2023年度のJPSAツアーの最後を締めくくるのは、ロングボード第4戦「さわかみ日向プロ」。ショートボードに続き、宮崎県日向市小倉ケ浜で26日から28日までの日程で開催。3日間通して、波はモモコシで、セットでハラ。ロングボードの大会には十分なコンディションで行われた。
小倉ケ浜のポイントはローカルルールで、海に向かって川の左側はロングボードは禁止。なので、ウネリの入り方も見ながら、ジャッジブースの正面あたりをコンテストエリアとして設定。その右側から堤防までの間を練習エリアとして開放。一般の方もサーフィンできる環境も整えた。
朝はサイドオフながら風の影響も無くクリーン。波も張ってくるから、乗りやすい。テイクオフからノーズでハングファイブからハングテン。そして、パワーゾーンに戻るためにステップバックしてつないで、再びノーズ。インサイドで当てこんでフィニッシュが一連の流れ。ここであとはどう各々のスタイルが出せるか。
ジャッジは技のクォリティや波のどこで演技をしているかを重視。そして、全体の構成の流れも見て、波をくまなく使っての演技に対し評価が高かった。だから、岸ギリギリの最後まで気を抜かず、攻める選手が多かったことがエキサイティングなものとなり、今大会の見どころでもあった。
2023年度のグランドチャンピオンは今大会で決定する。ロングは全4戦中、上位3戦のポイントでランキングを決定。これまでの女子ランキングは、1位が吉川広夏、2位 小林恵理子、3位 古家伸子、4位 小栗瑞恵、5位 小髙恵子、6位 瀬下絵里子。7位 大村結衣と続く。
ここで、各選手の一番低い点をカットして計算し直すと、これまで第1戦の種子島、第3戦の茅ヶ崎の2戦を優勝している吉川広夏と、第2戦の千倉大会で優勝した7位の大村結衣の2人にほぼ絞られる。2人は1戦スキップしているので、今大会のポイントがベスト3に入る計算になるからだ。
男子は1位が秋本祥坪、2位 浜瀬海、3位 堀井哲、4位 西口京佑、5位 増山翔太、6位 武川慎、8位 小熊海ノ介と続く。浜瀬も女子の吉川、大村と同様、ツアーを1戦スキップしているので、この大会のポイントがそのまま加算される。
そう考えるとトップに立つのが、2位の浜瀬海。逆に追いかける立場になるのが1位の秋本祥坪。この2人に絞られる状況で、秋本がグラチャンを取るためには本人が勝ち上がる前提で、浜瀬の早めの敗退。
それは考えられないので、お互い決勝まで勝ち上がるとすれば、秋本優勝、浜瀬2位で、ベスト3の計算は同点。同点の場合は全4戦のポイント合計となり、4戦全て出場している秋本がグラチャンに決定となる。
まずは大会初日の男子。レイトエントリーでR-1から登場した堀井哲やハワイの内村喜章の演技が突出していて、これが今大会での基準になった。女子では茅ヶ崎大会で3位に入賞した関口海璃がノーズの演技を連発。
本人曰く「初めてハングテンを試合でやりました」と言うものの、その完成度は前と比べものにならないほど洗練されている。相当、練習を重ねてきたことがわかる演技だ。あとは流れの中でどう技を入れるかが次の課題になるだろう。
このDAY-1でのトピックスは田岡なつみ。海外遠征で今年はJPSAに1戦しか出場していない。ポイントが無いためにR-2からの出場となった。朝に比べると風も入って「思ったより乗りづらい」と言っていたものの、右から入るライトのセットを沖からつかむと、ノーズを引っ張りスムースな流れの中で、インサイドまでの演技を披露。これに8.50ポイントがコール。
さらに再びセットで、前の演技よりもノーズ、足技のバリエーションも蓋して「これは10ポイント出たかも」と最後には手を合わせるポーズ。これは9.93ポイントで、満点は出なかったものの、今日一の会場を沸かせた演技となった。
また、今大会のローカルAMシード。男子の夏梅和彦は、R-1で3位敗退するもトータル11.23ポイントを出して、公認プロ資格を獲得です。おめでとう!
