現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。第37回となる今回はオッキーグロムコンプなどオージーグロメッツサーファー事情。
取材、文、写真:菅野大典
7月のゴールドコースト。
南半球のオーストラリアは冬真っ只中ですが、5月、6月の寒さを通り越したのか今月は暖かい日が多く良い気候が続いています。
少し用事があったついでに久しぶりにサーファーズパラダイスの街へ。ゴールドコーストの中心街とも呼べるこの場所は、国際色豊かなたくさんの人で賑わっていました。
目の前にはビーチバレーを楽しむ方がたくさん。温暖な気候のゴールドコーストでは、冬でもビーチでの遊びが活発です。
これからサーフレッスンに向かう人達の姿も。海と街が密接につながっているリゾート地のサーファーズパラダイスでは定番の光景となっています。
街中には自転車シェアサービスのLIMEも綺麗に並んでおり、無料の給水スポットやゴミ箱が各所に設置。ビーチ沿いにはライフガードのタワーと無料シャワーが等間隔に並んでます。
ちょうどタイミング良くゴミの回収車が。たくさん人がいながらも街中にはそこまでゴミが散らかっておらず、やはり綺麗な場所であれば自分も気をつけようとなります。
夜間には砂浜にも清掃車が走っており、ゴミを拾うだけでなくビーチ整備もしています。サーファーズパラダイスだけに限らず、ここ数年でゴールドコースト全体でもビーチフロントが整備され、さらにビーチの環境が良くなっています。
冬の時期は風も合いやすいサーファーズパラダイス。意外と混雑なくサーフィンが楽しめました。
ゴールドコーストの波の状況は、先月にひき続き波の小さな状態が続いた上旬ですが、地形が良い場所を中心にサーフィンが楽しめました。
相変わらず地形の良いオープンビーチが点在。
中旬から下旬にかけてはサイズアップする日もあり、ポイントブレイクが綺麗にブレイクしていました。
先月から小波続きでビーチが広くなっているスナッパーからグリーンマウント。大きなうねりが入ればパーフェクトな波がブレイクしています。
週末にはスナッパーボードライダーズの試合も久しぶりに行われていました。
このコンディションにサーファーは大興奮。やはり誰もが良い波で試合を行いたい。このボードライダーズの環境は最高です。
今月も先月と同様にゴールドコーストが波の小さい日に南の方へ車を走らせ、キャンプをするついでに地形の気になる場所へ足を運んでみました。
海沿いの主要な場所には必ずあるキャラバンパーク。カヌーを持ってきたり自転車を持ってきたりオージーは本当に自然との遊び方が上手。
オーストラリアには海沿いから山の中まで至る場所にキャンプ場がありますが、電気や水が通っている宿泊施設を伴ったオートキャンプ場から、トイレすら何もないキャンプ場まで様々。宿泊期間もスクールホリデー期間中は最低1週間以上しなければならない場所とかもあり、日本とルールが違う部分もたくさんあります
。キャンパーバンであったりトレーラーを4WDの車で引っ張って来たりする人も多く、設営を楽しむというよりもその場所を拠点に何かを楽しむというスタイルが感じられます。
メジャーではない場所はこのような舗装されていない道がほとんど。
しばらく進むとポツポツとテントが立てられていたり、キャンパーバンがとまっていました。
その目の前にはこのようなブレイクが。このコンディションを5人で貸し切り。海の中でどこから来たの?とか、あの場所も波いいよ?など、旅サーファーならではの会話を楽しめました。
メジャーポイントは混雑して来ているオーストラリアの東海岸ですが、宿泊施設がなくキャンプでないとアクセスしにくいサーフポイントもたくさん。オーストラリアに滞在するならキャンパーバンなどを借りてのサーフトリップなどもおすすめです。
今月もまた新たな場所を発見することが出来ました。
2023 BILLABONG OCCY’S GROM COMPが開催。
7月1日〜4日にかけて、”2023 BILLABONG OCCY’S GROM COMP”が開催。
