現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第43回となる今回は、毎年恒例のバーレヘッズのシングルフィン・フェスティバル、都筑有夢路、岩淵優太、矢作紋乃丞、酒井仙太郎の4名が参加したUSHERカップ、タスマニア・ロードトリップ。
取材、文、写真:菅野大典
2024年1月のゴールドコースト。
今年はラ・ニーニャ現象が終わりドライサマーになると言われていたのですが、予報に反して雨の多い日が続いています。
年明け早々はストームコンディションとなりビーチもクローズ。その後も雨の降る日が多く、いつもの綺麗な青い海は茶色になる日が続きました。
それでもハイシーズンのゴールドコースト。国内外からたくさんの人が訪れており、町の中や飲食店等は毎日賑わいを見せています。
バーレーヘッズで毎年恒例のシングルフィン・フェスティバル
ゴールドコーストの波の状況は、天候は悪いものの初旬からコンスタントに波のある状況となりました。
1月5日〜7日にはゴールドコーストの夏の風物詩とも言える”Burleigh Heads Boardriders Single Fin Festival” がバーレーヘッズで開催。
今年で27回目を迎える今大会には、元世界王者であるジョエル・パーキンソンをはじめとする豪華なメンバーが集まり、大盛り上がりのイベントとなりました。
中旬には大きな低気圧からのうねりが届きサイズのあるいいコンディションに。ポイントブレイクを中心に良いコンディションが楽しまれていました。
ゴールドコーストにトレーニングしにきていた都筑有夢路。みんなで撮影しようと声をかけ、『混雑している良い波と、混雑してないタフな波だったらどっちがいい?』と聞いたら、全員一致で混雑していない場所と返答。
レールを入れたターンの質はとても高く、海の中でも他の女子サーファーとは1つレベルの違ったサーフィンをし目立っていたアムちゃん。タフなコンディションながら何度もゲットを繰り返しサイズのある波に乗っていました。
ジュニア世代ながらしっかりとしたラインどりをする仙太郎。今回の遠征でオーストラリアは3回目らしく、『どこに行っても波が必ずあって、ビーチの背景も綺麗でサーフィンしているだけで気持ち良くなりました』と言っており、夏のゴールドコーストで切磋琢磨にサーフィン修行に励んでいました。
数名しか入っておらず、サイズが大きいだけで良い波かどうかわからない中、1番に海に入り何本も良い波をゲットした黒川楓海都。
連日ものすごく混雑しているスナッパーロックスよりも人の数が少なく、サイズのあるパワフルな波でのターンはとても練習になるコンディション。最近は夏休みの大混雑からか、あえて良い波の割れているスナッパーロックスを避けるプロサーファーやローカルも多く、人がいなくなり始める日暮れ間近の時間帯を狙って海に入る人も多くなってきました。
クラブ対抗戦「USHERカップ」がスナッパーロックスで開催。
18日〜21日にはUSHERカップがスナッパーロックスで開催。
当初はQSシリーズの練習であったり、各ボードライダーズや有望なサーファーをサポートする目的で開催されていましたが、昨年から”クラブワールドチャレンジ”として世界中にあるボードライダーズを招待しての開催。
第4回となる今年は、さらに招待されるインターナショナルクラブの数も増え、トライアルラウンドも設けられるようになりました。
アメリカで行われていたWSLワールドジュニアの試合後にすぐにゴールドコースト入りし、このUSHERカップ後には直接フィリピンのQS3000の試合へ向かうという、大忙しのスケジュールの矢作紋乃丞。
得意のエアリバースを含む素晴らしいサーフィンで善戦したものの初戦敗退の結果。しかしスナッパーロックスでジョエル・パーキンソンとヒートをできたというのはとても大きな経験。
ラウンド1、2と勝ち上がりセミファイナルへ進出した都筑有夢路。質の高いサーフィンには会場内からとても高い評価を受けていました。滅多にできないスナッパーロックスでの試合は貴重な経験。
『今は下の世代のレベルも上がり、レベルの高い同世代と共に日本の女子サーファーみんなでプッシュし合えてると感じています。』と言っており、日本の女子サーフィンのレベルを先頭に立って引き上げているアムちゃん。一昔前ゴールドコーストに移住したての頃『日本の女子サーファーのレベルは、、、』ということをよく耳にしていましたが、今は逆に日本の女子サーファーは強いと言われるほどになりました。
唯一のインターナショナルサーファーでオープンメンズのファイナルに進出したインドネシア、レギャンボードライダーズのマデ・サトリワン。ファイナルでは他3人に圧倒され思うようなライディングができなかったが4位という立派な成績。
現役を退いても、いまだに衰え知らずのサーフィンの元世界王者のジョエル・パーキンソン。板の傾ける角度、太いラインを描くレールサーフィンは他の選手と同じような波に乗っても波が良く見えてしまいます。
ファイナルではバックアップスコアがなく3位となりましたがスナッパーロックスでのサーフィンの実力はやはり群を抜いている様に感じます。
プライオリティを待たずひたすら波に乗り続けバリエーションのあるサーフィンを披露していたジョエル・ヴォーン。エアーだけに頼らずしっかりとしたマニューバーも織り交ぜ会場を大きく盛り上げた。あと一歩及ばず2位の結果でした。
ヒート開始から集中し見事優勝をしたシェルドン・シムカス。第2回のUSHERカップ、2年前にスナッパーロックスで行われたCSでも2位と言う結果を収めるなど、ホームポイントでの試合は本当に強い。嬉しい自身2度目の優勝となりました。
