森友二、GCショートステイでステイス・ガルブレイスにコーチングを受ける〜サーフィンのコーチという職業

現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第41回となる今回は、森友二、ショートステイでステイス・ガルブレイスにコーチングを受ける。オーストラリア各地ではイベントが開催。WJC出場者。サーフィンのコーチという職業など。

取材、文、写真:菅野大典

 

11月のゴールドコースト。

 晴れ間が広がれば夏の暑さ。しかし今月は天気が崩れる日が多く、11月なのに肌寒いと感じる日が続きました。

 

なかなかゴールドコーストらしいカラッとした晴れ間が広がらない11月。それでも朝の散歩道にはジョギングを楽しむ人がたくさん見られます。
朝ビーチに行ってみるとにはツバメがたくさん飛んでいました。
晴れた日のビーチにはガゼボがたくさん。
プルメリアの花も咲いてきて、晴れさえすれば夏という感じです。

 

 ゴールドコーストの波の状況は、先月に引き続き北風の吹く日が多くサイズも小ぶりなイマイチなコンディション。それでも地形の整っているオープンビーチもたくさんあるので、コンスタントにサーフィンができる状況にありました。

 

天気がよく、風が合う日は多くのサーファーで賑わっています。

 

 日が昇る時間もだいぶ早くなり、風が吹く前の朝1の時間帯を狙ってたくさんのサーファーが入水しています。

 

スウェルマグネットのD-BAH。
みんな早起きのオージー。朝早い時間帯から仕事前や学校前にたくさんの人がサーフィンしています。
毎朝のように仕事前にサーフィンしているACSODのシェイパー、アレックス・クリューズ
パンデミック以来久しぶりにゴールドコーストに訪れた森友二。10日間という短期滞在だが毎朝4時起きでコーチングを受ける生活をしていました。
ステイス・ガルブレイスにコーチングを受ける森友二。

 

 WSLのコメンテイターとしてお馴染みのステイス・ガルブレイス。以前は、ジャック・フリーストーンやミッチ・クリューズ、マリア・マニュエル、イーサン・ユーイングといった選手のコーチをしており、現在はクイックシルバーで働きながら、サングラスメーカーであるエポキやWSLイベントでも活動し、多忙な日々を過ごしている。

 

セッション終了後はビデオアナライズ。
現在、選手としてもコーチとしても活動する23歳のユージ。太くてバリエーションのあるサーフィンはオージーからもとても評価が高い。

 

 単純に、『なぜCTサーファーはコーチをつけるのか?』など、わかってそうでわからないことを聞いたり、サーフィンの技術だけでなくコーチとしての言葉の使い方やモチベーションの上げ方など、知識を押し付けるのではなくオージー特有の寄り添い方なども勉強になったそうで、世界を知る人からコーチングを受け、多くの学びを得た様子でした。

 

コーチングの無い日は波を探しに行きゴールドコーストに住む日本人とセッション。
日本ではなかなか一緒にサーフィンがする機会がないが、地元が違う人でも時間を共にできるのがゴールドコーストの良い所。
同じ日本人ながらスタイルのある格好いいサーフィンは、PBCに留学中のキッズ達にとっても憧れるサーファーの存在。良い言葉と刺激をもらい、貴重な時間を過ごす事ができた様子でした。

 

 サーフィンをする以外にも時間があるときには、自身のスポンサーRVCAのあるボードライダーズの会社のオフィスに顔を出したり、サーフボードファクトリーを視察したり、シェイパーとサーフボードの話しをしたりと、ゴールドコーストのサーフィンを取り巻く環境に直接触れ、世界のサーフィンのトップシーンを感じながら、波の良くない時期のゴールドコーストだからこそ見れるとても濃密な時間を過ごしていました。

 

