パラサーフィンの認知と普及を目指し、日本サーフィン連盟が2024年度 NSAパラサーフィン事業説明会を開催

横浜みなとみらいで、3日間の予定で開催される「INTERSTYLE 2024」にて、一般社団法人 日本サーフィン連盟(以下 NSA)による「2024 年度 NSA パラサーフィン事業説明会」が行われた。

現在、国際競技団体(IF)である「国際サーフィン連盟(ISA)」が「国際パラリンピック委員会(IPC)」にサーフィンをパラリンピック競技追加を申請。2028年 ロサンゼルス大会での認可を目指して、各国の国内競技団体(NF)と協力体制をとりながら活動を進めている。

 

2023年にハンティントビーチで行われた世界選手権に出場した日本チーム Credit: ISA / Sean Evans

 

その日本では日本オリンピック委員会(JOC)加盟の国内競技団体(NF)である NSAが2016年から「ISAパラサーフィン世界選手権」へ日本チームを派遣し、実績を積み上げてきた。

そして、NSAはそれだけでなく、公益財団法人 日本パラスポーツ協会(JPSA)と日本パラリンピック委員会(JPC)に国内競技団体として加盟申請を予定。日本での活動にさらに拍車を掛けている。

 

日本サーフィン連盟 酒井理事長

 

冒頭で理事長の酒井厚志氏から、昨年の世界大会で選手の頑張りで6個のメダルを獲得したことを賞賛。世界レベルに近づいていることに触れ「引き続きパラサーフィンの認知と普及に努めていきたい」と挨拶。

 

 

説明会では事務局次長の清水雅裕氏が進行。競技本部長の浜村昭雄氏、パラ競技部専門委員会 部会長である小川文夫氏が今年度のパラサーフィンの取り組みを詳しく説明を行った。

 

まずは「NSA パラサーフィン・クラシフィケーション」の実施。これは「NSA パラサーフィン全日本選手権」及び「ISA パラサーフィン世界選手権」参加希望者の障がい別クラス分け(日時、会場は調整中)を行う。自分がどのクラスに入るのかわからないという選手がたくさんいるということで、まずはこれを開催する。

 

参加希望者はNSA会登録を済ませた上で、自身の障害を証明する医師の診断書など正式書類を用意。それをNSAに提出しすることで、暫定のクラス分けが決定される。競技種目は下記の9クラス。

 

Para Surfing Sport Classes(パラサーフィンクラス分類)

 

  • Para Surfing Stand 1(スタンド 1)
    上肢切断、先天性もしくはそれに相当する障害、低身長で立った状態で波に乗るサーフアー。
  • Para Surfing Stand 2(スタンド 2)
    膝下の切断、先天性もしくはそれに相当する障害、または脚長差があり、立った状態で波に乗るサーファー。
  • Para Surfing Stand 3(スタンド 3)
    膝上切断、両下肢切断、先天性もしくは障害同等の状態で、立った状態で波に乗るサーファー。
  • Para Surfing Kneel(ニール)
    膝上切断、または両下肢切断、または先天性もしくはそれに相当する障害を持つ、膝をついてパドルを持たずに座った姿勢で波に乗るサーファー。
  • Para Surfing Waveski(ウェーブスキー)=SIT(シット)
    パドルを持って座った状態で波に乗り、波に向かってパドリングや安全にボードに戻るためのサポートを必要としないサーファー。
  • Para Surfing Prone 1(ブローン 1)
    腹ばいの姿勢でパドリングして波に乗り、安全にボードに戻るのに助けを必要としないサーファー。
  • Para Surfing Prone 2(ブローン 2)
    腹ばいの姿勢で波に乗り、パドリングやボードへの安全な乗り込みに補助が必要なサーファー。
  • Para Surfing Vision Impairment 1(視覚障害1)
    IBSA分類B1レベル(視力0〜光覚まで)の立った状態で波に乗るサーファー。
  • Para Surfing Vision Impairment 2(視覚障害 2)
    BSA分類 B2(視力0.03〜視野5°まで、あるいはその両方)、B3 レベル(視力0.1まで、あるいは視野20°まで、あるいはその両方)のスタンディングポジションで波に乗るサーファー。

 

それを経て、こちらも日時、会場は未定だが「第 2 回 NSA 全日本パラサーフィン選手権(2024)」を開催する予定。これは「ISA パラサーフィン世界選手権(日時、会場は調整中)」の代表の選考大会を兼ねる重要な大会となる。

 

「第 2 回 NSA 全日本パラサーフィン選手権(2024)」で結果を残すことができれば、ここで改めて、NSA強化部、医科学委員会、日本パラスポーツ協会の競技部などで審査が行われ、総合的な判断で世界戦への出場資格がもらえることになる。

ただし、「ISA パラサーフィン世界選手権」に出場することになった場合、改めて国際クラシフィケーションを受ける必要があり、その診断でクラスが変わる可能性もある。NSAとしてはISAと連携して厳正に対処するとのこと。

また「第 2 回 NSA 全日本パラサーフィン選手権(2024)」では、NSA 医科学委員会及び医師のクラス分け診断により、上記クラスに属さない障害のサーファーを対象にしたオープンクラスの開催も予定している。

 

STAND 1-WOMENで優勝した池上凪  Credit: ISA / Sean Evans

 