DAY-2は女子のグラチャンが決着。速報でもお伝えしたとおり、R-4で吉川広夏と大村結衣が同じヒート組で対戦。ここで最初に入ったセットに同時にテイクオフ、お互い交錯してワイプアウト。ジャッジはグーフィーの波だと判断して、大村のノンプライオリティ・インターフェアとの裁定を出した。
これで大村は2本目の得点が半分になるという、ペナルティとなってしまう。しかし、ここで2人が凄いのは。まず吉川が気を取り直して、エクセレントを2本揃えたこと。また、大村も不利な状況でありながらも、果敢に攻めて同じくエクセレントの8.63ポイントを叩き出し、その実力を見せたこと。
しかし、やはりそのペナルティは重く、大村は4位で敗退。結果、これで吉川が2023年のグランドチャンピオンを獲得。これで6度目となる栄冠を手に入れた。おめでとう!
また、R-3で敗退したものの、瀬下絵里子が今年のルーキーオブザイヤーが確定。こちらもおめでとう!
この日、やはり、女子は田岡なつみが9点以上の演技を連発。男子は浜瀬海、秋本祥坪が同じくエクセレントを出し、強さを発揮。特に秋本祥坪はこの日、初の10.ポイントを出す好調さを見せて、明日へ繋いだ。
そして、運命の最終日。この日は全てマンオンマンとなるヒート組。ここでのドラマはセミフィナルのH-1の秋本祥坪 vs 武川慎。ここで先攻は武川がエクセレントの8.00ポイント。秋本が追いかける形でヒートが進行。その間に武川が2本揃えて、秋本のニードが7.87ポイントとなる。
秋本もノーズを引っ張りながらの演技で7.27ポイント。ニードを5.57ポイントまで下げるも、武川が再びバックアップを上げて、攻め続ける。これで再び、秋本はニード7.77ポイントに。時間も残り僅かとなり、万事休す。そのまま波は入らずに秋本はここで敗退という結果。これにより男子のグランドチャンプは浜瀬海に決定。4度目の獲得となった。おめでとう!
男子の決勝はその秋本を破った武川慎 vs グラチャンの浜瀬海。これぞ決勝戦という素晴らしい試合を両名は魅せてくれた。試合開始1分で浜瀬がエクセレントの9.00ポイント。さらにバックアップで8.33ポイントで試合序盤で試合を決める演技を魅せる。
グラチャンを決めた浜瀬海が10ポイントを出して優勝
しかし、試合ごとに自身の経験値を上げている武川も負けてなかった。浜瀬を師事する武川もその戦略を良く知る一人。1本目に同じくエクセレントで8.50ポイント出して、6本目の演技は武川の体幹の良さを見せるバランス感覚で、ハングファイブ、テン、ファイブを続けてインサイドまでメイク。これに9.43ポイントが出て、トータル17.93ポイントと追い上げる。
これで浜瀬に火がついた。沖からのセットをつかむと、ノーズでファイブ、テンで引っ張る。ステップバックしてつないで、さらにノーズに足を掛けソウルアーチ。インサイドで当てこんでレイバックでフィニッシュ。
これに満点の10ポイントが出て、結果、トータル19.10として勝利。これで今年度3戦中、全て優勝という偉業も達成。グラチャンに花を添えた。おめでとう!
「ファイナルは、二人ともおかしくなってましたね。今までで一番楽しい試合でした。慎君も超楽しんでいました。ヒートハイエストのやり合いとなって、出すぞ出すぞが強くなって、慎君も出したかったと思うんですよ。でも、やっぱりここは負けられないなと思っていました。
慎君もメチャクチャレベルアップしているし、これから来ると思います。作戦は特に何もなかったです。慎君よりも先に一本目を乗ってというのはありましたが、その後は特になかったです。入る前にマンオンマンは実力の出し合いだからと言って、その通りになりました。」
続いて女子の決勝。こちらは日本の2トップ。田岡なつみ vs 吉川広夏。この試合は吉川が先に仕掛ける。テンポよく自分のリズムで技を掛けて、スムーズに乗りこなす。片や田岡は波の癖がつかめていないのか、ショートライドが続く展開。
この女子決勝の時間帯は、潮が引き一杯になったことと風がオンに回ったことでコンディションが大きく変化したためだ。この時点で田岡はニードが9.97ポイントと大きく引き離される。しかし、ここで終わる田岡ではない。「この大会は優勝するつもりで臨んだ」という強い気持ちと裏付けあるスキル。
セットの波でノーズのハングファイブからのテン。そして丁寧にインサイドまつないで、フィニッシュまでスピードのロスなく演技を終えれば、これに9.17ポイント。ニードを5.63ポイントまで下げる。
その勢いのまま、次のライディングで7.13ポイントを出して逆転。逆に吉川をニード8.81ポイントに追い込む。吉川もタイムアップ寸前にミドルからテイクオフ。ワイドで速い波ながら、板を合わせてノーズで引っ張るものの、インサイドでワイプアウト。これに7.73ポイントが付くも逆転はならず。ここで田岡の今シーズン、JPSAでの優勝が決まった。おめでとう!