このイベントは”オッキー”の相性で親しまれる、1999年のワールドチャンピオンのマーク・オクールポ”のイベントで、毎年6月から7月のスクールホリデーに合わせて開催。
アンダー12、14、16(以下ではなく未満の年齢、アンダー12であれば今年12歳になる選手は出場できずアンダー14のディビジョンでの出場となる)の男女の6ディビジョンで行われる若手サーファーの登竜門とも呼べる、グロメッツサーファーにとって重要なイベントの1つ。
今年はいつもの会場であるD-BAHでなくスナッパーロックスで開催。エントリー費が200ドルと高額になりながらも国内外からグロメッツサーファーがたくさんゴールドコーストに訪れました。
会場となったスナッパーロックス。
スナッパーロックスと聞けば誰もが形の良いパーフェクトなライトハンドの波を想像するが、今大会は別。うねりが入らずに小さなコンディションのショアブレイクの試合となりました。
波が小さいのでみんなが岩に集合。それでも流れは強いのでヒートが開始と同時にエントリーする選手もたくさんいました。
先月から、しばらくうねりの入らない日が続き砂が溜ま理すぎている状態で、さらにはオンショアとなる北風も吹かずにいたため砂が全く崩れずに整い、コンクリートのようにカチカチの状態に。
長い間このビーチを見ていますが、いつもは海面にあるインサイドの岩のリトルマレーの前にこんなに砂があるのはとてもレアな状態だと思います。
小さくてもカレントは強く、乗ってはビーチランの繰り返し。
テイクオフが鍵となるショアブレイクの試合で0〜1点台のオンパレード。それでもキッズは果敢にトライしているのが印象的でした。
テイクオフをメイクしても、わずかしかない水深に選手は大苦戦。その中でも普段ここのポイントでサーフィンしているスナッパーローカルの選手はテイクオフも乗り方も慣れていて、実力を出せている感じがしました。
ほとんどはパーリングかテイクオフをしたとしてもアクションのできないライディング。厳しいコンディションでの技術が試された大会となりました。
グロムの試合とはいえこの大会は真剣勝負。もちろんファンな感じで出場している選手もいますが、コーチを帯同させて試合に臨んでいる選手も多く、それだけ重要な大会と位置付けられています。
サーフィンオーストラリアの各イベントはグレードが設定されており、オッキーグロムコンプは1番グレードの高い8スターに設定されています。
それぞれのイベントの年間ベスト3リザルトによってナショナル・ジュニアランキングの順位が確定され、上位者はオーストラリアのISA代表チームであるIrukandjisチームに選考されます。
2歳ごとのディビジョンながらこの年代の1歳の差はとても大きく、ヒートによっては違うディビジョンかと思うような実力差の試合もありながら、番狂わせのヒートもありました。
プライオリティエラーであったりパドルを漕いで失ってしまったりと、厳しいコンディションのせいか大部分の子はパニックになって波に乗れない選手が続出。
その中でも勝ち上がっていく選手にはビーチにコーチがついていたり、しっかりとヒートの組み立てができていた選手で、もちろんこの掘れた浅いコンディションで、しっかりした波を探してテイクオフするという実力がベースにあるのが基準ですが、それができない選手は早々に姿を消していました。
ゴールドコーストに住んでいる日本人選手も数名参加。
数年前にゴールドコーストに移住してきた新佛響太郎 シンブツ キョウタロウ (アンダー14出場)。ラウンド1では残り30秒でギリギリ逆転勝利。笑顔でビーチから上がってきた。
スナッパーボードライダーズのメンバーであるキョウタロウにとってはいつもサーフィンをしている場所。何本も果敢にチャージし形の良いセットの波で5.33ptをスコアしていた。
続くラウンド2でも同じスナッパーロックスボードライダーズの仲間である福田ロイと共に1、2でラウンドアップ。同世代のスター選手であるルカナ達とラウンドアップを喜ぶロイとキョウタロウ。
