サーフタウン、いすみ市の太東小学校・6年生を対象にオリンピック・パラリンピック体験学習を開催!

来年はサーフィンするぞー!と記念撮影

取材/米地有理子

 

 東京オリンピックのサーフィン競技の会場である一宮町のすぐ隣町、サーフィンの歴史ある太東海岸の近くであるいすみ市の太東小学校で、10月16日、オリンピック・パラリンピック体験学習が行われた。

 

 新型コロナウイルスにより世界中の人が困難と戦う中であり、東京オリンピックも来年に延期、各行事も中止や縮小開催という状況の1年。太東小学校でも修学旅行の中止が決定され、小学校最後の年である6年生の子供たちにとっても思い出を作る行事が少なくなってしまった。

 

ロングボードとショートボードについて友重氏と泉氏よりお話
サーフボードを実際に持ってみたり、道具を触ってみたり

 

そんな中で千葉県のオリンピック・パラリンピック体験学習校として選ばれている太東小学校での今年で4回目となるオリンピック・パラリンピック体験学習も開催が危ぶまれたが、学校、保護者、いすみ市体育協会サーフィン部、いすみ市サーフィン業組合の協力のもと、この日無事に行われる運びとなった。

 

昨年までは、実際に太東ポイントで子供たちにサーフィン体験をしてもらっており、今年もその予定でいたが、事前に天候も悪く海が荒れていると判断し、体育館での体験学習に切り替えて行うことに。体験学習の指導を担ういすみ市体育協会サーフィン部、いすみ市サーフィン業組合も初めての試みに戸惑いもあったようだが、皆が協力して、とにかく子供たちにサーフィンの楽しさを知ってもらおうと準備を進めた。

 

太東のレジェンドサーファー、ケニーさんこと泉健二氏が孫世代の子供たちにサーフィンを伝授

 

 そうして迎えた当日の体育館。実際の海ではなく、体育館ということで残念に思う子もいただろうし、指導側も海で子供たちがサーフィンを楽しむ笑顔を見たかったという思いもあっただろう。けれども子供たちが体育館に入って来ると、この時間をみんなで楽しく良い時間にするぞという心が集結したのだろうか、体育館は屋外に負けない光に包まれた。

 

映像を通して、サーフィンの歴史や海での安全について学んだ

 

 体験学習では、まず始めに、日本が誇るパイプライナーであり、オアフ島ワイメアベイで行われるビッグウェイブコンテスト「The Eddie」の招待選手である脇田貴之氏を追ったドキュメンタリー映画「Wakita Peak」の清野正孝監督の最新監督作品である「World Surf Journey ~Roots of Hawaii」(10月10日BSフジ放送)の映像を一部鑑賞し、サーフィンのルーツ、そしてオリンピック競技に至るまでを学んだ。子供たちは映像を真剣に見つめ、知らなかったサーフィンの歴史を知ることで、サーフィンに興味を持つことができたようだ。

 

 

AEDについても少しお話を

 

 その次に、近隣である白子町に拠点を置き、主に大網白里市からいすみ市エリアの水難事故の対応、海辺の管理、救命講習などを行っている団体であるJ-PROの担当者により、映像を通して「離岸流」についてや津波発生時の海岸での対応等の講習が行われた。太東海岸は今年は海水浴場として開かれなかったが、通常は子供たちの夏の遊び場にもなるので、海での安全については身近なこととして捉えているようだった。

 

海の上より落ち着いてサーフボードの上に乗ることができた

 

 そして座学の後は休憩を挟んで、実際にサーフボードに触れて、テイクオフの陸上レッスンを。子供たちは班に分かれ、各指導員のもとで、サーフボードの上でテイクオフを試みた。中にはサーフィンをすでにやっている子もいたが、大半は初めて。マットの上ということで海とは違って安定した状態で、落ち着いてテイクオフの仕方を学ぶことができたようだ。

 

サーフボードの上に立つ感覚を味わう子供たち

 

体も温まり、体育館は子供たちの熱気と元気な笑顔で溢れ、みんなの心が和らいだ。盛り上がる中で、校長先生、担任の先生方もテイクオフ。陸の上ではあったが、みんながサーフィンに触れることができた時間となった。最後はみんなで「来年サーフィンするぞー!」という掛け声で記念撮影をした。

