地域の実情を踏まえた上でのガイドライン作りと新たなサーフィン・スタイルの確立へ。Stay at home

 

文:山本貞彦

 

5月4日に政府は全都道府県に出していた緊急事態宣言を5月31日まで延長する決定を行なった。ただし、14日の時点で状況を分析し、可能であれば5月31日を待たずに緊急事態を解除する考えも示された。

 

この発表を受け、5月7日に日本サーフィン連盟(NSA)からは「緊急事態宣言の延長に関して」 と題し指針が発表された。「三つの密」の回避を守り、感染防止策を取った上で「新しい生活様式」の実践例を提示し、サーフィンをする場合の具体的な行動規範を示した。

 

 

状況を見極めた上で解除の方向。そして新たなサーフィンのスタイルへ

 

 

これはすぐにサーフィンを推奨するものではなく、日本政府の発表、都道府県、市町村からの指示を厳守。それぞれの地域の実情を踏まえた上でガイドラインを作り、感染防止の徹底を行い、新たなサーフィンのスタイルの実行をと通達している。

 

これにより自粛が続いていた各地域は協議を重ね、オリンピック会場のある千葉一宮では5月7日から一宮町在住に限りサーフィンの自粛を解除。宮崎も地域によってでバラツキはあるものの5月7日から制限をかけての再開。湘南の藤沢が14日、鎌倉、茅ヶ崎が15日まで自粛とし、状況を見極めた上で解除の方向へと動き出している。

 

 

海に浮かぶサーファーの映像がより印象を悪くした

 

 

しかし、このGW中のサーフィンへの風当たりは厳しいものがあり、ニュースの報道ではパチンコ と同列に扱われ「密である」「自粛しない人々」として紹介された。これで世間からバッシング の嵐となった。ワイドショーでは天気予報の際、江ノ島をバックにすることも多く、そこに映し 出された海に浮かぶサーファーの映像がより印象を悪くした。

 

マスコミのコロナ報道では基本、自粛の流れを強く打ち出しているため自粛しない=悪いという 流れを作っている。危機意識を高めることにサーフィンが使われ、それにより自粛警察なる輩も出現。SNSでは毎日「海にサーファーがいました」とアップするツイートも後を立たない。

 

この大きな原因が、一般の方のサーフィンとはレジャーであり、不要不急に属するものだという認識であることだ。普段からサーフィンをする人にとっては、日々の生活に組み込まれている運動でありジョギングと同じだが、この認識の違いが今回の問題を大きくしている。

 

 

協会の思いが末端まで浸透しない理由

 

 

協会が出した通達は基本、各支部と会員に向けて出したものであり、伝わるのは業界とそれに近い人間のみであり、一般サーファーまでは浸透しにくい。さらにサーフィンをしない人の認識の違いでこの海での自粛問題をより複雑にしている。

 

サーフィンをする人たちはプロ、トップアマの選手やメーカー、ショップなど業界に関わる人たちと、趣味としてサーフィンをする人に分けられる。今、業界関係者が自粛している中で、海に来ているのは他県から来ている人と地元の方々が大半だろう。

 

 

情報発信を3つに分けてするべき

 

 

オリンピックの種目に選ばれたサーフィンが、今やSNSでは憎悪の対象になっていることを考えれ ば、1. 組織に所属する会員、2. ローカルサーファー、3. 一般サーファーに向けてそれぞれ細かく分けて発信するべきではないだろうか。

 

特に業界外である2. ローカルサーファーに対しては、海岸への立ち入りの自粛を呼びかけている地域であれば、やはりサーフィンはやめるべきと訴えるべきだ。また、3. 一般サーファーに対しては、他県からの移動は控えるという行政からの通達を徹底、駐車場などの閉鎖などを行い、不要不急に当たるとして遠慮を願うメッセージを強く出すべきだと思う。

 

この徹底的な自粛を行なった上で、初めて行動制限の緩和となるわけで、中途半端にダラダラ行うことは、サーフィンをしない一般の人の理解を得ることはできず、バッシングは続くこととなるだろう。