残念ながらクォーターファイナルで2人とも敗退してしまったが、普段からスナッパーロックスで同世代のサーファーと切磋琢磨している仲間同士であり、ホームポイントのイベントを楽しんでいました。良い環境でどんどん実力を伸ばしている2人だけに将来が楽しみです。
現在ヒルクレスト・カレッジに留学中の高橋花梨(アンダー16出場)。14歳としては身体の大きい方だが、同世代のオージーの中に入ればこの通り。アンダー16の選手となれば大人と同じくらいの大きな選手がたくさんいました。
ラウンド1では何本も形の良い波を掴み危なげなくラウンドアップ。続くラウンド2では、優勝候補筆頭のクインシー・シモンズと双子の妹の高橋花音に僅差で敗退してしまいました。
ラウンド2では花梨、花音の双子姉妹対決。僅差で花音に軍配があがった。
うねりの向きが少し変わりファイナルデイの朝は少しまともなコンディションに。完璧なスナッパーの波からは程遠いいものの、うねりを拾いアクションしやすい波がブレイク。朝からアンダー16の男女のヒートが行われレベルの高い試合が繰り広げられた。
ラウンド1、2と勝ち上がりファイナルデイまで駒を進めた高橋花音(アンダー16出場)。
クォーターファイナルまで勝ち上がった花音だったが、前日までのコンディションと変わりシフトして入ってくる波にリズムが掴めず良い波を掴めずに敗退してしまった。昨年はアンダー14で見事優勝したが、今回のアンダー16では7位という結果に終わった。
今や世界中で大注目されているキッズである13歳のケイデン・フランシス(アンダー16出場)。誰もが苦戦するタフなコンディションながら、ラウンド1では18ptのトータルスコアをメイクするなど実力を発揮していたが、クォーターファイナルで敗退。実力あるタレント揃いのこの世代では誰が勝つのか分からない。
昨年のアンダー14のファイナルで18.97ptを出して優勝した13歳のマックス・マクギリブレイ(アンダー16出場)。グロメッツながらレールをしっかりと使い、太いラインを描きながらもテクニックもしっかりとしているマックス。惜しくもセミファイナルで敗退してしまったが末恐ろしいサーファーです。
朝のうちに良かったコンディションもオンショアが吹き出し、ロータイドに向かうにつれてまたしてもショアブレイクの過酷なコンディションに。各ディビジョンのファイナルが行われる頃にはまたしても厳しいコンディションに変わっていった。
おまけに土砂降りの雨も降り続き、コーチも指示を出すのに一苦労。今思えば良い天気が続いた今年で唯一の嵐のような天気がこの日でした。
タレント揃いのアンダー16ボーイズのファイナルに残ったハンター・アンダーソンとラクラン・アルギロス。
ここしかないという場所に的確に板を運びアクションを重ねていったハンター。タフなコンディションながらもしっかりと技をメイクし見事アンダー16のチャンピオンに輝いた。
昨年アンダー14のファイナルでマックス・マクギリブレイにコンビネーションで敗退し準優勝と悔しい思いをしていたハンター。試合後しばらく会場の隅で悔し泣きをしながら動けなかったのを覚えています。
今大会ではセミファイナルのマンオンマンでそのマックスを破り優勝。こうした同世代のライバルというのはお互いを成長させるとても大きな存在。グロメッツの試合とはいえ未来につながる大きな大会になっています。
アンダー16ガールズでは、クインシー・シモンズが優勝。SURFING LIFEの雑誌のカバーを飾ったり、スタブハイにも招待される実力の持ち主であるクインシー。4年前にアンダー12で優勝して以来、あまり大会で見かける機会がなかったが、サーフィンの技術だけでなくコンテストの技術も非常に高く、ファイナルでは圧巻の勝利。
アンダー14ボーイズでは昨年アンダー12で優勝したルカナ・カレンが2年連続の優勝。
とにかく毎ヒート乗る本数が多く、ファイナルでは19本の波に乗っていたルカナ(20分ヒート)。激浅のショアブレイクでも臆する事なくエアするなど果敢にチャージ。この年齢ながら、おもいっきりの良さだけで無く、しっかりとした技術が身についている。