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残念ながら4日間を通してオフショアのスナッパーらしいコンディションとなったのは3日目と、4日目の朝のみでしたが、それでもこのスナッパーロックスという質の高い波が割れる場所での試合は見応えのあるものとなりました。
第4回目ながら毎年どんどんと規模が大きくなり、レベルの高いサーファーが世界中から集まる様な大会にまで発展しているUSHERカップ。来年またどのような形に発展するのか楽しみです。
タスマニア・ロードトリップ。
昨年末からスタートしたロードトリップ。2024年の始まりはカーフェリーに乗りオーストラリアの南に位置する島、タスマニアからスタートしました。
タスマニアでサーフィンと聞くと、ビッグウェーブで有名なシップスターンが想像されますが、入り組んだ地形の島であるこの場所には、常にどこかしらにうねりが入り風をかわす場所があり、基本的には冬の時期は大きなうねりと強い風が吹くことが多く、逆に夏の時期は穏やかなコンディションが多いとされています。
入り組んだ地形の州都ホバートの南部。サーフィンをできるポイントがたくさんありました。夏休みという事で人も多かったのか、それなりの適度な人数のサーファーがいました。
別のポイントではサーフレッスンの車も発見。子供を中心に20人以上のたくさんの人がレッスンを受けていました。夏休みだからなのか、平日はどうなのだろう。。。
以前オニールコールドウォータークラシックが行われていた、タスマニアの北西部に位置するグリーンポイント。滞在中はうねりが足りずに小さなコンディションでしたが、綺麗なロケーションの素晴らしい場所でした。
グリーンポイントの岬の反対側に位置するポイントではサイズのある良いコンディション。南西向きのビーチはうねりに反応しやすく小さな予報の日でしかできなそうな感じです。
奥の岩沿いではゴリゴリのチューブがスピットを吹いて巻いていました。
ビーチ沿いにはたくさんの4WDの車が停車。以前ウエスタンオーストラリアやサウスオーストラリアに行った時も感じたのですが、田舎のサーフポイントに行くには車高の高い4WDの車が必需品となります。
このポイントもそうですが、ガタガタのダート道を何キロも走ったあとにひらけたパーキングがあり、さらにそこからからポイントに行くのは普通の車では到底アクセスできないので、時間をかけて歩いていくしかありませんでした。
別の場所では、丘の上に車を停めてから40分以上歩いて辿り着いたポイントもありました。行きは下り坂でよかったのですが、帰りはビーチで遊んだ後のクタクタ状態の子供3人を連れて上り坂。。。とてもしんどい思いをしました(笑)
アクセスは大変な場所が多かったのですが、その分手付かずの自然が残っており、素晴らしいサーフポイントがたくさんありました。コンディションが良ければ質の高い波が割れており、混雑なくサーフィンできると思います。
手付かずの自然が残り、波もロケーションも良いサーフポイント。サーフトリップの醍醐味の様な場所といった感じの場所でした。
またタスマニアには至る所に無料キャンプ場があります。最近はアコモデーションの値段が驚くほど上がっているので、コストをかけずにサーフトリップをする方は、キャンピングカーやバンで常に動きながら色々なポイントに行けるのでおすすめします。
夏の時期は晴れれば日中は暖かく、服装も半袖短パンでも十分ですが、朝夕はだいぶ冷え込みます。海水温は4,3mmのフルスーツといった感じの冷たさで、ブーツ、ヘッドキャップをしている人も見かけるほど。南極からのうねりがダイレクトに入るためとても冷たかったです。
夏の時期は夜まで明るく、19:00を過ぎた時間帯からでもサーフィンに行く人や素潜りに出かける人がいたほど。南に位置しているので夏の日照時間はとても長い。
冬の時期のコンディションは想像するに過酷そうですが、夏の時期は晴れる日も多く、コンスタントなうねりでサーフィンを楽しめると思える場所でした。
ただゴールドコーストなどがある東海岸の街と比べると、主要の街からサーフポイントまでの距離もあり、毎日仕事をしながらサーフィンをするという生活を送るのは難しそうだと感じました。
もちろんその地域で生活をしている人達は除きますが、一般的な会社勤めなどをしながらサーフィンライフを送っている人の多い東海岸の街とは生活スタイルが異なると思います。
それぞれの地域にそれぞれのサーフィン環境。
以前に旅した場所も含め、オーストラリアの中でもゴールドコーストという場所はサーフィンに対する環境がとても特化した場所だと思います。
インフラの整った街があり、ビーチフロントの設備や、海へのアクセスの容易さを思えば、良いサーフィンライフを送りたい人が移住したいと思うのがよくわかります。
年を重ねるごとにサーフィン関連の施設やトレーニング施設もどんどん充実してきて、今ではたくさんのプロサーファーが集まる様になりました。
また、プロサーファーだけでなく初心者サーファーから観光客サーファーまで、本当にたくさんの人が年々増えています。
ただ本当に人数が多過ぎて、プロの選手でもスナッパーやD-BAHでは練習にならないとあえて違う場所を選んでいる人も多くなりました。
人口増加によるポイントパニック状態が問題
もちろん質の高い波が割れて、SNS等でアップされる映像や写真は素晴らしいのですが、その影には人が多くて全く波に乗れずにいる人や、せっかく波に乗れても、前を崩されたり、前乗りされたり、人を避ける動きで精一杯だったり。
何が良い環境というのは人それぞれですが、国土の広いオーストラリアには色々なサーフポイントがたくさん。それぞれの地域にそれぞれのサーフィン環境があると感じたロードトリップになりました。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
INSTAGRAM :https://www.instagram.com/nojiland/