写真、リポート:山本貞彦 7月26日 JPSAショートボード特別戦 「さわかみチームチャレンジ福島」が福島県いわき市四倉海岸で開催された。
福島県いわき市で、プロサーフィンの大会開催は初めてとなる。今大会は無観客では無いものの新型コロナ感染拡大を受け、会場内は立ち入り禁止とし選手とスタッフのみとし、一般と区分けした。
このチームチャレンジはJPSAにおいて初の試みであり、個人で戦うツアー戦とは全く違うコンセプト。
さわかみグループ代表の澤上 龍氏が「都道府県対抗マラソンのように、実力ある選手が集まって戦う」ことをサーフィンでもできないかと提案。それを具体化したのが今回のイベントだ。
このチームチャレンジの概要はこうだ。2022年度オフィシャルブランド 5チームにJPSAからU-19選抜チームが加わり、全部で6チームがエントリー。
チーム登録条件は選手4名(2022年度ショートボード登録プロ)+コーチ1名という編成。1チーム4名のうち男女最低各1名の混成チームとすることが条件だ。
各チームと選手は下記の通り。
Team O’NEILL
選手:
西 慶司郎
、新井 洋人
、堀越 力
、川合 美乃里
コーチ:
堀川 建裕
Team ムラサキスポーツ
選手:
田中 英義
、大橋 海人
、村田 嵐
、都築 虹帆
コーチ:
粂 浩平
Team BILLABONG
選手:
安室 丈
、仲村 拓久未
、古川 海夕、 川瀬 心那
コーチ:
鈴木 仁
Team ROCKHOPPER & WAVEWARRIORS
選手:
和氣 匠太朗
、宮城 和真、 三輪 紘也
、宮城 有沙
コーチ:
髙梨 直人
Team QUIKSILVER & ROXY
選手:
平原 颯馬
、伊東 李安琉
、渡辺 愛
、佐藤 李
コーチ:KANAN
Team U-19選抜
選手 :
加藤 翔平
、松原 渚生
、辻岡 堅太朗
、江口 彩花
コーチ:浦山 哲也
試合は2チーム、4名ヒートでの対戦となり、 1ヒートに2名ずつ、同じチームの選手が出場する。
スコアは選手ごとにベスト2ウェイブカウント。これで4人の結果の順位ごとにチームポイント( 1位: 10pt、2位: 6pt、3位: 4pt、4位: 0pt )が配分されて、チームの勝敗が決まる。
ヒート組に関しては6チームを2つに分けて、それぞれで総当たりとする「グループラウンド」をまず戦う。
上位となった各2チーム、合計4チームが次の「ノックアウトラウンド」へ。ここからがセミファイナル、ファイナルと進むが、負けたら終わりという設定だ。
また、ヒートへの出場者は各チームで決めることができる。ここは対戦相手を見て、また、その後の結果を含め出場者を変えることができる。
しかし、ノックアウトラウンドでは開始時に、セミファイナルとファイナルの出場選手を予め決定し、オーダーシートを提出。
オーダーシート提出後は、出場選手を変更することはできない。つまり、1人の選手は1度しかヒートに出場できないこととなっている。だから、セミファイナル、ファイナルまで視野に入れてオーダーを組まなければならない。
チームポイントとマキシマムウェイブ。
さらにマキシマムウェーブは、チームごとに8本(セミファイナルからは10本)。それをチームで共有する形となっている。
本来、チーム戦は作戦を立てて試合に臨むのだが、実はその作戦よりも試合の進行の中で駆け引きが重要となる。
ここで肝心なのはチームポイントとマキシマムウェイブ。自分のチームが1位、2位を取れば(16点)完全に勝ちだが、1位、4位(10点)で相手が2位、3位(10点)だとチームポイントは同点になってしまう。
※ 同点の場合はベスト4でチームのライディングスコア(ベスト4ウェイブカウント)に よって勝敗が決定する。
ベスト4カウントでも勝敗が決定しない場合は、チームライディングスコアのハイポイント順、それでも決まらない場合は、順次カウント バックして勝敗を決定する。
