2017 ISA World Surfing Games – Competition Day 2
写真、リポート:永島未知子 ビアリッツ、フランス、2017年5月21日
「ISA World Surfing Games フランス2017」の大会2日目、波のサイズは腰胸、セットで肩ほど。初日とうって変わり風はオフショア、面がキレイに整った女子にとって理想的なコンディションとなった朝の8時台。
本日のトップバッターも初日に続き大村奈央。小さな波ながらも丁寧なマニューバーでスプレーの出るターンを描き、バックハンド、フォアハンドの両方で6点台を叩き出す。2位以下の選手とポイント差を9点代にまで広げた。すると終了の合図を待たずに大会側の取材クルーがビーチで見守っていた波乗りジャパンチームに到着。ラウンド2をトップ通過した大村奈央を賑やかに迎え入れた。
そのヒートから2時間あまりで野中美波のラウンド2がやってきた。朝は曇りがちだった空も気持ちのよい青空へと変わり、それに誘われるようビーチにはギャラリーが続々と集まった。ハイタイド近くまで潮が上がってきたせいで波のブレイクはインサイドに移動。
至近距離で選手のパフォーマンスを見られる機会を逃さないようにと、波打ち際にはスマホやカメラを構えた人たちが詰めかける。会場全体がヒートアップした中で始まった野中美波のヒート。
その雰囲気にのまれることなく序盤からレフトの波をつかむ野中。潮が上げたせいで崩れるのが早くなった波にターン、リエントリーを織り交ぜた技を3発入れると1本目から6.17という高ポイントをスコア。続けてもう1本ライトの波に乗り合計ポイントを伸ばす。ヒート開始から5分以上を経過した時点で、コスタリカのレイラニ・マクゴナグルに次いで暫定2位。
しかしここから波の状況が変化。セット間隔が大きくなり、入ってくる波数も少なくなってきた。野中はプライオリティを保持しながら波選びに慎重になって乗った3本目で点数を伸ばす。そして暫定順位のままヒート終了を迎え、野中はラウンド2を2位通過し、ラウンド3へと駒を進めた。
ハイタイドで波が割れなくなったため、4時間の休憩を挟み再び試合が始まったのは16時。
大村奈央のラウンド3が始まる17時台になると潮は適度にひき、波は左右ともに長く割れるという良好なコンディション。そしてこのあたりから選手のレベルも上がってくるので、再び気を引き締める段階に突入…したと思われたのだが、フタをあけてみればラウンド3は大村奈央の独壇場となった。
1人だけ左側のポジションで波待ちをしていた大村はレフトの波を次々とキャッチ。どの波も安定したマニューバーからのターンを入れながら波打ち際まで乗りこなすロングライドを披露。MCも「完璧な場所、美しいカーブ、確かな技術」と惜しみなく誉め称える。1本しか乗れない選手もいた中で、大村はこのヒートで最大となる5本の波に乗り、さらにポイントも5.40〜6.43とすべて高得点をマーク。レベルが高く、安定したサーフィンを見せつけた。
大村奈央「試合が始まる前に波の様子を見て、どこで波待ちしようかある程度の目安をつけ、実際に海に入ってからは他の選手の動きも見て変えた。クォーターファイナルに向けては、1つ1つ目の前のことをちゃんとできたら、と」
その勢いのまま同じくラウンドアップを目指したい野中美波。波乗りジャパンチームが見守る目線の先で波待ちのポジションを決める。他の選手は右側に集まっていた。ヒートが開始すると直後から他の選手が波に乗る。
野中もライト、レフトに乗るが決め手の1本を出すことに期待がかかる。膠着状態の前半、流れを変える波を掴んだのは他国の選手たち。特にニュージーランドのエラ・ウィリアムズがスピーディな動きで技を何発も入れるとそれに7.50ポイントが付き、一つ飛び抜けた。
そこからの野中は勝ち上がることに重点をシフト。波乗りジャパンチームは国旗を使い、他選手のいるポジションに移動するようにとビーチからアドバイスを送る。チームが一丸となって野中をラウンドアップさせようと集中。
