御前崎から世界へ。新たなスタートを切った「すももとみらい」。池田美来&佐藤李インタビュー

アクティブに活動するすべての女性を応援する世界的なブランド「ROXY」。その女性アスリートへの手厚いケアは、今や業界随一と言われる。日本でも業界だけでなく、その活動は一般にも広く知れ渡るようになった。

 

ライダーに関しては選手本人の意思を尊重する形で募集を行い、「アスリートプログラム」として、ジュニア選手時代から長期の計画で育成するシステムを提供。そのプログラムもレベルごとにクラス分けを行い、専属コーチがコンペティションの基本から教える。

 

ここで特筆すべきなのは、そのケアーするスタッフが「ROXY」のライダー自身が行うということ。コーチングから大会への帯同もチームで行うことで、選手同士のコミュニケーションも図り、よりレベルアップにつなげるということを目指している。

 

現在「ROXY」は、その活動をSNSやYoutubeのROXY channel などで積極的に配信。大会インフォメーションや試合結果だけでなく、SDGsなどのテーマも含め、個々のライダーのライフスタイルなどを紹介している。

 

そのROXY channelで今、話題なのは「THE GIRLS」というシリーズ。これはジュニア選手の成長を追ったドキュメンタリーで、映画「ワキタピーク」を監督した清野正孝氏がこのシリーズを担当。大会を追うだけでなく、普段の練習や生活など選手の素顔を余すなく映像化している。

 

先日配信された第2弾では池田美来と佐藤李をピックアップ。彼女たちの地元である静岡、御前崎で初開催された世界大会を舞台に、彼女たちの奮闘を追った。今回はここではその映像に入らなかった後日談を掲載。その想いを改めて聞いた。

 

 

取材、撮影:山本貞彦

 

御前崎プロの記者会見には地元出身のプロサーファーということで二人で出席。注目を集めた。
佐藤李
佐藤李
池田美来
池田美来

 

 

佐藤李 17歳、池田美来15歳。

 

海外遠征で残した大きな成果を引っさげ参戦した初の地元の世界大会。大きな期待を受けて、大会前は優勝を目標に語っていた2人だった。しかし、結果は佐藤がジュニアでは決勝に進んで4位、QSは13位。池田はQSが5位で、ジュニアは9位という成績。2人とも満足いく結果を出せずに終わった。

 

佐藤にこの結果を含め、今回の大会での自己採点をしてもらった。

 

 

佐藤李

 

もっと良い波を拾って、自分のサーフィンをみんなに見せたかった。

 

 

佐藤「そうですね。70点です。その理由は特にプロジュニアでのファイナルでは、やはり良いサーフィンを見せれずに終わったというか。良い波に乗れずに終わっちゃったので。

 

自分は100%やったんですけど、100%やって良い波を拾えなかった。自分ではもう少し良いライディングができたのに、それができなかったこと。もっと良い波を拾って、その自分のサーフィンをみんなに見せたかったなって。それで70点です。」

 

それでも選手としての活動を地元で見せることができたことが、嬉しかったと語る。

 

佐藤「試合は楽しかったです。私とか美来の試合をしている姿を、その地元の人に見てもらうのが初めてだったので。少しでも成長した姿を見せられたことは、ちょっとは恩返しになったんじゃないかなって。個人的には思っています。」

 

一方、池田は反省しきり。

 

池田美来

 

地元の開催だから勝たなきゃいけないっていう思いがあった。

 

池田「試合は楽しめました。でも、やはり、地元の開催だから勝たなきゃいけないっていう思いがあったので。なので、どうしても守りのサーフィンっていうか。守りに入っちゃって点数が伸びなかったり。

 

守りのサーフィンで、ライディングが固くなっちゃって、逆にコケちゃったりとか。やはり、勝たなきゃいけないってプレッシャーが強かったですね。自分で勝手にプレッシャーを感じていただけなんですけど。」

 

それぞれが感じた大きな期待。地元だからこその優位とは裏腹に自分にかけてしまったプレッシャー。敗因は何だったのだろうか。

 