だから、そのような状況の時は相手との演技の得点差を少しでも埋めて、順位を上げなくてはならない。しかし、乗る本数がチームで限られているから、その逆転に自分たちのどちらが優位かを瞬時に判断しなくてはいけないのだ。
プライオリティも共有
さらに、もう一つ大事なのは、プライオリティも共有になっているということ。ここ終盤の場面では、自分一人が乗りまくるわけにもいかず、順位を確認しながら演技を仕掛けなくてはいけない。
自分のチームに優先権があっても、先に仲間が波に乗ったら相手に優先権が移る。だから、沖で待っていても乗れない状況になるのだ。ここは相手との駆け引きに加え、チーム同士の阿吽の呼吸も必要となる。
このような駆け引きは今までのチームチャレンジ戦には無かったもので、もちろん個人戦とも違う緊張感があった。それでも信頼関係がある選手同士がチームを組んだことで、終始、笑顔だったのは、このイベントが「楽しい」という証だった。
さて、会場は朝から曇りから、雨、晴れと目まぐるしく天候は変わった。波のサイズはコシハラ。昼過ぎからサイドからオンに風が強く吹いたものの、コンテストに問題ない。
優勝はTeam O’NEILL。チームワークも抜群で、ラウンドの采配も的確。セミでは新井洋人は一人、波を取り合わずに右でポイントを上げる作戦。プライオリティも上手くコントロールした。
ファイナルでは西慶司郎が試合前半で今大会のハイエストとなるエクセレントの8点を叩き出し、試合をリード。さらに川合美乃里は決勝での演技でも臆することなく攻めて、2位となり文句なしの優勝でした。おめでとう!
2位はTeam QUIKSILVER & ROXY。こちらは唯一、チームで女子が2名(佐藤李と渡辺愛)という布陣。それでも、グループラウンド、ノックアウトラウンドをチームで勝ち上がり決勝まで。チーム戦ならではの采配で、女子でも男子相手に勝ち上がれることを示した。
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[グループラウンド]
グループA
Team QUIKSILVER & ROXY(伊東 李安琉、平原 颯馬)16点 vs
Team U-19選抜(加藤 翔平、松原 渚生)4点
Team U-19選抜(辻岡 堅太朗
、江口 彩花)4点 vs
Team ROCKHOPPER & WAVEWARRIORS(和氣 匠太朗
、 三輪 紘也
)16点
Team ROCKHOPPER & WAVEWARRIORS(宮城 和真
、宮城 有沙
)4点 vs
Team QUIKSILVER & ROXY(平原 颯馬
、佐藤 李
)16点
→1位 Team QUIKSILVER & ROXY 32点
2位 Team ROCKHOPPER & WAVEWARRIORS 20点
3位 Team U-19選抜 8点
グループB
Team ムラサキスポーツ(田中 英義
、村田 嵐
)4点 vs
Team O’NEILL(西 慶司郎
、堀越 力)16点
Team O’NEILL(西 慶司郎
、新井 洋人
)6点 vs
Team BILLABONG(安室 丈
、古川 海夕)14点
Team BILLABONG(安室 丈
、仲村 拓久未)6点 vs
Team ムラサキスポーツ(大橋海人
、村田 嵐
)14点
→1位 Team O’NEILL 22点
2位 Team BILLABONG 20点
3位 Team ムラサキスポーツ 18点
[ノックアウトラウンド]
セミファイナル H1
Team QUIKSILVER & ROXY(伊東 李安琉、渡辺 愛)16点 vs
Team BILLABONG(安室 丈
、川瀬 心那
) 4点
セミファイナル H2
Team O’NEILL(新井 洋人、堀越 力
)16点 vs
Team ROCKHOPPER & WAVEWARRIORS(和氣 匠太朗
、 三輪 紘也)4点
ファイナル
Team QUIKSILVER & ROXY(平原 颯馬
、佐藤 李)4点 vs