 中旬以降もたまにサイズの上がる日はあるものの、エピックなコンディションとはならず。ゴールドコーストは波のいまいちな月となりました。

 オーストラリア各地ではイベントが開催。

 4、5日には、ニューキャッスルのレッドヘッドビーチでWSLプロジュニア ”Let’s Surf Lake Mac Pro Junior”が行われました。

 来年1月に行われるワールド・ジュニア・チャンピオンシップ代表をかけた、オーストラリア/オセアニアリージョンの最後となるこのイベントでは、ハーレー・ウォルターズとミラ・ブラウンが優勝。

 

優勝したハーレーとミラ。PHOTO:WSL

 

 オーストラリア/オセアニアリージョンのランキングも確定し、上位2名がワールドジュニアへの出場権を獲得。

 

 11、12日には、今年で9回目の開催となる”Bede’ Grom Shootout 2023”が、ノースストラディの愛称で知られる、ノースストラドブロークアイランドで開催。

 

 

 このイベントは、元CTサーファーでノースストラディ出身のビード・ダービッジによるイベントで、毎年7月にゴールドコーストで行われる”OCCY’S GROM COMP”と共に、グロメッツサーファーの人気のイベントの一つとなっています。

 

この時期は風も合いやすく、うねりも拾いやすいためベストシーズンとなるノースストラディ。波もよく、2023年シーズンを世界2位で終えたノースストラディが地元のイーサン・ユーイングも会場に足を運ぶなど、イベントは大盛り上がりの様子でした。

 

 同じく12日にシドニーのボンダイビーチでは、”Australian Open of Surfingツアーのグランドファイナルが開催。先月コフスハーバーとサンシャインコーストで行われた予選でのポイント上位者とローカルワイルドカードの15名の男女が出場し、賞金10,000ドルをかけて競われました。

 

女子の優勝はサンシャインコーストでの予選でも優勝したバーレーヘッズのアイラ・ハパッツ。15歳ながらオープンクラスのイベントでの優勝は自信につながる勝利。タレントが揃うオージーのこの世代、みんながメキメキと実力をつけているように感じます。PHOTO:SURFING AUSTRALIA

 

 18日には、ゴールドコーストのマイアミビーチで毎年行われているMNMボードライダーズのグロムイベント”The Critter Comp”が開催。

 

ゴールドコーストのボードライダーズの中でも特にイベントを多くやっているMNMボードライダーズ。海の前の散歩道はたくさんの人で溢れかえっていました。

 

 午前中の朝早い時間帯は風も弱くコンディションにそこまで影響が出ないものの、ファイナルが行われる時間帯にはグチャグチャのコンディションになってしまうのが、オープンビーチで行われるイベントの宿命。

 

沖からボコボコの波をしっかりとアクションを入れながら繋ぎ14歳以下ボーイズで優勝したヘミ・オブライアン。
オーストラリアのジュニアランキングに反映されないファンイベントなので、ファイナルの前の選手同士もラフな感じに。
長い手足で大きなダイナミックなターンを決めるメイカ・ロック。まるでメイシー・カラハンを思わせる様なサーフィンで2位以下を大きく引き離し、16歳以下ガールズの優勝を手にした。
良い波がつかめずワイプアウトが目立ち16歳以下ボーイズ3位となったリコ・ハイビトルだが、サーフィンの実力は抜けていた。
落ち着いて試合を運び、形の良い波をゲットしてグッドスコアを2本揃えたライダー・ペイン。強豪が揃う16歳以下ボーイズで嬉しい優勝を飾った。

 

 先月から各州で始まっていたオーストラリアンボードライダーズバトルの予選も今月で終わり、来月にワイルドカードの発表と共に本戦に出場できるクラブが発表されます。

 年の終わりまで残りわずかというのもあり、国内のシリーズイベントも大詰めとなっているオーストラリアのサーフシーン。

 現在も”AUSTRALIAN JUNIOR SURFING TITLE”という、各州の代表となったジュニアサーファーによる、オーストラリアチャンピオンをかけたイベントがフィリップアイランドで開催しています。(イベント期間11月25日〜12月3日)

 

 