佐藤李

 

佐藤「地元だからどうとかっていうのありましたけど。やはり、自分は元々、波を見る力がまだ弱いなって思うので。同じヒートだった美波(野中)ちゃんが良い波に乗れていても、自分は乗れなかったりとか。

 

ジュニアのファイナルでは、ヒート前の状況を見て、自分で決めた場所に良い波が入って来なくて。それを早めに切り替えて修正することも出来なかったです。」

 

 

池田美来

 

池田「ジュニアの試合はもっと早めに波に乗っておくことでした。波に乗って、リズムを作った方が勝ちに繋がりやすいっていうのは、最近、思っていて。でも、この時は待っちゃったんですよね。

 

波がすごいぐちゃぐちゃだったので、その中でも良い波を探そうとして、待っちゃったから。そういうのも良くなかったです。波が良くない時、どんな波が良いのか。わからないのなら、なおさら、待っていると乗れなくなってしまうから。」

佐藤は波に乗れないで負けることが多いと言う。それは波を見る目がないことや、自分の性格から波を譲ってしまうことが多々あるからだと自己分析する。それは自分が緊張しやすい性格も一因だと言う。

 

佐藤李

 

波選びができないのがヒートで出て、余計に苦手意識が強く出てしまった。

 

 

佐藤「自分はその波選びが苦手というのが、やはりヒートで出てきちゃうんだと思います。緊張しいな性格もあると思うんですけど。

 

試合で波を譲る気持ちは、もちろん無いんですけど。やはり、普段の練習から波選び、波キャッチに自信がないんですよね。

 

でも、もしかしたら、それは自分でそう思い込んでいるだけなのかなって。それで余計に苦手意識が強く出ていのかもしれないと考えるようになりました。」

 

池田は地元での開催だったことで恩返しがしたいと強く思ったことが、プレッシャーになってしまった。大会終了後、黙々と一人で練習する姿が印象的だったが、この時はなぜだか冷静だったと語る。「負けて引きずらないようにしたい」という答えは見つかったのだろうか。

 

池田美来

 

自分の中で勝たなきゃいけないっていうプレッシャーを自分で作ってしまった。

 

池田「試合では緊張してました。やはり自分の中で勝たなきゃいけないっていうプレッシャーを自分で作ってしまった。波もいつもやっているところなのに、試合になったら、難しいなと感じたりとか。今、思うとメンタルの強さとかが足りなかったです。もちろん、技術も足りていなかったし。

 

なぜだかわからないですけど、自分は試合が終わった後って、すごくサーフィンをしたくなるんです。フィーリングが新しいうちに、やった方が良いかなと思っていて。試合のことを思い出しながら、もうちょっと、ここをこうすれば、こうカーブすれば良かったなとか。あの時もそんな感じでサーフィンしていました。

 

いつもは悔しいなっていう思いから、ムシャクシャしてやる時もあるんですけど。やはり、負けたら負けたところを探して、ネガティブになっちゃうんですけどね。この時は冷静な感じでした。

 

そこを逆に今日、今回の試合はこれができた。だから、次はこれを改善して、もっとこうしていこうと。負けを引きずらないように、ポジティブに考えるというか。それを大事にしようと思って練習していました。」

 

この大会は彼女らに大きな試練を与えたが、それで気づけたこと、収穫もあった。佐藤は次の大会に向けて自身のやるべきことをこう語る。

 

 

佐藤「自分は波を見る目を養わないと駄目ですね。もう練習の時から意識するしかないと思います。あと試合では、どんどん波に乗るっていうことも意識してやること。

 

なので、今は普段から試合のために波キャッチを一番に考えて、練習しています。御前崎のジュニアは4番だったから、次も絶対入賞して今より良い成績を上げたいという気持ちで、次は優勝を目指します。」

 

池田は自分の足りないところをこう分析する。

 

 

池田「全体的に自分のレベルは、まだまだ低いんですけど。波を見る目とかをもっと磨かないといけないと思っています。試合では絶対に変な波に手を出しちゃいけないんですけど、自分はどの波が良いのか判断が甘いんです。

