスウェルが入り、どこのポイントでも楽しめるコンディ ションに。

スナッパーロックスでもサイズが上がればカメラマンがたくさん出現

祝日を含め3連休となった8月の最後の週は多くのキッズサーファーの姿も。

最近板のスポンサーが変り、ますますサーフィンのキレが増したオーストラリアの若手サーファーTHOMAS CARVALHO

The Mad HueysのHAZZAはボードショーツでサーフィン。

タヒチアンガールのMARIE-MOANA TROJA も水着にタッパーと8月なのに夏のような雰囲気。

 

長く続いた小波のコンディションから解放されたスナッパーロックス。久しぶりの質の高い波を 堪能するサーファーがたくさん見られました。うねりもしばらく続く予報となっており、9月の 前半も楽しみなセッションが期待できそうです。

 

 AUSTRALIAN BOARDRIDERS BATTLEのクイーンズランド予選

 

 

8月28日に『HUNDAI AUSTRALIAN BOARDRIDERS BATTLE』のクイーンズランド予選が 開催されました。

 

オーストラリア中のボードライダーズクラブのナンバー1を決めるこの大会は、ボードライダーズ イベントの中でも1番大きな大会で、6つの州で予選が行われ、ワイルドカードを含む24の代表クラブが(各州によって代表となるクラブ数が違う)本戦となるナショナルファイナルに進みます。

 

毎年試合の形式が違うのですが、今年は昨年同様5人のメンバー(18歳以下1名、オープン2名、 35歳以上1名、女子1名)のリレー方式。岸からスタートし、1人のサーファーに対してベスト1 ウェーブがカウントされ、その5人の合計点とパワーサーファー(5人のうち1人が最後にまた2回目のサーフィンをできる)の得点の合計点で競われる。

 

何回でも波に乗っていいが、パワーサーファーは一回しか乗ることはできず、制限時間は50分で、時間内に全員が帰って来れなかったら 5 ポイントが減点されます。

 

 

会場となったタラバジュラビーチ。

波は形の良い2~3ft。

 

サーフィンクイーンズランドのイベントは常にモバイル方式でその日のコンディションによって 会場が決められることが多く、今回は地形の決まっているタラバジュラビーチで行われました。

 

QLD州の代表枠は4チーム。ファイナルに進んだ4つのボードライダーズが自動的に本戦となる ナショナル ファイナルへの出場権利を得れます。

 

プレジデントのJAY PHILLIPSはNSW州にに住んでいて参加できずにいたが、とにかく層が厚い SNAPPER ROCKS SURFRIDERS。

 

 

オーバー35のメンバーには、元世界チャンピオンであるJOEL PARKINSONが出場。

久しぶりのコンテストラッシュ姿でスタイリッシュなサーフィンを披露したパーコ。

チーム戦なので時間が大切。ビーチランで少し疲れた?といった雰囲気

U-18にはオーストラリア・ジュニア・ランキング2位のMARLON HARRISON

このオールスターチームのパワーサーファーを務めたKAI TANDLER

緊迫したセミファイナルのラストライドで7ptをメイク。きっちりと仕事をこなした。

昨年のQLD王者であるNorth Shore BoardridersのALISTER REGINATO。

どのヒートでもエクセレントスコアをマークしていたTAJ STOKES

TAJの弟のZEB STOKESは妹JHLY STOKESと共にKAWANA BOARDRIDERSのメンバーとして出場。

JHLY STOKES。兄妹みんなチームの代表を務める素晴らしいサーファーです。

チーム一丸となって戦っていたKAWANA BOARDRIDERS。はたから見てもいいチームだなと感じました。

チームの団結力ではどこにも負けてないBURLEIGH HEADS BOARDRIDERS。色のついたプラカードを使い指示。 最近は常にトップ争いに入るようになりました。

オープン代表のHINATA AIZAWA、前日はサウスストラディの波が良く7時間もサーフィンしていたそう。あいている時間はジャッジ の仕事をするなど団体からの信頼も厚い。

ロットネストアイランドのCTにワイルドカードで出場しでセミファイナルまで勝ち上がり、今やオーストラリアを代表するサーファー にまで上り詰めたLIAM O’BRIEN。セミファイナルでは圧巻の9.17ptをマーク。

 

 

波のコンディション、選手のレベル、どれをとっても素晴らしい大会となった『HUNDAI AUSTRALIAN BOARDRIDERS BATTLE』クイーンズランド予選。

 

個人スポーツであるサーフィンがチームイベントとして行われることには、団結力や協調性と いったものがたくさん養われる貴重なイベントで、改めてボードライダーズの仕組みの素晴らしさ を感じることができました。

 

コロナの影響でナショナルファイナルの場所、日程は未定となっているが、ぜひこの素晴らしい イベントが行われることを期待したいです。

 

 

結果は以下の通り

Hyundai Australian Boardriders Battle – Event One – Gold Coast

1st SNAPPER ROCKS SURFRIDERS
2nd NORTH SHORE BOARDRIDERS
3rd BURLEIGH HEADS BOARD-RIDERS
4th KAWANA BOARDRIDERS

 

The Woolworths QLD Junior Titles #2

翌日8月29日には先月に急遽コロナウイルスの感染拡大により延期された『The Woolworths QLD Junior Titles #2』の続きが行われた。

 

会場はAUSTRALIAN BOARDRIDERS BATTLE と同じタラバジュラビーチ

身体全身を使いおもいっきりアプーチするJORDY HALFORDがU-16GIRLSで優勝。最近ROXYからスポンサーを受けることになり、 ますますサーフィンが上達している。

セミファイナルでは9.77ptを含むトータル18.10ptをスコアしたRICO HAYBITTLEがU-16BOYSで優勝。前日のボードライダーズバ トルでも大活躍しそのまま勢いに乗っていた。

大接戦となったU-18GIRLSのファイナルは形の良い波を上手く見つけ出していたCOCO CAIRNSが優勝。

誰が優勝してもおかしくないハイレベルな応酬となったU-18BOYSのファイナル。

キレキレのサーフィンを見せていたLUKE BRUMBY。

ヒート序盤から高得点をマークしていたTY RICHARDSON。そのまま優勝かと思われたが逆転され2位に。

見事な逆転勝利を飾ったZEB STOKES。見事ステートチャンピオンにも輝いた。

 

 

こちらの大会のナショナルファイナルの日程も未定となっており、今後のコロナウイルスの状況 によりスケジュールがアップデートされる予定となっています。

 

コロナウイルス感染者を抑え込んでいるQLD州では、このようにイベントが行われているにも関 わらず、わずかこのゴールドコーストの南側の場所から15kmほどの場所のNSW州では、イベントどころか生活にも規制がかかっている状態。隣の州がまるで海外のようにも感じてしまいます。

 

大変な状況のオーストラリアですが、次回は明るいニュースを届けれることを願いたいです。

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。