 年の後半はジュニアやグロムのイベントが多くなるオーストラリア国内。元世界王者や元CTランカー、ボードライダーズクラブが各州のサーフィンオーストラリア団体と協力してグロムイベントを開催するのは、オーストラリアのサーフィンが一体となっている証拠だと思います。

 

 普段の生活の中でもサーフィンというものが一般に普及しており、グロムから引退した大人のサーファーまでがビーチライフを楽しんでおり、サーフィンに対して大きな理解を示しているように感じます。

 

ゴールドコーストでは当たり前に見る朝のオープンビーチでのコーチング風景。D-BAHやスナッパーロックスといったメジャーなサーフポイントでなくても、習い事の感覚でコーチングが行われています。

 

サーフィンのコーチという職業

 

 最近ではSNSの普及もあるせいか、選手でありながらコーチングをする20代の若いサーファーも増えており、各地域にあるボードライダーズと契約していたり、グループレッスンをしていたりと、オーストラリアのコーチング事情も変化している様に感じます。

 

 もちろんサーフィンオーストラリアのハイパフォーマンスセンターに所属したり、オーストラリアチームのコーチであったり、有名な選手の専属コーチをしていたりとする、”サーフィンのコーチ”を職業にしている人も少ないながらいますが、以前までフルタイムで活動していたコーチが週末しかコーチングを受け付けていなかったり、別の職業に転職し副業として特定のサーファーしかコーチングをしなくなったという事を耳にする様になりました。

 

 強烈なインフレにともない安定して稼げる職につくという事は、コーチだけでなく、選手やジャッジをやっている者にも同様ですが、そういった切り替えがオージーは早いなって感じます。

 

 もちろんそれは悪い意味でなく、それだけ子供の頃からいろいろなものに触れてきているので、切り替えもできるし、違う分野に対応もできるしという事なのかなと感じます。

 

ジュニア時代からジャッジをベースにやってきて、その知識を元にコーチングをはじめ、現在はWSLコメンテイターやメーカーに勤めているステイス。さまざまな角度からサーフィンを見る事で多くの知識を得れるのかなとも思います。

 

 久しぶりにステイス・ガルブレイスと会って日本人サーファー(海外生まれの海外ベースにしている日本人以外)について聞くと、コロナ以前は都筑有夢路はプライムイベントでの勝利をメイクしたり、稲葉玲王はCTクオリファイにとても近くにいた。今も強いサーファーはいるし特に日本の女子は本当に強いと思う。と言っていました。

 

 でもなぜCSで上位に食い込んでこないのかというのは、1番に転びすぎているとの事。ワォ!と驚く様な事やターンをするけど、転んでしまう。そこを転ばなければ、エクセレントだったのにという場面が多くあり、上位の選手はそこをメイクしてくるとの事。

 

今年5月にスナッパーロックスで行われたCS第1戦で素晴らしいサーフィンを見せていた大原洋人とステイス。

 

世界レベルのサーフィンの質を持った選手層の厚み

 

 ラフな会話をしただけなので明確な理由というのは他にも多々あると思いますが、CSで通用するサーフィンをする強い選手がもっと増えることで、CTのクオリファイ争いに参加できる様になると思います。

 

実際にオージーはそのレベルがたくさんいて(その上のレベルもいる)、選手同士で切磋琢磨している。世界レベルのサーフィンの質を持った選手層の厚みが増える事が必要なのかなと感じました。

 

 今月は波が良くないながらも、世界トップのサーフシーンを感じれる月となりました。また、国内のニュースではないが、ローラ・エネバーが女子としてパドルインの世界最大の波に乗りギネス記録を樹立したり、オーストラリアパラサーフィンチームがISAワールドパラサーフィンチャンピオンシップでメダルを7個とったりと、オーストラリアのサーフィン界にとって嬉しいニュースも舞い込んできた月にもなりました。

 来月は早いもので年の締めくくりとなる12月。夏のオーストラリアからのニュースをまたお届けします。

 

 

 

 

菅野大典オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。