 

だから、難しいと思うんですけど、まず波を見る目を養うことから。もう絶対に変な波には手を出さない。それは日頃の練習から波をよく見てのトレーニングが必要だと思っています。

 

試合経験が足りていないことが原因かどうかわかりませんが、あと試合になるとライディングが固くなること。いつもならここを攻めるのに、試合になると攻められない。攻められないのに、守りに入るとか。これでは勝てないです。

 

事前に攻めのサーフィンとかの作戦を考えることとか、メンタルの強化が自分には必要ですね。ただ、自分の今がこうなんだから、まだ全然上手くなれるんだって、ポジティブに考えるようになりました。」

 

 

池田美来

 

地元での大会開催。プレッシャーと戦いながらも得られた結果は満足いくものではなかった。しかし、改めて自分の実力を見つめ直すことができたのも事実だ。

 

海外の経験を通して気づいたこと。そして、優勝するために、世界で勝つために自分に必要なことは何なのか。

 

今、やらばければいけないこと何なのか。この地元の大会で彼女たちが得たものは大きい。ここからが新たなスタートだ。彼女たちの戦いはこれからも続いていく。

 

 

仲良しのミライ、ナナホ、スモモ

今回の第2弾の映像には美来、李の他にROXYチームの都築虹帆の活躍も収められている。

 

ジュニアの優勝シーンに加え、都筑有夢路とのQS決勝での駆け引き。しかし、判断ミスからプライオリティを持つ虹帆が優先権を失くすという瞬間も収められている。それでも最後まで逆転に賭けて波に乗る虹帆のサーフィンは必見。

 

 

 

 

また、動画の最後には、コーチの橋本恋プロがWSLジャッジ専任となることで、新たに和光大プロがROXYチームに参加。その2人から選手への想いが熱く語られている。仲間であり、ライバルでもあるROXYガールズ。彼女たちの奮闘を余す事なく映像化した「THE GIRLS」はこの後も続々、配信予定。見逃さないためにも、ぜひチャンネル登録を!

 

 

ROXY channel

https://www.youtube.com/@ROXYchannel

 

 

佐藤李(サトウスモモ):SUMOMO SATO
@sumomo_sato
●年齢:17歳
●出身地:静岡県
●ホームポイント:御前崎
●スタンス:レギュラー
●所属支部:プロ
●スポンサー:ROXY、チャート株式会社、サーフスタジアムジャパン、FCS

●主な戦歴:JPSA/千葉一宮 21位、新島 17位、茨城 7位、千葉鴨川 13位:2022年ランキング 13位
NSA/Jr 千葉千倉 4位
WSL/千葉一宮 25位、インドネシアクルイ 5位、インドネシア二アス 13位、静岡御前崎 13位、フィリピン 3位、台湾 25位:現在 ASIA ランキング 4位
WSL Jr/千葉一宮 13位、インドネシアクルイ 9位、インドネシア二アス 13位、静岡御前崎 4位、千葉南房総 7位:2022年ASIAランキング 10位

 

池田美来(イケダミライ):MIRAI IKEDA
@miraiikeda1107
●年齢:15歳
●出身地:静岡県
●ホームポイント:御前崎ロングビーチ
●スタンス:レギュラー
●所属支部:プロ
●スポンサー:ROXY、OIMOYA、SMACsurfboard、White buffalo、静岡スバル自動車、Ronin eyewear、Surfstadium Japan、kobapen、Smile Home

●主な戦歴:JPSA/千葉一宮13位、新島 7位、茨城 3位 (ベストライディング賞)、千葉鴨川 5位、宮崎日向 9位:2022年ランキング 7位
ISA/ エルサルバドル U-16 3位
NSA/Jr 千葉千倉 5位WSL/千葉一宮 5位、インドネシア二アス 25位、静岡御前崎 5位、台湾 17位:現在ASIA ランキング15位WSL Jr/千葉一宮 5位、インドネシア二アス 13位、静岡御前崎 9位、千葉南房総 3位: 2022年ASIAランキング 7位