野中もそれに応えレギュラーの波で4.17ポイントを出すも、その間に上位2選手もポイントの上塗りを重ねる。そして流れは変わることなく試合は終了。「悔しい」と試合後にこぼした野中。惜しいラウンド3敗退となった。
まだ15歳とこれからの伸びしろに期待。5年前はサーフィン始めていなかったのに今ここにいるのだから、5年後はどんな選手に成長していることか。自分の試合は終わっても、他の選手から学べることがたくさんあるだろう
その時点で時刻は19時近く。休憩も挟んだこと、フランスのこの時期は21時過ぎまで明るいこと、また波の状況も考慮され、そのまま女子クォーターファイナルへと続けられた。大村奈央は3回目のヒートを迎えた。その大事なクォーターファイナルが始まったのは20時ころ。
大村奈央がこの日最初にこなした朝のラウンド2から数えると12時間後である。タフで長い1日だ。そしてどのヒートも波のコンディションが違い、それにあったサーフィンが求められる。もちろんラウンドが上がるにつれ、対戦相手のレベルも上がってくる。
開始ホーンが鳴った直後にセットが入り、地元フランス、現役WCTランカーでもあるポーリン・アドゥを皮切りに全選手が波に乗った。1本の取りこぼしもないような、選手たちの高い集中力。そのなかで大村奈央はライト、レフト両方の波で本数を重ね、6.60ポイントの1本を軸に前半暫定1位につける。
途中ポーリン・アドゥが8ポイントの高得点を出すも2本の合計では大村に届かず。残り時間5分ほどで乗った1本では力強いリエントリーを含む技を3発入れ、またもやMCから「とても美しいサーフィンだ」と讃えられる。そうして合計得点を伸ばした。
しかしラスト3分でポーリン・アドゥがレフトの波で鋭いリエントリーを3発。逆転が予想された。そこからは3位の選手を抑えにかかるがプライオリティは大村よりその選手が持っている状態。とはいえ残り時間内にセットは入ってこずそのまま試合終了となった。大村奈央は見事セミファイナルに進んだ。
少しホッとしたような顔で海から上がってきた大村奈央、試合をこなすごとにサーフィンの調子がよくなっていくように見える。
大村奈央「波に乗るたびに、この場所の地形や波の特徴が見えてくる。(だからじゃないか調子がよくなっているように見えるのではないか?)」
大会3日目に向けての意気込みを聞くと「目の前のセミファイナルをしっかりやる」と答えてくれた。この答えはラウンド3が終わった後のクォーターファイナルに向けての意気込みと同じ内容。“1つ1つのことをしっかりやる”という言葉から大村奈央が持つサーフィン、試合に対する引き出しの多さを改めて感じさせられた。
大会3日目となる明日、大村奈央のセミファイナルは現地8時からの開始予定(日本時間15時)。大村奈央は、ファースト・セミファイナルでポルトガルのテレサ・ボンヴァロ、コスタリカのレイラニ・マクゴナグル、南アフリカのビアンカ・ブイティンダッグと対戦。
セカンド・セミファイナルでは、フランスのポーリン・アドゥ、ジョアン・ディフェィ、ドイツのフランキー・ハラー、ニュージーランドのエラ・ウィリアムスが対戦する。
また男子の試合も予定より1日前倒しで始まることになり、明日も見所満載な1日となるだろう。
2017 ISA World Surfing Games
開催国 ビアリッツ フランス Biarritz, France
開催日 2017年5月20日~5月28日(現地時間)
<派遣選手>
・メンズオープン
大音凜太
小笠原由織
田中大貴
堀越力
・ウィメンズオープン
大村奈央
野中美波
・スタッフ
酒井 厚志 (選手団長)
吉永 修 (マネージャー)
井本 公文 (マネージャー)
ウェード・シャープ(コーチ)
大石 純也(通訳)
オフィシャルサイト:
http://isaworlds.com/wsg/2017/en/