たくさんの仲間に囲まれ祝福を受けるルカナ。この世代もアンダー16と同様にタレント揃いの選手が豊富であり、どの世代にも将来有望な選手がいる今のオージーサーファーのグロメッツ世代です。
アンダー14ガールズは、ロージー・リチャードソンとエライザ・リチャードソンの双子の姉妹対決となりエライザが勝利。
この年代のタイトルを総ナメしていると言っても過言ではないエライザ。出場しているほとんどの大会で優勝しており同世代の中で実力が1つ抜けている。
アンダー12ボーイズで優勝したタヒチアンのリアム・コウア。スコアを出せる波を見つけることが出来ずにいたが、最後まで諦めずほぼレインボーベイのインサイドまで移動し、波を掴んで逆転勝利。アンダー12の選手ながらヒートの状況を理解し行動できるのには驚きました。
アンダー12ガールズ優勝のレイラニ・ゾリック。厳しいコンディションの中でもしっかりとサーフィンをし圧巻の勝利となった。
個人的に毎年楽しみにしているイベントの1つであるオッキーグロムコンプ。
今大会はコンディションが悪かったものの、予報に合わせこまめにスケジュールを修正したり、ライブ中継には元世界チャンピオンであるオッキーやラビットをはじめ、WSLでもお馴染みのステイス・ガルブレイスがMCを務めるなど、プロのイベントと変わらないような豪華なイベントとなりました。
元世界チャンピオンのミック・ファニングが会場に来たり、ビラボンライダーもブースに来て話をしたりするなど、今後世界に羽ばたこうとしているキッズにとっては最高な経験を積めたともいえる今大会。
ビーチランや宝探しなどで商品をゲットできるゲームも充実。サーフィンの試合だけでなくキッズみんなでビーチで遊べるイベントとなっていました。
過去には都筑有夢路が3位になったりと日本人選手も活躍していたオッキーグロムコンプ。サーフィンを楽しむこと、勝って喜ぶ事、負けて悔しがる事、シンプルにグロメッツの選手の感情が映し出される瞬間を見ながら、また日本人の選手にも参加してほしいと感じました。
2023 OCCY`S GROM COMPハイライト映像
シエラ・カーと共に大注目を浴びる次世代サーファー、ミラ・ブラウン。
オッキーグロムコンプの翌々日7月6日から11日にかけては “2023 Skullcandy Oz Grom Open”が開催。
このイベントもオッキーグロムコンプと同様に注目されるグロメッツのイベントで、数年前からはWSLのプロジュニアの試合である”Skullcandy Pro Junior”と同時開催されている。
プロジュニア男子のファイナリスト。昨年ニアスのQS5000で優勝したのが記憶に新しいマーロン・ハリソン(1番右端)が見事優勝した。Pic: Ethan Smith/WSL
ブリスベン・オリンピックを目標に
先月に引き続きグロメッツ・イベントが盛り上がったオーストラリアの7月。
少し前までは、そこまでって思っていたサーファーがいきなり上手くなっているのが、この年代の選手ですが、その成長の幅の想像を遥かに超えてくる事がたまにあるのがオーストラリアのサーファー。サーフィンの環境良さなのか分かりませんが、今のオージーグロメッツサーファーはとても層が厚いと感じます。
今はCTだけでなくオリンピックという世界的なイベントにも注目があり、まだ確定していませんがブリスベン・オリンピックの年となる2032年に旬な年代の彼らはその辺も目標にしているのかなと思います。
CTでタイトルを獲ろうと活躍する若いオージーサーファーもタレント揃いですが、それ以上になりそうな世代を予感させられる、オーストラリアのグロメッツ・サーフシーンを感じる月となりました。
菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして13年余り。サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、昨年は大村奈央の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
INSTAGRAM :https://www.instagram.com/nojiland/