昨年の「ISA パラサーフィン世界選手権」は、11月にアメリカのカリフォルニアで行われ、日本チームはSTAND 1-WOMEN 池上凪が1 位、STAND 1-WOMEN 高尾千香子が4位、STAND 1-MEN 加藤真吾が2位、STAND 2-MENで伊藤健史朗が4位、STAND 3-MEN では勝倉直道が4 位、PRONE 2-MEN で藤原智貴が3 位と6人のメダリストが誕生した。

 

2023 Huntington Beach ISA World Para Surfing Championship

 

NSAは世界戦への挑戦だけでなく、これからはよりパラサーフィンを知ってもらうために国内での活動にも力を入れていくと言う。そのためにはスポンサー集めとバックアップする人を増やし、国内におけるパラサーフィンの人口を増やし、普及発展に向けた活動を続けていきたいと語った。

 

 

それぞれ自身の障害のクラスを説明、昨年の大会での結果と次なる挑戦と想いを語った。

 

 

池上凪
2024年9月に宮崎で開催の全日本選手権では優勝を目標に掲げる池上選手 Credit: ISA / Sean Evans

 

STAND 1-WOMEN 1 位の池上凪 選手

 

「自分の障害は車が高速道路で横転して腕が挟まれてしまって、ちぎれる寸前ぐらいの状態で病院に運ばれました。移植手術、全部含め、外科手術7回と、形成手術4回、あと2年7ヶ月のリハビリを終えて、今のこの状態に回復してます。握力が大体当時だと4キロだったんですが、トレーニングで10キロぐらいまで握力が戻ってます。

私の腕を直した主治医の先生が、俺の大作だから刺青入れたり、邪険に扱ったりするなよって最後に言われてお別れしたので、私はそれを守る使命があると思って、いろんなことにチャレンジしてきました。その気持ちがたまたま運を運んできてくれて今回優勝することができたと思っています。

なので、これからは、そういうたまたま起きた出来事を私自身が愛して、それにちゃんと取り組めるように、振舞っていけたらなと思っています。」

 

 

藤原智貴 選手
PRONE 2-MEN 3 位となった藤原智貴 Credit: ISA / Pablo Franco

 

PRONE 2-MEN 3 位の藤原智貴 選手(介助犬は大吉くん)

 

「私の障害はサーフィン中の事故で、首の骨を粉砕骨折しました。ちょうど胸の半分から下がまったく動かないです。また、両手の握力が無いので、指が使えないという障害になります。

クラスはPRONE 2で腹ばいで乗るクラスで、サポートをつけて良いクラスです。沖へ行くピッチャーと岸で待つキャッチャーというバディ2人に、自分で3人でチーム戦で戦うクラスになります。

昨年の成績は銅メダルでした。過去5回、世界大会に出させてもらって、4回ファイナルに残っているんですけど、すべて4位、3位というブロンズコレクターになっているので、今年、世界戦に選ばれて出ることができるなら、もっと良い色のメダルを皆さんにお見せしたいと思うので、それに向けて今年一年頑張っていきたいと思います。」

 

勝倉直道
勝倉直道  Credit: ISA / Sean Evans

 

STAND 3-MEN 4 位 勝倉直道 選手

 

「私の障害特性は30年ぐらい前にオートバイで事故を起こしまして、全身火だるまになって火傷してしまったんですね。足自体は皮下脂肪から筋肉から全部剥がしちゃった状態で、ほぼ骨と薄い筋肉と皮を貼り付けた皮膚移植をずっと繰り返し行う状態でした。

ただ、筋と骨がちゃんとしっかりしていたので、歩くことも、さらにはサーフィンをずっと続けていたことによって、筋肉もある程度は復活してきてます。

私の場合はSTAND 3というクラスで、同じクラスで言うと腿から切断された方と同じクラスになっています。それに義足をはめてやるっていうようなクラスなのですけど、僕の場合は更にハンディキャップがあって両足なんですね。

両足の足首が全然動かない状態で。両足でボードの上に立っているんですけど、ほとんど膝が曲がらない、動かない状態で、上半身だけでバランス取るような、そんなサーフィンしています。

2023年は第4位だったんですけど、2022年も同じ4位で、毎回、毎回この4位だと、どうしても納得がいかないので、2024年の世界戦にもし出られるのならば、もっと上位の金メダルを目指したいと思っています。」

 

生方亮馬
生方亮馬 Credit: ISA / Jersson Barboza

 

PRONE 2-MEN 22 位 生方亮馬 選手

 

「クラスはPRONE 2です。自分は川に飛び込んで、首を粉砕骨折しました。障害特性は藤原さんと同じ障害です。去年、初めて世界戦に行かせてもらいました。サーフィンは障害前からやっていたんですけど、障害があってからは数年しか経っておらず、経験も浅かったことで、一回目の世界大会は最下位でした。

でも、また今年も行けることができれば、(順位は)上がるだけなので。自分もサポートがいないとできないクラスなので、練習するにもサポーターの存在がとても必要になってきます。

毎度、毎度、サポータを探すのにも苦労しているところではありますので、このパラサーフィンを知っていただいた方には、車椅子で海で何かやっている人を見たら、ぜひ声をかけていただきたいと思っております。よろしくお願いします。」

 

 

問合せ:日本サーフィン連盟 / 担当:清水
メールアドレス:info@nsa-surf.org
電話:03-6434-7341