「前半は迷子になっていて、右に行けばいいのか左に行けばいいのかって状態で、吉川選手がハイエストを出している感じでした。自分がどこで待てばいいか迷ってましたが、9点台を出して落ち着くことができました。
左にセットは見えてきたので、気になってはいて、ノンプライオリティのときにニードが5点ぐらいだったんですが、左で1本乗りたいなと思って移動しました。変に緊張しちゃいました。
今の目標は世界で1番を取ることで、世界のいろんなところを回ってきたので、来年も世界1番を目指しつつ、わたし試合が大好きなんで、JPSAも大好きなんで、出れる試合は全部出たいと思います。
最終戦優勝することができました。みなさんの応援が凄い勇気になっています。来年もJPSAは全戦回れるか分かりませんが、国内海外両方共に全力で試合を回りたいと思っています」
JPSAの次戦の大会は 11月24日開催の特別戦「さわかみチームチャレンジ」を残すのみとなるが、2023年のJPSAツアー戦は、これで全て終了。
2024年度は新しくJPSAが生まれ変わり「Sリーグ」としてスタートとなる。更なる発展を目指し、戦う場所を広げ、参加する選手の枠も増やしていくとのこと。来年からの新たな活動にも要注目だ!
JPSA ロングボード第5戦「さわかみ日向プロ」
男子
優勝:浜瀬海(2,000pts, ¥400,000)
2位:武川慎(1,720pts, ¥200,000)
3位:秋本祥坪、増山翔太(1,440pts, ¥100,000)
5位:堀井創、塚本将也、内村喜章、中井晴(1,280pts, ¥50,000)
女子
優勝:田岡なつみ(2,000pts, ¥150,000)
2位:吉川広夏(1,720pts, ¥70,000)
3位:菅谷裕美、小林恵理子(1,440pts, ¥30,000)
5位:古家伸子、榊原頼子(1,280pts, ¥20,000)
7位:小栗瑞恵、大村結衣(1,120pts, ¥15,000)
2023年ロングボードツアー
グランドチャンピオン 男子:浜瀬海
女子:吉川広夏
2023年ロングボードツアー
ルーキーオブザイヤー: 男子:小熊海ノ介
女子:瀬下絵里子
プレゼンターは、さわかみグループ代表 澤上 龍 氏
ロングボードの大会進行。石塚晃コンテストディレクターが、朝の状況から天候や潮回りなどを見極めて発表する。
ライブ放映のMCは、下村アナウンサーに、ロングボードでの新コンビとなった解説のマミさん(河村正美プロ)と進行の高橋みなとプロ。JPSA公式Youtube「Catch Up」から宮坂莉乙子レポーターと酒井まいカメラマン。
ハワイ マウイ島で育った「ソーシャルアワーコーヒー」のスタッフの皆さん。日向大会では毎日、美味しいコーヒーを提供してくれました。
https://socialhourcoffee.stores.jp/
ロングボードの大会期間中もツアースポンサーの「さわかみ」ブースでは、マイルプレゼントやそのポイント交換の商品を用意。秋本祥坪選手の応援団。地元、宮崎ということもあり、多くの友人や関係者が声援を贈った。
ライブ映像を配信するための放送用スタンド。ジャッジがリプレイで確認を行うために、何箇所も設置している。
「ウォーターリスクマネージメント」のクルー。このJPSAツアーに帯同して、選手だけでなく、海の安全を常に確保してくれている。ありがとうございます!
今年のJPSAツアー最後となる ReWaveのビーチクリーン活動。日向の小倉ケ浜海岸は広い砂浜ながら、ゴミは少ないというキレイな海岸でした。
男子優勝:浜瀬海
男子2位:武川慎
男子3位:秋本祥坪
男子3位:増山翔太
男子5位:堀井創
男子5位:塚本将也
男子5位:内村喜章
男子5位:中井晴
女子優勝:田岡なつみ
女子2位:吉川広夏
女子3位:菅谷裕美
女子3位:小林恵理子
女子5位:古家伸子
女子5位:榊原頼子
女子7位:小栗瑞恵
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■10/27 (金) ロングボード2日目
>ABEMA SPORTSチャンネル LIVE配信
■10/28(土) ロングボード1日目
>ABEMA SPORTSチャンネル LIVE配信
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