 

 今回は実際の海での体験学習ではなかったが、子供たちが「サーフィンしてみたい!」と思うきっかけ作りとして良い機会となったと言えるだろう。
体験学習を終えて聞いた、子供たちの声を幾つかご紹介したい。

 

 

「サーフィンを初めてやってみて楽しかった」
「(映像を観て)サーフィンがオリンピック競技になったのがすごかった」
「サーフィンの歴史が知れて面白かった」
「来年サーフィンをやってみたい」
「海が近いからサーフィンしたいと思った」
「前にサーフボードに乗ったことあるけど、またやりたいと思った」
「なかなか海行けなかったりしてたけど、機会があったらサーフィンの体験教室に行ってみようかなって思いました」
「サーフィンのいろいろなことが知れて良かったです」
「初めてボードに乗る体験ができて楽しかったです」
「水じゃなかったからやりやすかった」
「最高でした!」
「海でやれたら良かったけど、でも楽しかった」
「面白かったです。いつもばりばりサーフィンやっています。親もサーフィンやっていて、いろいろビデオ観てるけど今回のは観たことなかったから良かったです」

 

担任の先生もテイクオフ!

 そして、担任の先生の声も。
「いろいろな行事がなくなった中で、体育協会、サーフィン業組合の方たちが、来年のオリンピックに向けて、サーフィンを子供たちに広げて下さったことがプラスになると思います。来年近くでオリンピックが開かれるということで、盛り上がるといいなと思います。今日は子供たちにとって良い経験になったと思います。ありがとうございました」

生徒が見守る中、校長先生もチャレンジ!

 また校長先生からも以下のようなお言葉を。
「今日はありがとうございました。子供たちがサーフィンの魅力をとても感じ取れたと思います。海での注意事項、AEDについてもお話して頂き、ありがとうございました。これからもこういった取り組みを続けて頂きたいと思います」

 

 

 最後にオリンピック・パラリンピック体験学習を担当したいすみ市体育協会サーフィン部、いすみ市サーフィン業組合の方々の感想を。

 

 

中新 茂氏
「屋内ということでちょっと心配しましたが、寝た子も居なかった(笑)。映像も良くて、海で体験するだけではなく、こういったサーフィンを知ってもらう段階があっても良いと思いましたね」

 

泉 健二氏
「今回、天候の関係で体育館でやったことが、逆にすごく良い部分がありました。これからはサーフィンを幅広い観点から子供たちに教えられることが大事なことかなと痛感しました。こういった活動を他の団体さんと組んでいろいろな形でやっていきたいと思います。日本のサーフィンの歴史において孫の世代の子供たちと楽しい時間を過ごせました」

 

山田浩之氏
「今回は室内ということでいつもと違う形でしたが、サーフィンの歴史、海の安全、サーフィンについて短い時間で有効的に知ることができたのではないかと思います。今後このような活動はいろいろな場所で普及出来たらいいなと思いました。海は自然相手なのでできないことがありますが、こういった形だといつでもできますよね」

 

友重達郎氏
「サーフタウンとして今までは、実際に海でサーフィン体験をやって来ましたが、今回初めて屋内でやることで、また違った意味で得ることがあったと思います。子供たちが体験だけではなく、サーフィンを知識として深めることができたのですごく良い機会になりました。コロナ禍でまだこんな状況ではありますが、来年からまた徐々に盛り上がっていけるように、オリンピックも開催予定でありますし、みんなにサーフィンをより知ってもらえる活動を、体育協会サーフィン部、サーフィン業組合としてもやっていきたいと思います」

 

 

 人と人が距離を保ちながらコミュニケーションを取らなくてはいけない状況の中でも、思いやりという心があればきっとみんなで楽しむことができる。この日は、今年初のプロサーフィンの大会のファイナルデーが開催されていた。来年に向けて少しずつ、海に活気が戻って来たのを感じた。みんなでこの困難を乗り越えながら、海に笑顔の花を咲かせていきたいとあらためて思う素敵な1日だった。