Team O’NEILL(西 慶司郎
、川合 美乃里)16点
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優勝:Team O’NEILL (賞金100万円)
2位:Team QUIKSILVER & ROXY(賞金 40万円)
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優勝:Team O’NEILL
西慶司郎
「最高ですね。去年は優勝がなくてグランドチャンピオンだったので、優勝にこだわっていました。今回は自分一人の力ではなくて、みんなのチーム・オニールの力で取れた優勝だと思うので、凄く良かったなと思います。
チーム戦は楽しかったです。自分が海に入っていない状態で、試合が進行しているドキドキ感と、自分が試合をして次の試合につなぐなど、プレッシャーを感じながら試合も出来たし、ヒトの試合でも見ててドキドキしちゃいましたね。
(ファイナルでスコアしたエクセレントについては)去年からエクセレントが出ないというのが課題になっていて、これまで試合時間をこなしてしまう傾向があったので、そこの壁をようやく越えられたかなと思います。」
川合美乃里
「凄く嬉しいです。私はファイナルしかでてないんですけど、みんながここまで繋げてくれたお陰で、取れたものだと思っているので凄く嬉しいです。
プレッシャーは凄くありました。みんながここまで頑張ってくれたのに、自分が本当にやらかしちゃったら、どうしようという気持ちがあったんですけど。海の中で慶司郎(西)が、これ行け!とか、これじゃないとか言ってくれて、心強かったです。」
堀越力
「僕の出番はセミファイナルだったんですけど、セミファイナルに勝たないと、この二人にも繋げられなかったので。みんなのことを信じて繋げられて良かったです。サーフィンは基本個人戦だと思うんですけど、今回チームでやってみて自分たちも面白かったし、ライブ中継で見ている人にも面白い試合の流れや良いサーフィンも見せれたと思うので、新たな楽しさを披露出来たかなって思います。
新井洋人
「チーム戦というのは特別なものだと思っていて、いつも試合で敵として戦っていますけど、仲間だと、こんなに頼もしい味方はいないなって思って安心だったし、みんなで楽しんでできたので、本当に楽しかったです。」グループラウンドの時にマキシマム・ウェイブを使い切って海から上がる一幕がったとこについては
「やっちゃったって感じでした(笑)予選は自分が足引っ張って4番だったので、セミでしっかりファイナルに繋がなくちゃなって思っていました。そんなプレッシャーもありましたけど、結果としてチームの力で優勝出来たので、最高なオニールチームだったと思います。」
選手、スタッフは規程のルールに乗っ取った検温、抗原検査を受けて会場入り。
開会式ではチーム紹介の後、国歌斉唱が行われた。
グループラウンドの組み合わせは、試合当日の抽選会で決まる。
渡辺広樹コンテストディレクターから今回のルールを説明。
ゼッケンも赤ベースの赤とオレンジ。白ベースは青と白で特別にデザインされた。
抽選会が終わり、ヒート組が発表されるとビーチマーシャルの掲示板にも張り出された。
ヒート中には残りのメンバーは特設ブースにて応援。ライブMCとのやりとりも。コーチはビーチにて指示を送る。
イベントが終了したら、参加者全員でビーチクリーン。
イベントのライブMCには日本テレビの田中毅アナウンサーと前理事長の牛越峰統氏が担当。大会終了後には理事長の細川哲夫氏も参加して、アフタートークを配信。
スポンサーのR.surferから女子選手とコーチにシャツが贈られた。
JPSA 大会HPはこちら。
https://www.jpsa.com/schedule/6133/
チームチャレンジの大会形式はこちら。
https://www.jpsa.com/wp-content/uploads/2022/05/TC220518.pdf