 

 

プロは組織からの指針もなく、目標を立てられず困惑

 

 

その自粛の中心となっているプロサーファーは、個人で自主トレに明け暮れている。プロ野球が6月19日の開幕に向けて準備を始めた。しかし、サーフィンは未だ未定だ。

 

ワールドサーフリーグ (WSL)では6月末に新しいシステムを含む発表をするとし、国際サーフィン連盟(ISA)はオリンピックの予選となるエルサルバドルで行われる世界戦を今年の10月から12月、もしくは来年の 初めに開催したいとアナウンスした。

 

一方、国内の日本プロサーフィン連盟(JPSA)では7月ま での大会は中止及び延期とし、8月からの再開を踏まえ準備。日本サーフィン連盟(NSA)は主催 の4大大会を白紙に戻し、今後は状況を踏まえ判断するとして、5月末までの行動自粛をHP上に掲示している。

 

このようにコロナの終息次第であり、大会開催の予測は未だ難しい。しかし、判断は難しいにし ても開幕日程を含む行動指針を仮としても発表できないのだろうか。「いつまで自粛」ではなく、「いつから開幕に向け準備する」というコメントがあれば、選手はそれに向けトレーニングを計画できるし、期間がはっきりすれば集中して練習できると思う。

 

 

協会がアスリートに対して復帰プログラムを作成する

 

 

今のアスリートと呼ばれるプロは、既存の組織から何の指針もなく、目標も立てられず各々がで きる範囲でトレーニングすることのみ。あとは終息を願い、率先してメディアで一般サーファーに向けて自粛のお願いをすることだけしかできない。

 

だからこそ地元任せ、個人任せにするのではなく、組織が率先してトレーニングできるシステム、 海に入れるような状況を作ってあげられないものだろうか。個人で勝手にできないからこそ、地元の支部、さらには協会がリーダーシップをとってアスリートに対して復帰プログラムを作成することはできないものだろうか。

 

そのためにも今回の各地域の行動制限の緩和については、慎重に行なって欲しいと思う。特に神奈川も千葉も特定警戒都道府県であるわけで、感染拡大が確認されれば、再び厳しい処置となる可能性がある。

 

 

行政、地元自治会、サーフィン組合の三者で連携

 

 

各地域の取り決めたことについては14日の政府の発表を待つにしても、日々更新される情報を精査し、行政、地元自治会、サーフィン組合の三者でより連携し取り決めをなすべきだ。協会中心で 決めても一般の方の指示は得られないし、誤解は解けないだろう。

 

行動規制の緩和は望むところだ。サーフショップ含め海辺の観光業もこの自粛で大打撃を受けている。しかし、経済活動を重視すれば安易な緩和になりやすく、ひとたび感染が広がれば、更なる 強硬な封鎖が必要となってしまう。だから、経済活動については行政に休業補償を申請し、今は コロナ封鎖に尽力すべきだろう。だから、行政を入れて三者での話し合いを徹底的にすべきだ。

 

今や大手の企業であるシャープ社がマスクを作り、酒造メーカーがアルコール消毒液を作っている 緊急事態。実際に身近で亡くなった方や会社の解雇にあって仕事を失った方、休業により収入が無くなり廃業に追いまれた方もいる。

 

もしサーファーならばサーフィンをするどころではないだろう。今、サーフィンをやっている人は、まだ恵まれていると考えるべきではないだろうか。だから、今はサーフィンを自粛して少しでも早くこのコロナを終息に向かわせることに協力すべきではないだろうか。

 

この問題は世界中全ての人々が当事者であり、その一当事者として何をすべきなのか。それはも うサーファーである前に人類として、どう行動を取るのか、一人ひとりに託されている。終息のために自分が家にいること。それが医療機関を守ることにもつながり、この状況を早く脱することにつながる。笑顔で海に戻るために、今はまだStay at home!